第21条2項 (2004.08.01)
「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」

個人のプライバシー保護の根拠は憲法13条の「幸福追求」にあるそうです。「・・・そうです」というのは現憲法ではプライバシー保護とか通信保護が不十分であるという説もあり、いやそれどころかその理由によって改憲が必要と語る人もいるからです。
いずれにしてもこの条項は個人のプライバシーを保護しているのではなく、国家による検閲と通信の秘密保護を定めているらしい。
らしいというのはこの文章ではその内容が混沌としてわからないからだ。
 具体的には下記する。

ところで、「検閲」と「通信の秘密」はまったく異なる。この項はまったく異なる二種類の規制を語っている。なぜ分けずにひとつにまとめたのか? その理由に興味がある。
後々、この事項を軽視しようしたい場合に「重要なものは各条に分けている。複数をひとつの条項にまとめているのは重要じゃないんだ」と言わんがためなのだろうか?
「条を分けると重要で、分けないと重要でないなんて理屈があるわけがない!」なんてお怒りにならないで、
そんな理屈は私の説ではありません。司法試験受験用参考書では憲法6条と7条の違いをそう説明しています。すなわち総理大臣と最高裁長官の任命は重要で1条を設け、その他は一括しているのだと・・・
私は同意できませんがな・・・
参考までに原文を示す。
No censorship shall be maintained, nor shall the secrecy of any means of communication be violated.
コピーして翻訳サイトで試してみると面白いですよ。


では各文について愚考してみよう。
第一文「検閲は、これをしてはならない。」
原文にも真の主語はない。憲法は国民が国家に課した制約であるはずだという前提で、主語を補って訳してみると、
    quest.gif
  • 第一案「国は検閲してはならない。」
  • 第二案「国は検閲の制度を定めてはならない」
  • 第三案「国は検閲してはならず、非政府組織が検閲することを禁じ、また自主規制を禁じなければならない。」
  • 第四案「国はいかなる検閲の制度を定めてはならず、非政府組織において検閲する制度を認めてはならず、また自主規制制度を認めてはいけない。」
とさまざまな解釈がわいてくる。
私は上記のどれなのか、あるいはもっと違ったことなのか、分からない。
第一案と第二案、及び第三案と第四案の違いはISOの世界では非常に大きな違いなのです。
それに英英辞典では censor には両方の意味があるし〜
福島みずほのまね 
もし第一案に決まっているだろうとおっしゃる方がいればぜひその根拠を教えて欲しい。私はこのわずか13文字を読んで、その意味するところが一義的に決まるとは考えられない。
ではこの文章の評価は「文字明瞭、意味不明」で大平首相賞  を差し上げるということで・・・・
大平さんて首相在任中にお亡くなりになった方です。がまのような顔をした方でいつも「ア〜、ウ〜」しか言ってませんでした。 合掌
ところで、検閲ってなんだろう?
広辞苑などによると「検閲」とは国家機関に限らず権力を持つものが強制的に行うことらしい。
じゃあ学校の先生が生徒の作文を「お前、平和運動が嫌いか!そんなんではだめだぞ」なんて直させるのは検閲なのだろうか? まさか添削ではあるまい、
昔人気のあった学園ものテレビドラマで髪の長い男の先生が自衛隊に行きたいという少年を「バカ・アフォ」と諭した(?)のは検閲じゃないよね  あれは偏向教育というカテゴリーだろう。
では検閲ではなく自主規制ならいいのか?
朝日新聞の中国や韓国に対する報道規制は「検閲」に該当するのだろうか? 投稿や歌壇の選考基準にイデオロギーを反映するのは検閲ではなかろうか? だって彼らは十分に権力を有しているのだから。
ならば、それは憲法違反なのか?


第二文「通信の秘密は、これを侵してはならない。」
これにも主語を補って訳してみると、
「国はいかなる通信手段についてその秘密を侵してはならない。」ということだろうか?
woman6.gif しかしまてよ、検閲とは権力側が行うことなのだが(前出)、通信の傍受は誰でもできる行為だ。とすれば、この文言は単純に国家権力によるものだけでを禁じたのではなく誰が行うことも禁止したものとも解せる。
そうするとこの条文は
「国は通信の秘密を侵してはならず、また通信の秘密を保護しなければならない。」
となるのだろうか?
つまり、不届きものが誰かさんの通信の秘密をのぞくことについても国家は対策しなければならないと読むこともできるはずだ。

「侵してはならない。」なのだからそう考えるのは間違っているとお考えでしょうか?
英語原文は「通信の秘密は侵されてはならない」なのです。

これはいちゃもんをつけごねているのではない。元々の文章が真の主語のない受身形であるために、「通信の秘密は侵されてはいけない」こと、及び憲法の存在理由から「国民が国家に対してその履行を要求していること」は間違いないようなのだが、「誰の侵害から守るのか?」が書いてないのである。
前の文章では「検閲」の意味が「権力によるもの」なのでからくもこの疑問を逃れている。
その意味はいったい??
ところで、秘密を侵すとはどういったことなのか?
傍受することか?傍受したことを利用することか?傍受したことを漏らすことか?これも定かではない。
 いろいろな学説や判例があるようだが・・・


本日のまとめ

日本語も原文もあいまいで、検討対象外でした。



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