いつどうなっても良いようにと、暇を見ては、本棚、持ち物、衣類などなどをひっくり返し、おっくり返して不要なもの、使わないものを捨てている。
家内はそんな私を見て、老後に備えてなんて、もうとっくに老後だろうと笑う。
でも片付けも簡単ではないし、楽しみでもある。
もう何年も前の海外旅行のとき、道端で買ったTシャツが未使用のままある。息子は縦横大きく体重が私の6割増しだから、着られるはずがない。さて捨てるべきか、一度着てから捨てるか悩む。
黒い革靴なんて退職してから履いたことがないが、いつか誰かの葬式があるだろうから捨てられない。
本は捨てるべきか捨てざるべきか、判断するには再読しなければならない。
だからさっさと進むわけではない。それで暇があると持ち物をひっくり返し、おっくり返しているわけだ。
ISO14001の2004年改定のときコンサル会社が出した解説本を、捨てようかと読みなおしている。
書名 | 著者 | 出版社 | ISBN | 初版 | 価格 |
ISO14001規格★ の読み方 | イーエムエスジャパン 編集 | 日刊工業新聞社 | 4526054542 | 2005/04/20 |
出版から10年以上経ち、更にその上 規格改定があり、内容的には新規性もなく、捨てようかと思いながら読んでいたら「(審査の判断基準は)認証機関によって違うので、審査を受ける認証機関に合わせることが必要です」という文章があった。
まあコンサル会社としては、審査でトラブらないようにという親切心だろう。言っていることに文句をつけるつもりはない。だけど言っていること自体おかしいのではないかとツッコミたくなる。
我々が社会で生きていくには、いろいろな決まりごと、約束ごとがある。例えば国が定めた法律もあるし、世間の慣習もあるし、会社内の決まり事もあるし、仲間内の雰囲気もある。
余計なトラブルを起こさずに生きていくためには、罰則があろうがなかろうがルールとして確立しているものを尊重するのは当然だ。ルールでなくても、行動様式(つまり文化だ)とか言葉使いも、その社会とか仲間に合わせなければならない。それができない人は、空気が読めないとか、アスペとか言われる。
だが「この会社では地球はまっ平だと信じている。入社するならあなたも信じなさい」なんてことはありえない。私もあなた(タブン)もフラットアーサー
じゃ、そんな基準はだれが作るのかとなるが、自然法則で決まるものではないので、約束事とも調整事項ともいうが、関係者が話し合ったり、長年の経験から妥当な線で落ち着いたりして慣習となったり常識と呼ばれたりするようになる。
もちろん何事でも必要なら異議をつけても改革してもよい。だがどうでも良いことなら過去からの伝統を尊重するのも妥当な道だろう。
技術基準についてはISOって団体が国際規格を作り、我々はこれを利用する(利用しなければならない)ことになっている。
ISOとはなんぞやって、そんなこと誰でも知っている。International Organization for Standardizationのこと。おっ頭文字とるとIOSになるからISOとは違うぞ、なんて言ってはいけない。ISOとは頭文字をつないだアクロニム
ともかくISOとは世界共通な基準を作る国際機関です。もちろんISOが決めたから、みんな従えなんて言っても通用するわけがありません。世界中で使ってもらうためには、世界各国の意見を集めてまとめなければなりません。ですから東西対立の時代でもアメリカからもソ連からも、またイスラエルからもシリアからも参画して、技術基準とか、交通標識の共通化とか、車のバンバーの高さの標準化を進めてきたわけです。
⚞ | 💥 | ⚟ | |||
この絵を描くのに結構苦労したんですよ〜 出来上がりは決めてましたけど、絵にしてはつまらない。 どういう風にすれば簡単に表現できるのか考えました。 車の後ろの線 ⚟ は実は同じ文字「&H9887;」で して、左右反転して更に横方向に伸ばしました。 |
そしてまたWTO TBT協定
ひところISOMS規格を超える超ISO規格を作るなんて語っていた先生方がいましたが、彼らはWTO TBT協定のことを知らないのでしょう。今どうしているのだろう?
それからISOという名前を自分勝手に使ってはいけません。コンパクトISOなんて語っているコンサルもいますが、ISOの許可を得ているのでしょうか?
そうそう、家庭版スーパーISOとか学校版スーパーISOとか騙っていた大学の先生もいました。会計の先生が環境を語ってはいけないとは言わないが、環境を知らずに環境を語ってはいけないよね。
もちろんISO規格そのままを国内に通用させるわけにもいきません。少なくても和訳しなくちゃなりません。その他に必要なら修正して、国家規格(JIS)として制定することになります。文書が強制力を持つのは、理論的裏付けを必要とします。ISO規格のまま国内で使うなら、ISO規格を使うという法律を定めることが必要です。ISO14001では外部文書なんて言いましたっけ(遠い目)
昔は……つまり私の若い頃……寸法公差やねじなどはISO規格とJIS規格が違ったのですが、現在はほとんど同じです。JIS規格には、ISO規格を修正した場合、その旨を注意書きすることになっていますが、MOD(修正済)もNEQ(ISOと同じでない)もまず見ることがありません。
ええと、何の話でしたっけ? 年を取るとボケるからいけません。
ISO規格は世界中で使われているということでしたね。当然そのためには世界中の人が同じ解釈をしなければならないわけです。
もしISO9001やISO14001規格の解釈が人によりあるいは国によって異なるなら、日本でISO9001認証しても、欧州ではISO認証していると認めないなんてことが起きてしまいます。それでは国際標準ではありません。
ISO規格には部品仕様などもありますが、ISO9001などはマネジメントシステムの具備すべき要件を決めた標準です。まあそれは技術基準としてひとつのスタンダードを決めたということにすぎません。それを基に自分の会社の仕組みやルールを作ってもよし、取引時にそれを参照/引用してもよいというだけです。
ところが、対象組織がISOマネジメントシステム規格に適合しているか否かを判定するビジネスモデルを考えた人がいたのです。形のないものの売り買いする先物取引もありますが、規格適合の証明書を発行するという元手いらずのビジネスを考えた人は、お金儲けの才能があります。
日本国内には会社の仕組みがISO規格に合っているかどうか審査する、ISO認証機関がたくさんあります。その形態も株式会社とか社団法人とか財団法人とかいろいろです。ISO認証機関は国の機関でもなく、免許もいりませんから誰でも参入できます。
しかし私が認証機関を作ってビジネスしようとしても、世の中から信用されるかどうかわかりません。
それで認証機関を審査して、しっかりした認証機関だというお墨付き(?)を出す商売を考えた人もいるわけです。それを認定機関といいます。お金儲けに限りはありませんネ。
認定機関もたくさんあるので、世界中の認定機関が集まって団体を作りました。IAF(International Accreditation Forum)といいます。それもまったくの民間の団体です。
そこで認定機関はひとつの国にひとつと決めました。とはいえひとつの国にいくつもあることもあります。日本もそうです。なぜかはわかりません。
じゃあ認定機関を審査するのもあるのでしょうか? 認定機関を審査する組織は作らないで、各国の認定機関が相互にその妥当性(商売をしていいかどうか)を確認することにしました。
とはいえ、IAFだって認定機関だって認証機関だって、法律とか国際条約とかで決めたものではありません。
勝手格付けという言葉があります。会社の格付けを頼まれもしないのに格付け会社がすることです。認定機関を作ろうと考えたのは認証機関だと聞いたことがあります。すると勝手創設とかいうんでしょうか?
ちなみにISO9001の母体となったイギリスのBS5750の審査が始まったとき、認証機関は民間企業でしたが、それを認定したのは貿易通商産業省(DTI)でした。その後、国家機関が認定するのはおかしいと民間のUKAS
ちなみに、ISO9001認証したのは日本で早いほうだったんだよと言えるのは、DTIと書かれた審査登録証をゲットした会社のみです。UKASは1995年からで、早いとは言えません。私はモチロンDTI
JABですって! ウーン、
ISO規格はみんなのものです。だからIAFとも認定機関とも関係なく、認定を受けない認証機関を作り、ISO認証ビジネスをすることは禁止されていません。ISO第三者認証制度というビジネスモデルは特許を取ってないようです。
そして認証機関が認定を受けるためには、認証実績を積まないとならないのです。だからすべての認証機関は、認定を受けないところからスタートしなければなりません。
そんなわけで日本のISO認証している会社の3割くらいは、認定を受けていない認証機関によるものと言われています。(公になっているデータがありません)
とはいえ、認定を受けた認証機関による認証と、認定を受けていない認証機関の認証に違いがあるのか? 取引する会社が認証を認めるのかどうかという不確定要素は残ります。でもそれを言ったら認定を受けている認証機関なら信頼できるという保証もありません。
おっと、認定機関、認証機関というハイラルキーはやくざと同じ上納金制度ですから、認定を受けた認証機関のほうが名義代分高くなります。王冠マークとか富士山マークが付くと富士山のごとくお高くなるのです。その効果があるのか、よく考えよう。
そして内緒ですが、この国のISO認証は国内でしか通用しないとか、あの認証機関の認証は信用できないなんて声もありますし、認定マークは○○国のものでないとダメってこともあるのです。わけが分かりません。
やれやれ、やっと本題につながりそうです。
では冒頭でおかしいと言った「認証機関によって違うので、審査を受ける認証機関に合わせることが必要です」とはどういうことでしょうか?
読んで字のごとく、日本では認証機関によってISO規格の解釈が異なり、同じ要求事項でも何を要求するのかという見解が異なるのです。
これはで困ります。制限速度60キロと表示されていたので時速60キロで走っていたら、警官に「ここは時速60キロじゃない、70分で走る距離が60キロ制限なのだ」と言われたらお手上げです。
そんなことはないですって? あなたはISO審査員のいい加減さを知らないのです!
ISO規格に通勤なんて文言はありませんが、「通勤の環境側面」を評価しないと不適合ですと言われたことありませんか? そういや、「環境側面の評価」ってのも規格にはなかったな(笑)
あっ、もちろん人間ですから好き嫌いはありますし、それを否定できません。神様だって好き嫌いはあるのです。史上最初の殺人事件は、神がアベルを褒めたのをカインが妬んだのが原因で、古来よりこれが多くの小説のテーマとなった。
カインを知らない? 喫茶店「エデン」のマスターのアダムさんの長男ですよ、
でも世界共通の基準において好き嫌いがあってはいけません。いや好き嫌いでなくても、違いがあってはいけません。それじゃ国際標準じゃなくて○○認証機関だけの標準にすぎないじゃないですか。
1997年から2005年頃までISO14001の審査を受けることは、ISO14001規格で審査を受けることではなく、○○認証機関のISO14001の解釈で受けることでした。いや、今でも同じかもしれません。ただ2010年以降は顧客が減ってきたので、認証機関もあまりメチャクチャ言うと客が逃げてしまうので、自分の考えに合わなくても「不適合!」と叫ばなくなりました。
最近では傍若無人のジャイアン審査員を見かけないのがちょっと悲しい(嘘です)。
ですからISOコンサルは認証したい会社を指導するとき、どの認証機関に依頼するのか確認するのが最初にすることでした。そしてその認証機関の解釈に合わせて指導して、審査をトラブルなく済ますことがコンサルのテクだったのです。
不肖おばQも、半分仕事 半分趣味で無償でISOコンサルをしてました。私の場合、まずどの認証機関かを確認したのち、評判の悪い(考えがおかしい)認証機関であれば、まともな認証機関にしたほうがいいと変更を薦めました。私は山中鹿之助じゃないですから「我に七難八苦を与えたまえ」と祈願するほどマゾじゃありません。
有名な経営者が「苦労しすぎた人はひずんでいる」と言いました。私は幼少から苦労しすぎましたんで、これ以上ひずみたくありません。
とはいえ日本の認証機関は、業界系、財団法人系、外資系とありまして、多くの企業はその会社が属する業界団体が設立した認証機関に、審査を依頼しなければならないという悲しいしがらみがあるのです。業界団体に属していなくても、顧客が属している業界の認証機関に頼まなければならないことも多いんですよ。
私の知っている会社では、顧客企業から某認証機関に審査員として出向させるために、その認証機関に依頼してくれと頼まれたっていう、聞くも涙語るも涙の話を聞かされたことも……
それはともかく、認証機関に合わせて認証準備しなければならないと本に書かれるほど、わが日本の認証機関はすばらしくユニークでありオリジナリティに富んでいます。
えっと、ISO規格って国際標準でしたよね、なんか変ですね?
認証機関によって要求事項が異なるなんてアリエナイ!
あなたは審査員ですか?
そう力まないでくださいよ。あなた自身が勤め先に洗脳されている可能性が大きいですよ。
この本の中にも多数の注意事項というか、認証機関の見解の相違が載っています。
注:2017年にGoogleが全世界で消費した電力量は76憶kWh、毎年ほぼ20%増しだそうだ。とすると2020年は100億kWh(10Twh)を確実に超える。これは日本の総電力使用量の1%にあたる。大企業とはいえ、スリランカ一国と同じ電力を消費しているとは、すごいとしか言いようがない。
うちは商社だから環境法規に関わらないね、と言ってられません。商品を運んでいるトラックが交通事故で燃料が漏れたら、それも関わるという認証機関もあります。それは運送会社の問題だよねという認証機関もあります。
もちろん対象範囲は「組織が管理できる、及び影響を及ぼせる(6.1.2)」ことに限定されているわけですが、その管理できるとか影響を及ぼせるかは認証機関が判断するわけですから手に負えません。
こりゃしょうがない、審査を予定している認証機関に問合せして、御社はどこまで対象ですか?と聞くしかないですね。
そのときの回答が審査のとき変わらなければいいですけど、
「おれがISO規格だ」という二出川審判のような審査員もいるかもしれません。
私が会った審査員は「私はISOTC委員より詳しい」とのたまわっていました。実を言ってそう語った人が二人いました。一人の方は、アイソス誌に寄稿したこともあるそうです。
そのとき私はキチガイを相手にする勇気はなかったので黙っていました。私も意気地なしですね。
注:ISOTC委員とは、各国を代表してISOのテクニカルコミッティで規格を議論し策定する人たちです。もしかしてその審査員は、ISOTC委員を操っているのでしょうか?
この本には、認証機関に確認すべきことがもっといろいろ書いてあります。
認証機関に確認するのもいいんですが……そんなことより「御社はISO規格通りの審査をするのですか? それとも御社オリジナルの規格で審査するのですか?」と聞いて、独自規格ですとか、ISO規格以上の基準で行いますというご返事であれば、認証機関を変えたほうが絶対にいいです。
お断りしておきますが、私がISO審査でチャンチャンバラバラしていたのは7年前まで、残念ながら最近は審査の場にいたことはありません。ただ以前の知り合いから聞く限り、7年間で進歩はないようです。
ただ冒頭にも書きましたが、この7年間でISO認証件数は大幅に減りました。
2013年6月末 | 2020年6月末 | ||
認証件数 | 認証件数 | 2013年比 | |
ISO9001認証件数 | 33,734件 | 27,045件 | 80% |
ISO14001認証件数 | 19,398件 | 14,752件 | 76% |
そんなわけであまり小難しいことを語ると、客が「ISOなんて、ヤーメタ」と言い出しかねないので、最近ではお客様は神様まではいきませんが、審査員のほうが神様から企業と同じレベルまで立ち位置を下げてきたそうであります。
ヨカッタデスネ、何が良いのかわかりません。それが当たり前のような気もしますね……
でもさ、このような本が出されて、私のような狂犬が吠え噛みついているのに、なこと一顧だにせず、我が道を行く認証機関というのもすごいね。その姿、傲慢不遜……いやいや高貴な誇り高き精神と言いましょう。
とはいえ、それが確固たる信念なのか、周りが見えないのか、社会性がないのか? いずれでありましょうか、
あなたならどれに賭けますか?
本日のまとめ
さてこの本を捨てようか、残しておこうか……あと3年もして読み直すとまた面白い発見があるだろうか?
そのときになれば審査も少しは進化しているだろうか?
いやいや、あっしがくたばっているかも知んねーな。そんときは認証機関は乾杯してください。
本ですか? 家内がゴミに出すでしょう。
注1 |
フラットアーサー(flat earther)とは、地球平面説を唱える人たちのこと。
アメリカやイギリスにはFlat Earth Societyという団体まで存在している。 彼らは、学校で習ったとか、人工衛星からの写真とかを除いて、自分が地球を丸いと信じる証拠がないという。 まあ、そう言われると私も地球が丸いとは証明できそうありません。でも犬吠埼に行って、三方の水平線を見ると丸いなって思いましたね。直感的に地球は丸いと思います。 | |
注2 |
英単語や英文章を、短縮表現する方法は4つあるそうです。
本日は英文、英単度を短縮表現する4つの方法を勉強しました。 あっ、ご存じでしたか、すみません。 | |
注3 | ||
注4 |
UKAS(ユーカス)とは「英国認証機関認定審議会」(United Kingdom Accreditation Service)の略称。英国貿易産業省などの助成金で運営されている民間の非営利団体である。 王冠マークは富士山よりもありがたみがありそうだ。 | |
注5 |