危なさはどのくらいですか? 2006.09.10
KABU先生のブログ(7月8日)で面白いと思った表現があった。
『確かに、ベトナムよりニューヨークのハーレムが危険だとか。日露戦争でもクリミア戦争でも戦死者より病死者が多かった、という話しは事実でしょうが。正に、それは別物であり別の解決方法が要求されるイシューだと思います。
実際、殺人や傷害致死の被害者数より交通事故死の数がゼロが幾つか多いのですが、誰も「彼(被告人)は30年間安全運転を心がける人だ」という理由で白昼該当で通行人をいきなり包丁でメッタ刺しにした行為を許せとは言わないだろうからです。』

KABU先生の前後の文章がないと、ちょっと上記の意味するところがとれないかもしれない。あるいはむしろ、上記KABU先生の文章がない方がこれ以降の私の雑文が理解しやすいかもしれない。
しかしながら、KABU先生のアイデアの借用であることを明示するために上記を引用しておく。なお、アイデア借用についてはKABU先生ご了解済である。
お断りしておくが、KABU先生のウェブやブログはこのウェブサイトよりはるかに学問的でためになる。ぜひ読んで欲しい。但しKABU先生は挿絵もなく難しい漢字ばかりで読むのに忍耐が必要だ。 
昔、テレビの人気番組にアンディウイリアムズショーというのとディーンマーチンショーというのがあった。ディーンマーチンは「アンディはミルクの味、オレはウイスキーの味」と称した。それに倣えば、「KABU先生は焼酎の味、ここは甘酒の味」である。
あなたは毎朝、学校や会社に出かけるとき、「交通事故にあうかもしれない」とは思ってはいないだろう。奥様も買い物に行くのに「もしかしたら轢かれるかも」などと考えてはいないだろう。
会社の仕事の後で、同僚と酒を飲んでいても、帰宅途中に電車のホームから落ちて轢かれるなんて思いもしないだろう。
私の田舎では踏み切り事故なんて、1世紀の間に数回もない。そして、私の知る限りホームから落ちて魅かれた人はいない。
都会に出てきてから毎日、JR、私鉄、あるいは地下鉄を利用しているが、都会の電車は事故が多い。
train.gif 「○○駅で人身事故があり、現在何分遅れが出ています」なんて放送を毎週聞いている。
毎週というのは大げさではない。調べてみたら脱線事故や衝突事故を除いて、毎日平均一人が電車の事故で亡くなっている。そのほとんどが自殺とかホームからの落下によるものである。関東圏に限定した発生件数のデータは見つからなかったが、人口に比例するとすればニ三日に一回死亡事故が起きていることになる。
しかし、ニ三日に一人死亡という確率では、私たちにとってはゼロ、無関係と思えるようだ。

殺人事件がどのくらい起きているものだろうか?
面倒だ! 日本で犯罪はどのくらい起きているのだろうか?
罪名
2000
2001
2002
2003
2004
総数32561093581251369392836462533427606
殺人13911340139614521419
強盗51736393698476647295
障害3018433965363243656835937
暴行1322516928194122156823691
脅迫20472300237426252537
恐喝1892619566184031759514424
凶器準備集合3642303427
窃盗21311642340511237748822358441981574
詐欺4438443104494846029883015
横領57403667707393392346104412
背任4166564041
盗品譲受17312388298745195547
強姦22602228235724722176
強制わいせつ741293269476100299184
公然わいせつ15541771206224222391
わいせつ物頒布557454392375522
放火17432006183020702174
失火325429329300323
贈収賄100158164114100
略取・誘拐302237251284320
公務執行妨害20822354262130073129
住居侵入2097626686338724034837857
器物損壊87943145936196018230743226059
偽造90917671108331210313547
賭博278290300208249
暴力行為107111132156230
危険運転致死傷322308270
交通関係812639845909839267855809864569
その他30353582416345834587
犯罪白書各年度版より引用http://www.moj.go.jp

殺人事件は毎年1400件くらい、ほぼ10万人に一人が殺されていることになる。これは電車の人身事故のほぼ4倍になる。
前と同じ表現をすれば、あなたは毎朝、学校や会社に出かけるとき、「もしかしたら人殺しにあうかもしれない」とは思ってはいないだろう。奥様も買い物に行くのに「もしかしたら殺されるかも」などと考えてはいないだろう。
ということは、全国で毎日数人という確率では、まだ私たちにとってはゼロ、無関係と思えるようだ。

話を変える。戦争ではどのくらいの割合で人が死んだのだろう。
特攻隊、たとえば桜花や回天の死亡率はほぼ100%だろう。しかし、特攻出撃の死亡率はちょっとおいておく。
「戦艦大和」の最後の出撃は乗員2700名中、生存者270名で死亡率90%だった。もっとも大和も特攻といわれているし、燃料も片道分しか積んでいなかったという。(往復分積んでいたという説もある)

yamato2.gif 「男たちの大和」で反町隆史が賭場で「丁なら生きて帰ってくる、半なら死ぬ」と言って有り金を賭けたのを思い出す。

太平洋戦争の日本の死者は221万3903人(うち一般国民65万8595人)という。当時の人口7400万であるから日本人の戦争による通算死亡率は3%、支那事変から太平洋戦争まで8年とすると年間0.38%である。
「ぼくらの太平洋戦争」(本多公栄)、総務省統計局などによる。
通常の死亡率は人口構成や寿命によって異なる。昭和20年頃の戦争を除く平均寿命は50歳以下であり、死亡率は2%くらいだった。ということは戦争によって戦死あるいは戦災で亡くなった人びとの死亡は、通常の死亡率を2割押し上げたことになる。2割が大きいか、小さいか? 私はそれを小さいとは言わないが、一般に想像しているほどの数値ではないことに同意願いたい。
日本中で、戦争で、空襲でバタバタ死んだのではない。東京大空襲、名古屋、新潟、長崎、広島などなどたくさんの都市が無差別爆撃され何万人という数が殺されたのは事実だが、田舎はそうではなく、だから多くの人が疎開していたのだ。

別の事例、たとえばベトナム戦争で考えて見よう。ベトナム戦争通算のアメリカ兵の戦死者は5万8千人だったという。
bye.gif アメリカがベトナム参戦した期間は63年〜75年、最盛期には派遣された兵士の数は50万を越えた。この12年間のベトナムに派遣された述べ兵士数は調べてないが、仮に300万とすれば、死亡率は1.9%となる。兵士が有権者であるアメリカではこの数字は政策を動かすには十分であろう。

●南京虐殺という説がある。日本軍が南京で30万人以上殺したという人たちがいる。
☆日中戦争(支那事変・日華事変)☆(現在リンク切れ)
日中戦争での中国国民の死者は1000万人余(一説には2000万人ともいわれている)にものぼり,それは日本軍の戦死者は40万4600人をはるかに凌駕する犠牲であった。
●「ぼくらの太平洋戦争」では日本人が中国人を1000万人殺したことになっている。
上記の数字の算出根拠、方法は知らないが、これはそうとうな手段でないと達成できない数字であることはおわかりだろう。
ナチスのホロコーストが600万人という。日本が中国の各地にアウシュビッツ類似の施設を建築したとは聞かない。また1000万とすると、当時の支那の人口4億の2.5%になる。日中戦争とは支那事変から終戦までの8年間として、年0.3%である。さきほどの日本の太平洋戦争での死者数は0.38%であった。
もし2000万であればこの倍の0.6%、この数字は大恐慌を起こすに十分な数字である。中国では日本人を見て逃げ惑う人々がいたという記録はあるのだろうか?
当時のことをいうなら「中国人」でなく「支那人」と言わないと間違いである。

文化大革命の死者は2000万とも4000万とも言われている。この当時の中華人民共和国の人口は7億から8億だったので、5年間としてその死亡率はミニマムの2000万で年0.6%、マキシマムなら年1.2%程度となる。これはとてつもない数字だ。もう大恐慌をもたらすのは間違いなく、現実に半世紀たった現在も中国に深い傷を残している。

quest.gif
ちょっと考えてみて欲しい。日本による虐殺が年0.6%というなら、文化大革命同等の恐怖の記憶を残したはずなのだが・・・そのような情報はあるのだろうか?
このような単純な比較でも、南京虐殺とか中国人殺戮というのがうそらしく思える。
もうひとつ引っかかるのは、文化大革命の記憶は年とともに薄れ、今では90年の天安門事件も忘れられつつあるという。南京虐殺の記憶は年とともに鮮明になり、確認される死者が増えつつあるという不思議な現象がおきている。

病気の場合について考えてみよう。
中世のヨーロッパでペストがはやったとき、一体どのくらいの死亡だったのだろうか?
moudoku.gif 6世紀後半のヨーロッパで約1億が死んだと書いてあった。50年間としても毎年200万人、当時ヨーロッパの人口は1億ないし3億だろうから1%ということになる。
13世紀では5500万というがこの期間は分からない。デカメロンは14世紀の物語である。いずれにしても、ペストの流行は人びとを恐れさせ大都会から疎開させるには十分だった。

戦争やペストの例を考えると、死亡率0.7%程度引き上げる危険であれば、きわめて恐ろしいことと認識することは間違いない。
死亡だけでなく自分に発生する危険がそのくらいになるとひとごとではなくなるのだろうか?
先ほどあげた犯罪の発生数を見れば、ひとごとでないと認識するしきい値(?)0.7%に近いのは、窃盗1.5%、交通関係0.7%である。
私たちは毎日窃盗に会う危険を心配しているだろうか? 自分が交通違反をするかもしれないと考えているだろうか? これは人それぞれであろう。私の場合、家にどろぼうが入る心配は常にある。マンションといっても安いところでセキュリティも甘いし、低層階なので身軽な人なら雨どい伝いに登ることも可能だ。
交通違反や事故を起こす可能性は車を持たないので考えていない。

過去10年間、日本はダイオキシンで大騒ぎをして、今まだその負の遺産を負っている。一体全体、日本でダイオキシンで何人が死んだのだろう? 何歳平均寿命が短くなったのだろうか?
公表されたものとして、死亡者はなくダイオキシンによって平均寿命が短くなったという報道もない。
負の遺産とはダイオキシンの危険性をいうのではなく、ダイオキシン低減のための法規制による国民の負担増を意味する。

環境ホルモンも大騒ぎであったが、現時点環境ホルモンによる死者や平均寿命が短くなるどころか、人間への悪影響を肯定する試験結果はない。
しかしながら、環境学者、環境論者、環境主義者、環境政治家は証拠を探そうとがんばっている。
残念ながら否定派は悪魔の証明であるのでただ待つしかない。

BSE(狂牛病)で死んだ人は何人いるのだろうか?
イギリスで累計150名程度という。その他の国の数字はネットでは見つからなかった。発生しているのかしていないのか分からない。
しかし、危ないと認識する0.75%よりははるかに低いであろうことは間違いない。
ちなみに過去にBSE患者が5名出たイギリスの3000人の村は恐慌となったという。3000人の村なら年に亡くなるのは40人前後、5名というのはそれを25%押し上げる。日本の太平洋戦争程度とだけ申し上げておく。


本日はただ数字をあげただけか?
そんなことを言わないでください。
危なさってどのくらいか考えて行動すべきだということなんです。
BSEが危ないからと牛肉を食べないで、中国の野菜が安いからって食べる方が危険じゃないですか?
mankomatta.gif ちなみに我が家では中国産のものはシイタケもうなぎも野菜も買いません。
もっとも貝類はいったん日本の海岸に降ろせば日本産となるそうです。
私にはどうしようもありません。



参考図書
「地球はほんとに危ないか」(北村美遵)
「リスクセンス」(ジョン・F・ロス)
「環境と健康」(渡辺 正)
「これからの環境論」(渡辺 正)
「環境リスク学」(中西準子)
市民のための環境学ガイド 安井 至
☆日中戦争(支那事変・日華事変)☆(現在リンク切れ)


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