林郁夫被告に対し、無期懲役求刑
1998/3/2
(毎日新聞より)
1995年3月に起きた地下鉄サリン事件の実行役の一人とされ、殺人・殺人未遂罪など計6事件で起訴された元オウム真理教幹部、林郁夫被告(51)に対する論告求刑公判が2日午前、東京地裁(山室恵裁判長)で開かれ、検察側は無期懲役を求刑した。論告で検察側は地下鉄サリン事件を教団代表だった松本智津夫(麻原彰晃)被告(43)の指示に基づく組織的な無差別大量殺りくテロと位置付け、林被告の刑事責任は極めて重大としながら、逮捕後に自ら事件を供述したことは刑の減軽ができる自首に当たるとし、組織犯罪の解明に協力したことなどを無期求刑の理由に挙げた。
同事件で殺人・殺人未遂罪に問われた14被告の中で求刑は初めて。死者12人、負傷者約3800人に上った無差別テロの実行役に対する異例の無期懲役求刑は、他の被告の審理にも影響を与えるとみられる。
弁護側の最終弁論は20日午前10時から行われ、初公判から約2年3カ月で結審する見通し。林被告が問われているのは地下鉄サリン事件のほか、東京・目黒公証役場事務長の逮捕監禁致死など五つの事件。
検察側は約180ページに上る論告を読み上げ、まず地下鉄サリン事件の事実関係を説明。教団の特殊な教義、サリン生成の経緯などに触れ、松本被告の指示や林被告らの共謀、犯行の状況などを述べた。
動機については「教団に対する強制捜査を阻止するため、首都中心部を大混乱に陥れるもので断じて容認できない」と指摘。林被告に対し「犯行に加わった意思決定は、条理を踏みにじる身勝手極まるもので言語道断」と責任の重大さを強調した。さらに「犯行の結果は悲惨極まるもので、わが国犯罪史上、類例を見ない最も凶悪な事件。被害者の苦しみは筆舌に尽くしがたい」と被害感情の厳しさを指摘した。
また、東京・目黒公証役場事務長の監禁致死事件についても「遺族の被害感情、処罰感情は厳しく、激しい」と述べた。
そのうえで検察側は、死刑求刑が相当としながら、逮捕後の供述が、刑が減軽できる「自首」に相当する▽公判でも事件を証言し、組織犯罪の解明に協力した▽反省の態度を維持し、遺族らの被害感情は厳しいものの和らぎつつある▽松本被告の絶対的な指示に従属的な立場だった――などの事情を無期懲役求刑の理由に挙げるとみられる。