オウム真理教破産事件第5回債権者集会
1998/4/23
オウム真理教破産事件の第5回債権者集会が東京地裁で開催されました。
国の債権を被害者よりも後回しにするという特別法が成立した後だけに、その配当の見通しが注目されました。
管財人報告
阿部管財人:経過報告
<特例法成立>
4月17日に成立した特例法の内容(要旨)
「本法案はサリン事件などの惨禍が未曾有のものであることを踏まえて、債権を届け出た被害者の救済を図ることを目的とする」
1 国の債権に関する特例−労災法その他の規定に基づき国が取得した損害賠償請求権及び清算事件予納金の償還請求権はサリン事件等により生命身体を害されたことによる損害賠償請求権に遅れるものとする。
2 交付の日から施行する(4/24)
<自治体の対応>
自治省は、関係公共団体、諸団体に対しについて、国の処置に準ずる処置を執るよう通達通知をした。管財人からも同様に要請している。その結果、近く関係自治体、団体などからもそのような措置が執られる見通し。
さらに地下鉄営団も、国の処置に準じた処理をすることを申し出た。
以上のようにして、国・自治体の債権問題という最大の難関を相互の努力によって乗り越えることができた。管財人としてはこの問題が解決するまで配当には着手しないと言明してきたが、ようやく配当準備に着手することができることは無上の喜びである。
但し、具体的な配当の目処、配当率は本日の段階では発表するまでには至っていない。
なぜなら、国の債権が届け出後 132名の追加届けで債権があり、審査必要であること。また自治省の通達にしたがった各自治体の処置には条例制定や議会承認が必要となるため、それらの意思決定がそろうのは6月末から7月になると思われる。
<配当率>
それら不確定を含みで言うと、総債権は51億9437万0445円。
経費、財団費用を控除し、生命身体の被害者への配当は22から23%と見込まれる。
の自治体から国に準ずるとの回答をもらうためには7月までかかるであろう。
各議会の承認が得られることを条件に配当表を作る。
<複雑化>
山梨県及び市町村合計で3842万円の租税債権がある。県内には教団施設があったことにより近隣住民の被害も債権届出がなされている。そのため県や市町村が条例でそれらを放棄(後回し)にするためには、「生命身体の被害者」と併せて「県内の地域被害者」を含める必要がある。この結果、配当率は次の3段階になる。
@生命身体の被害者
A山梨県内の地域被害者
B一般債権者
<見通し>
今後、自治体の決定を待って、配当表の作成、配当許可申請、官報公告、除籍期間、配当表への異議期間、配当許可という手順を踏んでから配当通知をする。そのため、実際の配当は10月に入る可能性がある。
第7サティアン解体は4月29日までに着手予定であったが、化学兵器廃絶機関との調整が煮詰まっていないため、未だ着手時期未定。
<特別基金設立へ>
中村弁護士:裁判所・管財人団の努力に感謝する。しかしそれでも8割近くは被害が回復しない。そこでさらに救済の実を上げるため、「被害者救済のための特別基金」設立を裁判所と管財人が主体となって行ってほしい。
かつて阿部管財人が日弁連会長の頃、坂本弁護士一家救出運動の先頭に立って指揮をされた。その際阿部先生は「およそ人として考えられるあらゆる手段を使って一家を救出しよう」とおしゃった。今回もぜひ考えられるあらゆる手段を講じて欲しい。
意見書
阿部管財人:
趣旨は理解できる。
管財人としても、松本智津夫からの執行金は財団に入れないで別枠で保管中である。
サリン被害者の本の印税寄付のお話、また滝本弁護士からの基金寄付のお話もある。
被害者救済のために特別基金を作ることは必要はと思う。しかし、破産法上、裁判所と管財人が主体となることは難しい。しかし、何らかの形で基金ができるならば、破産手続の配当表に沿って基金も配当するため、破産の配当業務に合わせて協力することは可能である。広く企業や国民から募金を募ることになどにも管財人が協力することはやぶさかではない。
<債権調査の報告>
小林常置代理人
追加債権について
@ 分類A(地下鉄サリン)9件 3700万0827円 異議なし2200万円
A 分類F 都と国の債権 平成8年5月末日以降の求償権の届け出1億2067万3045円。これについては、届け出が直近であったことからほぼ全額異議を出した。
<次回期日>
債権調査はこれで終わりとし、次回は債権者集会のみとする。
10月14日 午後2:30分