何年続けば良いのですか?

22.02.24

お断り
本日の文章は長いです。お暇なときお読みください。あとから文句を言われても困ります。

本日はタイトルそのものズバリ、それ以上でもなくそれ以下でもない。
地球温暖化が大変だあ〜、オイルピーク(注1)は過ぎた〜、電気自動車のバッテリーを作るための希土元素が足りない、リン(注2)が枯渇して肥料が作れません……
世の中大変だよね。科学者も、政治家も、技術者も、農家も、頭抱えて困った、困った。


人間は欲深く昔から不老不死を願った。不老とはいつまでも老化しないことで、不死とは死なないこと。それを真面目に考えている人もいて、不老不死の両方を実現することは不可能だそうだが、片方だけなら実現可能らしい。
体が劣化しても死ぬことだけは回避することができるのか、それともそれほど寿命は長くないが死ぬまで20歳の若さを維持できるのか、どっちなのかは聞き洩らした。

まあ生物の個体としては不老不死を達成するのが困難なのは明白だろうけど、個体でなく先祖と子孫まで対象を拡大すれば、家系は永遠に続くことは可能かもしれない。そして多くの人は、子孫が永遠に続いてほしいと願っているようだ。

私の場合、もう孫が生まれる可能性はゼロだが、それだけでなく私の甥も姪も子供がいない。だから私の血統はもう断絶決定である。家内の家系には大甥(姪や甥の息子)も大姪(姪や甥の娘)もいるが、親である家内の姪から既にお断りが来ている。

伯母さん、お断りします 「伯母さん、頼まれてもお宅のお墓は面倒見られないからね。息子はじいちゃん・ばあちゃん(義弟とその嫁)のお墓と、主人(姪の夫)の両親の家の4つの墓守をしなくちゃならないのよ! 伯母さん家のお墓までは無理だわ」
 日本で少子化が進んでいるのは間違いありません。

皆さんは自分が何歳まで生き永らえたいのか、自分が死んでも自分の血が続いてほしいと望むにしても、いったいどれほど、つまり今から何年後とか何世代まで子孫が続くことを望んでいるのでしょうか?

日本の国歌「君が代」には「千代に〜八千代に〜」とあります。「君が代」は万葉集(7世紀)に載っているとか古今和歌集(10世紀)とか言われる。ともかく大昔だ。元々は天皇陛下ではなく、一般的なお祝いの席で長寿祝福を歌ったものという。昔から長寿そして子々孫々まで続くことを幸せと考えていて、そうなることを願ったのでしょう。
ところでふつう世代(generation)といいますと30年ですから、千代なら3万年、八千代なら24万年、まあ……とんでもなく長いですね。
では本日のお題である、何年続けばいいのですかの始まりです。


モロッコで見つかった30万年前の遺骨が、今のところ最古のホモサピエンスとされている(注3)8000代前どころか、1万世代前になります。
当時はまだ日本にホモサピエンスは到達していない。それどころかホモサピエンス以前のヒト属も日本には来なかったらしい。モロッコにいた我々の祖先は、8千世代後に人類が栄えているようにと願ったのでしょうか?

日本の最古の人類の遺跡は38,000年前だそうです。ほぼ1200代前になります。そのときの人たちが子孫は千代後も栄えてほしいと願ったかどうかわかりませんが、願いは叶ったようです。
とはいえそのとき彼らがどんな暮らしをしていたのか定かではありません。寒さや病気におびえひもじい暮らしをしていたなら……たぶんそうだったでしょうけど……子孫の歴史が長く続いてほしいと願わなかったかもしれません。


昔の人の暮らしぶりがわかるのは縄文時代以降です(注4)
竪穴住居 当時どんな暮らしかというと、住まいは竪穴住居が基本ですが末期には掘立小屋もあったらしい。掘立小屋というと粗末な建物に聞こえるけど、柱と梁がある現在と同じような直方体の部分の上に屋根が載っている建物で、竪穴住居より進歩した建物である。
しかしまだ基礎石がなく、柱を直接地中に埋め込む形式(掘って立てる)なので、ときが経つと腐ってしまうから長持ちしない(注5)

衣類は麻やカラムシなど植物の繊維を編んで布にしていた。縄文時代の縫い針が出土しているそうですから、単に布を体に巻き付けていたのではなく、体に合わせて裁断して縫製していたのでしょう。縫い針とかボタンは文化発展レベルの尺度らしい。

食べ物は貝塚などから研究されて、木の実、鹿やイノシシ、貝類など豊かな生活だったといわれる。末期には稲作をはじめ農耕を行っていたという。 土器はもちろん縄文土器が使われていて、炊事には土を掘ったかまどで行ったという(注6)

当初は縄文土器をどのように使ったのかはわからなかった。それが1932年千葉県船橋市の飛ノ台史跡で当時のかまど跡が見つかり、かまどの形状、土器の使い方が分かったという。
飛ノ台史跡は縄文時代だけでなく、古いほうは旧石器時代(紀元前14,000年以前)、新しいほうは古墳時代(BC2,300〜AD700)まで、継続してヒトが住んでいた遺跡が見つかっている。飛ノ台史跡にヒトが住んでいた期間は、八千代にも千代にも足りないが、500世代くらい続いたことになる。


もちろん日本最古のホモサピエンスとか飛ノ台史跡でかまどを使っていた人たちが、今の我々の祖先につながっているという保証はない。人類はアフリカを出て世界中に広がったが、移住していったグループの多くはさまざまな災厄で絶滅している。ヒトに限らず生物の生存は、カットアンドトライ(行き当たり場当たり)というか、成り行き任せでうまくいけば儲けものというレベルだったのだろう(注7)

なにしろ生命誕生以来 地球上には5250万種類の生物が出現したが、同時期には150万種程度しか存在していなかったという。つまり個々の種は1000万年程度のインターバルで交代してきたという 。
粗製乱造と言ったら創造の神様に叱られるかもしれない。上品に言えば生物の適応性の試験をしていたに違いない。


ともかく八千代前の過去は霞んでよく見えないが、人が実在したことは間違いない。そして幸いにもホモサピエンスが発祥してから我々まで八千代もの期間、連綿と続いてきたのも事実だ。
では未来はどうなのか?


最近は「持続可能」なんて言葉がもてはやされている。「持続可能」とは日本語というか漢字の持つ意味からは、「長く続くことができる」あるいは「いつまでも続く」という意味になる。
だが環境とか政治の世界では英語の定義を基にしている。それも古くからある定義ではない。たかだか30数年前に「環境と開発に関する世界委員会」というものがまとめた報告書「われら共通の未来(注8)の中に記述されたものである。
そこでの持続可能の定義は「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たす経済」であった。
単に長く続くのではなく、現生世代も豊かに、将来世代も豊かに暮らしたいとは、まあ欲深なことだ。不老不死よりも更に過大な望みだ。
「金の斧 銀の斧」というお話がイソップ物語にある。人間欲深いとろくなことがないというお話である。

SDGs 最近では持続可能がどんなものかについて、細かく議論され(皮肉だ)、SDGsなんて言われるようになった。SDGsとはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、17もの項目で目標を達成すべしとなった。それらが満たされなければ持続可能ではないというのだ。
贅沢極まれりと私は思う。いや本音は実現できるはずがないと思っている。

そして最大の疑問だが、そんな豊かでユートピアの生活を実現したとして、いつまで続けるつもりなのだろう?
ブルントラント報告書でもSDGsでも、「○世代の期間そのような暮らしを実現したい」とは語っていない。彼らの望みは「我々の子孫が永遠に」ということなのだ。永遠とは終わりのないことだ。どう考えたってそんなこと不可能だろう。


今、持続不可能とする障害としてどんなことが考えられるだろうか?

■宇宙の終わり……170億年後
まずこれは絶対に超えられない壁だろう。だって我々の存在する世界がなくなっちゃうんだよ!
この宇宙はビッグバンで誕生したといわれるが、誕生したからには当然寿命があると考えられている。それは今から170億年後らしい。宇宙に寿命があるのは納得できなくても確かに終わりはあると思うだろう。
じゃあ宇宙の終末はどうなるのかといえばわからないらしい。ケイティ・マックという学者が「宇宙の終わりに何が起こるのか(注9)という本で、いくつかの予想される終末を書いている。

その予想が正しいのかそうでないのか私は分からない。ただ分かることは、そのときまで人類は生き延びていないだろうということだ。
持続可能性とかSDGsを語る人は、そのときまでホモサピエンスは生き続けると考えているのだろうか?
いや持続可能に終わりはないから、宇宙がなくなってもホモサピエンスは生き続けると考えているのだろう。

もしそう考えているなら、地球温暖化とか資源枯渇なんて細かいことよりも、宇宙の終わりを超えて生き続ける方法を考えているはずだ。ぜひ教えてほしい。


■太陽系の終わり……60億年後
宇宙が終わる前に太陽の寿命は尽きる。太陽の寿命が尽きてもホモサピエンスは生きながらえる、あるいは太陽系が消えても生きながらえたいということでしょうか?
太陽の寿命が尽きると、地球が得るエネルギー源がなくなる。ホモサピエンスが自分たちでエネルギー源を確保しなければならない。

星(恒星)はものすごく大量のガスが集まって、その重力で自分自身が圧縮して核融合を始めたものです。ガスが足りないと木星のように自分で発光しない惑星というワンランク下の身分になる。
さて核融合をしてめでたく恒星になった星の人生というか星の一生は、集まったガスの量で決まってしまう。
恒星を作るガスが多ければ核融合が早く進み寿命は短い。ガスが少ないと細く長く生きる。ちょっと直観と真逆だ。
ということで、太陽の寿命は私たちの寿命よりも正確に予測されている。

もちろん老いた太陽系を捨てて、生まれたばかりのG型の星を見つけて移住するのもあるし、恒星の放射エネルギーに頼らず物質を直接エネルギーに変換する方法も考えられる。
ともかく太陽系の寿命を超えて生きながらえるには、太陽系を脱出して新しい星を探すか、 宇宙船 あるいは太陽に頼らずエネルギーと物質を自給自足できる技術開発が必要だ。
60億年後には、恒星間旅行なんて実用化されるているから心配無用なんて言ってはいけない。その前に、60億年後まで生き残れるかどうかが重大だ。


■アンドロメダ星雲との衝突……45億年後
星雲同士の衝突はあまり重大ではないという人も多い。なにしろ銀河系にしてもアンドロメダ星雲にしても、スカスカですれ違っても星と星がぶつかるなんて、めったに起きないらしい。
とはいえ、星間物質同士の衝突によって電磁波の発生があり、当然それは宇宙線となるわけで、それによる生物への影響が心配らしい。
45億年後に生きているホモサピエンスの健康が心配だ(笑)。生き残っていなければ心配することはないが。
おっと、持続可能性を論じSDGsを語る人たちは、当然人類がそのときも生きていると考えている。きっとアンドロメダ星雲との衝突対応も考えているに違いない。
真面目にそれを考えているなら、地球温暖化なんて小学校どころか幼稚園の入園試験程度のものだろう。じゃあ地球温暖化なんて心配することはないね。


■太陽の膨張……40億年後
太陽の寿命が尽きるまで太陽系は今のままで存在できるのかとなると、そうはいかない。
太陽の寿命が来る前に、太陽のエネルギーの元である水素が核融合でヘリウムになるにつれてヘリウムが核融合を始める。それにつれて太陽は今よりどんどんと大きく膨張していく。以前は地球の軌道くらいまで大きくなって地球は太陽に飲み込まれるといわれていたが、最近ではそれほど大きくならず金星の軌道くらいまでと予測されている。とはいえ超巨大になった太陽に焼かれて地球は今の水星のようになってしまう。
人類どころかすべての生物も焼け死んじゃう。
太陽系の終わりまで待つことなく、新しい星を探して引っ越したほうが良さそうだ。

さてSDGsを語る人たちは、そのときでも地球では持続可能な暮らしをするつもりだろうか?
もしそうなら、地球温暖化どころか、太陽すぐそばで暑いところでも暮らせる方法を考えているのだろう。
あるいはその時には人類は死滅するとお考えならば、いつまでを持続可能と想定しているのだろうか? その時点を教えてほしい。


■海洋の消滅……10億年後
丸山茂徳という先生のものすごいCGの「地球そして生命の誕生と進化」がYouTubeにアップされている。
書籍もあるが、地質学の研究結果、地球はどんどん冷却してきており、10億年後になると、マントルが冷えて今のような地球内部の対流が止まり、いろいろあって海の水が地殻に吸い込まれてしまうという。
その結果、もう地球表面に生物圏が存在できなくなるという。
地球の生命は水とたんぱくである。水がなければ地球型生命は死に絶える。
持続可能なんて永遠どころかあと10億年しか続かないかもしれない。


■ホモサピエンスの種の寿命……680万年後
これは学問的な根拠があるわけではない。過去に発生し滅亡した様々な種が存在した期間から、ホモサピエンスがあとどれくらい生き残るかを推定したのが680万年だそうだ(注10)
恐竜は子供たちのアイドルで、どんな恐竜がいたか小学生に聞けばトリケラトプスとかプテラノドンとかプラキオサウルスとか答えてくれる。だが実際には同時期に生存していたというのは意外に少ない。
大繁栄した生物でも長期的に見ればひとときの栄華であり、永遠に栄えた生物はなく、滅ばなかった生物もいないのだ。
ホモサピエンスが生れてからまだ30万年なら、680万年は無限のように思えるが、持続可能性から言えば十二分に不満だろうねえ〜


■氷期……1000年後
実は今は氷河時代なのだ。北半球と南半球の両方に氷床(注11)があれば氷河時代というそうだ。今現在、世界にはいくつも氷河がある。だから氷河時代である。
もちろん地球上に氷床のない時代もあったし、これからもあるだろう。地球上に氷床がない時代を温室期という。もちろん温室期は今より暖かかったというか、暖かいから氷床がないのだ。

地球温暖化と氷床の有無は関係ない。地球温暖化とは単に温かい時代になることではない。地球温暖化は条約や法律で明確に定義されている。
「この法律において「地球温暖化」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表、大気及び海水の温度が追加的に上昇する現象をいう(温対法 第2条)」
つまり「人間の活動によって『温室効果ガス』が大気中に増えて、その温室効果によって地球の気温があがること」です。
単に地球の気温があがることではないし、また人間の活動(暮らしや生産活動)によって温度が上がることでもない。人間が温室効果ガスを出して、それによって地球の温度があがることをいうのです。
太陽の活動が活発になって気温が上がっても、火山爆発で地球の気温が上がっても、人類が大量のエネルギーを使って気温が上がっても、それは地球温暖化ではない。
もちろん前述した太陽が寿命の末期になって膨張して、地球を焼き尽くしても温暖化ではありません(キリッ

話を戻す。
現在の氷河時代(第4紀氷河時代)は260万年前に始まり、今も氷河時代である。氷河時代といっても、とても寒い氷期と少しゆるんだ間氷期が繰り返し、今は幸い間氷期である。
氷河時代というと一面の銀世界を眺める原始人の絵を思い出すだろうが、あれはヨーロッパとか北アメリカの一部地域である。そもそも食物連鎖が成り立たないほど寒ければ生き物は生きていけない。氷期の気温は現在より6℃くらい寒かったという。たった6℃といってはいけない。東京と札幌の平均気温の差はだいたいそれくらいだ。

最高最低気温(1991〜2020年の平均)気象庁データによる
時期1月7月
最高気温最低気温最高気温最低気温
東京9.8℃1.2℃29.9℃22.4℃
札幌-0.4℃-6.4℃25.4℃17.9℃

東京が札幌の気温になっても寒冷地用の稲なら稲作はできるだろう。しかし札幌が今より6℃下がったらもうお米は作れない。 お米
日本のお米収穫ランキング1位は新潟県ですが、2位は北海道で全国の6.6%を作っています。もちろん青森から福島までコメどころで、北海道と東北で全国のお米の34%を占めています。これがゼロになれば……大変です。
もちろん影響を受けるのは、日本だけではない。気温が6℃変われば世界地図が変わります。

ところで今は氷河時代ですが、間氷期も終わって次の氷期になるのはいつかというのは重大問題です。時期については諸説あります。既に次の氷期に入っているが人間の排出したCO2による温暖化で寒くなるのが遅れているという説もあり、明日にも氷期になるという説もあり、いずれにしても1000年以内には間違いなく氷期になるといわれます。

だいぶ余計なことを書いたが、要点はひとつだ。氷期に入っても持続可能性は大丈夫なのかということだ。
寒いときには何よりも暖房が必要だ。薪、石炭、石油、電気、簡単に言えばエネルギーだが、それはどこから調達するのか?
次項以降に出てくるが、化石燃料が枯渇するのは氷期に入るより間違いなく早いだろう。
次の間氷期まで生き残らないと持続可能性を議論する必要がない(笑)


■資源枯渇……30〜150年
まず懸念されているのはエネルギー枯渇だ。いま日本で使われている一次エネルギーは石炭、天然ガス、原油がほとんどを占め、わずかに水力そして微々たる原子力です。
えっ、再生可能エネルギーですか? そんなのもありましたねぇ〜(鼻ホジ

日本の一次エネルギー構成
日本の一次エネルギー

注:一次エネルギーとは加工される前の状態のエネルギーで、石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱など。
使用されるときは電気とかガソリン、熱などに変化させて供給される。

石油や石炭は昔の動植物が変化したものと言われ化石燃料とも呼ばれる。石炭はシダのような植物が地中に埋まり内部の熱と圧力で変化したというのは、その姿かたちから間違いないようだ。石油が本当に昔の動植物からできたのかはわかっていない。
ともかく石油も石炭も有限な資源であることは間違いない。仮に今生えている森林が石炭になることがあっても、それには3億年くらいかかるだろうからとても眼前の資源枯渇には間に合わない。

資源がいつまで持つかは消費量や今後発見されるものなど不明なことがあるからはっきりしない。そういうのを研究するのを資源経済学という。
不明なことは多いが、エネルギーがあとどれくらい持つのかは概ね次のように推定されている。

一次エネルギーあと何年もつか
石油50年
天然ガス50年
石炭130年
ウラン130年

前項で述べたが地球温暖化とは単に気温が上がることではなく、人間が排出した温暖化ガスの影響で気温や海水温が上昇することだ。じゃあ資源枯渇してCO2が止まれば地球温暖化が止まるのかといえば、そうとも言えない。既に排出された温暖化ガスにより気温上昇が継続すれば温暖化は止まらない。とはいえ誰も本当のところはわからないのだから心配してもしょうがない。

ともかく宇宙の終わりを心配するよりも先に、エネルギー枯渇を対策しなければならないようだ。

おっと、大事なことが漏れていた。
エネルギーだけでなく資源全般に枯渇が予想されている。
鉄、希土元素、リンもうありとあらゆるものが掘りつくされなくなってしまう。


まず金属を見ると、概ね次のように推定されている。

元素名あと何年もつか
アルミニウム156年
36年
117年
ニッケル46年

鉄なんかどこにでも転がっているだろうとおっしゃるか? 確かにどこにでも転がっている。そもそも鉄はクラーク数(注11)が4.7、順位で言えば堂々の第4位だ。土の5%が鉄だと思えば足りないはずはない。
だけど今現在の鉄鉱石は海水中で酸素と鉄イオンが結びついた酸化鉄で、不純物は少ない。屑鉄を元にリサイクルしようとすれば、最初に鉄に作られたときに調整された種々の金属が残り、純鉄には戻らないから必要とする性能を持つ鉄にすることは難しい。

同じ意味で、鉄やアルミの性能向上のために微量加える金属を、取り除くこともリサイクルすることも困難極まる。


金属でないがリンは農業継続のために極めて重要だ。リンは元素だから消滅するわけではない。しかし自然界に希薄に存在していても収集するのは不可能だ。金は海水に大量に溶けているが、取り出すのに金の値段より費用が掛かるから誰もしない。
海鳥 今使われているリンは、南洋の島々で海鳥の糞が何万年も溜まったものを掘り出して使われている。それはあと130年で掘りつくしてしまうといわれている。
肥料に使われたリンの多くは川に流れ、その栄養分が藻を生やしたり、飲料水に悪さしたりすることも多い。そして肥料は農産物になり人に食べられ下水に流れ、最終的に皆海に流れてしまっている。
それは再び魚の体になり、海鳥が食べ糞をして、やがてリン鉱石になるはずだが、たぶんその頃には人間は死滅しているだろう。


■地球温暖化……今?
大変だ!大変だ! 地球温暖化で人間は滅亡だあ〜
本当かどうか私は知りません。
だけど温暖化を止めないと人間は死滅してしまうそうです。
それじゃ今まで語ったことは全く無意味ですね。資源枯渇を心配することもなく、氷期になることを心配することもなく、太陽系の寿命など考えるまでもありません。

持続可能を阻害する要因を挙げてみましたが、まあ沢山あることがわかりました。そしてプロ野球のペナントレースと違い甲子園のようなもので、負ければ次がないという真剣勝負の連続です。
更に甲子園より厳しいことに、次々と行く手を遮る挑戦者は強くなる一方です。どんどん高くなるハードルを超えるにも限度があります。

もうダメ
軽い軽い
選手
柱
台
ちょっと…
選手
柱
台
うわ〜
選手
柱
台
苦しーい
選手
柱
台
選手
柱
台
矢印

ええと……そうしますと持続可能性を考えることもなさそうですが……

いろいろ考えると……いや考えるまでもなく……持続可能性なんてものがあるのだろうか?
あるとすればそれはブルントラント報告書にあるように、「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たす経済」なんてのどかなものでなく、「すべての世代で泥水すすり草をかみ」というような極限状態でも生きていればOKとしなければならないレベルではないのか?

いやいや、そこまで譲歩しても宇宙の終わりのときに、人間が見捨て見逃してられるもらえることはない。きっと道連れにしてくれるだろう。
ということは持続可能性はないということにならないか?

数学的帰納法的に言えば、人間はいつ滅んでも問題ない、宇宙の終わりまで待つことなく、もっとも手近な温暖化でギブアップしても同じことになる。
いや自殺願望ではないよ。持続可能を論理的に説明してほしいと逆説を語っているつもりだ。
少なくてもSDGsが正義とか、みな協力しろとドヤ顔で語っている人はその考えが正しいことを説明してほしいと願う。


うそ800 本日の最後っ屁

人間は欲深だから不老不死を願ったのではなく、現生があまりにも苦しいから不老不死を夢見たのだというかもしれない。
人口ピラミッド それならもう21世紀の今は十分恵まれているだろう。なにせ旧約の時代は人はすぐに死んでしまうから、産めよ増やせよ地に満ちよといったが、今は人口ピラミッドもピラミッドからネギ坊主となり、皆が老いるまで長生きし人が増えすぎている。栄養失調もやせた人もおらず、ダイエットが困難と嘆く人は多い。
今の豊かさを永遠に続けようなんてのは欲深すぎる。

なお今回は1月に書いた「持続可能性は存在するのか」を読み返し、SDGs論者に冷や水をかけようと思いまして加筆したようなものです。

うそ800 本日の反省

なんと今回は1万字を超えてしまった。約束を守れないとは、我 齢70にしていまだ成長せず。




注1
オイルピークとは石油産出量が最大になる時点のこと。20世紀は2010年頃と言われたが、今は2030年頃と言われている。

注2
肥料の三要素は窒素・リン・カリウムといわれる。窒素は大気中にあり植物が固定化する、カリウムは量的に多くあり、一番厳しいのはリンである。
農産物の収量が増加したのは肥料にリンが使われた影響は大だ。しかしリンは微量しか存在せず、従来は孤島に長い年月積み重なった鳥の糞が使われていたが、減少の一途である。あと50〜100年でなくなるといわれている。

注3
2022年現在、モロッコで発見された30万年前の化石が最古のホモサピエンスとされている。

注4
縄文時代とは紀元前1万年くらいから紀元前200年くらいまでをいう。

注5
伊勢神宮は掘立柱建物であり、基礎石を用いず柱が地面に差し込まれている。そのため20年ごとに式年遷宮といって立て直しされる。とんでもない無駄使いともいえる。

注6
縄文土器の底部はとがっていて、どんな風に使うのか謎だった。千葉県船橋市の飛ノ台史跡で土に穴を掘り縄文土器をその穴に差し込んで煮炊きした跡が発見されそれが解明されたという。私は一度飛ノ台史跡公園博物館を訪ねていったことがある。
飛ノ台史跡公園博物館

注7
「自滅する人間」坂口 謙吾、日刊工業、2012

注8
「環境と開発に関する世界委員会」とは1984年に日本の提案で設立され、各国から推薦された21人が1987年に報告書をまとめ。国連環境特別委員会ともいう。委員長を務めたのがノルウェーの元首相ブルントラントだったのでブルントラント委員会とかブルントラント報告書とも呼ばれる。

注9
「宇宙の終わりに何が起こるのか」、ケイティ・マック、講談社、2021

注10
注11
氷床と氷河は何が違うのかというと、陸上に降り積もった雪が氷になって流れ始めたものを「氷河」という。氷河の中でも、グリーンランドと南極大陸を覆う氷は特に規模が大きいので、特別に「氷床」と呼ぶ。

注12
クラーク数とは地球上の地表付近に存在する元素の割合を質量パーセント濃度で表したもの。




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