「条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。」
これだけではチンプンカンプンでしょうから、前条第二項を示しますと、
第六十条 第2項
「予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」
なるほど、
- 条約を結ぶのは内閣
第七十三条 三号「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」
- 条約を承認するのは国会
本条
- 交付するのは天皇
「第七条 一号 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。」
と決めたと言っているわけです。
幾つかの疑問があります。
- 条約と法律の違い?
法律は衆議院で可決後、参院が否決すれば衆院は再度3分の2以上で可決すれば成立します。
一方、条約は衆院で可決後、参院が賛成しようが反対しようが30日たてば成立します。
そうしますと法律より低いレベルで決裁される条約ですが、その価値は異なるようです。
第九十八条 「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」
第2項 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
いつも申しておりますが、第一項には第一項とはつきません。
項番が付くのは第二項以降です。
ところが、他の条文では「○条第一項により・・・」などと引用しますので油断できません。
憲法に反する法律は守らなくてよく、憲法に反する条約は遵守されなければならないのです。
第2項の条約と最高法規である憲法との優先順が学者の間でも議論になります。
でも私は学者じゃありませんからこれは憲法が未熟であり、練られていないためであると思います。
ちょっと、思いついたのですが、憲法改正が困難なら憲法改正の代用として、条約として締結すればよいのではないでしょうか?
どう考えてもこの憲法の文言の記述は論理的欠陥がありそうです。
- 全然別な切り口ですけどこの日本語訳は正しいのでしょうか?
英語原文は次のとおりです。
The second paragraph of the preceding article applies also to the Diet approval required for the conclusion of treaties.
非常に簡単な文章でありまして、不肖おばQにもスラスラと分かります。
「前条2項を条約締結のための議会承認にも当てはまる。」
どう考えても主語・述語は間違えっこありません。
ですが、
この条文では「条約の承認」が実質的な主語となっています。
ここには何か意味があるのでしょうか?
なにしろ日本語にしてはおかしいような直訳がある箇所もあり、意訳ともいえないようなこのような翻訳もあるとは何かがあったのではないか?と私はかんぐります。
「法律では他条項を主語にはしないのさ」なんておっしゃいますか?
そんなことありません。
私が毎日読んでいる法律からひとつ証拠を提示します。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第12条の4 11項
第七条第十一項及び第十二項の規定は、その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者で政令で定めるものについて準用する。
ほらね!
- 国家予算との違い
国家予算は衆議院が先議権があります。
本条で定めている条約は前条第2項のみ適用なので先議権はないそうです。
どうでもいいんですが、いったいいかなる意味があるのでしょうか?
一説には条約は予算や法律と違いスピードが優先されるからだそうです。
スピードが優先されるということは審議は一院でいいわけでしょうか?
そして一院の意思のみ反映した条約は憲法より優先されるわけでしょうか?
まったくもって理解不能な憲法なのであります。
はい、本日の疑問です。