本日は「審査員の力量」について考えたい。
環境ISOつまりISO14001審査員の名刺を頂くと、ドクター、技術士、○○士、トーダイ卒
(アッそんなことは名刺には書いてない)などなど・・・・とにかく肩書きがすごい、
また資格だけでなく、肩書き、経歴もすごい。有名企業の元工場長、東証一部上場会社の元部長などよだれの出るような華麗な経歴が書き並んでいる。
ではこのような資格や経歴を持つ審査員は、審査の力量を持っているのだろうかというのが本日の愚考である。
私の知り合いが定年になってから某審査機関に就職して環境ISO審査員になった。もともとISO事務局を担当していた方なので、あまり公害防止の実務や環境法規制には詳しくない。
大分前のことだが、仕事中の私に電話をしてきた。騒音規制法について教えてくれとのこと。別に金もかからないから質問に応えて回答した。
ちょっと引っかかるのは、彼が審査中に携帯で電話してきたことである。もちろんいいかげんな判断をするよりも、いろいろ調べて正しい判断をした方がはるかによい。
でもね、ダイジョウブカナア〜
彼のことより、彼の審査を受ける会社の心配をしてしまいます。
では工場で公害防止を一筋に何十年としてきた方ならISO審査員として適任か?といえば、そうだともいえない。環境といっても公害ばかりではない。特に最近は公害防止だけでなく、省エネルギー、環境配慮製品、廃棄物問題、近々では省エネ法が改正され物流にもメスを入れないといけない。
やはり私の知り合いの審査員が、工場の審査は自信があるが、オフィスに行くといったいどんな法律が関わるのか見当もつかないとぼやいていた。ぼやく前に勉強しろよとは私の影の声である。
私も面と向かってそのようなことを言うほど度胸はない。
おっと、更に重大なことがある。ISO14001はマネジメントシステム規格と自称している。ならばISOの審査においてはマネジメントつまり経営が環境配慮しているかを見なければならない。
公害防止に経験豊富であっても、会社のマネジメントシステムを見て、良し悪しを審査できるか?
ちょっと不安がある。
ならばマネジャー経験者ならマネジメントを知っているのだろうか?
一口にマネジャーといってもピンからキリまである。
たとえば課長といってもその実態はさまざまである。まあ部下が100人くらいいたとしよう。このくらいの人を動かしていたならば、マネジメントを知っているといえるだろうか?
とてもそうとはいえないと私は思う。
課長であろうと部長であろうと、会社という機能の一部を担っていたに過ぎない。環境部門のみならず、設計、営業、資材、総務、などなどの業務内容とその統括、いやそれどころか経営というものを知っているはずがない。
そういう部門がどうして環境と関係するの? なんて疑問をお持ちでしょうか?
- 営業
顧客とのコミュニケーション、グリーン調達要求の把握、マーケティングなどなど環境とは密接な関係があります。もちろん営業活動で車を使ったり、下取りしたりすれば直接的に環境法規制を受けます。
- 資材
これは営業とは反対方向へグリーン調達の要請や有害物質含有などの調査部門となるでしょう。
最近はヨーロッパの各種規制が厳しく、納入先からベンダーへとサプライチェーンというのか不幸の手紙というべきか、日本中の企業に波紋を広げています。
- 総務
ビル管理会社との折衝、事務用品のグリーン購入、OA機器の処分、宅配便、引越し、オフィスにかかわる環境問題も数知れません。
いかに規模が小さくても会社というのは多様な機能があり、それをマネイジするのは大変なことです。
はたして課長経験者風情が会社の社長を審査できるのか? と問えば、それはちょっと難しいのではないか?と言わざるを得ません。
私の知っている中小企業ではISOマネジメントシステム上では取締役が経営者となっていましたが、審査員が担当の取締役だけでなく社長のインタビューをする必要があると事前に通知してきたそうだ。その会社ではISOの審査登録範囲での経営者は担当取締役だからと社長は対応できないと一旦断った。しかしそれでも審査員の方がインタビューの必要があるというやりとりがあり結局社長が出席した。
はたして社長インタビューにおいてどのような応答があったのか?どのような結論がでたのか? 残念ながら私は知らない。
しかし良くも悪くも審査範囲外であれば、社長インタビューはいったいどういうアウトプットにつながったのだろう?そのへんの論理的なつながりを知りたいものだ。
取締役が経営者であるならば、その社長に対して審査員が結果報告するというなら分かる気がするが・・・
中小企業といっても社長は社長である。審査員が環境に限定したとしても会社の経営を評価判定できるのだろうか?
社長インタビューについて報告書にリップサービスを書くくらいなら、インタビューをしない方が会社の業績に貢献するかもしれない。
私が昔取引していた中小企業
(といっても従業員100人くらいはいた)の社長は、昔陸軍で小隊長であった。彼の口癖は「ワシはこの人たちと家族の命を預かっている、無駄死にさせるわけにはいかない。」であった。
まあ、いまどきは会社がつぶれても路頭に迷うということにはならないだろうが、その社長はそのような覚悟を持って、環境に限らず、安全、衛生、賃金、福利厚生、受注、仕掛、資金繰り、人事、近隣との関係、行政との・・・といったことに努めていた。更に田舎町の名士であったからさまざまな行事に参加しなければならず、それはそれは大変厳しい労働であったろう。
労働基準法が経営者にも適用されるなら不当労働行為に相当したのは間違いない。
その社長は、働きすぎのせいか60すこしでお亡くなりになった。
このような責任感を持ちそして背負っている人に対して、通り一遍の審査員が環境マネジメントがどうこうとか環境についての認識、方針がどうこうといえるはずがないと私は思う。
たとえば【環境方針が不適切】と言えるものだろうか?
10年も前には、規格の文言が一字一句入っているか?漏れていないかを見た審査員が大勢いた。
そういった審査員は本質的なところは全然見なかった。見ることができなかったのかどうかは不明である。
審査員は審査対象範囲の経営の代表者にお伺いすれば十分である。まして社長に合ってご進講するほどのものをお持ちなのでしょうか?
ところでそろそろ結論に入らねばならない。
いったい審査員の力量とはなんで測るのだろうか?
どういった要件を満たせば審査員が務まるのだろうか?
そりゃISO19011とか
CEARの登録基準というものはある。
しかし、それだけで十分なのか?あるいは必要条件でさえないのかもわからない。
本日のゲッソリ
力量のない審査員に、どのようにして力量を確認しているのかと聞かれたこと
本日の願いごと
審査を受ける側は、審査員に過大な力量を期待はしない。それぞれの審査員の力量にあった審査をしていただきたいものである。
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CEARが定める審査員の資格
- 学校教育法に定める高等学校卒業以上の学歴を有すること。また次の者は相当以上の学歴を有する者とする。
- 高等専門学校卒業者、旧中等学校令に基づく旧制中学校卒業者、文部大臣の指定を受けた3年制以上の高等課程専修学校修了者、文部省令に基づく大学入学資格検定合格者、海外の中等教育以上の修了者。
- 高等学校以上に相当する組織内教育施設の修了者、通算修業年数が11年以上になる教育施設の修了者。
- 別途定める経験分野の1分野において、3年以上の業務経験を有すること。
経験分野の分類は原則として所属組織・会社の産業分類とし、最大4分野まで登録ができる。
- 業務上の関係が1年以上ある所属組織の責任者等から、企業等組織のJIS Q14001(ISO14001)への適合性監査を行う環境審査員に要求されるJIS Q 19011(ISO19011) 7.2項に示す個人的特質を有する者として推薦されること。
- 財団法人日本適合性認定協会(以下「JAB」という)に認定された環境審査員研修機関が主催するJIS Q 14001(ISO14001)フォーマルトレーニングコース(以下「フォーマルトレーニングコース」という)を修了し、その試験に合格していること。ただし規格の改定が行われ,改定前の規格に基づくフォーマルトレーニングコースの合格修了に加え、補講等が必要と判断された場合は、別途通知により補講の証明を求める。