- 公開捜査直後の報道
−失踪事件としての扱い−
11月15日午後3時、県警は記者会見を行った。その際警察は、
「何らかの犯罪に巻き込まれた可能性は捨てきれず、捜査中である」「任意の失踪と事件の可能性は五分五分」などと発言し、事件性について極めて消極的な姿勢を示した。
他方、横浜法律事務所も同日午後5時に記者会見を行い、これは坂本弁護士の弁護士業務に関連した拉致事件である、との声明を発表した。しかし、県警のそれまでの記者へのリーク、あるいは記者会見の消極的見解に影響され、その後の各社の第一報は、
「弁護士一家ナゾの失踪(読売15日夕刊)」
「弁護士一家失跡一二日 何者かが連行?(毎日15日夕刊)」
「横浜の弁護士一家3人 10日以上も行方不明(産経15日夕刊)」
など、ほとんどが「失踪事件」としての報道であった。
16日になると、
「弁護士一家3人不明 寝込みを拉致される?まるで『神隠し』に・・・(神奈川一六日)」
「ら致の疑い強まる(16日産経朝刊)」
など、「拉致事件」の可能性を強めた報道もなされるようになったが、これは、前日午後4時からの横浜法律事務所の記者会見で、「家出」の可能性は100%あり得ないことを強調したことによるものと思われる。
−過熱する報道と誤報−
「弁護士」が、しかも一家3人とも行方不明となるというこの事件は、社会的にもかなり衝撃的な事件であり、その後しばらくは、激しい取材・報道合戦が繰り広げられた。各テレビ局は15日のニュースで一斉にこの事件を取り上げ、さらに翌16日からは各局のワイドショーを中心に、連日大きく取り上げられた。
そして、他社に抜かれまい、新しい情報をスクープしたい、という取材・報道合戦は、過熱の一途をたどっていった。 そのような状況の中で、11月18日、東京・中日新聞が、
「坂本弁護士が過激派の内ゲバに巻き込まれた」
とする報道を行った(その後夕刊フジも同様の報道)。これらは捜査関係者からのリーク情報にもとづく記事であったが、横浜法律事務所などに確認取材は一切行われていない、完全なる事実無根の報道であった。
これに対し横浜法律事務所は、文書で厳重抗議するとともに謝罪記事掲載要求した。(後日、東京新聞は訂正謝罪記事を掲載した。)
このほかにも、例えば、オウム真理教のバッヂ「プルシャ」が坂本弁護士宅のベッドの下から発見された、というような小さな誤報(坂本弁護士宅にはベッドはない)はいくつもなされた。
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