文書管理 2007.01.09
ここの項番では記録を除く文書の管理を定めています。
文書にはどのような種類があるのでしょうか?
通常文書とは狭義の文書を意味し、承認・識別・版管理・発行管理されるものをいう。
では広義の文書とは何か? となるが、狭義の文書のほかに、記録、データ、外部文書などの他に発信文(通知)、掲示物などもある。
ISO9001:1994ではデータとは様式を意味した。今はどうなったのでしょう。
狭義の文書といっても、その形態は紙ばかりでなく、ウェブへの掲載、見本、ビデオテープなど多種ある。現在は紙ベースで作成・決裁されたものでも運用時はpdfにしたものが正となることが多い。
『正』とは「せい」と読み、正規なもの基本として使われるものをいう。
「当社の規則はウェブにアップしてあるものを正とする」などという風に使う。
ここでは文書の管理の基準を定めています。
一般的にどの会社でも「文書管理規則」あるいは「文書管理規定」などと名前の運用ルールを定めています。
定めていないですって? おかしいなあ?
どの会社にだって就業規則ってのはあります。(労働基準法で就業規則を定めなければならない)
しかし、就業規則だけでなく、職制やその職掌、契約や出張旅費の決裁者、仕事の手順・会社の会議などを決めた文書があるはずです。そしてそういったルールがあれば、当然そのルールの管理を定めたルール(文書管理規則)があるはずです。
ないはずはありません!
私はいくつもの会社で文書管理のルールを見ているが、だいたい基本的なところは押さえている。文書管理というのは昔から具備すべき要件が考えられており、会社によってまったく違うとか重要な要件が漏れているなんてことは・・・あまりない。
もっとも皆さんもご存知のように、現実の運用はどうかというと規則を守っているとは言いがたいですね 
どのようなことを決めているかといいますと・・・実はISO規格で要求していることなんぞ常識的なことですから、とっくの昔から盛り込まれているのです。
それをISO14001の4.5.5項と対照すると次のようになります。
ふつうの会社の文書管理規則で決めていること
ISO14001 4.5.5項
文書の制定方法
作成者、チェック者、承認者
a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
文書の定期または随時見直しb) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。
文書番号と改定記号
改定欄があればいいですがなくても不適合ではない。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
文書の配布先
配布方法
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
文書のコピーの方法
ファイルの方法
e) 文書が読みやすく、容易に識別可能な状態であることを確実にする。
これについては定めていないかもしれないf) 環境マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書が識別され、その配布が管理されていることを確実にする。
旧文書の取り扱い方法g) 廃止文書が誤って使用されないようにする、また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。

あなたの会社でも上の表の左側については決めているはずです。
でも、私の経験から現実には規則通り運用しているところは少ないです。
例えば、
 ・コピーしたものを実際の仕事で使っていたり
 ・使われているのが古い版(バージョン)だったり
 ・旧文書を裏紙に使ったり
 ・その他もろもろ
ルールを定めるのもむずかしいですが、ルールを守らせること、そして継続して運用するのは更に困難なことです。

いずれにしても、過去からある会社の文化といいますか、既にある規則、決まりごとを最大限活用しなければなりません。
ISOなんて新しい文化ではないのです。ISOの審査とは、自分たちの会社が過去からしていることを、外部の第三者である審査員に説明して理解してもらうのです。
自分たちの会社の文書に関するルールがISO規格を満たしている・・あるいは規格以上である・・なら改めてすることはなにもありません。

ところで、文書とは「会社規則」とか「○○手順書」というものばかりではありません。
なんらかの決まりや通知、あるいは議事録に責任者が押印したものも立派な「文書」です。
現実の会社は生きて動いていますから、問題が発生したときなどは打ち合わせをしてその議事録で暫定的な会社の手順や仕様とすることは当然のことであり常態です。
たとえば最近のRoHS規制あるいは中国版RoHS規制などへの対応は、当事国でさえ煮詰まっていないときに輸出企業は準備し対応しなければなりません。そういったものはどの会社でも正式な文書にする前に、種々の会議結果の議事録あるいは業界団体からの通知(外部文書)などで動いているはずです。
そういった一過性あるいは暫定的な議事録や通知も正規の文書の一部であること、そしてその運用も正規のものであるのは当然です。
理想というか架空の文書管理を頭に描いて、流動的で例外の多い現実から目をそらしたり隠そうとしてはいけません。このような実態をそのまま会社の仕組みとして位置づけてISO審査のときに示さないと、バーチャルなシステムへの坂道を転げ落ちることになります。
「議事録は記録だ!(狭義の)文書であるはずがない」なんておっしゃる方がいるかもしれません。
そんなことはありません。会議の打ち合わせ結果の議事録が生産指示書であったり、仕様書であったり、製作図であったり、検査規格であったり、手順書であったり、命令書であるなんてことはザラにあることです。
現実の会社が教科書通りに例外なく動いているなんてことはありません。
現実の会社の動きをそのまま記述したものでなくて、なんの意義がありましょうか?
異議ありません 

これは会社ばかりではありません。まさしく官公庁のやりかたそのものです。法令(法律、施行令、省令)やその下位規則は継続的なルールであり当然指示文書です。しかし実運用に当たっては、行政部門(省庁や自治体)がそれらを展開した告示、通達というさまざまな文書があります。これらの文書には衛環、環産など官公庁の部課名を冠して発信年月が付記されます。
quest.gif
しかし官公庁の通知で問題なのが、一過性なのか恒久的なのか、今現在その通知が有効なのかが判然としないことです。
なにしろ環境省だけで生きている通知が千くらいあるのですから、その中の昭和○年○月発信の通知が廃止されたのか?変更されたのか?などを知ることは至難の技、たとえば廃棄物処理法の解釈などは環境省の課長の通知として都道府県に発信されます。その内容が変更された場合、改定履歴もなく発信年月はそのままで環境省のホームページにあったりするのです。これじゃあISOの文書管理に不適合ですよね
しかし我々は現実にそのような条件で仕事をしているのです。
だから○年の通知でこうですよと監査とか指導をしていて、ある日突然環境省の通知が変わっていることに気づき愕然とすることもあります。(驚)
審査機関が行政の文書管理に文句を付けず、弱いものいじめをするのはいかがなものか?(怒)
と言いましても、私は自分が弱いものとは思ってませんけど(笑)
話を戻して、
議事録や責任者が発信している各種通知についても継続的に関係者がアクセス(閲覧)できるのか?
受信部門は発信された通知を、それ以降たとえば1年後に見ることができるのでしょうか?
いついつの議事録で決めたとしても、時間が過ぎれば知らない人もでてくることは現実に起こるでしょう。
そういうことに対して規格で求める要件を満たすことが必要ですが、この辺の検討は会社ごとに考えて条件を整備しなければならないでしょう。
そのような事例があるのか?というご質問があるかもしれません。そういう事例はたくさんあるのです。知らない人は会社勤めをしたことのない人です。 

ウェブへの掲示もあります。
ウェブ掲載のものを文書とみなせるかは、ISO規格の要求を満たすかどうかにかかっています。 外部文書の話
04年版で外部文書というものが追加となりました。
外部文書とはいったいなによ? どこまでなの? というのが21世紀最大の謎なのですが、いまだ判然としません。
私は行政のパンフレットやビル管理会社のごみの出し方などの指示が該当するものと考えていましたし、今までそのように指導していました。
ところがギッチョン、実際の審査では、「法律もISO14001規格も外部文書である」という審査員様もいます。
確かにそれらは外部からの文書ですし、環境マネジメントシステムの計画及び運用のために必要ではありますが・・・これらの配布をどう管理せよというのでしょうか?
まさか会社にISO規格を持ってきちゃいかんとか、電子政府から法律をダウンロードしてはいけないとか、必要があって環境省の通知を見る前にそれを必要な外部文書にリストアップしろとか・・・笑うしかありません。
ISOTC委員にお聞きしましたら、そういう疑問(愚問)は多々あり、今後解釈を統一していかなくてはならないとのことでした。
04年の改定からISO審査で外部文書について不適合を言われた会社が多いという事実は、今後この外部文書の対象範囲をはっきりさせることが必要でしょう。

完璧で維持管理が楽な文書管理というものが存在するのかどうかは分かりません。しかし今後EMSをお守りしていく人は、ハイパーリンクの時代にはどういう文書管理を目指すべきかを考えなくてはならないでしょう。


本日のまとめ

現実に会社が動いているなら
 現行の文書管理は規格適合のはずだ


なんか今回はまじめな優等生モードでありました。 




Yosh様からお便りを頂きました(07.01.12)
何度もお訊ねしますが。
どうしてISOが必要なのでせうか?
以前の方法が駄目なのですか?

Yosh様 毎度ありがとうございます。
ええとですね、ISOが必要というのもおかしなことなのです。
そもそも、ISO特にISO9001は貴国のMIL規格(軍事規格)が源流なのです。詳細はこちらを読んでいただくとして、簡単に言えば・・・
軍隊がいろいろなもの、武器弾薬ばかりでなく、軍服、毛布、靴いろいろなものを大量に購入します。そのときいちいち受け入れ検査をするのが大変だから、生産者が製造工程をキチットしてほしいと要求しました。材料の管理方法、作業者の訓練方法、図面の管理方法、などです。そういった規格(要求事項)を守れば一定品質のものが生産できると考えたのです。これを品質保証要求といいます。そしてこの品質保証要求を満たすところから購入することにしたのです。
その考えは間違いないと思います。
民間でも大量に購入するところはいちいち検査するのは大変だからと買い手が売り手に品質保証を要求しました。まあ、なりゆきでしょう。そして売り手は買い手の求める管理をするようになりました。
ところが、買い手がたくさんいて、それぞれが異なったことを要求すると売り手が困ってしまいます。そこで要求事項を統一しようとしたのです。まあ、これも妥当なところでしょう。そういういきさつから国際標準化機構(ISO)で品質保証の国際規格を作ったのです。どの買い手もこの規格で売り手に要求すればみんながハッピーになるだろうと思ったのです。1987年のことです。
ところがそこで頭のいい人が、買い手から要求されていなくても、ISO規格に製造工程が合っているか見てあげてお金をもらうという商売(ビジネスモデル)を考えたのです。これが今のISO第三者認証システムです。
お断りしておきますが、ISO規格には罪も責任もありません。人のふんどしで相撲をとる人がいて、規格はふんどしになったというだけのこと
だから、自分の品質に自信があれば「うちはISO規格なんて軽く越えているのでわざわざ観ていただくことはありません」といってもいいのです。実際にそういう会社もあります。

だからYosh様のおっしゃるような「以前の方法が駄目なのですか?」というより、以前の方法で良いのですよ。
拙文でも申し上げておりますが、どの会社でも昔から仕組みがあります。なかったら会社が動きません。
Yosh様の会社にももちろんルールがあります。
どのくらいの損益だったら受注する、受注しない。あるいは受注するかしないかは誰が決裁するのか。相手から頂いた図面はどのように保管するのか。作業者を雇うとき仕事につける前に腕前を見てどのような仕事をさせるかさせないか。
そういう仕組みは大企業であっても個人企業であってもあります。もちろん場合によっては親方の頭の中にあるということもあります。
ところが、ISO認証を受けると品質が良いと思われるという風潮ができたもので、お客様から要求されなくてもISO認証しようというところが増えてきました。
そして会社の仕組みをよく調べて、調査に来た審査員(auditorといいます)説明しなくても、簡単にOKをもらうことが良いと考えられるようになったのです。だから貸衣装をもってきてかっこいいところを見せる会社が増えているのです。というよりそういうところばかりなのかもしれません。
・・嘆かわしいことではありませんか?
これだけ満たせば品質が良くなるだろうと考えられた要求事項なのですが、今現在は品質と関係なく手っ取り早く要求事項を満たすことがかっこいいことと思われるようになったのです。
だから会社の昔からのやり方を隠して、審査員が来たときウソをついてOKをもらう方法が広まったのです。
それが『ISOをする』ということなのです。
本来なら、『ISOに合っているのを確認してもらう』ことだったのですが・・
そして今現在うそ800のISOが世の中に広まっているのが事実なのです。私のこのホームページのうそ800はそこから名乗っています。

しかし、人は馬鹿ばかりではありません。役に立たないISOならやめてもいいじゃないかと考える経営者や管理者が増えています。だって審査してもらうのに毎年何百万円も払わなくてはなりません。さらにうそをつくための要員を雇っておかなくてはならないのです。この審査費用と人件費に見合った効果があればよいのですが。ところが最近製品不具合とか環境事故などが起きるのはISO認証していてもしていなくても違いがないということもばれてきました。
「王様は裸だ!」という会社が増えているのです。
ISO関係者にとっては困ったことになりました。
そんなことで、日本では「ISO認証をやめます」という会社がどんどんとでてきています。私が何年も前からいずれこうなるだろうと思っていました。常識のある人間なら見通しはできたことです。
それはISO審査機関、審査員にとって死活問題です。20年前、濡れ手に粟というビジネスモデルを作ったのですが、なんかビジネスがなり行かなくなりそうな雰囲気です。
さあ、どうなるのでしょうか?

だからYosh様の「以前の方法が駄目なのですか?」に真正面から答えるならば、「以前の方法を示していない会社が駄目になるでしょう」ということになるでしょう。
「以前からの方法をISO審査で示していた会社は駄目になることは決してないでしょう」

私はISO規格はすばらしいものだと信じています。会社の仕組みがISO規格を「本当に」満たせば会社は良くなると信じています。第三者認証というのはあだ花であると考えています。


Yosh様からお便りを頂きました(07.01.13)
だからYosh様の「以前の方法が駄目なのですか?」に真正面から答えるならば、「以前の方法を示していない会社が駄目になるでしょう」ということになるでしょう。
「以前からの方法をISO審査で示していた会社は駄目になることは決してないでしょう」


新しく事業を起こして、会社の組織運営、物の規格等をISOに依存するには問題は無いのではと思ひます。

私が言ひたかつたのは、既に在る会社がその会社の方法で自社開発の製品を製造して販売し利益を上げていると言ふことはその会社のSystemが既に機能している、と言ふことでせう。それでは駄目なのか、なのでした。
ただ製品に使用されている汎用の部品、他の機材との連結(例えばコンピューターとプリンターの接続などの多機種との標準化)は規格に合わせるのは至極受け入れられますが。

事業はどの職種でも同じでせうが、特異性で成り立つています。例え連鎖店の如く統一された製品の供給にもその会社にそれ相応の規格をを持たなければならないでせう。
それらを一元化をすると言ふことなのでせうか。
多分、私は全然分かつて無いやうです。

Yosh様
あのですね、ISO規格は標準化を求めていません。企業はすべてユニークでありそれが当然です。
そして、会社が機能していれば(機能していない会社はつぶれます)ISO規格適合なのです。だからISO規格に会社を合わせるのではなく、会社がISO規格を満たしていることを説明するのが本来のといいますか正しいありかたなのです。
現実はどうかといいますと、会社の仕組みを正しく説明することより、規格に合っているとウソといいますか仮の姿を説明する方が簡単なのでそういうことをする会社があるというより・・・大多数なのです。
それがおかしい!とおっしゃるでしょうが、それが現実なのです。
不思議なこともあるものです。

Yosh様からお便りを頂きました(07.01.14)
現実はどうかといいますと、会社の仕組みを正しく説明することより、規格に合っているとウソといいますか仮の姿を説明する方が簡単なのでそういうことをする会社があるというより・・・大多数なのです。

そうだつたのですか。
だから分らんかつた。
自分の事業が機能してるのを判らんで居るのでせう、そんな会社傾き始めてません?

傾くかどうかは会社の規模と利益次第でしょうね。
ただ無駄な費用であることは間違いありません。
そして今現在、無駄だと気付き始めている人が増えていると言うのが事実です。
ただ、みながISO認証をやめるとまでは言い出していないのも事実です。
もちろん、ISO認証をやめるのはかまいませんが、ISOにあった会社の仕組みをやめては困りますよ。


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