ヨセフスの問題


ヨセフスの問題は、370年頃ヘゲシッパスの名で書かれた以下の物語が起源のようである。

「ユダヤ人はローマに反抗して独立戦争を起こした。ユダヤの総司令官ヨセフスは、ヨタパタの町に籠城したが、ローマ軍に包囲され46日で陥落、仲間40人と洞穴に隠れた。
ヨセフスと彼の友人は何とか生き延びたいと思っていたが、他のものは自決を望んだ。いよいよ集団自決をする段になって、ヨセフスは全員を円形に並べ、3番目ごとに他の同士に殺してもらい、最後の一人は自殺をするという方法を提案した。これが認められたのでヨセフスと友人は16番目と31番目に位置し助かったという。」

高木茂男著”パズル遊びへの招待”


これは物語として伝えられたものだが、西洋ではこのように円形に並んだ人から、一定の順番の人を次々に除いていき、最後に残った人を考える問題をヨセフスの問題と呼んでいる。
ヨセフスの問題としてよく知られているのは11世紀の本に見られる「トルコ人とキリスト教徒の問題」である。


「キリスト教徒15人と異教徒であるトルコ人15人の乗る船が難破した。ところが、乗員30人のうち半分の15人を海に投じなければ船は沈没し全員助からない。そこで、キリスト教徒の船長は、全員を円形に並べ、九番目九番目に当る者を海に投じることとした。そして、うまくキリスト教徒全員を助けたのである。船長はどのように全員を並べたか?」

ヨセフスの問題を単なる答えを出す事が目的のパズルだと考えると、簡単である。オセロの駒を用意し、すべて白を上に円形に並べる。起点を決め指定の順番を次々に裏返していけば答えが出る。
ヨセフスの問題は、その本質を考えるパズルと言える。
日本では、同種の問題は「ままこだて」として古くから知られている。ままこだては、1100年頃作られたと言われるが明らかではない。1300年頃の吉田兼好「従然草」の第137段、および1630年頃「塵劫記」に書かれている。


「子供が30人、内15人が先腹(ままこ)残り15人が当腹(実子)の中より後継を決めたい。母親は、子供を円形に並べ十人目の子供を次々に除いていき、最後に残った子供に家を継がせることとした。実際数えてみると、次々と先腹の子供が除かれていった。先腹14人まで除かれ、1人となったとき、残った1人が不満を言った。あまりに偏っているので、今度は自分より数えて欲しいと。まま母は、仕方なくその子供より数え始めると、今度は当腹が次々と除かれ、ついに先腹の1人が残った。」

ままこだては、ヨセフスの問題より複雑な問題を含んでいる。それは、16人(当腹15人と先腹1人)で十番目を除いていくと、必ず数え始めの人が最後に残ることである。
これをパズルの問題にしてみると


「碁石を何個か取り円形に並べる。ある石から数え十番目の石を次々に取り除いていった時、最後の石が最初に数え始めた石となった。このようになるのは碁石を何個使ったときか?」

答えは、16個、22個、71個、・・・まだある。