|
2003/7/11『マンシーニとディミニッシュコード』
今年の企画ステージは、去年の映画音楽の好評(ちょっと長いという声もあったが)に甘え、再び映画音楽を、題名はヘンリーマンシーニ『酒とバラの日々』とさせていただくことにした。
映画は興味があるし、よく見ている方だと思うのだが、薀蓄を語れるほどではない。したがって映画音楽特集も作曲家でくくった場合、メジャーなものから採用してしまう傾向があり、マニアなファンの方には物足りないかもしれないが、それはそれで先入観なしの純音楽的な自分の直感で選ぶのだから良いのではと思っている。
ヘンリーマンシーニはイタリア系アメリカ人として、幼い頃からピアノとフルートの 教育を受けジュリアード音楽院に入学、作曲家を目指し、グレンミラー楽団のアレンジャーを経て、ユニバーサルスタジオに入社、以後150以上もの映画の音楽を担当した。お酒が好きだったようで94年肝臓ガンで永眠。
ヘンリーマンシーニの素晴らしさは、何よりも、印象に残る明るくて人懐こいメロディと、それを最大限に生かす小粋で艶めいたコード進行だろう。アレンジも小洒落たJAZZYな雰囲気を持っていて、すべての曲の底流にはイタリア人らしいユーモアや、やさしさ、茶目っ気があるように思える。
マンシーニのアレンジに無くてはならないのが「ディミニッシュコード」。ギターや
ピアノを弾く人で無ければピンとこないかもしれないが、1度(根音)、b3度、b5
度、6度の4つの音からなるコードで、単独では暗い不安な響きを持ったコードだが、コードからコードへの橋渡しなどとして使うと、独特な味を出せる不思議な構造のコードである。(坂崎幸之助がマージャンで負けそうなときに良く弾くコード)
かといってあまり濫発するとハーモニーがにごってきて曲の進行もあいまいな感じになってしまうのだが、マンシーニは周到な計算の上に、実に効果的にこのディミニッシュコードを使い、絶妙な情感、時に官能的な肉感を演出している。
まるで癖の強いスパイスのような、なんにでも融通が利く、変幻自在なコードである。
あるときマンシーニの娘が家族と言い合いをして家出をしてしまった。やがてホームシックにかられ送ってよこした手紙の内容が、あまりに詩的なのに感動したマンシーニはそれに曲を付け、カーペンターズに見せたところ、気に入ったカレンカーペンターが歌うことになり、アルバム[Carpentaers]に"Sometimes"として収録されたという。
なんともとぼけた、マンシーニのもつラテン気質の底抜けな陽気さや柔軟さを物語るこのエピソードとディミニッシュコード、どこか通じ合うような気がするのである。
|