第75条 (2002.10.20)
「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。」

  まず、国務大臣とは要するに『大臣』のことです。

なんか似たような条文がありましたね、
そうです、
50条「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」
でも言い回しが微妙に違います。
ところで、国務大臣は国会議員じゃないのか? それなら75条は重複しているのではと疑問を持たれた方、
国務大臣の過半数は国会議員でなければならない(68条1項)ですが、言い方を変えれば半数以下は国会議員である可能性もあるわけです。
実際どの内閣でも数名の議員以外の大臣がいます。(組閣の目玉ってもんでしょうか?)
ですから重複しているとは言えません。
片方は逮捕といい、片方は訴追といっております。
何が違うんでしょうか?

法律、施行令、規則において逮捕と訴追の定義は見当たりません。
ちなみに広辞苑によりますと、
逮捕とは『人の身体に直接に力を加えてその行動の自由を奪うこと』
訴追とは『刑事訴訟で、検察官が特定の事件につき控訴を提起し且つこれを追行すること』
日本国憲法では逮捕、訴追という言葉は上記条文以外に下記の条文で使われています。
  • 第三十三条  何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
  • 第六十四条  国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
ところで、現行犯であれば官憲だけでなく民間人も逮捕することができます。
そりゃ当たり前ですよね、
人殺しやドロボウを周りの者が取り押さえることを認めなくちゃ治安もへったくれもありません。
字義とおりとれば、
国会議員は逮捕はされないが、訴追されるということでしょうか?
国務大臣は逮捕されても訴追されないということでしょうか?

  嗚呼、また謎が深まります。

おお、そうだ!
虎の巻、日本国憲法原文があるじゃないですか!
    注)マッカーサー憲法草案のことです
  それによりますと
  Article50 apprehension  逮捕
  Article75 leagal action  法的行為

最近出番が少ない、わしゃ不満だ!
なるほど、原文では国務大臣は訴追されるだけでなく逮捕もされないことを保証しています。
翻訳の際、いかなる事情によって言葉が選ばれたのでしょうか?

う〜ん、これもまた 謎!

まあ、これから推察すると、
国会議員は刑事事件に関与しても『逮捕』(身体を拘束されること)はされないが告訴されるよ、
大臣ともなると刑事事件に関与しても『逮捕』はもちろん、告訴もされないということになるのでしょうか?
  もちろん『内閣総理大臣の同意があれば、訴追される』ことになります。
ついでですが、アメリカ憲法では
第1条6節において
上院議員、下院議員は『反逆罪、重罪、公安を害する罪以外で、会期中に逮捕されない』

と定めています。
日本国憲法の『法律の定める場合を除いては』より具体的で公正でしょうね、

また、長官を含めて非逮捕特権はありません。
むしろ第2条4節において
『反逆罪、収賄罪またはその他の重罪及び軽罪につき弾劾され有罪となったときはその職を失う』
とあります。
日本国憲法では内閣は不信任または総選挙後に総辞職をするとありますが、刑事事件で有罪になっても職を失うとはありません。

なぜでしょうか?
日本の大臣は悪いことを決してしないんでしょうか?
だからそんなことまで定める必要がないんでしょうか?
あるいは、大臣になればやりたい放題だよ! ということでしょうか?

  う〜ん、これもまた 謎!


話しは変わりますが、
お前の話は変わりっぱなしじゃないか、なんていわないで・・・

私は法律なんかに関わったことはホンの少しです。
公害の届出とか、危険物施設の届出など、 最近はPRTR法の報告もありますが・・・
とても法律に関わったなんて言えませんね。

弁護士のセンセイ、司法書士のおじさん、行政書士のお兄さん、みなさん、私以上に憲法・法律・規則に関わり、読みこなしておられるのでしょうね、
そういった方々は、この何も知らない老人の持つ疑問などは感じないのでしょうか?
それとも、それらはすべて定義されていて、このような疑問自体がばかげたものなのでしょうか?

  ぜひ、お聞きしたいものです。




ではそろそろ本日のまとめに入りましょう



本条項の言い回しは見直しが必要でしょう、
憲法で使う言葉は厳密に定義し、
正しい日本語で記述したいもの

もちろん、本条項だけでなく、
憲法全文を見直したいですね、



憲法前文は超難解(はっきり言えばどうしようもない)ですから書き直さなくちゃね!




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