第98条1項 2002.01.25
「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」
この文章も複文です。
分割して考えましょう。
- 「この憲法は、国の最高法規である。」
法の理屈は私よく分かりません。
ここで、類似の例をあげさせてください。
ISO9000とかISO14000という言葉を聞いたことがあるでしょう?これは品質保証や環境管理の規格です。企業や自治体はこの規格が要求する仕組みを構築し、認定された審査機関の審査を受けて規格に適合しているか否かを判定してもらいます。みごと適合となるとこれを対外的に発表し自らの仕組みを自慢するわけです。
ちょっとひとこと、
ISO規格は間違いなくグローバルスタンダードです。なにしろ全世界の代表が何年もかけて議論して投票して定めるのです。ついでに、ISO規格は5年に一回見直しをしなくてはならないことになっています。スタンダードは常に見直し、改定しなくてはならないというのがこれまたグローバルスタンダードなのです。
グローバルスタンダードだ!といえるにはこれくらい権威がないといけません。中国、韓国の常識はグローバルスタンダードではないのです。
さて、ISOは冗談半分に
I 一生懸命
S 書面に
O 織り込む
と言われるほど、仕事を文書に定めることが要求されてます。
最近は文書を減らそうと規格の見直しがされてますが、審査するほうも、されるほうも文書があったほうが楽なのでそう変わることはなさそうです。
ISOでいう文書とはいわゆる書き物ではなく、業務手順を定めた識別するための表題あるいは番号があり、レビジョン管理され、発行管理されるものを言います。規則類がそれに該当し、報告書・議事録・計画書などは入りません。
ISO認証を取ろうとどこでもたくさんの文書を作り、これを体系化します。このハイラルキーを文書体系と言います。
◆一番上の文書を品質マニュアル(あるいは環境マニュアル)
◆二番目が手順書あるいは会社規則
◆三番目が指示書
と呼びます。
★ハイラルキーとはそもそもキリスト教の神父の階級で、そこから上下関係を持つシステムなどのことに使われます。
この体系内のすべての文書は矛盾なく整合していなければなりません。もし齟齬を見つけると審査員は鬼の首をとったようで笑顔を隠せません。
改善、あるいは法の制改正、外部内部の環境変化などにより会社の仕事は常に変わるでしょう。それに合わせて常にこの文書体系を見直し、改定しなくてはならないのです。これがISO規格の要求です。
話が見えませんでしょうか?
私の言いたいことは、最上位の文書だということは絶対正しいとか優位であるということではなく、仕組みの理念、サマリーに過ぎず、常に下位文書ともども見直し変更されなければならないということです。
憲法は法律レベルとあい前後して常時改正されるものであるはず。
繰り返します。
「この憲法は、国の最高法規である。」ということは
「これが絶対である。逆らうことはまかりならぬ」ということじゃなくて、
「国の仕組みの概要を示したものである。」ということです。
それは「仕組みを変えることもあるよ。そのときは憲法、法律の矛盾がないようにいたしましょう。」ということです。
そう考えずに「この憲法は、国の最高法規で逆らうことはまかりならぬ」と読むならば、日本の国と国民は憲法の奴隷に過ぎず、前文と矛盾します。
- 「この憲法の条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」
憲法が最上位の定めであるならばこの文章は論理的には『真』であります。
しかし、その読み方ですが、、
憲法に書かれているものが絶対ではなく、改正しうるものであるならば、現時点の文言に反するものはいかんということにはならないのではないか?
いえ、憲法違反をしてよいということではなく、憲法は現実に合わせて見直していくものであると受け取れないでしょうか?
それと、条約(安全保障もそうですよ)は国際的な約束ですから、国内問題より優先します。
もちろん条約は批准されて実効を持ちますから国民が認めたということです。
ですから、前述したことと合わせると、
「この憲法に反する法律・・・・その他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」ではなく、
「この憲法に反する法律・・・・その他の行為のあるときは憲法の改正を行わねばならない。」ではないでしょうか?
憲法は絶対化するものではなく、相対化されるべきです。
本日の結論
この憲法は法のハイラルキーの一番上にあると言うだけで、絶対だとか、正しいとかいう意味合いはありません。
憲法は絶対化するものではなく、相対化されるべきです。
憲法は常に見直され現実に即したものに維持しなければなりません。
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