法律の話
まず法律に関する初歩的なことからはじめましょう。
法律は国会で審議・議決します。
罰則は法律で定めないといけないという決まりがあります。憲法31条
条例が法律に含まれるか否かは諸説ありますが、判例は含まないとしています。
法律で一定以下の罰則を条例で決めてよいと定めた法律はあります。(ex.消防法)
法律は議決した時から有効ではなく、施行日から有効です。施行日は法律の文中で定めるものと、閣議で決めるものがあります。
すべての法律はそれをメンテナンスする所管省庁が決まっています。中には複数の省庁が所管するものがあります。そういう法律は末尾に書かれる大臣が連名になります。
法律というのはなにごとかの概要を決めるだけですから、具体的には施行令に展開されます。
施行令は閣議で審議決定されます。つまり複数の省庁に関係するものが施行令になります。ひとつの省庁で決めてよいもの(他の省庁に影響しないこと)は施行令でなく省令で決めます。国籍法は外務省のみでクローズするので施行令はなく省令のみがあります。
つまり施行令と省令は必ずしも上下関係ではないということです。
その他にも施行令のない法律もたくさんあります。
基本法には原則として施行令はありません。それは基本法はプログラム規定といって概念しか決めないからです。いってみればその子供である個別法が施行令の位置付けになるのでしょう。
その他に国旗国歌法などにも施行令はありません。
法律は1800くらいあります。ひまがあれば環境に限らずいろいろな法律をながめているとためになります。法律を読むことが楽しくないとこの商売やっていけません。
施行令もまたおおまかなことしか決めてないので、より具体的詳細は省令で決めます。省令は施行規則とか府令など所管する機関によりいろいろな呼称があります。日本の省庁は離合集散がありましたので環境省の省令であっても過去を引きずって名称が厚生省規則いうものもあります。
法律、施行令、省令を合わせて「法令」といいます。これらが日本で強制力をもつ国家の定めということになります。
しかし、実際の運用において法令だけでは手順が不足で、もっと具体的詳細を決めないと動かないことになります。告示とか通知、通達というものがこれにあたります。
ほとんどの法律の適用運用にあたって、法律のグレーゾーンとか、法律で決めていないところは通知通達で動いているのです。
環境省が出した通知通達で今現在生きているのが1000件くらいあります。覚えるどころかどのようなものがあるのか概要を知るだけでも大変です。中には矛盾するような通知もあり、省庁に問合せても回答も一意ではありません。謎です。
環境省は通知などを公開しているからまだいいです。経済産業省などは通知をインターネットに公開していないので・・・いちいち問い合わせないとなりません。
これらは法令ではありませんから、本当に強制力があるのか? 守らないといけないのか?
グレーゾーンで困ってしまいます。
自治体の議会は「条例」を定めます。
それぞれの自治体は好き勝手にどんな条例でも制定してよいのか? というとそうではありません。
自治体が決めることは限定されています。
議会ではなく自治体の部署が定めるものを要綱といいます。通知・通達は法令を補う性質ですが、要綱には条例を展開したものと、条例がなくて行政(知事なのか?官僚なのか?定かではありません)の意向として出されるものがあります。
日本中の多くの自治体は極めて多くの要綱を作っています。これは『要綱行政』と呼ばれて、民主主義に反するといわれています。
たとえば、産業廃棄物を他県から持ち込むとき、県知事の許可を必要とする決まりを多くの県で定めています。これを通常「事前協議」と呼んでいます。さて事前協議を、条例で決めている県はほとんどなく、大部分は要綱で決めています。全国に先駆けてこれを定めた千葉県も要綱です。
PRTR制度を全国に先駆けて運用した福島県も条例でなく要綱で決めてました。
条例でない要綱には従う義務はなく、罰則もないのか? と疑問を感じますが、怖くてそんなことを言い出す人はいないようです。
もっとも行政側も高圧的なことはしません。それは申し上げておきます。
福島県ではPRTR要綱の運用にあたり極めて低姿勢で「お願いします」を連発していました。
神奈川県では法規制以上の文言を廃棄物契約書に盛り込むよう指導していますが、それに従わなくても文書で是正命令は出しません。
そんなことをすると、裁判で負けるからかもしれません
愛知県では条例で決めている廃棄物業者の現地調査についても「しないと摘発する」とはいわず、「是非お願いします。」といい、実施しなくても罰則はもちろん書面による指導もしないとのことでした。
ルールや運用が不透明な自治体が多い中で、東京都の条例や指導は明快で全国的にピカイチであることを申し上げておく。
では現実の法律ではどのような状況でしょうか?
水質汚濁防止法とか大気汚染防止法という法律では、関る地域が全国的あるいは広域です。よって「法令」で基本骨格を定めています。
他方、振動規制法あるいは騒音規制法というのはその影響する範囲が狭いために「法令」で基準などを決めてはいるものの、それを適用するかしないかの地域の指定を「知事の権限」に振っています。
だからその自治体でどのように規制しているかは法令を読んでもわかりません。条例や要綱をみないといけません。
10年位前までは条例を調べるのも大変でした。市役所の担当部署に行って頭を下げ教えてもらいました。
まさかお土産まではもってきませんでしたけど。
労働組合が応援した市会議員に口利きしてもらうと、向こうが低姿勢で相手をしてくれました。これってパブリックサーバントであるという主旨に反するのではないでしょうか?
というより大幅に間違っていると思いますが・・・
公僕といいますが、その態度はお役人さまさまでした。貴様の給料はワシの税金ということを知っておるんか!
今は県条例も市条例もすべてインターネットに掲示されていますので、わざわざ市役所まで出かけなくても日本全国の条例や要綱を見ることができるようになりました。
更に
!今の公務員は分をわきまえているようで質問してもえらぶった態度はとりません。これは10年、15年前のお役人様の態度を思い返すとものすごい変化です。
日本が封建主義から民主主義になったのはインターネットのおかげでしょうか?
ソ連崩壊は衛星放送のおかげといわれています。中国の民主化はインターネットにかかっているのでしょう。だからこそ中国はインターネットを管理しヤフーを懐柔し、北朝鮮は携帯電話を禁止するのでしょうか?
本日は国際政治まで論じてしまいました。
おお!忘れておりました。
法律の中にはまたいろいろあります。
労働安全衛生法というのがあり、環境とも無縁ではありません。
この法律を読むと法律の理念は分かるのですが、いったいなにを決めているか分からないということが良く分かります。
普通の法律には施行令がひとつ、省令がひとつというのが基本スタイルです。省令が複数あっても消防法のふたつ・みっつという程度です。ところが労働安全衛生法の省令(規則)は両手両足で足りません。
要するに規制の具体的なことを省庁の課長とかが決めているわけです。
要綱行政これにきわまれり
法律は施行されるために制定されるのでしょうが、制定されてもなかなか施行されないものもあります。もちろん対応にいろいろ準備が必要な法律を制定したら即施行ではたまったものではありません。
ですから実際には準備が必要な法律の制定や改正の時には施行まで、短くて半年長ければ1年以上の期間が取られています。PRTR法のときは2年くらいありました。
しかし制定されても施行されないものもあります。ひとつの法律の全部が施行されないということはまずないでしょうけれど、法律で定めている一部が施行されないというのはよくあります。
たとえば廃棄物のマニフェストの交付状況を毎年行政に報告するという決りがあるのですが、これは平成12年に制定されましたが施行は平成19年からです。
法律は本文だけ読んでいても例外規定とか施行の停止などは分かりませんから、末尾にある附則まで読むようにしましょう。
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