- 3 継続的に報道することについて
一時的にではなく、継続的に報道することという点については、これも他の事件に比べると取り上げ続けてもらえたと思う。このことが風化防止に果たした役割は本当に大きいものがある。
しかしこれも、1990年に入って以降1994年までの間は、前述したように11月3日前後の特集記事を除くとそのほとんどが坂本弁護士一家救出活動に関する記事である。もちろん救出活動に関する記事を載せてもらうこと自体重要なことであるが、しかし、「問題意識の継続」「問題意識の深まり」を感じさせるような記事が少なかったことも事実である。これは、やはり坂本事件を継続的に追うような体制が取られず、各記者の中に事件を当初から一貫したものとして取材し、追い続ける者がほとんどいなかったことが原因しているように思われる。
救う会の材料の提供や、警察の記者会見を待たず、積極的に調査を進め、報道するというような体制・姿勢がなかったことが、「報道してもらうためには常に何らかの材料を考え、提供しなければならない」という状況を作った面があることも否めない。しかし、これから起きるかもしれない重大事件において、常に救う会のような組織や運動が作られるとは限らない。むしろ、救う会のような組織、運動が作られることは希有なことと言ってもよいのではないか。そのようなときに、このような対応のままだと、事件が起きたときと解決したとき以外には何も報道されないという状況が繰り返されていくのではないだろうか。