選挙の話 2007.04.07

明日は選挙である。
明日は久しぶりに家内と私の休みが一致したので、家内は春の散策に遠出をしようというのだが、そうすると投票に行く時間がない。ワシは選挙に行くから小旅行には行かんぞといってちょっと気まずくなった。 
今は平日の投票も簡単にできるのだからしておけばよかったのに・・・なんて言わないでください。
常日頃、出歩いておりますので、そうもいかないのです。

私は成人になってから、棄権したことは数えるくらいしかない。
海外に長期出張していたときとか、死ぬほど仕事が忙しかったときくらいだ。
私は、選挙は権利であると共に義務であると信じているのです。

選挙といえば、いつも、人を選ぶのか政党を選ぶのかなんていわれます。
私は、身近な自治体の選挙ならともかく、県会、国政選挙となれば人より政党と考えております。
いや、地方自治体の議員の割合から各政党の政策の支持状況を推定したり、草の根からの思想の浸透を考えると、市町村議会の選挙も政党で選ぶべきかもしれません。
本日はそんな妄想を・・・・映画ならフェーズアウトするところです。

私は生まれた町に30歳まで住んでいました。
参議院以外の被選挙権は25歳です。それがどういうことになるかといいますと・・・
27歳の頃です。まもなく町会議員の選挙だというとき、中学校の同級生が我が家に訪ねて来ました。卒業してからそのときまで10年以上会っていませんでした。同級会といってもいつも出席するわけでもなく、お互いにすれ違いだったりします。
「やあ、久しぶりだな」という挨拶の後、
「今度、おれ町会議員に出るんで応援してくれよ」とのこと
驚きました。
中学時代は目立たない人前に出るのが苦手な男だったのですが、町会議員に立候補するとは!
政治に目覚めたのでしょうか? 外交的・積極的になったものです。
話をはしょると要するに私の勤めている会社でぜひ彼を宣伝、推薦してくれということでした。
当時、私の町の町会議員といえば五・六百票で当選でした。もちろん彼は親類縁者、隣近所、自身の勤め先などかなり票読みしてのことだとは思いましたが、卒業してから会ったこともない同級生一人一人の家にも歩き回って一人でも支持者を増やそうとがんばっていたのです。

私は義理堅いというか、気が小さい男でしたから、彼の頼みを聞いて、職場で今度おれの友人が出るんでよろしくお願いしますと声を駆け回った。もっとも聞くほうも聞くほうで、やはり親類縁者、友達から同じことを頼まれているので効果があったとは思えない。 

ともかく、その友人はその選挙でみごと最年少議員として当選した。昔の同級生はそれをきっかけにまた顔を会わせることが多くなった。
現在では彼も永年勤続の長老議員となり、田舎では押しも押されもしない有名人である。
私は事情によりまもなく隣の市に引っ越したが、この男はどういう手づるか引っ越した住所を調べだして、その後も年賀状や議員としての活動のチラシを送ってきた。
議員を続けるにはそれなりの努力が要ると感心したものだ。
さすがに私が都会に引っ越してきてからは彼から手紙はこない。彼ももう私の1票をあてにできないと納得したのだろう。 

しかし昔の同級生なら応援してくれるだろうと思うことが不思議だし、特段親しくはなかった同級生のために選挙応援をするという心理も不思議である。要するに政党ではなく同郷、知り合いというほうが重要なのである。
ところで彼は一体どんな政党でどんな公約を唱えたのかということであるが・・・
田舎の町では共産党以外は無所属がほとんどであり、公約なんてどうでもいいという感じですね。
政策といっても大層なことではなく、議員になったところでお仕事といえば、橋を架けなおすのと公民館を建て直すのとどちらを優先するかとか、ぐにゃぐにゃの道路をまっすぐにするのはみな賛成なのだがどこを通すか意見百出というような問題を調整することである。
もちろん工事や種々調達のドロドロというのもある。我々サラリーマンは関係ないが、田舎の自営業者にとっては重大問題である。

田舎の議員の仕事といえど、自分の町内の利益だけを主張しては他の地域の支持を失ってしまうから、町全体の調和といろいろな利益団体のバランスをとらざるを得ず、だんだんと大局的な感覚を身につけるだろう・・・と想像する。
しかし、はたしてみなの期待に応えるとか、さまざまな意見を足して割るということが、望ましい政治なのかどうかということも分からない。こうあるべきだという信念を唱え、選挙民の意思を問うのが本当かもしれない。
いずれにしても田舎の選挙はそんなものだった。・・・それは私にとって事実であり過去である。

今は三位一体とか地方交付税が大改革で昔のようなのどかな、コップの中の地方自治は過去のものになっただろう。
もしあいつに会うことがあればぜひ田舎の町会議員の三分の一世紀を聞きたいと思う。
もっとも、そのうち同級会のお誘いが来れば、いやでも聞かされるだろう。

現在住んでいる都市の市会議員とか県会議員になると、もう地元の利益誘導という手法そのものがとりえないのではないか?
なにしろ隣は何をする人ぞということもあるし、長く住むという人も少ないだろう。私が今のところに住んで三年、もうすぐ引っ越すことは予定の行動である。
選挙のときだけでなく、毎朝、駅前で自分の名前を叫んだり、ビラを配ったりする将来の市会や県会議員立候補予定者もいる。ビラをもらって読むとこの町の治安を良くしようとか、子供たちの安全とか書いている。
さすがに非武装宣言なんて書いている候補者はいない。

しかし私のような立場の者はやはり政党によって選択するのが一番安全確実な方法かと思う。
明日の選挙では、名も知らぬ多数の候補者から選ぶにはやはり所属政党しかないようだ。


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