第28条 2002.03.08
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」
憲法では勤労者の団結権を認めていますが、法律で勤労者の団結権を定めているのはありません。代わりに労働者の団結権が規定されています。
勤労者と労働者とは何が違うのでしょうか?
法律でそれぞれを定義しているのは下記のとおりです。
- 勤労者財産形成促進法(昭和四十六年六月一日法律第九十二号)
- 勤労者財産形成促進法(昭和四十六年六月一日法律第九十二号)
勤労者はこの二つの法律において定義されています。いずれも定義は同じで、
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 勤労者 職業の種類を問わず、事業主に雇用される者をいう。
- 労働金庫法(昭和二十八年八月十七日法律第二百二十七号)
第二条 この法律において、「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
- 労働基準法(昭和二十二年四月七日法律第四十九号)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
但し私が調べた限り、他の法律 例えば労働安全衛生法などでは「労働基準法」の定義を引用しており、労働金庫法の定義を引用しているのはありません。
ちなみに広辞苑によりますと「雇用」とは報酬を与えることと労務に服する契約だそうであります。
労働基準法では賃金といってますが、同第十二条で賃金とは通貨以外で支払うものを含むといってますから結果としては同じと見てよいでしょう。
しかし、労働組合法などはすべて労働基準法の定義を引用していますので、憲法28条で使うべき用語としては勤労者ではなく労働者とするのがよいのではないでしょうか?
なぜ、憲法で勤労者といっていながら労働基準法では労働者になったのでしょうか?
憲法は昭和21年11月、労働基準法は昭和22年4月ですから本来なら憲法の言葉を優先して「勤労者」とすべきだったのではと若干疑問に思います。
なお、英文では
憲法27条1項は
All people shall have the right and the obligation to work.
憲法28条は
The right of workers to organize and to bargain and act collectively is guaranteed.
となっており、いずれも”work”ですが、通常使われるワーカーの意味は「働く人」じゃないように思います。
単にworkを勤労、workerを勤労者としたのではニュアンスが異なるように思います。
私の経験では”worker”は”manager”クラスに対する言葉として使われていたようです。
この条文で記述している内容については特段問題ないといいますか、当然のことと思います。
しかし、言葉の定義が不明確でして画竜点睛を欠くといってはいけませんか?
そこで本日の結論
う〜ん、憲法で使用する言葉は、もうちょっと定義を明確にして統一すべきじゃないですか?
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