ISO9001認証は消費者にも役立つのか?

22.01.20

ほとんどのISO認証機関は情報誌・広報誌を定期的に発行している。しかし多くは、その認証機関から認証を受けている企業に対する連絡事項とか各種研修の宣伝がメインである。そしてハードコピーやpdfの提供も認証を受けている企業にだけに公開というところが多い。

それに対してJQAの広報誌は、一般向けのISO認証全般についての動向などを載せていて面白い。更にJQAはそれを過去より一般公開している。これは情報公開という意味でも内容的にも、他の認証機関と差別化する素晴らしいことだと思う。
JQA(日本品質保証機構)の情報誌「ISO NETWORK」のVol.35が昨年末に出た。
この文は、それを読んだ感想である。


今回の特集は『身近な日常生活でのISOマネジメントシステムが担う役割』とある。ISO認証も一般人の購買活動に使われるようになったのかと興味を持って読んだ。
特集を読んだ結果、私は大いに違和感を持ったのである。以下、疑問点について考えたことを書く。

注:以降、引用部はすべて紫文字で記し二重鍵括弧『 』で囲む。
本文の引用については法律、判例を根拠にしている(注1)


第一部
第一部はJQAが(公益社団法人)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(以下NACSと略す)の幹部へのインタビューである。


第二部
第二部はJQAによるISO認証と消費者の関わりの説明である。


本文でなくカラムの記載内容について気になったことを挙げる。

以上、疑問を感じた主な事項について述べた。細かい言葉の使い方で定義と違うんじゃないかというものはいくつかあるが、まあ気にしないことにした。


うそ800 本日の残念

ISO NETWORKを読んで残念だと思ったのは、ISO認証の意義と、BtoCにおける品質保証の意味合いがどう考えても変なことだ。
おっと、タイトルが『ISO9001認証は消費者にも役立つのか?』だから、それこそがこの特集のメインなのだが。




注1
引用についての法規制は、著作権法の第32条に
「公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。」とある。
また最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」で以下の通りとされる。
  1. 他人の著作物を引用する必然性があること。
  2. かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
  3. 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
  4. 出所の明示がなされていること。(著作権法 第48条)
注2
ISO規格は方針を暗記しろとか要求していない。
規格が要求しているのは「組織内に伝達する(旧版では「周知する」)」ことである。
2015年版で伝達と訳され以前は周知と訳されていたのはcommunicateであり、その意味はto express your thoughts and feelings clearly, so that other people understand them、あなたの考えや思いを組織のメンバーに伝え理解させることである。
それは経営者の考えを知らしめてそれを実践させることが方針を周知/伝達することだ。壁に張ったり印刷したカードを配ることではない。
実際問題として印刷したカードを配るより、従業員それぞれがなすべきことを教え実践させることははるかに難しい。

注3
ISO規格では審査における見逃しを容認している。
ISO17021-1:2015「適合性評価-マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項」
4.4.2項の注記
いかなる審査も、組織のマネジメントシステムからのサンプリングに基づいているため、要求事項に100%適合していることを保証するものではない。

注4
「ほしょう」の漢字によって意味が異なる。
補 償損害補償、遺族補償、災害補償、補償金など、損失・損害を補う・償うこと。
保 証身元保証、品質保証など、間違いないと請け負うこと。
保証したことが事実と異なっても、それによって生じた損害を補償しない。
保 障安全保障、警備保障など、外敵から守り被害を受けないようにすること。




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