第86条 (2003.08.31)
「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」

えー、本日は格調高く国家予算のお話でございます。
国家予算は法律と同じく議会の議決が必要です。
法律が議会で否決されれば廃案ということで、それはそれで困る人がいるかもしれませんし、国家の不利益かもしれません。あるいは国家国民にとってよかったのかまあ場合、場合で異なるでしょう。

ところが、国家予算が否決されますと、これは非常に困ることになります。
早い話が、公務員の給与が払われないかもしれないのです。
公務員には国会議員も含まれることをお忘れなく  

予算が可決成立しないなんてことがあるのでしょうか?
実は大有りなのです。
★★最近の予算成立状況を見ますと
★★★H15 2003年3月28日
★★★H14 2002年3月27日
★★★H13 2001年3月26日
★★★H12 2000年3月17日
★★みな年度末すれすれですね、
★★もっとさかのぼれば何度も年度内に可決成立しなかったことがあります。
★★★昭和53年・昭和54年・昭和55年・昭和56年・昭和57年などなど

国家予算がないともう公費を使うことはなにもできません。
★★北朝鮮から不審船が来たら海上保安庁は燃料代をどう工面するのでしょうか?
★★地震が起きても救助隊の派遣もできません。
★★それどころか官官接待をする費用もありません。
いったいどうするのでしょうか?

不思議なことに憲法で決めていないことを法律が決めています。
財政法30条に「暫定予算」という制度があるそうです。
もっとも暫定予算も国会の議決を必要とするので必ずしも成立する保証はありません。

もっとも予算が成立しないとはいったいなぜ?どういうことでしょうか?
予算は単純多数決ですから、憲法改正のように3分の2以上なんてことはありません。野党の反対があっても可決することは民主主義に則るものらしいのですが・・・・・
毎年国家予算が成立すると『野党の反対を押し切り、○年度予算が成立した』というフレーズが新聞や政党の口からでます。
すみません、『野党の反対を押し切る』ってことはどういう意味でしょうか?
野党が否決には数が足りなかったということでしょうか?
野党は数が少ないから野党なのであって数が多ければ与党になっているはずです。
語義から言って野党は決して政権は取れないのです。
野党が多数を占めた瞬間に与党となり、政権は与党しか担えないことになっております。 

野党の数が少ないということは大多数の国民に支持されていないということではないかと愚考しますが・・・・

参考までに大日本国憲法を参照しましょう。
大日本帝国憲法 第71条
帝国議会ニ於(おい)テ予算ヲ議定(ぎてい)セス又ハ予算成立ニ至(いた)ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ
国家予算が成立しない時は、前年度と同じ予算を運用してよいと定めています。
ところが、司法試験の某参考書によると
『明治憲法の定める方法は国会中心主義と相容れない。』とあります。
すみません?相容れない理由が書いてないんですが・・・・
大日本帝国の内閣と異なり、現憲法下の内閣が議会から選出されることから考えて『相容れない』とは思えませんが?
それより、憲法で決めていない『暫定予算』という制度と手順を法律レベルで安易に決めているほうが『日本国憲法と相容れない』んとちゃいますか?

ちなみに、
我が家の国家予算(正しくは家計といいます)はどのように決定されているのでしょうか?
実は我が家の主権は家内にあり、民主主義ではなく独裁国家なのです。
もちろん歳入は私の給与所得と家内のパートの賃金であります。貸している家の家賃とか株の配当なんていう不労所得はありません。残念です・・・
この歳出は一切を財務大臣が取り仕切っておりまして、総理大臣である私には発言権はありません。
私は月々与えられたお金を適当に使っているだけであります。いえ、総額を知っておりますので今以上に良い予算案があるわけがないということも知っておりますので・・・まあ円満に進んでおります。
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『ありがとう』『今月はこれだけよ』


さて、本条文ですが、いかにしたらよいのでしょうか?
とりあえず、現行のままでは上位文書と運用手順がかけ離れております。
ISO審査でありましたなら、
『マニュアルと手順書が整合していませんね、今回は改善を促すストロングポイントとしておきますから、次回審査までに見直しておいてくださいね。』なんてことになりそうであります。



本日の結論


最低限『暫定予算の制度と運用手順を憲法で記述すべき』でしょう。



ななし様よりお便りをいただきました。(2003.12.08)

第86条について
「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」これって、日本語の文章として考えると、文法が間違っていると思いませんか?
というのは、『内閣は』という主語に対して、『経なければならない』という述語が対応していないように感じるのです。
『経なければならない』のは、予算(案)であって決して内閣ではないからです。
これを私なりに書き直してみると、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その『予算案は国会の』審議を受け議決を経なければならない。」とすれば、わかりやすくなっていると思われるのです。
ただ、この場合に、『その』が示す指示語の内容が「国会」から「予算(案)」にはなっていますが。
それか、内閣はという主語に対応した述語を作るというのも一つの案と考えます。
「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければ『予算は執行しては』ならない」とか。
以前に、この憲法は、重文や複文が多い、指示語『これ』が多いなどありましたが、こういう主語と述語が「意味的に」対応していないような例は他にあるのでしょうか。

先生! 私の不明を恥じます。
「述語が対応していないように感じるのです。」じゃあなく、あきらかに対応してませんよこれ!

英文はどうなんでしょう?

The Cabinet shall prepare and submit to the Diet for its consideration and decision a budget for each fiscal year.

直訳すると「内閣は会計年度毎に予算を作成し、国会に提出し、審議と議決を受けなくてはならない」でしょうか? これなら最後まで『内閣』が主語でもよいようです。
「受ける」と「経る」では大違いということでしょうか?


ご指摘いただき、おばQジジイ不明を恥じます。
今後ともご指摘をいただきたく奉り候

他にあるかですって?
あいすみません、大先生にお任せします。
ところで護憲の方にもお聞きしてください。


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