事業競争力ワーキンググループ中間取りまとめ

15.09.03
「事業競争力ワーキンググループ報告」なるものを覚えていられるだろうか?
こんなウェブサイトをご覧になる方はISOに関しては多方面にアンテナを伸ばしているだろうから、経産省が公報時に一度はお読みになっているはず。もっとも忘却の彼方かもしれない。
もう2年少々前に経産省が公表した、工業標準委員会の管理システム専門委員会というところで作成した中間報告書である。いつ中間ではなく最終報告書が出るのかと待っていたが、2年経った今もまだ出ていない。
またこの報告書が出たときアイソス日記とかJACBなどが公表されたことを報道したが、その評価というか、報告書について論評したものを見たことがない。
ということで超時期遅れであるがこれについてひとこと述べておく。
実はきっかけがある。私の小説もどき「審査員物語」を書いていて、認証機関が模索する新事業について参考になるものがないかとネットで探していてこれを見つけた。もちろん公報時に私も一度読んだことがあるが、議論する価値がないと判断してそれっきりだったのを思い出した。
とはいえ「審査員物語」のネタにならないかと読み直した。結果はまったく意味がないという印象を再確認した。そう考えたのは私だけではなかったのは間違いない。前述したように経産省が公報した後、アイソス日記やいくつかの認証機関がこの報告書が出たことを伝えたが、その内容について論評したものがないことがそれを裏付ける。機関や個人のウェブサイトあるいはブログでこれについてなにかコメントがあったのかと、検索エンジンでだいぶ探したが、1・2件しかなかった。だから論評するほどの内容はなく、その内容がおかしい(間違っている)ようにしか見えないというのは私の偏見でなく、世の中の多くの人がそう思っているのだと思う。 本来なら論評する意味がないというコメントをすべきだろうが、多くの人はバカバカしくてわざわざそんなことを書かないのだろう。ともかくせっかく読んだからには最終報告書が出る前に、中間報告書の評価をここにしておくことは歴史的意義があるかと・・・いや、そんなことに意義はないと確信する。
まあ、最終報告書がでるまでの暇つぶしとしてやっつけておこうと思う。そしてもちろん「審査員物語」のネタにもという下心もある。

まず標準部会・適合性評価部会・管理システム規格専門委員会なるものが、なぜ事業競争力ということを論じるのかというのが不思議である。
本文を読むといろいろ問題があるのだが、そもそもの発想が「マネジメントシステムを持つと事業競争力がつく」という発想(思い込み)が初めにありきようだ。出発点からおかしいのだから、そこから導き出されるものがおかしいのは当然かもしれない。なぜそう思うのか?と問いたいが、報告者はアプリオリにそう信じているとしか思えない。
とはいえ、この一文だけでも突っ込みどころがたくさんある。
「マネジメントシステムを持つ」ということは、マネジメントシステムを持たない組織があることになる、いや今存在する多くの組織が持たないように思えるが、そういう組織が存在するのかどうかということが第一
そんな組織があるはずがないという意味だよ
根本問題は、報告者がマネジメントシステムとISOのマネジメントシステム規格それに基づく認証などを理解していないという可能性は大である。マネジメントシステムにはISO規格に定めるものもあるだろうし、それ以外の規格が定めるものもあるだろうし、どんな規格にも則っていないものもあるだろうし、自然発生のものもあるだろう。その辺の議論はまったくない。
ISOマネジメントシステム規格とそれに基づく認証との関係、相違についての議論もない。

ところでこれは「事業競争力」を強化しようとするものらしいのだが、それならなぜ「工業標準委員会管理システム専門委員会 標準部会 適合性評価部会」という部門が関係するのか分らない。競争力強化には標準化やマネジメントシステムが関係するというか、マネジメントシステムで競争力強化がなると考えたのだろうか?
事業競争力とはなんだろう? 事業競争力がある企業とはどんなものだろう?
ちょっとこの20年くらいの間に出現してのし上がった企業とかビジネスを考えると、グーグルとかフェイスブックなどが思いつく。彼らが標準化とかマネジメントシステムを武器として勝ち上がったのかと言えば全然違うだろう。彼らはまずものすごいアイデア、それも孤峰でなく山脈をなした新しい概念で新ビジネスを始め、それが喝采を持って世に受入られたからではないのでしょうか。
つまりこの報告書が語るような「事業競争力」では誰にも相手にされないということは、それを話題にもしない世の中はまっとうだということなのだ。
それにしても事業競争力とマネジメントシステム認証を組み合わせたというその発想はどこから来たのだろう? マネジメントシステム認証が競争力を強化したという事例を見たのだろうか。それともそう語る人、信じる人がいたのか?
グーグルの成功が、マネジメントシステムの効果ということは絶対にない!

これほど世の中で、ISO認証など役に立たない、認証しても良くならないと言われ、そもそも「ISO/IAF共同コミュニケ」にも会社を良くするなんて書いてないにもかかわらず、競争力強化のテーマにマネジメントシステム認証を取り上げた理由が知りたい。それとも委員会メンバーが企業の競争力を強化したくない、させたくないからこそ、無関係で役に立たないマネジメントシステム認証をテーマに取り上げたのだろうか?
そう考えると意味深長、それについて調査検討を行う意味があるかもしれない。いや無意味だろう。

お前はダメだダメだと語っているが、どこがおかしいのかという意見があるかもしれない。正直言って論評する価値もないのだが、おかしいところを列記しておく。

  1. 取引要件をクリアするための義務的・一時的な動機に基づき、マネジメントシステムの認証を取得するに止まっており(p.1)
    この文章が述べている「止まっている状況」こそが「ISO/IAF共同コミュニケ」が述べていることなのだが?
    つまり委員会メンバーは「ISO/IAF共同コミュニケ」を知らず、ISO認証の意義を知らないということでよろしいのだろうか?
    いやそんなことはなかろう。きっと委員会のメンバーは共同コミュニケを否定する決意であるに違いない。

  2. 本来の経営課題解決のための有力なツールとしてマネジメントシステムを位置づけている(p.1)
    すみません、認証が「本来の経営課題解決のための有力なツール」であるという根拠の提示を求めます。私、浅学にして知りません。

  3. 図表1 動的な組織と性的な組織におけるマネジメントシステムの位置づけの違い(p.2)
    報告書は動的な組織と静的な組織という二つのケースを示している。(下図左及び中)
    しかし元からのマネジメントシステムそのままというケース(下図右)という形があるのではないのか?
    そしてそれが最善、最強の形態ではないかと思う。いや、最善でもなく最強でもないかもしれないが、報告書はその存在を無視している。

動的な組織・静的な組織
著作権の問題がありそうなので、佐野研二郎の轍を踏まないように、報告書のコピーではなく、私が図を描きました。

  1. 図表5及び6 国別の認証件数割合のグラフ(p.6)
    ISO9001やISO14001認証件数が多いほど競争力が高いように文章は述べているが、その裏付けの説明はない。仮にそれが正しいなら認証件数が1位の中国や2位のイタリアが工業技術が高く、ノーベル賞、特許件数が多く、技術貿易収支が大幅黒字なのだろうか? そしてアメリカやドイツは大幅赤字なのだろうか?
    待てよ、それ以前にマネジメントシステムと固有技術は無関係のような気がするぞ!

  2. ISO9001、ISO14001の双方とも、先進国では認証組織件数が頭打ちになる傾向にある(p.7)
    前述した国別の認証件数とのつじつまはどう説明するのだろうか。もちろんそんなことを解説はしていない。

  3. マネジメントシステムのメリット(p.11)
    メリット
     @ルールの整備
     A社会的信頼性確保
     B業務改善のきっかけ
     C事業戦略の実現性
    デメリット
     @認証取得後の形骸化
     A認証取得だけでは優位とならない
     Bマネジメント成果の把握と評価のむずかしさ
     Cコスト増
    マネジメントシステムとマネジメントシステム規格そして認証と規格文言と実際の運用とごちゃまぜでどうにもなりません。
    ヤレヤレ
  4. 企業においてマネジメントシステムが役立つことは何か(p.12)
    これはアンケートの設問であるが、一体この文章は意味があるのか? すこぶる病的である 
    理解できないかもしれないから言い換えてみよう。
    マネジメントシステムを持たない企業は存在するのか?
    もうこの一文でとどめである。

  5. 企業等組織がマネジメントシステムを活用して事業競争力強化を図っていくための主要な論点について整理するとともに、マネジメントシステムを活用した企業等組織の代表的な取組事例を示す(p.14)
    「マネジメントシステム」にISO9000の定義を代入すると文章が支離滅裂に感じるのは私だけだろうか?
    なおp.14ではマネジメントシステムを有効に活用するためにはいろいろと組織が努力しなければならないと書いているが、そんな難しいものなら採用を止めた方がよろしいのではないだろうか?
    しかしここでもマネジメントシステムなるものがISO規格のことなのか、認証を受けることなのか、ISO規格以外のマネジメントシステムを考慮しているのかによって議論はまったく異なることになる。
    私にはどれなのかまったく見当もつかない。書いた人も分らないんじゃないだろうか?
    後だしの多い推理小説のようだ。

  6. 大手タイヤメーカーにおける取組事例(p.17)
    そういえばライン不良を廃棄物処理すると費用が掛かるだけでなく、不良率が上がってしまうからと従業員が持ち帰りその辺に捨てたという不法投棄事件が起きたことがある。(遠い目)
    あの会社とここに事例としてあげられた会社が同じような気がする。
    いや、気がするだけだ。
    ところですばらしいパフォーマンスを出しているけど違法の会社と、パッとしないけど遵法が徹底している会社、どっちがよいですか?
    おっと、違反しているとパフォーマンスが良いとは言わないか・・・

  7. 経営理念や具体的行動指針をマネジメントシステムによって組織内で共有することにより、製品の質向上が可能となる(要約)(p.18)
    つまりなんだ、マネジメントシステムなるものがなかった時代、まあ1987年以前としておこう、そのときは組織内で経営理念や具体的行動指針を共有できなかったということになる。本当ですか?
    松下幸之助や土光敏夫あるいは井深大なんて人々は経営理念の徹底も行動指針の伝達もできずに偉大な成果を出したということになる。つまりマネジメントシステムがなくてもよいのだろうか?
    新たな疑問である 
    しかし管理技術だけで品質が向上するとは、不肖おばQ今まで知らなかった。浅学を感じる。

例を挙げると言いながら、半分もいかないうちにやる気をなくした。
いったい委員会のメンバーの持つマネジメントシステムの概念とはどんなものなのだろうか?
少なくてもISO9000:2005の定義とは違うようだ。
そしてISO認証の意図も、ISO/IAF共同コミュニケと異なるものであることも明白だ。
となると一体何を語っているのかまったく見当もつかず途方に暮れる。
ファンタジー小説で魔法使いや妖精やドラゴンが現れるような、荒唐無稽な37ページであった。

私のこの文章は未完である。
今後、これに続く報告書が出たり、他の人の論評を見つけたらそれについて考えたことを書き加えていきたい。
ともかく審査員物語のネタにはなりそうだ。

うそ800 本日の反省
誰も論評しないような内容のない報告書に怒り狂う私はバカなんでしょう。



外資社員様からお便りを頂きました(2015.09.18)
ご紹介の中間報告を読みましたが、冒頭でトンデモな論理のすり替えがありますね。
広義のマネージメントが会社の発展にとって重要というのは否定するつもりはありませんが、その後の内容はISOこそが重要という論理のすり替えを行っております。
おばQさまも指摘されておりますが、「マネジメントシステム」は、ISO制定以前から存在しております。
越後屋が「現金売り掛け値なし」の新商法で発展したのはISOとは無関係であり、この方法は未だに掛売や値引きが前提の商売をする商圏が存在する事を考えれば、いかに画期的な事か判ります。
また江戸時代には、歌舞伎の中で商品宣伝をしたり(外郎売り)、引き札と言われる広告媒体など、江戸時代ですでにマーケンティング戦略も存在していた事が判ります。
井原西鶴の読み物を見れば、今でも通用するマネジメントの原則があふれています。
原則というのは、場所や時間が変わろうが不変で通じるものですから、ISOでも、過去からの成功したマネンジメントシステムでも共通した不変原則があれば、それを説明するのが大事な事と思います。
それについては、読んでも全く分からなかったのは、何も無いから、いえいえ 報告書を書く人がISOという枠から出られないからかもしれません。

外資社員様 いつもご指導ありがとうございます。
一読すると話の筋がずれているところがいくつもありますが、誰もそのようなことを問題としないこと、いやいや、それ以前にこの報告書そのものが世間一般(といいますのはそのタイトルからしてISO関係者だけでなく事業の経営者が関心を持つはずですよね)からなんのコメントもなかったという事実があります。
要するにだれもこんなものを気にしなかったということもありますし、読んだけど論評するまでもなかったということかもしれません。
日本の経営者なんていうと唐津一のように何でも知っているようですが、私の元上司たち、それに自分自身も良い製品を作ろう、QCDを向上させようと頑張ってきたと思います。そのときなにをしたのか、なにをしなければならないのかと考えるとマネジメントシステムだけじゃないです。教育をとりあげても通り一遍ではありません。社員といっても多様ですし、今日一日だけのアルバイトもいるし、中国残留孤児で帰国したばかりの言葉が通じない人、障害があって話せない人もいました。そういう人を使ってものを作るためにいかなる教育をするのかということを考えると、マネジメントシステムがその答であるとは思えません。答は誠意とか情熱かもしれません。
事業競争力は必要だという共通認識から始まったとして、マネジメントシステムとなった時点でおかしいぞとなってしまいます。この報告書を作った人たちの本音はなんだったのでしょうか?
それを知りたいですね。

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