4.5.2 順守評価 3 2007.09.22
仕事をしていて変だと思うことがある。
ISO9001でもISO14001でも認証を受けるには、規格に適合していないといけないのは当然である。認証とは規格適合の証明なのだから、そうでなければ語義矛盾である。
しかしISO認証している会社が本当に規格を読んでいるのか、規格に合ったシステムを作っているのか? man7.gif  更に言えばISO審査では規格適合を確認しているのかとなると、疑問が多々ある。
ISO14001では組織が適用を受ける法規制を調べ守りなさいという要求がある。法律を守れなんてこと、わざわざISO規格で要求するまでもなく、日本にいる限り個人としても法人としても当たり前のことだ。最も生きていくうえで最も基本的な道を歩くことでも信号機や道路標識を覚えてそれに従わないと法律に違反するだけでなく、事故に会ったり人に迷惑をかけるのはいうまでもない。
深夜、女子中学生がスクーターに二人乗りしてパトカーに追いかけられたあげく、事故って大怪我をしたなんてのは、もう論外である。昔なら親の顔が見たいというところである。
さて、ISO規格ではどのように書いているのか?
4.3.2 法的及びその他の要求事項
組織は次の事項に関わる手順を確立し、実施し、維持すること。
a) 組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。
b) これらの要求事項を組織の環境側面にどのように適用するかを決定する。
組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持するうえで、これらの適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を確実に考慮に入れること。

このように、ISO14001の認証するには環境に関わる法規制を調べることは必須条件である。じゃあISO14001認証している会社は自社に関わる環境法規制を把握しているかというと、ほとんどの場合そうとは言えず、せいぜいが環境法規制の概要をまとめているだけである。
単に環境法規制について書かれた本を丸写しか、あるいはそれを要約しているだけのような気もする。
規格のa項をよく読んでみよう。
組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。
組織(会社)の環境側面に関係する法規制を特定し利用できるようにしなさい。ということである。よく読んでほしいのだが、環境に関わる法規制を調べなさいとは書いてない。あなたの会社で関係する環境法規制を特定し利用できるようにしなさいということなのである。これはちょっとした違いではなく、きわめて大きな違いである。
それぞれの組織(会社)は、所在地も異なる、設備も異なる、働く人も異なる、製品も事業も異なるだろう。所在地が異なればその地で適用される規制基準も、自治体が定めた条例も異なる。要するにまったく同じ組織は二つとないのだからそれぞれの組織が自社に係る法規制を調べなければならないことになり、その結果はすべて異なることになる。
自分の会社がどのような法規制に関わるのか、知らなければ法規制を守ることはできるはずがない。
その会社の管理者や監査部は、その会社が法律を守っているかいないかをいったいどうやって確認するのだろうか?
第三者審査機関ならその力量(?)でもって、その組織が法規制を守っているか否かを確認することができるだろう。しかしISO規格で定めている順守評価、つまりその会社が法規制を守っているか否かを点検しているかを確認しなければならないのだが、まさかそれは不可能だろう 

法律を知らずして法律を守っているかを点検することは不可能で、そのような状態を見て法律を守っていることを点検していることを確認したと、お墨付きを与えることは論理的に困難なように私の頭では考える。
先日も順守評価の問題を提起したが、良く考えてみれば、組織も審査機関もISO規格の要求事項をちゃんと理解していないのではないだろうか?
論理的に考えよう。
規格を理解して組織をそれに適合するように作り上げた。審査機関は規格に基づき審査を行った結果、規格に適合していると判定し認証した。
人は神様ではないから確率的に間違いは発生する。その結果、違反や事故が起きることはありえる。
しかしその間違いは細胞が再生するように組織のフィードバック機能により修理され再発が防止される。そのときシステムは規格に適合していることが立証されたとしても、不適合であることを意味しない。よって事故違反が起きようと、認証の辞退も取り消しも停止もありえないのではないか?
とすると事故や違反が起きて、認証の辞退や停止があるということは、仕組みが元々規格に不適合であって気付かなかったということであり、それは審査の質が低いということに過ぎないのではないか?
組織の質が低いなら認証しなければ良いだけの話であって、組織が悪い、仕組みが悪いという論理はない。

環境活動がマンネリしている。ISO14001認証して数年たってもうやるべきことはし尽くした。なんて話を聞く。
本当かよと思う。思わない人はおかしい。もちろんそんなことを言う人はもっとおかしい。
簡単な事例をあげる。京都議定書が達成困難だと言われている。もうやるべきことはすべてやり尽くしたという会社ではとっくの昔に京都議定書の目標を達成しているのだろうか? 業界ごとに必死に知恵を出して何とかしようとしている状態である。やるべきことをやり尽くしたのかもしれないが、成果を出した会社は少ないだろう。じゃあ、一層の環境活動をしなければならない。
もうひとつ例をあげる。
これだけ環境法違反とか環境事故が起きている。知らない人は環境に携わっていない人だ  環境活動をやり尽くしたという会社では、決して環境法違反も環境事故も起きないのでしょうね?
環境活動は重荷になるはずはない。省エネをすれば費用が浮く。廃棄物が減れば費用が削減できるだけでなく、リスクも減る。埋立していた物をリサイクルするようにして費用がアップしたなどというのはどこか考えが間違っている 




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