認証の近未来(その5)

17.03.06

ISO認証とは何だろうか?
オイオイ、そう言われて考え込まれては困ってしまう。そんなこと常識ですよね。

では認証機関はISO認証をどのように説明しているのだろうか? これ調べるのけっこう大変です。
私は次のようにしました。
「ISO認証とは」をキ−ワードにして認証機関のウェブサイト内を全検索しました。そして引っかかったページを読んでどのように認証の解説をしているか判断しました。
2017年3月3日時点JABが認定している認証機関はQMS・EMS合わせて40機関ですが、とても全部調べることはできず(仕事量が多すぎて)、とりあえず22機関のウェブサイトを検索しました。

どうでもいいことですが: 1年前は41機関あったが今回一つ減っていた。どこだろうと調べたら、認定ナンバーCM037のトーマツ審査評価機構が2017年1月1日つけで認証事業を日本検査キューエイに譲渡していた。
移管時にトーマツが認証していたのはQMS 160件、EMS 96件、ISMS 53件と少なかった。だからたぶん認証事業の売り上げはコンビニ一店舗にも及ばなかったろう。とはいえそれより認証件数が少ない認証機関も片手ほどある。

デロイト トーマツ サステナビリティ株式会社 コーポレート情報
日本検査キューエイとトーマツ審査評価機構とのマネジメントシステム審査登録事業に関する事業移管について

さて調べた結果、ISO認証についての納得できる説明があったのは4社、私が期待する説明がないのが18社でした。
間違いのないように説明しておきますが、ISO認証のメリットではなく、ISO認証とは何かの説明があるか否かをチェックしました。
あっ、もちろん認定機関もみましたが、JABのウェブサイトにはしっかりと認証の説明がありました。

以下、説明書きのあったものを列記します。
 (注)調べていない認証機関が18ありますので、それはご承知おきください。

日本適合性認定協会
(JAB)
「認証」とは、製品、プロセス、サービスが特定の要求事項(基準・標準・規定)に適合していること、つまり"適合性"を第三者が文書で保証する手続きを指します。
日本化学QA(JCQA)
製品・サービス・プロセスの受け渡しを当事者である供給者と購入者の間で合意した要求事項、あるいは公開規格を基準にして行う場合、客観性のある適合性評価が必要になります。この場合は、取引当事者とは独立した第三者(Third-party)が行うことになります。「製品、プロセス、サービスが特定の要求事項に適合していることを第三者が文書で保証する手続き」を「Certification」といい、日本では「認証」という言葉をあてることにしています。
マネジメントシステム認証制度(審査登録制度)とは、「第三者審査登録制度」であり、この制度の目的は、組織のマネジメントシステムが次に示すとおりであることの、第三者による独立した実証を提供し、それによって、組織、その顧客及び利害関係者に価値を提供することにあります。
 a) 規格要求事項に適合している。
 b) 明示した方針及び目標を一貫して達成できる。
 c) 有効に実施されている。
認証機関は、組織がこの基準を満たしているかを審査し、満たしていれば、組織に対して認証証明書(登録証)を発行するとともに、社会一般に公開します。利害関係のない認証機関が認証を与えることで、組織は社会的信頼を得ることができます。この一連の仕組みが「マネジメントシステム認証制度」です。
審査登録制度とは、組織(企業、工場等)がこのISO 9001の規格に適合しているということを、審査登録機関が審査する制度で、適合している場合は「審査登録」(又は「認証」)されます。

上記はISO/IAF共同コミュニケにある認証の説明に見合って適正であるとみなす。

ISO/IAFの共同コミュニケ 「認証の目的は組織が適切な品質(環境)マネジメントシステムをもっていて、そのマネジメントシステムがISO14001の要求事項に適合していることの証明である」

ちょっとずれているかなというものは、(以下は社名を略する)
 (注)は筆者のコメントである。
というものもありました。

他は下記のようなものはISO認証の説明というよりメリットでしょう。

(注)これらは言っていることは間違っていないようですが、認証の説明ではなくメリットでしょう。

次のようになると実際に保証できるものというより、希望、願望、誇大広告に思える。それに認証しなくてもやろうとすればできることばかりだ。

ウーンとなったものは、

(注)こうなるともはやどういう意味なのか理解不能で、ナンノコッチャとしか思えない。
「世界的に認められた品質マネジメントシステム」とは何ぞや? それを獲得とは?


普通の商品なら売るものの機能や仕様をはっきりと示すはずだ。それは製品でもサービスでも同じだろう。
また誇大広告は法律で禁止されている。薬品や食品は特に表現について厳しい。最近のコマーシャルは法規制もあるのだろうし、揚げ足を取られないようにと文章表現にいろいろ逃げを打っている。
 「あくまでも個人の感想です」
 「お客様の感想であり効用ではありません」
車だって「本システムは安全運転を前提としたものです。すべての危機回避が可能なものではありません」 などなど
フィットネスクラブ だが責任逃れの言い訳ばかりする人たちばかりではない。
ライザップというフィットネスクラブでは3か月で体重が何キロ減らないと返金すると書いてある。コマーシャルに「コミットする」なんてあるのをみると、そっちのほうがISOの本家かと勘違いしてしまう。

さてISO認証は何を売るのか? そして客はそれをどういう尺度で測るのか? 万が一宣伝広告通りでなかったら返金するのだろうか?
認証機関がISO認証の本来の意図でない、結果として期待できるかもしれないことをメリットとして実現可能と宣伝するのはどうなのだろうか?
前述の という文言には「当認証機関の印象です」あるいは「実現できないこともあります」などという断り書きがないから、実現可能であるとみなされるだろう。
実現できると言って実現できなかったとき、ライザップと同じく返金するのだろうか?

待てよ、認証機関のウェブの文章を書いた人は心底そう考えているのだろうか?
その認証機関の営業担当者とか審査員はそういうことができると考えているのだろうか?
 「当認証機関の認証を受けると、品質意識の改革ができる」
 「ISO認証を受ける業務の標準化が進み、改善活動が進みますよ」と!
実を言ってそういうことを語っていた営業担当者もいたし、審査の時ではないがそう語っていた審査員も知っている。
ここまでは認証機関についての話である。
ISOコンサルのウェブサイトを眺めれば、ISO/IAFの共同コミュニケなんて引用しているところをみたことがない。みなさん「カイゼンガー」「ヒンシツガー」「モウカリマス」と語っている。
たぶんISO認証の意味を理解していないのだろう。そしてISO/IAF共同コミュニケなんて聞いたこともなく・・・

うそ800 本日の疑問
2017/3/3の報道より
Yahoo!ニュース編集部
「2/13発表のNHKの世論調査によると、民進党は前回の調査より2.3%下げて6.4%。3位の共産党が4.4%と迫られています」
野田民進党幹事長
「支持率が落ちた明確な理由が何かはわかりません」

すべて原因があって結果がある。今日は昨日の上にあり、明日は今日の上にある。
支持率が下がる理由を知らず、認証の意味を知らないならその先にある未来はたかが知れる。
ところでISO審査員研修で認証の意味を教えているんでしたっけ?



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