- 2 TBSが坂本インタビューを放映しなかったことの問題
- (一) 放映中止の理由
- 坂本インタビューは放映されなかった。
- 放映中止の理由については、TBSの調査結果によっても必ずしも判然としない。調査結果は、「放映中止は必ずしも『オウムの圧力によるもの』と言うことはできない」とし、「他の要因とともに放送中止の一因となったことは否定できない」とする。
- 特別調査人調査報告では、「オウムの帰った後の翌27日の午前2時過ぎ頃に最終的な放映中止の決定がなされたものと考えるのが妥当であろう。もとより、オウムから抗議を受けた後に最終的に放映中止を決定したからといって、直ちにオウムの圧力に屈した放映中止と見ることはできないが、麻原インタビューの紛糾とそれに続くラテ欄(ラジオ・テレビ欄)の番組変更、早川らの千代田分室来訪及びそこでの出来事という26日の一連の経緯からすれば、早川らから抗議を受けたことも最終的に放映中止を決定した一因となっているのではないかと思われる。」とする。
- 上記報告では、断定を避け、他の抽象的可能性も一応考慮に入れつつ結論を出しており、いかにも法律家的な表現となっている。
- しかし、常識から見れば、オウムの圧力に屈した放映中止であることは誰の目にも明らかである。(瀧澤私見)
- (二) 坂本事件との因果関係
- もし坂本ビデオが放映されていたならば、坂本の顔と声は電波に乗って全国に流れ、オウム真理教という得体の知れない宗教団体を糾弾している若い弁護士として世に知られることになったはずである。放映によって「坂本弁護士 vs オウム」の構図が広く明確になったその状況においては、いかに常軌を逸した短絡的発想をする麻原といえども、「殺害の決意」には幾ばくかの躊躇を覚えたはずである。
- しかし、実際には放映されなかった。「坂本弁護士 vs オウム」の構図は、世に知られずじまいとなった。これほど麻原にとって好都合なことがあろうか。麻原が、「今ならば、坂本を殺しても世間はオウムに目を向けない。いつ放映されるか解らないから殺すならばすぐに」と考えたであろうことは想像に難くない。
- 実行犯の供述によれば、坂本殺害から一家皆殺しへと、麻原はいとも簡単に指示を変更している。
- このような麻原にとって、TBSの放送中止は、願ってもない状況を作り出したのである。
- その意味で、放送中止と坂本事件発生との間に、因果関係を否定することはできないと考える。(瀧澤私見)
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