「新しい公民教科書」

21.07.29

中学校で習う社会科は、地理・歴史・公民に分かれている。他の学科、例えば数学や英語は同じ科目を学年が進むにつれ内容を深めていくわけだが、社会は学年ごとに異なるカテゴリーを学ぶことになっていて3年生は「公民」を学ぶそうだ。

この本はなにかで広告を見て、学校の教科書の広告とは珍しいと思い買った。私は気になった本は図書館で探し見つかれば借りる、 公民教科書 なければアマゾン中古本、それもなくどうしても読みたければ新品を買う。
だが、借りたり買ったりしたものの、読まないというのも少なくない。この本も買ってはみたものの配達された頃には興味を失ってそれっきりだ。家内はそれを見て、モズの早贄はやにえと呼ぶ。
モズの早贄というのはモズという鳥がカエルとかトカゲを仕留めてもすぐに食べず、いつか食べようと生垣とか木の枝に突き刺しておくものをいう。カエルもトカゲもすぐに干物になるが、モズはどこに置いたのか忘れてしまい、食べられない干物がけっこう生垣で見られる。
そんなことを書くと私は無駄使いする人間に思われるだろうが、実際その通りである。

退職後は図書館を利用するようになり本を買うことは少なくなったとはいえ、やはり本は増えていく。それでお掃除するたびに本棚を見て、読んでもためにならなかったとか、もう十分理解したと思う本は捨てる。
この本はずっと本棚の未読の位置にあるので、ともかく捨てる前に一度は読もうという気になった。いつ買ったのかとアマゾンの注文履歴をみたら、今年のお正月だった。半年以上も本棚でほこりをかぶっていたことになる。


書名著者出版社ISBN初版価格
新しい公民教科書小山常実自由社97849089791322020/05/271980円

教科書の値段は1000円もしないようだが、これはそれを一般販売用にしたもので、教科書に50ページほど増補されている。増補部分を除き、教科書部分は220ページだが、生徒が自分の考えを記入するページもあり、読む部分は200ページくらいだろう。

さて、本を開く。すると表紙の裏から文字が印刷してある。ここも市販本で追加されたようだ。
表紙の裏を読むともう冒頭から突っ走っている。項のタイトルが「日本国家の解体を進める公民教育」とある。面白いじゃないか! これは期待できる。

目次を開くと次のようなタイトルが並んでいる。

  1. 現代の自画像
  2. 個人と社会生活
  3. 立憲国家と国民
  4. 日本国憲法と立憲的民主主義
  5. 国民生活と経済
  6. 国際社会に生きる日本
  7. 持続可能な社会を目指して

広辞苑(第6版)で【公民】をひくと

  1. 私有を許されない国家(天皇)の人民。律令制における良民。
  2. 国政に参与する地位における国民。市民。
  3. 中学校社会科の一分野。また、高等学校の一教科。
一般的な意味は 2.の国民が政治に関わる権利義務ということだろう。

中学校の教科書の目次を見れば、一般的な公民の意味だけでなく、地理や歴史を除いた、政治だけでなく現代社会を生きていくための基礎知識と言えるだろう。
目次からわかるように大人なら日常生活とか仕事などで必然的に関わり知っていくことが多いから、70歳の私が教科書を読んで初めて知ったということはない。また書いてある内容は一読すれば理解できる。

実を言って私が家を出てから印鑑登録とか借家契約とか婚姻届けとか、手続するたびに学ばねばならないことはたくさんあった。そういうことを包括的に教えてくれる科目があればよいのにと思ったことは何度もある。
しかし私が中学・高校のとき、公民のような科目はなかったから、教育内容がよくなっているのは間違いない。微分積分ができても、保証人の責任とかお金のことを知らずに社会に放流されるのはかわいそうだ。

令和3年の中学公民の検定教科書合格教科書は6点(注1)ある。同じ仕様で書かれしかも文部科学省の検定合格となれば、皆同じことを書いているだろう。しかし同じ事実を書くにしても、書き手のスタンスによってニュアンスが変わることは多い。
この本の書き手は、「日本は歴史の長い国である、日本は素晴らしい国だ、日本の国は先祖が一生懸命作ってきたものなのだ」ということをはっきり打ち出している。
私はこの本を読んで大いに気持ちが良い。そしてそれはサヨクと呼ばれる人たちにとっては、大いに気分が悪いであろうことは間違いない。


記載内容を解説する意味はないので、私が感じたことを羅列する。
項目のタイトルは教科書の項目名を示す。(p. )は教科書でのページを示す。

貨幣といってもいろいろな種類があります。
商品貨幣(実物貨幣)
Commodity money
お塩牛商品貨幣とは塩、家畜、宝石、穀物などはそれ自体に価値があり、交換手段として使われた。当然ながらそれは家畜化とか農業発祥以降と考えられる。
パチンコの景品もこの一例といえる。
金属貨幣
金塊や金貨時代が下ると、経済発展により持ち運びとか均一性から金属が使われるようになった。
メソポタミアでは初め銅が、後に銀が使われた。エジプトで一定の重さの金塊が使われた。前7世紀頃それはコインに進化した。
代表貨幣
Representative money
兌換紙幣代表貨幣とは価値のあるものと交換できることの証書であり、兌換紙幣、預かり証、借用証、支払いを約束した手形などがある。
昔の兌換紙幣には「この券と引き換えに銀貨を渡す」と書いてあった。
名目貨幣(法定貨幣)
Fiat money
1ドル札名目貨幣とは政府などが貨幣とすると宣言することで価値があるとみなされたもの。
現行の貨幣のほとんどは名目貨幣である。

注1:Wikipedia History of money 他を参照した。

注2:日本語で代表貨幣の原語は英語でRepresentative moneyである。そもそもrepresentativeとはなにものかを代理するとか代表するという意味で、ここでは金や銀にいつでも交換できる紙幣や借用証を「金銀の代わりの通貨」と呼んだのである。

注3:「代表貨幣は名目貨幣と同じものである」という経済学の入門書もあるが、これは明白に異なる。今現在、オーセンティックな兌換券がないからそういう言い方をしたのかもしれない。しかし債権や約束手形なんては立派な代表貨幣であり、それらは誰が見ても名目貨幣ではない。

今流行のビットコインなど仮想通貨はどこに当たるのかとなると、更に下段に追加しなければならない。ちなみに仮想通貨は国家とか中央銀行の裏付けがなく、まさに砂上の楼閣で信用よりも期待だけで成り立っている裸の王様である。
日本の円(日本銀行券)は不換紙幣ではあるが、信用が疑われ円安になれば政府はドルやユーロで円を買い支える。要するに円を持っている人が損しないようにする。他方ビットコインの信用が疑われても、上がるのを期待して買う人はいても、買い支える国家はない。まさにバーチャルである。

「貨幣」について「公民」で教えるのは筋が違うという声もありそうだ。しかし中学校のほかの教科で該当するものは見当たらない。数学でお金のこと、保健体育で健康保険を教えるというのも変な話だ。
学校で暮らしていくために必要な知識、例えば戸籍のこと、生活保護、結婚・離婚、犯罪になる行為、詐欺にあわない方法を教えるべきだし、貨幣についても教えるべきだ。知識は力だ、生活に必要な知識は生きていくための力である。



この教科書で補強してほしいことをあげると、家族と家庭の重要性をもっと書いてほしい。 家族 家族は互いに愛し合い助け合うことも書いてほしい。

ナチスが行った生まれたばかりの赤ちゃんを母親から離して育てる実験、旧ソ連や共産主義国家が行った子供たちを家庭から引き離し集めて暮らして教育する、ポルポトが行った大人は不要だと殺してしまう、そんな「実験」により、我々は人は親から愛情としつけを与えられて育てられなければ<人間>にならないということを学んできたはずだ。
そういう当たり前で大事なことを捨ててしまえと語るのは人間じゃない。まずは家庭における愛情としつけを公民の一番のテーマとしてほしいと願う。

それ以外にも盛り込んでほしいことがある。
災害時の避難義務、助け合いなどの心構えもあるし行動規範もある。避難しろと言われてもそれを無視して災害に合う、それを助けようとした人が被害にあう。ばかばかしいことだ。
避難することは権利でもあり義務でもある。それこそが一般人に求められる最重要な災害対策ではなかろうか?
同じようなことだが、感染症が流行しても、自分はワクチン接種は嫌いだと予防注射を受けないとか、他人がワクチン接種するのを妨害したりする、反社会的人間もいる。そういった輩を懲らしめることも必要だ。

それから諸外国との比較がいくつも載っているが、多くは比較対象としてアメリカ、イギリス、フランス、ドイツを挙げている。西欧ばかりが外国ではない。アジアもあるしアフリカもポリネシアもあるのだ。ここはぜひとも中国、韓国、北朝鮮を加えるべきだ。
自由も権利も豊かさも日本がどの辺にあるのか、近隣諸国と比べてどうなのかをしっかりと認識させる必要がある。
韓国人や中国人と結婚して男尊女卑やDVにパワハラに泣いた人は一般人、芸能人、スポーツ選手を問わず多数いる。そういう悲劇を防ぐのも公民の役割だろう。

お花畑という表現がある。平和ボケという言い方もある。この世界では日本がしかけなければ戦争はないというお考えだ。なぜそんな浮世離れした発想を持ち、危機感がない人がいるのかといえば、ズバリ教育のせいだ。
小学校から「戦争をしたのは日本だ、日本は悪かった、日本以外はみないい国だ」そんなウソを12年も教えられれば、お花畑な人間ができあがります。

日本は戦争に負けてから75年、一度も戦争をしていません。しかし中国は戦争や内戦を20回くらいしています。北朝鮮も韓国も外国と戦争をしたし、多くの国民を虐殺した。台湾(中華民国)は中国(中華人民共和国)にあわや占領されるところまで攻められた。そういう国に住んでいればお花畑にはなりません。
中国や北朝鮮そして韓国は、日本がお花畑で喜んでいます。
いけません

残念ながら日本には強力なサヨクマスコミがあり、日教組があります。彼らは毎日、中国はすばらしい、北朝鮮は地上の楽園、韓国に謝ろう、日本はダメな国と洗脳し続けています。
だから自衛隊と米軍の共同訓練を「中国の許可を得たのか」とか、日本人を誘拐しいまだに帰さない北朝鮮に「ワクチンをプレゼントしろ」と叫ぶ政治家がいるのです。
そういう人々をおかしいぞと言える人が多くなってほしいと願います。


うそ800 公民をひとことで言えば

私は親に孝行し、兄弟は仲良く、夫婦は助け合い、友とは友情を深め、誰にでも親切にし、礼儀を忘れず、勉学に仕事に励み、法と道徳を守り、人格向上に努めます。
そして、万一非常事態が起きたときは、国と近隣住民のために働きます。

この元ネタが分かった人に……プレゼントはありません。




注1
注2
「ケネディ名言集」細野軍治(編)、講談社、1964

注3
共産党綱領において共産党は「天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、 将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである」と記述しており、現行の憲法は解決しなければならないものと認識していることを示している。

注4
「続・アメリカの中学教科書で英語を学ぶ―ジュニア・ハイのテキストから英語が見えてくる」林 功、ベレ出版、2004

注5
「2000万円問題」とは2020年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書で「年金だけでは老後30年間で約2,000万円が不足する」という試算がされたことにより、野党やマスコミがそれでは問題であると騒いだことをいう。




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