「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」
いちおう、SVOはあり文章としてはまともです。
どの解説書でも疑問視し、言及するのは
『地方自治の本旨』です。
『地方自治の本旨』(principle of local autonomy)って何でしょうか??
この言葉を用いている法律は憲法を除いて4本あります。
- 総務省設置法(平成十一年七月十六日法律第九十一号)
第三条 総務省は、行政の基本的な制度の管理及び運営を通じた行政の総合的かつ効率的な実施の確保、地方自治の本旨の実現及び民主政治の基盤の確立、自立的な地域社会の形成、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡協調、情報の電磁的方式による適正かつ円滑な流通の確保及び増進、電波の公平かつ能率的な利用の確保及び増進、郵政事業の合理的かつ能率的な経営、事業者間の公正かつ自由な競争の促進、公害に係る紛争の迅速かつ適正な解決、鉱業、採石業又は砂利採取業と一般公益又は各種の産業との調整並びに消防を通じた国民の生命、身体及び財産の保護を図り、並びに他の行政機関の所掌に属しない行政事務及び法律(法律に基づく命令を含む。)で総務省に属させられた行政事務を遂行することを任務とする。
- 地方交付税法(昭和二十五年五月三十日法律第二百十一号)
第一条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。
第三条 2項 国は、交付税の交付に当つては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。
- 地方公務員法(昭和二十五年十二月十三日法律第二百六十一号)
第一条 この法律は、地方公共団体の人事機関並びに地方公務員の任用、職階制、給与、勤務時間その他の勤務条件、分限及び懲戒、服務、研修及び勤務成績の評定、福祉及び利益の保護並びに団体等人事行政に関する根本基準を確立することにより、地方公共団体の行政の民主的且つ能率的な運営を保障し、もつて地方自治の本旨の実現に資することを目的とする。
第九条 2項 委員は、人格が高潔で、地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し識見を有する者のうちから、議会の同意を得て、地方公共団体の長が選任する。
- 地方自治法(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)
第一条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
第二条 11項 地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づき、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえたものでなければならない。
12項 地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない。
いずれの法律も現憲法以降の法律で、定義はなく、それを実現するためという意味で使われています。
西 修さんは地方自治の本旨とは『団体自治』と『住民自治』であると書いています。
私には少なくとも憲法の条文からだけではそうとは読み取れません。
この条文に関して憲法9条のような解釈論議は聞いたことありませんが、意味不明なことではそれ以上?
定義もない言葉が上記の法律で引用されていますが、この法律に基づいて公務員は本旨を理解され職務に勤めることができるのでしょうか?
謎です。
憲法で『地方自治の本旨に基づき法律で定める』と述べ、法律で『地方自治の本旨に基づいて・・・する』と述べて、あうんの呼吸で物事は進むのでしょうか?
謎です。
一般的に用いられていない言葉は明確に定義して用いるべきでしょう。
もしくは『地方自治の本旨』なんて言葉を使わず『地方自治とはなになにである』と明確に記述すべきでしょう。
憲法や法律の文言から見ると『地方自治の本旨』とは明確に言ってはならないタブーのようであり、私にとっては理解困難です。
私の結論
憲法の条文からだけでは『地方自治の本旨』は分からない。
当然、それに基づく地方公共団体とはいかなるものかわかりませ〜ん。
英語力 プアーな私ですが、、
『principle of local autonomy』を『地方自治の本旨』と訳すのは適切なのだろうか?
principle ⇒人が正しいと確信の上にある規則あるいは作法、基本的な法
local ⇒地域的
autonomy ⇒地域や組織に属する人が持つ、所属する社会の行政や関連する出来事に関する権利
直訳すると
『ある地域に住む人が地域の出来事に関しての権利行使に関する規則あるいは手順』とでも言えばよいのだろうか?
いずれにしても、principle は『本旨=本来の趣旨(広辞苑)』ではなく、『原則=根本的な規則(広辞苑)』であることは間違いない。
なにが違うか?
伝えたいおもむき=趣旨に則るのではなく、明確なルール=原則に従うという違いがある。
地方自治の本旨を理解できないのは私だけではなかった。
2005年3月15日 全国知事会は憲法改正問題についての特別委員会を知事会の中に設置を表明
「地方自治の本旨に基づいて定める」とする憲法92条について
「本旨とは何かが示されておらず、国の過剰な関与を招く一因となっている」
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