ISO認証業界規模2015

15.11.23

ISO認証ビジネスの売上は私の関心事だ。いや私のような引退した者ではなく、認証ビジネスに関わっている人すべてにとって死活に関わる重要な指標だろうと思う。登録件数やマーケットシェアも重要ではあるが、市場がシュリンクしているのだからどんどん小さくなるパイ争いをしてもしょうがない。
では認証業界の市場規模とは今どれくらいなのか?
いや正確に言えば、どれくらいまで小さくなったの? なのかもしれない。
多くの業界の市場規模とか売上推移はいくつもの機関、それには公的なものもあるし民間の調査機関あるいは報道機関などが調べてネットなどに公開している。みなさんもパチンコ業界の規模とか映画の売上高推移とかデパートなどの数字を見ることが多いだろう。だが残念ながらISO認証業界の市場規模はあまりにも小さく一般人の関心もひかないようで、マスコミなどで取り上げられることはない。
そんなわけで過去に一度だけ産構審の委員会が報告書に取り上げたことがあるが、それ以降はみたことがない。

注:
産業構造審議会 新成長政策部会・サービス政策部会サービス合同小委員会(第5回)(2008)「平成20年4月22日‐配付資料4(10)」
なおこの資料の中で平成17年(2005)のJAB認定の認証サービス業の市場規模を451億としており、この時が売上としてはピークだったようだ。なおノンジャブの認証やコンサルビジネスを合わせて認証ビジネス市場規模を1000億(2005)と推定している。
なお登録件数のピークはISO9001が2006年、ISO14001が2009年であるが、登録件数の増加より審査単価の減少が早く売上は登録件数のピークより数年早くなったようだ。

もちろんJABJACB、あるいは認証機関でも大手なら調査機関などを使って定期的に調査して、それを事業展開に反映しているのだろう。実を言って私は認証制度の外部の人間だったが、売り上げ規模の推移に興味を持ったきっかけは、当時勤めていた会社に認証機関の売り込みに来た営業マンが業界の売り上げ規模の推移のデータを見せてくれたことであった。多分今世紀の初め頃で、当時はQMSもEMSもイケイケドンドンという時期であった。私は今後ますます成長が期待できますねとお世辞を言ったら、その営業マンは「いえいえまもなく売り上げが頭打ちすぐに下がってきますよ」と語っていた。当時の私には信じられなかったが、どんな分野でも営業を担当しているとそういうことは分かるのかもしれない。
だがもちろんそんな企業が調査した売り上げ推移の予測データが一般に公開されるわけはない。
ほしい情報がないとなれば仕方がない、直接的なデータがなければ近縁のデータとか参考になるものを収集してあとは推測するしかない。ということで過去ずっと継続して私はネットや認証機関の会社経歴書や環境報告書などを漁って調べてきました。さて2015年もあらかた過ぎましたので、2014年の業界売上を推測することにします。
2015年があらかた終わったというなら2015年の売上ではないのかという疑問があるでしょう。しかし2015年に出された各種資料・報告書に載っている数値は、前年までのものですから残念ながら1年遅れになるのです。

さて2015年発行の上記各種資料を私なりにまとめた結果です。

ISO認証市場規模

注1:
上図作成根拠
認証件数審査単価
1997〜2000JAB公表値おばQが各種データから算出★★
2001〜2006産構審報告書から産構審報告書から
2007〜2009JAB公表値おばQが各種データから推定
2010JAB公表値おばQが各種データから算出
2011〜2014JAB公表値おばQが各種データから推定
注2:
ここで「算出」とは包括的でかつ直接的なデータを基にしたものであり、推定とは一部あるいは間接的なデータを基にしたものをいう。
注3:
年は年度ではなく、通年を示す。

ISO認証業界の売上といってもここではJAB認定のISO9001とISO14001に限定しています。と言いますのは、ノンジャブについては調べる方法が分からず手におえないこと、また新しい認証規格が雨後の竹の子のように出現していますので、数値の連続性を保つためには古くからのふたつに限定した方がよいと考えています。
さてこのグラフをいくら眺めても「ああ、年とともに減っているんだなあ」程度しかわかりません。
参考までに私が2年前に作成したグラフは下図の通り。

ISO認証規模2013

上図とは横軸が2018年までと2015年までの違いがあるのにご注意ください。
2012年以前はもちろん変わっていませんが、2年前に推定した2012年以降の数値より今回のグラフは下方になっています。
いくつかのデータから、ISO認証業界全体の売上減少は私が予想していたより大きく、2013年を6%程度下回ったと推測します。内訳は登録件数の減少が2%、審査費用(価格)の減少が3%というところです。私は2013年より4%減とみていましたが、実際は予想よりダウンしたと思われます。その結果2014年の認証審査の総売上は300億を切ったようで、最盛期2005年頃のちょうど3分の2にまで減ったことになります。
6%なんて誤差のうちとおっしゃるかもしれません。確かに私の推定がプラマイ3%そこらあるでしょう。でも傾向はそんなに間違っていないはずです。

ところで一般に会社の財務状況は、会社経歴書を出しているか決算を公開する義務のあるところしか外部の者にはわかりません。そして認証機関にはそういう位置づけにある会社はほとんどないのが実態です。日本のほとんどの企業やNPOまで掲載している、帝国データバンク企業情報にも中小の認証機関のデータは住所、役員名くらいしか載っておらず、売上や損益は闇の中だ。しかしそれでもいろいろと情報収集すると、最終利益率はおおむね3%程度のようです。
仮に年30億売上の認証機関なら、利益が1億です。まさに吹けば飛ぶような数字です。そして年30億以上売上げている認証機関は片手ありません。JQAでさえ認証事業では70数億です。考えてごらんなさい、100社認証していて一社の売上60万として6000万です。そして100社も認証している認証機関は中堅です。認証機関の下位4分の1は登録件数が100社ありません。
ちなみにコンビニ1店舗の平均売上は1億9千万だそうです。コンビニ1店舗の売上げを出すには300社認証していなければならず、そのような認証機関はJAB認定の42認証機関(2015/11現在)中、真ん中くらいになるはずです。
もちろん売上が6%ダウンしたら即赤字というわけではありません。それなりに費用削減を図るでしょうし、多くの認証機関は認証事業ばかりでなく多角的に事業を行っています。とはいえ認証事業においてはカツカツであることは間違いないでしょう。

なお上図はISO9001とISO14001に限っていますが、ほかのマネジメントシステム認証で儲けているかと言えばそうでもありません。

まずQMSとEMS以外は絶対数が少なすぎます。
下表にJAB認定の登録件数をあげます。(2015.11.20現在)
MS規格登録件数備考
ISO900134,160 
ISO1400118,339 
ISO/IEC2700131他にJIPDEC認定 4727★★
ISO5000123 
ISO13485207 
ISO22000519 

他のMSの審査単価をISO9001より高めにするにしても5割増しとかにはできないでしょうし、現実に一日当たり審査料金はほとんど同じようです。
関係者から漏れ聞く認証機関の経営状況、審査員の賃金、特に契約審査員の日当、その他の費用の引き締めなどから、数年前に比べて確実に経営環境が悪化しているのを感じます。

これだけでわざわざ1ページ作るなよなんて声が聞こえそうですが、私にとっては大きな重要なことですし、過去2年間の状況が見えたことは大きな前進です。それにこれだけの結果を出すのも大変な作業なんです。もっとも大変と申しましてもパソコンの前に座ってひたすらグーグルおじさんに働いてもらうだけですが。まず直接的なデータがありませんから、考えられるあらゆるキーワードで認証ビジネスに関わる種々データを探すのです。この宝探しが大変なんですよね

次に得られたというか見つけたデータから、どのように売上を推定するかというのが第二のハードルです。毎回得られるデータは異なりますから、そこから売上高を推定する方法は毎回異なるというか、材料を前にどうすべきかを考えなければなりません。
ともかく今年も私にとっては有用な結果が得られました。それに私のウェブサイトを見て検討されている方がいらっしゃるようですし・・・

うそ800 本日のご注意
基となるデータをどこで見たのかとか、どのようなデータをどのように処理したのかなんて野暮なことは聞いてはいけません。いえ、自慢するのが好きな私は言いたくてたまらないのですが、そんなことを漏らせば元データがあっという間に削除されてしまいます。ただインターネットにあったとだけ申しておきます。
来年も同様にデータが手に入りますかどうか・・・

うそ800 本日の自己弁護
今日は文字数が少ないぞ、手抜きだ
そうお怒りにならないでください。確かに文字数は少ないですが種々データを取るのに時間がかかりました。審査員物語のようにサッサと書けないわけですよ。
もっともいつも無駄に長文を読まされて参っている方からは喜びの声が返ってくるかも?


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