省エネ論 2007.10.13
まずお断り、省エネ論なんていってもたいそうなことじゃありません。私は省エネについては素人です。日本には省エネの専門家が大勢いらっしゃいます。専門家でもないのに省エネ論とはおこがましいのでありますが、まあ、適当なタイトルが思いつかなかっただけです。

ところで日本に大勢の省エネの専門家がいるのですが・・・京都議定書達成のめどがつかないというのは環境七不思議のひとつ・・あるいはみなさんは本物の省エネの専門家ではないのではないのだろうか?
より大問題であるが、残りの環境七不思議をあげろといわれると・・

ある工場に行ったときの事、そこのエライサンが言いました。
ondokei.jpg 「省エネ省エネといって空調温度をあげると汗をかいて仕事にならないのよ。だからワシは冷房温度を下げていいからちゃんとした仕事をしろと言っている。
冷房温度を1度下げると年間何百万か電気代がよけいにかかるとか、環境省がだめだとかいっているとかいうけれど、考えてみい、仕事の能率が悪くなったり、品質が落ちたりしたらお客様に申し訳ないし経営上目も当てられない。気分よく仕事をしてもらい、能率が上がり良い品質のものができ不良率が下がればそれこそ省エネじゃないか」
まさしく同意、空調温度を下げるばかりが省エネじゃありません。なにごとも包括的に考えなければ良い結果はでません。部分最適が全体最適にはならないのです。
木を見て森を見ないといいますが、それとまったく同じではないですか。
紙ごみ電気の環境活動を笑うなら、冷房温度を上げて、仕事の能率が下がり、質が下がる現実を指摘しなければなりません。

聞いた話ですが、家電製品を作るさいの工場の消費電力と製品寿命の間に消費する電力の比は、40倍から50倍になるそうです。
ところで省エネ法という法規制がありまして、ある基準以上の電気や燃料を消費している工場やビルはエネルギー管理指定工場となり省エネが義務となります。
これが日本産業の空洞化の一因でもあると言われています。
また一方、法律で定められた製品は省エネを図ることが義務化されており、例えば自動車やエアコンや冷蔵庫などエネルギー効率を上げていかなくてはなりません。まあ、そういうことになっているのです。
私は思うんですが、製品が消費するエネルギーを大幅に改善した場合、工場での消費エネルギーが若干増えても許容されるのではないでしょうか?
大幅どころか、製品の消費エネルギーを1%減らせば、製造時のエネルギーを4割り増しにしてもつりあうことになります。
製品の消費する電力量が製造時の40倍と聞きますと、私にはそういう選択肢があってもよいように思います。
現時点、法規制ではそのようなトータルでの評価ということはなく、工場は省エネしなさい、製品は省エネしなさいというばかりです。

省エネの専門家という方と話したことがあります。
お断りしておきますが、私は省エネなんて門外漢です。
蒸気や圧縮空気や電気などの節約についていやあものすごい知識です。工場省エネについてはさすがという感じです。ではオフィスの省エネはどんなアイデアがあるのか?と思いましてお伺いしました。
すると、空調のデマンドコントロールとか、照明については外光の活用とかインバーター制御なんてことを話すんですよ。なんかちょっとというか大きくはずしているのではないかという感じでありました。
私は工場省エネでもオフィス省エネでも、インプットを下げるだけではそれこそ部分最適だと思います。
仕事の機能や目的を包括的に考えて省エネをすべきなんです。あるいはそれは省エネではなく、費用削減かもしれないし、生産性向上かもしれない。いずれにしても省エネという切り口だけでは視野が狭いことは間違いない。

オフィス省エネとはどうあるべきか?
現在の日本では、オフィスのエネルギーの3割は空調、4割が照明、3割がコンセント(OA機器など)となっている。
パレートの原則から上位7割をとって簡単に
 (オフィスのエネルギー)≒(比例係数)×〔(空調)+(照明)〕
ところで空調と照明はオフィス面積にほぼ比例する。
よって、
 (オフィスのエネルギー)≒(比例係数)×(オフィス面積)
と考えてよいのではないか?
オフィスのエネルギーを減らすためには、比例係数を下げるか、オフィス面積を減らすことである。
ところでオフィスの家賃は当然床面積に比例する。丸ビルでは坪家賃が7万とか8万と聞いたことがある。それは別格としても、山の手線内であれば高ければ坪5万、安くて2万弱というところだろう。
これは坪単価であるので、オフィスワーカー一人当たり4坪ないし5坪として、オフィスビルの一人当たり家賃は安くて月7万から高いところでは25万円となる。働いている人のお住まいの家賃と比べてギョっとすることは間違いない。
企業のブランドイメージもあるので、いくら家賃が安いといってもあまり下町ではかっこ悪いかもしれない。だが会社経営から考えると、家賃は安い方が良いのだから面積を減らせば固定費は減る。家賃が下がり同時に消費エネルギーも減ればハッピーではないか。
オフィスの面積なんて減らせないよなんていっちゃいけません。いったい全体オフィスの用途には何があるのか? もちろん働く人をブロイラーのように密集させてデスクを並べても意味ありません。通路を狭くするのも建築基準、消防法から限度があります。応接室を狭くしてはお客様にみっともない。でも書類とかガラクタ置き場が結構あります。会議室だってサイボウズなどで管理すればより少なくできるのではないですか?
スペースを減らすには、保管しているデータを紙の資料から電子データへの変更を進めるとか、サーバーは自社内に置かずにコロケーションサービスを活用するなど工夫はあります。
コンセントからの電気が3割ということは、それがすべて最終的には熱つまり暖房になっているということです。OA機器の電気使用量を下げることは室温を下げ空調エネルギーを減らすことと同義です。
サーバーを外部に置くことはサーバーの電力が減り、空調の電気使用量が減り、文書管理のリスクを減らします。
更に考慮することは、オフィスワークの能率向上です。
今している仕事を止めることはできないか? 今1時間かかっていることを半分にできないか? 人がしないで自動化、電子化できないか? 都心のオフィスでしないでアウトソースできないか? 都心のオフィスの中のコンピューターでなく地方においたコンピューターでできないか、分散処理できないか? そういうことを考えないといけません。
そういったことは、すべて省エネだけでなく、固定費削減、リスク低減、納期、人件費などなどの改善となり会社経営に寄与します。
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オフィスで働く人のパソコンのスキル向上が空調温度を1度下げるより省エネに寄与することは保証する。仮にオフィスで働く人の能率が今より1割向上すれば、省エネだけでなく、人1割減、面積1割減が実現できる。
オフィスソフトを使いこなせない人はオフィスで働く資格がない。厳しいようだがこれは真理である。
温度を1度下げたとしてオフィスのエネルギーの何パーセント減りますか? 能率が下がって時間外が増えたらまったく無意味。働く人のパソコンスキル、業務遂行能力向上は、売り上げ増、時間外減、みんなハッピー
もちろん、オフィス省エネにはそれだけでなく、フレックスタイムの是非、SOHOなども合わせて検討すべきです。
そういうことをしないと、節約だけのケチケチ発想しかできず、暑いオフィスで能率悪く、時間外が増え、悪循環に陥るばかり 

昔、私が現場監督だったとき、生産性をあげましょうとか、不良をなくしましょう、なんて作業者に言ったことはなかった。そんなことを言って相手が乗ってくれると思ったら人間を扱うには10年早い。 
人を動かすには、相手の利益になることを説明し誘導しなくてはならない。
少しでも楽に仕事ができるように工夫しましょうというのです。重いものを持たないように、手足を動かさなくてもいいように、立ってなくて良いように、長時間働かなくてよいように・・
そういうふうにするために協力してくださいと言わないと人は付いてきてくれません。
省エネは国民の義務だ、地球温暖化を止めろ、資源は枯渇する・・そんなこと働く個々人には直接的な利害も縁もありません。
働く人は快適な環境で能率を上げて良い仕事をして早く帰りましょう。そして会社は利益を上げて費用を削減して、国家規模・地球規模では省資源を図り二酸化炭素排出量を削減できればいいじゃないですか?
省エネとはリエンジニアリングだったのです。
そういうアプローチをしないと、みなの協力を得られず長続きしません。

私はいつもそんなことを語っているのだが、趣旨には同意いただけても、実行いただくことは難しい。なにしろ省エネ法のしばりがあり、目の前の数値目標のハードルを越えないといけないから。



まいどおなじみのふっくん様からお便りを頂きました(07.1014)
昔勤めていた会社で、環境ISOなるもの、あるいはチーム6パーセントなるものをしていましたが…現場の連中に言わせれば、全く意味のないこと!と断言しておりました。まぁ、細かい話は抜きにして、彼らが望んでいたことはISOをするならしたで、達成したら報奨金を出せとか、早く現場を片付けて帰ろうとか、いかに効率よく仕事を片付けるかということに終始しておりました。
トップの話など現実離れした理想論で…それこそ竹やりでB29を落とすようなものだ。現場はそんなもんじゃ動かない、これをよく聞かされていました。これを見て私もISOのやり方を考えねばならないなと感じたわけであります。
えてして「部分最適、全体最悪」というのはもう標準化された今の会社の姿かもしれません。ISOにしてもそんな感じになっているのでしょうか?ここの項目はクリアしていても全体として機能していないISOを私は色々見聞きしました。(そちらのHPからも拝見させていただきました)
以前話に出した、車にしてもそうでしょうね。一つ一つの燃費は驚くほど改善されても、絶対数が増えたからぜんぜん環境対策の歯止めが効かない…
究極の省エネ論は、答えのない永遠の人類の問いかもしれませんが、ぜひ今年のノーベル平和賞受賞者に教えを請いたいものです(大笑)
ふっくん様 毎度ありがとうございます。
本音と建前、理想と現実、そうは言っても、まあ人生さまざまなしがらみで生きておりますので・・お互いに苦労しますねとしか言いようがありません。
しかし、無駄金は死に金、せめて株主か従業員に払って欲しいもの
でも、ガリレオは言いました「それでも地球は回る」
ISOのウソがばれて、いつかはこの世に正義がもたらされますように
なんて  真面目になってはこのウェブサイトの本意ではありません。
面白くなければ生まれてきた甲斐がない・・・駄洒落なくして人生は完成しません。

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