未来を占う

15.08.27
ISO認証件数の状況をご存じでしょうか? 最近登録件数はどんな風に推移しているのか、気になりませんか?
私は日本に認証制度ができてからのJAB登録件数をずっと記録している。いやそんな難しいことではありません。JABのウェブサイトにアップされている数字を、定期的にエクセルに記録しただけです。普通の人はその数字を知りたければウェブサイトにアクセスしてチェックするだろうけど、継続して定期的にそれを控えている人はまずいないだろう。なぜ私がそんなことをしてきたかといえば、そういう数字は後々まで残らないだろうと思っていたから。実際、JABもだいぶ前までは過去からの推移の数字やグラフをウェブサイトにアップしていたが、もう何年も前に止めてしまった。なぜかといえば古い数字はもういらないだろうと思ったこともあるのだろうが、登録件数がドンドンと減る一方なので芳しくない数字は人の目に触れるところにあってはいけないと考えたのだろうと私はかんぐる。
ちなみにグーグルで「ISO登録件数」とか「ISO登録件数グラフ」検索すると、見つかるものはせいぜい2010年以前までのもので、過去20年間の継続した数字なりグラフは私のウェブサイトにあるものしか見つからないだろう。だから過去のデータを記録していてよかったと思う。私のウェブサイトがいかに価値あるか・・なんていうと笑われるか・・ともかくいかにしつこく、いや粘り強くISO認証制度をウオッチしているかということがお分かり頂けると思う。「日本最大のISOのオピニオンサイト」を名乗っているのはだてではないのだ。

ここまで書いてきて、既に認証件数の状況はご推察されたと思うが、ISO認証件数は過去数年間減る一方である。そして審査費用も安くなる方向で推移しており、認証ビジネスの売上も減少する一方だ。
ということでISO第三者認証制度はこれからどうなるのか考えてみた。

現状を確認しておこう。まず認証件数は何件かということであるが、実は日本のISO認証件数が何件あるのは分らない。ISOが毎年発表している数字もあるし、JABのウェブサイトにも現時点の数字はあるが、どのような理由か、みな数字が違い、どれが正しいのかまったくわからない。またノンジャブの数を全体的に表示している機関はない。結局私たちが入手できるのはJABのウェブサイトにあるJAB認定の登録数だけだ。
もっとも日本の認証制度あるいはJAB体制の存続を考えるなら、それは有効な指標である。
ともかくJABのウェブサイトにある数字を基にすると、ISO9001は2006年、ISO14001は2009年をピークにして、それ以降はずっと減少し続けている。

認証件数推移

ISO認証増減傾向

上図はISO9001とISO14001の認証件数の推移で、下図は増減とその加速度をパーセントで表したものである。QMSもEMSも継続して減少している、これが実態である。とはいえ先行きが真っ暗というわけでもない。減少率はいずれも年率マイナス2%程度であり、小さくはないが大きくもない。グラフを見ると2012年以降の加速度はゼロ、つまり年率マイナス2%という一定比率で減少しているのが分る。
このままの傾向が続けば、認証件数がゼロになるまで50年かかることになる。50年は十分に長くその間に認証機関の社長もJABの専務理事も10人くらい代わるだろう。だから関係者も自分の代は大丈夫だと考えて、気にもせず心配もしていないのだろう。
とはいえなにごとでも変化はリニアではなく、ある時点でドラスティックにフェイズが変わるのが常であるから、現行よりも2割とか3割減ったとき、一挙に大変動して制度が消滅するかもしれない。いやピークから見れば既にそれぞれ1割ほど減っているから、大変革が起きるのを3割減と仮定すると、あと10年で大変動があるかもしれない。それにしてもまだまだと思っているのかもしれない。

審査料金も減少が続いている。認証機関の費用構造は人件費と本社のオーバーヘッドが大きい。利益を出すには利益率を上げるか売上を上げるしかない。認証ビジネスでは売上拡大も難しいし原材料というものがないから、費用構造を見直すしかない。どこも人件費を削減しよう、費用を減らそうと一生懸命だ。
10年以上前は万が一審査に遅刻すると大変だという理由で、審査員の自宅から近くでも企業の近くのホテルに泊まるのが普通だった。10年くらい前からそんな風習はなくなり、前泊せずに早朝に自宅を出るのが普通になった。もちろんその分審査料金を安くするためだ。
弁当 昔々お昼ご飯は会社持ちであったし、会社が用意したものが審査員閣下のお気に召さないと企業担当者を怒鳴ればすぐに美味いものが出てきた。2000年頃、新聞がそういう実態を報道して社会的批判を受け、お昼だけでなくお土産も夜の接待もなくなった。そしてお昼は審査員が持参するようになり、コンビニ弁当を食べるお姿も普通に見かけるようになった。それは直接審査料金と関係ないが、企業の負担減という効果はあった。
契約審査員の日当が下がるのも止まらない。年ごとに減っている。審査前にいろいろと審査企業を調査したり資料を調べたりする時間を考慮すると、もはや最低賃金を割っているのではないかという気がする。10年前、サラリーマンが契約審査員をしていますなんてのは収入にもなり自慢であったが、今はどうなんだろう?
でもさ、サラリーマンが生活のために退社後に、自宅近くのコンビニでバイトしてますというと少しかっこ悪いと思うけど、契約審査員をしていますっていってもおんなじだよね?
小規模ではあるが結構有名な認証機関では費用を減らそうと人を減らし、社長以下幹部が審査に次ぐ審査で駆け回りヘトヘトになっているとその社長を良く知っている人に聞いた。そのような施策では短期間は費用削減になるだろうけど、何年も続けられるわけもなく、ゴーングコンサーンとしては不適切な運営だろう。その認証機関は企業経営に寄与すると標榜しているのであるが・・

ビジネスや趣味が活況かどうかの指標は、現在ではインターネットがある。検索エンジンで「ISO認証」でググると2015年8月25日現在、70万件くらいでてくる。ちなみにUL認定で74万、浮気慰謝料が76万、スキューバダイビングが72万であった。(いずれも2015.08.26時点)まあそれらは同じくらい世の中で関心がもたれているということだろう。
浮気慰謝料とISO認証の関心ごとが同じと聞いて安心した人も多いだろう。
さて検索されたウェブサイトから認証機関やコンサルのトップページを除いて、個々のコンテンツを上位500件くらい見るとわかるが古いものが多く、最近のものが少ないのに気づくだろう。要するにISO認証でひっかかるウェブサイトはたくさんあるが、最近ではISOについて書く人が少なくなっているのだ。

書籍はどうかといえば、これまた減る一方である。
規格改定があるたびに少し息を吹き返すが、すぐまた息切れする。

書籍発行数

2015年改定だから来年はISO書籍の当たり年だろうけど、2017年には元に戻る方に1000クレジット賭けよう。
書籍がダメなら月刊誌はどうかといえば、過去にはISO認証に関わる月刊誌がいくつもあった。しかしアイソムズ誌もISOマネジメント誌も廃刊(休刊)となり、今ではアイソス誌だけだ。
ISO雑誌ではないが日経エコロジー誌もだいぶ出版部数が減ってきている。休刊になるのも秒読みだろう。

いやいや大学では環境の時代といっているじゃないか。学部も学科も増えているんじゃないか? そうおっしゃる人もいらっしゃるだろう。
実際はそうではない。今環境を冠する学部や学科は減る一方、そして環境マネジメントと称する学科は消滅したようだ。いや実際には大学院で環境マネジメント学科と冠しているところはまだいくつもある。しかしその入学案内などを見ると研究対象が環境マネジメントシステムであるところはない。メインテーマはSRIや発展途上国支援とか、環境は環境でも労働環境などのようだ。
ISOにまつわる論文も減る一方、日本の論文の体系的なリストであるCINIIを見ると、はるか昔にピークを過ぎている

いやもっと切実に感じているものがある。それは私のウェブサイトのアクセス数の減少だ。
過去数年間のアクセス数は下図のとおりである

うそ800ウェブサイトアクセス数

図でオレンジ線は日々のアクセス数で、平日は高く、土日は200を切る。黒線は7日間の移動平均で、ときどき大きく落ち込んでいるのは、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆休みである。アクセス解析を見ると、ご訪問者の8割方は会社からなので、休日特に連休は大幅に落ち込むのはよく分る。そして休み明けに出社しても数日は忙しくて「うそ800」を訪問する暇もないのだろう。
ところでこの落ち込みも2015年になって特に大きくなっているのが気になる。そして落ち込んでから元のレベルになるのに、以前は翌週には回復していたが、今年は2週間以上かかっている。まさか連休が伸びたわけではないだろう。
そして大問題であるが、オレンジ線も黒線も、時と共にアクセスが減っていることが分るだろう。この傾向を見ると年ごとに1日のアクセスが70件くらい減っているから、うそ800のアクセスがゼロになるのにあと7・8年もいらないだろう。いや3割ダウンでカタストロフがくるという法則が一般的ならば、最盛期800件の7割として一日560件だから、既に現時点が終末なのかもしれない。
いや、参った参った、人のことは言えないね
まあ私の場合はビジネスではなく、趣味、てなぐさみだから(棒)
てなぐさみとはバクチのことだ、ISOはおばQにとってバクチなのかなんてツッコミは禁止

*ちょっと立ち止まって考えれば、登録件数がこれほど減少しているのだから、私のウェブサイトのアクセスもそれに比例して減少するのも当然かもしれない。
ISO認証件数が減っても、私のウェブサイトのご訪問者は減らないと思う方がおかしい。

久し振りにISO認証の傾向を再確認したが、いろいろな指標を見ても順調に終末に向かっているようだ。そうすると一番の関心事は終末はいつなのかだ。10年後なのか15年後なのか、あるいは「うそ800」のごとく今が既に最期のときなのか!、いずれにしても冒頭に書いたように50年後なんてことはありえないと思う。

私のスタンスを冷やかし、高みの見物、無責任などと思われるかもしれない。なんと思われようとかまわないが、私はけっこうISO認証制度の将来を気にしている。というのは若くして窓際族だった私が一躍脚光を浴びたのも客先からISO認証が要求されたおかげ、失業したときの救いの神もISO、引退してからの楽しみもISO、私はISO認証制度に心底感謝している。
だから認証機関の幹部や審査員をしているほとんどの人よりも、私はISOに関心があり、それが世の中から確固たる信頼を得ることを願っている。しかし過去20年間、ずっと私の期待は裏切られてきた。裏切ったのはJABであり認証機関であり審査員である。力量のない人たちがいいかげんな規格解釈とウソッパチの審査で認証の権威を貶め、認証制度を弄び、スポイルしてしまった。だから私は彼らを恨む。

うそ800 本日の悩み
今現在の最大の悩みは「うそ800」をどうするかである。
うーん、どうしようかなあ〜
上海も大幅値下がり(2015.08.25)したことだし、このへんで損切りというか発展的解消というのも・・・



匿名希望様からお便りを頂きました(2015.08.27)
テクノファ・平林氏の8/18付けメルマガです。
下記のような数字であり認証件数が減少しているのは日本だけのようです。

引用開始
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■□■ ISO9001の認証数の過去推移 ■□■

一番目の認証数については、自分でISO9001について調べてみました。
 日本:   2006年 80,518件 → 2013年 58,836件
イギリス: 2007年 35,517件 → 2013年 44,585件
ドイツ: 2007年 45,195件 → 2013年 56,303件
フランス: 2006年 21,349件 → 2013年 29,598件
イタリア: 2007年 105,799件 → 2013年 160,966件
スペイン: 2005年 47,445件 → 2012年 59,418件
アメリカ 2010年 25,101件 → 2013年 34,869件

私の調べた数字は、基準年が異なるので正確さには欠けますが、認証の絶対数への評価は別として、過去5〜10年の推移をみますと、明らかに日本の認証数は他の先進国と比較して異なる動きをしています。
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引用オワリ

匿名希望様 ご指摘ありがとうございます。
ISO認証に関してはいろいろなところが様々な数字を出していますが、このデータはISOが毎年「ISOサーベイ」という年次報告に載っている数字です。
で、その数字そのものには特段なにもいうことはないのですが、平林さんのとりかたがいささか恣意的に思えます。
例えば上のイギリスを見ると2007年から2013年に大幅増加(12%)と見えますが、実はイギリスの認証の最盛期は2001年で66760件でした。つまり2007年は最盛期の47%減、2013年は34%減という壊滅的状況です。またドイツ、フランス、イタリアは立ち上がりが遅いというだけのように見えます。それに絶対量が少なすぎです。いずれにしてもドンドン伸びているとは言えないでしょう。ヨーロッパ全体もISO9001は2008年をピークにして以降は減少傾向で、認証件数のカーブは上に凸の二次曲線のようです。
ただし欧州でISO14001は今も増加傾向です。とはいえ、欧州全部合わせて日本より少し多い程度ですから、なんとも
まとめると日本以外の外国ではドンドンと増えていて日本だけが減少しているという見解はないでしょう。
私がうそをついている可能性もありますから、ぜひ「ISOサーベイ」をダウンロードしてご確認ください。お金はかかりませんから

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