「アルベルト・フジモリ、テロと闘う」アルベルト・フジモリ 著

出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
中公新書 4-12-150035-0 2002/2/13760全1巻

明日は総選挙の投票日である。
誰を日本の首相に選ぶか?という戦後初めてといっていいくらいの二大政党の選挙となったと思われる。
「だれそれを首相にしよう! 」「いや彼を首相にしよう!」と叫ぶ声が街中に響く。
しかし、私は現在のどの政党の党首よりも誰よりも彼よりも絶対に日本の首相になってほしい人を挙げたい。
いえ、公職選挙法になんてひっかかりません。

それはフジモリ元ペルー大統領である。

フジモリ氏は毀誉褒貶(褒める人もいれば批判する人もいる)さまざま、現在日本に亡命中である。
私は以前から彼を高く買っている。
忘れやすい日本人も1996年から翌年にかけての日本大使館のテロ事件を忘れてはいないだろう。
まさに緊急事態というときに、しかもご自身の肉親も人質となっていたにもかかわらず、冷静に忍耐強くテロリストと戦い、そして勝ったのである。
実を言ってこのとき私は東南アジアで仕事をしており、詳細なニュースが分からずやきもきした思いがある。
私は英語が得意ではないし、そのうえCNNなどではペルーの日本大使館事件は日本ほど重大な位置づけではなかった。


アルベルト・フジモリ 岸田 秀 訳

アルベルト・フジモリ、
テロと闘う

MIS ARMAS CONTRA EL TERRORISMO






L
C

中公新書
ラクレ

阪神淡路大地震の時の村山翁、東京ディズニーランドに遊びに来た北の王子様を扱った外務大臣、日本海をものすごいスピードで逃げ去った北朝鮮の工作船の対応を誤った時の幹事長、日本の海上保安庁が命の危機にあっていたときに攻撃はいけないと叫んだ政治家たちに、フジモリ氏のつめの垢を煎じて飲ませたい。
もっとも彼らにはつめの垢を飲む資格さえないだろう。

私は現地で調査したわけじゃないから、フジモリ氏の汚職とかが真実か否かは知らない。
しかし、テロが吹き荒れていたペルー、麻薬商人が跋扈していたペルーの大掃除をした大政治家であることは政敵も否定できない事実である。

チェゲバラなどにはじまる危険なテロリストの末裔の息の根を止めた。
テロリストたちが共産主義、毛沢東主義を唱えていたもので、世界の社会主義者たちはフジモリ氏がお嫌いなようだ。
でも共産主義とテロリストは違う。自分と同じ主義思想を唱えていても、手段が間違っていたならばそれを支持することは自分の正当性をなくします。
目的は手段を正当化しないことを忘れてはいけない。

彼の失脚にはアメリカの息がかかっていると言われているのは周知の事実、でもアメリカがテロの恐ろしさを知った9.11以降であったならそのようなことはしなかったに違いない。
人権を守るといっても、テロリストの人権よりも一般民衆の人権を優先して守ってほしい。
フジモリ氏が戦ったアビマエル・グスマンとはこのようなことをしていたお方である。

「テロリストどもは戦闘員が不足するものだから、田舎の少年少女を誘拐してきて、菓子だの食物を餌にして人間爆弾として使うんだ。これには参った。
いつか警察署内でここにいる四、五十人の警察部隊と昼メシを食っていたら、小さい男の子、七、八歳かね、その男の子がひとり警察の玄関にむかってよろよろ走ってくる。皆、なにかおかしいなと思って、メシを食う手を止めて、男の子を見ていた。
そうしたら玄関の前で男の子がつまずいて転んだんだよ。途端に大爆発が起こって、警察の玄関が吹っ飛んだ。テロリストの奴ら、男の子に菓子かチョコレートをやってね、これやるから、あの警察へ飛び込んでこい、なんでもないよ、とかなんとか騙したんだな。男の子はチョコレートかなにかの誘惑に負けて、体じゅうに爆弾背負わされて、警察に飛び込まされたんだよ。
あの子が玄関で転ばなかったら、ここに四、五十人は全滅よ。私もここにはいなかったろうな」
私は涙もろいほうなのであるが、この本を読んで涙があふれた。
政治家に求められるものは、理想だけではない。
弁舌だけではない。
もちろん容姿など二の次三の次である。
命を懸けて国民を、治安を守るという信念があり、実行できることしかない。



推薦する本の目次にもどる