4.3.2 法的及びその他の要求事項 2006.04.22
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毎度ばかばかしい話しか書いていませんが、たまにはまじめなことを・・
では本日はISO14001規格について考えましょう。
ISO14001規格 4.3.2 法的及びその他の要求事項
組織は次の事項に関わる手順を確立し、実施し、維持すること。
a) 組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。
b) これらの要求事項を組織の環境側面にどのように適用するかを決定する。
組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するうえで、これらの適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を確実に考慮に入れること。
そんなことを言われなくても、日本の企業なら環境に限らずすべての法律を認識し守るのは当然です。
だから理屈として会社が関る法律はすべからく知っているべしということでしょう。環境についてだけ把握しろというのは常識で考えておかしい。
ただ、規格の序文に書いてありますが、この規格は環境限定なので法律全部とは言わず【とりあえず】環境に関する法律を守れと言ったということでしょう。
book.gif 多くの会社はこの規格の文言を受けて一生懸命環境に関する法規制を調べてリストを作っています。
もっとも調べているのではなく、調べている振りをしているだけかもしれません。
さて多大な労力を投入して作った環境法規制リストは価値があるのでしょうか?
私はそれの意義がわかりませんが、異議があります。 
どうせ作るならその会社が関る法律すべてを網羅すべきでしょうし、またISOなどする前から会社の業務に関わる法規制を知っているならばわざわざそんなものを作る必要はないでしょう。
それとも改めて法律を調べないと、どんな法律が関係するのかご存じなかったのでしょうか? 

ちょっと縁のある販売会社でISO14001の審査を受けて、審査員に「これほど環境法令を調べているところはない」と言われて大喜びしたということでした。
聞きますと都内にあるのですが、容器包装リサイクル法や廃棄物処理法はもちろん、水濁法から大防法はては瀬戸内法までリストアップしていたそうです。
ちょっと待てよ、
審査員のコメントは誉め言葉ではなく、皮肉かひやかしだったのでは・・・
90年代前半までは私は法律を調べるために図書館に行きました。まともな公共の図書館ではすべての法律を備えています。

一般の図書と違い法律は高価だからか、加除式であるためか外部の人が触れることのできる通常の書架にはありません。そこで職員に法律を見せてくださいと頼んで見せてもらうのです。私は職員の部屋で閲覧させてもらいました。閲覧者がページを破ったりしないように監視していたのかもしれません。私のカバンは部屋の外に置かねばなりませんでした。盗んでいく人がいたのでしょうか?
そして必要なところがあると「すみません、ここをコピーさせてください」というと確か3ページくらいは無料でコピーしてくれました。
womankomatta.gif それ以上はお金を出してもダメでした。図書館側もそういう対応が多いと他に迷惑がかかるから制限していたのかもしれません。
本屋で買えばいいなんて言わないでください。すべての法律が本になっているわけではなく、また店頭の本が法律の最新版である保証もないのです。
「第一法規」なんて名前の会社を聞いたことがあるでしょうけれど、そういった法律の本を出している会社と、労働安全衛生法とか水質汚濁防止法などの購読を契約すると年に数回業者が差し替えに来るのでした。
今どき「第一法規」のひもで綴じた加除式のファイルなどを見る人はほとんどいないでしょう。
現在はすべての法令(法律・施行令・規則)がインターネットの電子政府に掲示されています。法令だけでなく日本全国の条例や要綱だって、わざわざその土地に行かなくてもインターネットで見ることができるようになりました。


ISO14001がはじまった97年頃、法規制を調べた資料が3点セットといわれました。コンサルタントは一生懸命この3点セットを作ることを指導(?)したのです。
    どんなものかと言いますと・・・
  1. 環境法規制該非調査一覧表
    環境に関る100以上の沢山の法律を羅列して、該当する・該当しない・と花占いのような呪文を唱えつつ○×をつけたものです。
  2. 該当法規制要求事項一覧表
    環境法規制該非調査一覧表で○がついた法律の要点を書いたもの
  3. 有資格者一覧表
    環境に関る国家資格者を羅列して、その有資格者、選任者あるいは届出者などの一覧表
環境に関る法律を調べると、まず困惑することは、どこまでが環境に関り、どこから関係なくなるのか?ということでしょう。 まあ、一概に環境法規制と断じることはできず、環境に関わらないと決め付けることもできないということに気がつきます。
しかし間違いないことがあります。初めに申し上げたように、環境に関ろうと関らなかろうと法律は守らなければならないということです。
ということは環境法規制を調べることに意義があるのでしょうか?
しなければならないことは会社の事業において規制を受ける法律を認識するということです。
ちょっと話は変わりますが、環境マネジメントシステム(EMS)という言葉があり、品質マネジメントシステム(QMS)という言葉があり、最近は情報管理とか安全衛生とかさまざまなマネジメントシステム(MS)が唱えられています。
そしてそれらを統合した統合マネジメントシステム(GMS)を目指そうというご意見もあります。
man2.gif みなさんどうお考えでしょうか?
私はそれってまったくの勘違い、全部間違いだと思うんです。
会社には本来EMSとかQMS、その他のMSなんてありません。
あるのはGMSしかないのです。
これは私の意見ではありません。ISO14001の序文にも、ISO9001の序文にも書いてあります。
一刻も早く認証しようとするためか、環境ISO事務局担当者の多くは序文から3章までは読んでない。
序文を読まずに規格を理解しようってのは・・・・発想からしてダメだね
会社がいろいろな仕組みで動いているとしたらまともな事業を進めることはできません。上長が複数いて矛盾した命令をしたらと考えれば自明です。

話を戻します。
では環境に関る法規制を調べて一覧表とした時、それがどのような意義があるのでしょうか?
私はそんなものは必要条件でもないし、十分条件でもないと考えます。
むしろ私は「会社は事業に関るすべての法規制を認識し、会社規則などに展開し、従業員に周知し、それを順守すること」が必要であると思います。
そのとき、どの法律が環境に関るのか関らないのかを認識する必要はないと確信します。

もし法規制一覧表や3点セットがないと規格不適合になるのでしょうか?
私は完璧に規格適合であると思います。というか当たり前の会社ならそうでなければならないでしょう。
審査で「貴社はどのような環境法規制が関るのか?」と聞かれた時、「環境法規制なんて言葉を知りません、しかし私どもは国内法をはじめとして適用を受ける法律はみな認識して遵守しています」と応えたら審査員どうしますかね?
感服する審査員もいるでしょうし、腰を抜かす人もいるかもしれないし、途方にくれる人、逆切れする人もいるかも?
知り合いのISO審査員に「審査を受ける会社の環境法規制一覧表がないと監査できません」などと謙遜なのか弱気なのか力量不足なのか定かではありませんが発言される方がいます。
そんなご認識なら審査員辞めたほうがよろしい。
誤認識かもしれませんよ 
環境監査に行って、環境法規制一覧表がないときにどうすればよいのか?
簡単です。
その会社の業務をヒアリングして、現場を見てどんな作業をしているのか?どんな設備があるのか?を見たらいいじゃないですか?
そういったこと(すなわちそれが環境側面です)を調べて、そこにどのような法規制がかかるのかを判断し、関係する法律を遵守しているかどうかをチェックすること、それが環境監査のあるべき姿です。
被監査側が提出した環境法規制一覧表を見て、それを守っているかを調べるのであればそれすなわち数学でいう不定です。 相手が認識していない適用を受ける法規制があるのかを調べなくては審査する甲斐がありません。
解がないなんてダジャレを言っちゃいやよ 



本日の反省

ああ、やはりばか話でありました


この文章を引用しようと、講演しようと皆さんの勝手、私はアイデア料がほしいなんていいません。
でもこのウェブサイトの本来の目的である愛国心について一言語ることを義務とします 




真一様からお便りを頂きました(08.04.20)
はじめてメールさせていただきます。質問がございます。
はじめまして。わたくし、最近ISO14001の勉強を始めたばかりでして、いろいろな書籍やサイトを参考にしていたところ、佐為様のHPに出会いました。分かりやすい言葉使いと誤解の多いISOの基本を丁寧に解説していただき、勉強させていただいております。
さっそくですが、質問があります。規則の「4.3.2 法的及びその他の要求事項 」ですが、「その他」が具体的に何をさしているのかよく分かりません。今のところの理解は、法律には罰則を含めた義務規定と努力義務規定があり、「法的」の部分が義務規定、「その他」の部分が努力義務規定をさしているものと考えたのですが、努力義務規定も法律の一部ですし・・・
「その他」が何をさしているか教えていただけますでしょうか?その根拠もありましたら、ぜひお示しください。
よろしくお願い致します。
真一様 うそ800にご訪問いただき、感謝いたします。
あまり礼儀正しいと私の方が困ってしまいます。
ご質問の件
その他の要求事項とはご想像されているものとは違い、法規制の努力義務を意味してはいません。
我々が生活していく時に、法律だけを守ればよいというわけではありません。
もちろん法律は最低限守らなければなりませんが、慣習とか町内会の約束など争いなく暮らしていくために守るべき規範というものが厳然としてあります。
それは会社など法人においてもあります。
たとえば業界団体の申し合わせ事項、行政指導、親会社の指示、顧客の要求などです。
思いつかなければ失礼ながら例をあげますと
省エネ法では年1.5%削減ですが、我が業界では2%削減して評判を良くしようなんてエエカッコしいはよくあることです。これはやはり実現しないと業界団体から白い目で見られます。
お客様から有害物質を含まない製品をくださいと言われれば、法律では規制されていませんとは言えません。
まあ、しがらみとはたくさんあるものです。

そういうものの中で、自社が事業推進にあたって取り入れるものを(正確には従わざるえないもの)をはっきりさせなさいということです。
根拠と言われると意味が二つありますが・・
1.そのように解釈する根拠
いろいろな本を読んでもISOTC委員もそのように説明しております。
2.従わなければならない根拠
そりゃ渡世の義理というものでしょう。


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