坂本一家救出にとってのマスコミ報道の意義
一家を一刻も早く救出するためには、そして1日も早期にこの事件を解決するためには、目撃情報などが広く市民から寄せられること、あるいは 犯人自身が真相を警察や我々に告白することが必要であった。そのためには、多くの市民が坂本事件を忘れず、常に関心を持ち続けていることが不可欠であり、また犯人に対して、社会的関心の高まりというプレッシャーを常に与え続けることが必要であった。
その意味で、坂本一家救出のためにマスコミが果たすべき役割が極めて大きかったことは、疑問の余地がない。マスコミが坂本事件について報道をしなくなれば、「救う会」や両親が街頭でいくらビラまきをしても、事件は市民や犯人らの記憶から確実に薄れていくのである。 我々は当初から、マスコミがこの事件をどう取り上げるか、どう取り上げさせるかについて、極めて重大な関心を持ってきた。
後になって解ったところであるが、私たちのこの方針は、実際に犯人の心に少なからぬプッシャーを与えていたことが明らかになった。 坂本一家殺害の実行犯の1人、岡崎一明は、1996年4月17日の第1回公判において次のように述べたのである。
「いつオウムから殺されるのか、いつ逮捕されて重罪になるのか恐怖の狭間の6年でした。そしてさちよさんをテレビ、新聞で見て、その心情を思うとやりきれない思いでした。」
「6年の間、真相を言えないでいたことをお詫びします。もっと早く真実を告げればと悔やまれます。」