天満宮

ともあれ、ここに書いていることは本当のことであり、私は出歩くのが商売でしょっちゅう飛行機に乗っている。おかげでマイレージもつく。世の中には少しでもマイルを貯めようと航空会社のクレジットカードや航空会社と提携した鉄道会社のカードを作り、買い物でもポイントを貯めている方もいる。更には年会費を2000円余分に払うとマイルが倍つくという。マイルが余分に付くことより、余分に払う2000円が惜しいと思うのだが･･･。

QJAL MILEAGE BANK iC

JAL　MILEAGE　BANK

お得意様番号 45 893 9696
MR.***　***

私は会費など払う気がないからクレジットカードを作らない。単に飛行機に乗るとつくマイレージのみをいただくことにしている。
とまあ私は積極的というか、必死にマイルを貯めているわけではないが、１年に１回程度は無料で国内旅行に出かけられるくらいはマイルが貯まる。
貯まったマイルにも賞味期限がある。あなたの残高の内○○マイルは05年12月末で消滅しますというお便りが10月に来た。貯まったマイルを捨てるなんてとんでもない、使わなくては損な気がするというのもまた人情である。

遅い夕食の後、食卓でどこに行こうかと考えていた。広島の大和ミュージアムに行こうかと考えた話は以前書いた。残念ながら羽田～広島のチケットは取れなかった。

ではなるべく遠くにしようと考えた。
どうせ乗るなら遠距離のほうが得をした気分になる。・・・私は貧乏性なのだ
最も遠距離である羽田～那覇などは満席で予約などできない。札幌は何度も行っているし、寒いのは苦手である。
坂本竜馬の桂浜にでもしようかと思って時刻表を調べていると、家内が声をかけてきた。
「田舎の妹から電話があってね、来年姪が高校受験ですって」
ほう、あのちっちゃくて恥ずかしがり屋でいつも家内の妹の後ろに隠れていた子もそんなになるのかと驚いた。もっとも最近では私より背が高くなったと聞く。
でも考えてみれば私もまもなく還暦で定年、既に娘が結婚し息子が社会人になっているのだから、姪も大きくなって当然である。

私は肩こりとか老眼とか階段の上り下りが辛いということはない。
まだ年老いた感じはしないが、それでも頭の毛は歳相応である。

じゃあ受験勉強も大変だろう、田舎だって高校受験はあるのだ。
「それでは合格祈願のお守りでもいただいて送ってやろう。東京には天神様がいろいろあるからね」と応える私。
「エート、湯島天神、亀戸天神、最近は『赤城神社』にも天神様ができたそうだ。」
「あなた、福岡の天満宮に行ってきたらいいでしょう。ただで飛行機に乗れるって言ってたでしょう。」
前に述べたように愚妻は頭がよいのである。とくにお金に関わることになるとすばらしいアイデアを出す。

何　バカなことを
語ってるんですか

愚妻とは頭が悪いことではない。
人様に「家内は美しく賢くうらやましいでしょう」なんて口に出しては相手が気を悪くするので愚妻というのであって、本音は「うちの家内は美人で賢くうらやましいでしょう　ワッハッハ～」という意味である。

「なるほど！それはいい考えだ」

一体どこがいい考えなのか？　ワカリマセン。

天神の本家は菅原道真の福岡である。私はしょっちゅう全国を出張しているので、実は福岡も今年数回訪れている。しかし、もちろんご訪問先と空港を行き来するだけであって、いくら近くにあっても名所も旧跡も神社もお参りすることはない。
高知に行っても桂浜を見ず、新潟に行っても〆張り鶴を飲まず、広島に行っても大和ミュージアムまで行かないのと同様である。

さっそくインターネットで調べると、羽田～福岡は便数が多く予約することができた。福岡の良いところは空港と市街が近いということがある。広島空港なんか広島市までリムジンバスの運賃が1000円以上する。長崎空港から長崎市までも同様で1時間かかる。
それではただのエアチケットをもらっても、それ以外の費用がかかり行きたくなくなってしまうではないか。
さて12月の某日、私は福岡空港から天満宮まで姪の受験のお守りをいただきに参ったのであります。
姪がこの話を聞いたら少しは感動してくれるのでしょうか？

この子の七つのお祝いに～♪ではない、この子の受験の願掛け～♪にである。

日本全国、姪の受験のお守りを求めて1000キロもの旅をする人は

･･･あまりいないのではないか？

さて、福岡からのんびりした電車に乗って天満宮に着いた。
まずはお参りである。
ここでとんでもないことが起きたのである。
私は財布を取り出し、所得から考えると大盤振る舞いとは知りつつ千円札を取り出して賽銭箱に投じたのであります。