ISO9001の学校への適用2002.02.14
独人様よりお便りをいただきました。(2002.02.13)

「先生の不思議」で思ったこと
先生の不思議を見て思ったことですが、ISO2000を御存知ですか。品質に関する国際規格です。製造業だけでなく、サービス業でも適用可能で、いろいろな企業が取得しています。でも、学校で取得したとの話は聞きません。適用が無理なのかな。確か、2001年度版では、「力量」と言う項目も追加されたと聞いています。現状の学校では、ISO2000の認定獲得は、まず無理でしょうね。自らを(先生が)、お客様(生徒の親)のために律する必要があるのですから。
以上

独人様
私の仕事を知っていてかまをかけているんですか?(^^)
それとも最近、私がめげているので励まそうというお心かもしれませんね。
ご存知と思いますが私はISOで飯を食っています。
では、お便りに応えまして講釈を語らせてもらいます。

世界の標準化組織として機械関係はISOロゴISO(国際標準化機構)、電気関係はIECロゴIEC(国際電気標準会議)がありWTO(世界貿易機構)の下で活動しています。
この二つの国際機関は連携して世界の技術・科学・貿易新興・非関税障壁排除のために種々国際規格を検討し制定しています。これが新たな非関税障壁だと言う声もありますが(^^)

ISOの規格番号はどのような採番するのか分かりませんが、現在約15000あるそうです。
お話しではISO2000とありますが、それでは『ISO 2000:1989 Rubber, raw natural - Specification(生ゴムの規格)』となってしますのでお間違いと思います。
おっしゃるのは『ISO9001:2000品質マネジメントシステム-要求事項』のことでしょう。
この初版は1987年に製造業の品質保証のために制定されました。その後、製造業だけでなくサービス業その他で利用する組織(企業、官公庁)が増えたことと、もうひとつ品質保証とは『一定品質を保証すること』にすぎず品質を上げることを目的としていなかったために2000年に大幅に改定し、現在のISO9001:2000年版となりました。(その間1994年に小改定がありました。)
品質保証とはお客さんに製品品質に安心してもらうための活動をいいます。ISO認証とはそれが一定水準にあることの第三者のお墨付きに過ぎません。ISOで品質が良くなるのではなく、仕組みが良いことを保証するだけです。決して製品品質を保証しないことをご記憶願います。
現在日本の教育機関で認証取得しているのはどのくらいあるのか調べてみました。
日本のISO9000シリーズの認証は21,756件(02.02.01時点)です。
このうち教育というカテゴリーでISO9001を取っているものはゼロ件です。
ISO9002では教育では1件あります。(ISO9002とは設計を除いた規格で2003年に9001に統合されます。)
ちなみに環境ISO14001で教育機関の認証は多数あり02.02.01時点26件(日本全体では6,879件)です。
これは日本適合性認定協会(JAB)が認定した審査登録機関のものだけです。外国の認定機関が認定した審査登録機関が日本で認証した件数は不明です。どの国の認定を受けた審査登録機関でも世界中で営業できるのはISOがグローバルスタンダードだからです。
ISO9002の認証を受けているのは『有限会社 高松自動車学校 及び 株式会社 善通寺自動車学校』で登録内容は『二輪車、普通車及び大型車の免許取得教習サービス並びにそれらに伴う付帯サービス』です。

ここで誤解のないようにいくつか付け加えておきます。 要するに顧客を誰にするか?なにを品質に定義するか、認証する範囲などは組織が決めて良いということです。(極論すれば教育活動を除いた学校の事務室や学校の建物管理のみのISO取得もありえます。)

さて、ISO認証取得の意義ですが、
もともと何もない会社ならISO規格に沿って手順書(会社規則)を整備するということがあるでしょう。それにより仕事の内容が明確になり効率化、品質向上が図られるかもしれません。
でも官公庁ならもともと法律、施行令、規則、通達などで仕事をするように整備されています。ですから私は官公庁で認証の意義はないと考えています。
ご存知のように、薬事法やNQA(原子力発電品質保証)、防衛、NTTなどではISO以前から厳しい品質保証を要求しています。教育に関しても教育基本法以下法規制によって仕組み、運用を定めていますのでシステムは50年前からできているのです。
そういった仕組みがあり、もともと安定した品質の製品やサービスを提供できるのであればISOなんかいらないのです。実際、ISO認証した会社の中にはほとんど何もしなかった、という会社もあります。従来から優良企業であれば既に水準に達していたということでしょう。
言い換えるとこういった会社はISOを導入しても改善効果はありません。ISO導入の目的は『顧客に対して安心感を与えること』と『仕組みがはっきりしていない時に、仕組みを明確にして業務改善をすること』です。立派な会社はもともと顧客の信頼が厚くISOの認証書とは関係なく信頼されていると思います。

★最近は自治体や建設局などで入札条件にISO9001とか14001の認証を条件とする事例が出てきています。そういった場合は受注するためには認証を取るよりほかありませんね、

さて、学校でISO9001を取ろうとしたら顧客はだれで、製品は何にしましょうか?
これはその組織が決めていいわけです。もちろん対外的に説明できなければ意味ありません。
実際に工場の場合、本社とか営業所を顧客とするのが多かったのです。本当のお客さんでなく、目の前の相手をお客にしているわけです。

学校のお客は誰でしょうか? 前述の自動車学校なら普通教育の学校とは違います。実際はどうか分かりませんが、多分生徒が顧客なのではないでしょうか?お金を払ってくれる人を客とするのが自然ですから。するとサービスの品質は免許の合格率あるいは卒業後の事故件数で評価するのでしょうか?とにかくこのへんは自由です。

結論としては、
公立学校がISO9001認証取得するとしても顧客、製品あるいはサービスの定義はさまざまとなるでしょう。
顧客を教諭として学校事務室のサービスについてのISO取得というのもありえます。
要するにISO9001の認証取得と教育の品質があがるかどうかはあまり関係ないでしょう!?
また、ISO規格とは規則を守ることが前提ですから、法律や通達を無視しているメンバー・構成員がいては認証以前となります。
国歌を歌え、国旗を掲揚せよというルールに従わないのはどうなるでしょう?
ISO9001では『製品に関わる法規制の遵守』が求められています。生徒を製品とするならNGですね。学校の管理を範囲としたり、教諭を顧客とするならOKになります。

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