第99条2001.12.05
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

これは条文は主語述語があり文章として一応まともです。
疑問点ですが『憲法を尊重し擁護する義務を負ふ』とはどういう意味でしょうか?
尊重とはなんぞや?と思いましたが憲法には定義はありません。
憲法ではこのほか第13条でも使われていますが、『個人として尊重される。』 『最大の尊重を必要とする』といった表現です。
『尊重』すべきと記載されている個所はあるべき姿を言っていても、どうも必須事項、逸脱禁止とはとれない。
ちなみに他の法律で『尊重』がどのように用いられているか調べました。日本に法律は約1800本あるそうですが、その内186本の法律で使用されていました。約一割の法律で使っていることになります。いずれの場合も定義はありません。
一体どうして調べたんか?指に唾つけて法律書をめくったんかいな?と疑問をお持ちですか?
簡単です。法令サービスというのが総務省のホームページにあります。ここで調べたい語句をインプットするとたちどころに該当法規、条項をリストアップしてくれます。最高なのは無料ということです。
私憲法って守らなくちゃならないもんと思ってたけど、守れって書いてないのよね!? 尊重という語句を用いている法律の記述を見ますと、
・尊重して・・・・する。
・尊重する認識の高まり
・尊重の精神
・尊重の理念
・尊重の精神の滋養
・尊重し・・・・に努める
・人権が尊重される社会の実現
・法律の趣旨を尊重する

どうも何が何でもしなければならないというニュアンスは読み取れません。法律の趣旨を考えて行動せいといった程度のニュアンスでしょうか?
それから考えると憲法99条においても
『天皇・・・・・・・その他の公務員は、この憲法を大事にしなさいよ』という程度なのでしょうか?
私には『憲法を遵守する義務を負う』とは受け取れません。
『一般国民は憲法を守れ』と書いてなく、この条文で『国会議員・公務員なども憲法を守れ』と書いてないなんてことがあっていいんでしょうか???
これでは一体誰が憲法を守るのでしょうか?
ここに書かれるべき文言は『尊重し擁護する義務』ではなく『遵守し擁護する義務』ではないのでしょうか?


私の結論
この憲法は念仏あるいはかざりなのでしょうか?
憲法とは厳格で死守しなければならないものかと思っておりましたが?



タイガージョー様からお便りを頂きました(07.01.23)
拝啓佐為様
いつも為になるお話をありがとうございます。佐為様なにやらきな臭い文章を見つけました。
http://www.magazine9.jp/juku/index.html

新憲法の制定は、新たな憲法秩序をうち立てるわけですから、既存の憲法の>価値を否定しなければなりませんが、これは、まさに現行憲法価値の否定と>なります。これは明確に憲法99条の憲法尊重擁護義務違反となります。
あぁ・・・。もしも新憲法制定や現憲法改正が憲法99条違反になるのなら、天皇制廃止という意見は憲法3条7条を否定することですから、これもまた憲法99条違反になります。従って天皇制廃止を訴える人は皆憲法違反者として取り締まらなくてはいけなくなり、戦前よりもひどい状態になります(戦前は治安維持“法”違反である)。このようなきな臭い独裁政権を打ち立てようとするマガジン9条の諸君はとても支持できかねます。(大笑)
 タイガージョー拝

タイガ−ジョー様 毎度ありがとうございます。
ここはときどき覗いているのですが、この話題は見逃しておりました。
・憲法改正発議権は国会にのみ与えられています
あくまでも憲法は国会に憲法改正の発議権を与えたのであって、内閣に発議権はありません。つまり、内閣の構成員である総理大臣と国務大臣は、99条の明文どおり大臣として憲法尊重擁護義務を負い続けているわけです(99条の国務大臣には内閣総理大臣も当然に含まれます)。よって、内閣として憲法改正をめざすことはできません。ましてや新憲法の制定をめざすことなど許されるはずもありません。

とだいぶ力説されております。
私 この方が気がつかないことに気がつきました。

ひとつ
ところで、法律は国会議員による発案いわゆる議員立法の他に、内閣が発案することが認められています(内閣法5条)。実際に成立する法律も内閣提出法案がほとんどという現状です。
おかしいですね〜、憲法では内閣が法律を発案することを明記していません。
ならば、法律なら良くて、憲法改正なら悪いという理屈は、屁理屈のようです。
あるいは単に法レベルの根拠があればよいなら、内閣が憲法改正発議をするという法律を定めればよいという理屈になるのでしょう。

ふたつ
この人の解説には「内閣の構成員である総理大臣と国務大臣は、99条の明文どおり大臣として憲法尊重擁護義務を負い続けているわけです(99条の国務大臣には内閣総理大臣も当然に含まれます)。」とありますが、故意か過失か憲法99条は正しくは「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」となっているのです。
内閣として憲法改正をめざすことはできませんというのなら、国会議員も公務員ですから「国会議員も憲法改正をめざすことはできない」のではないか?
すると、この憲法は改正することができないという、まかふしぎなことになります。

要するにこの人の論理は憲法に書いてないからできないというだけというか、一般庶民はそんな瑕疵には気付かないだろうとたかをくくっているのでしょう 


日本国憲法の目次にもどる