九.報道について

(一)マスコミに流された情報
       事件後二 カ月の平成二年一月にP誌が入手した情報確認の取材で、サラ金からの借入
      等金銭トラブル説、夫婦不仲説等々聞くに耐えない情報の存在を知ったとき非常に驚き
      ました。特に「都子の男関係」に至っては耐えきれず激怒し、取材の方に暴言を浴びせ
      てしまいましたが、この情報は余りにも酷く、確認取材する側もかなり疑問を持ってい
      たようです。誌面で「被害者の心情・人権に配慮を」と広く呼びかける記事を読み、私
      は安堵もし、P誌に感謝もしましたが、この卑劣な情報に限りない怒りを禁じえません
      でした。
       一部には理解しがたい取材・報道もありましたが、総体的には各社揃って慎重な配慮
      のもとに扱われていたと受け止めており、深く感謝しております。特に、事件当初任意
      の失踪を強調した全く根拠のない情報が報道機関に流れる中で、常に事件性を視野に置
      いた報道がなされていたことは、私たちの心の支えとなっておりました。

(二)TBSの責任
        民主社会において報道の自由・公正は不可欠の要素であり、報道機関はその使命を確
      実に果たしているからこそ存在価値があり社会的位置付けがなされている筈です。
       TBS問題は報道倫理を大きく逸脱しており、私は単なる問題でなく社会的裏切り行
      為であり許しがたい犯罪、しかも、確信犯と受け止めています。
       一般的には報道前のインタビューテープをオウム幹部に見せたことを問題としている
      が、放映しなかったことも重視すべきと思います。オウム幹部にインタビューテープを
      見せるならば、堤の了解を得るのは当然のことであり、オウム幹部に見せた結果を詳ら
      かに収録し、さらに、堤の反論を含めて放映していれば堤とオウムは厳しい対立関係に
      あることが周知の事実となり、いかに鬼畜麻原と言えどもこのような凶暴極まりない犯
      行に踏み切ることは出来なかったと思えてなりません。事件後麻原は「私たちと坂本先
      生の関係は悪くなかった。拉致す理由は全く無い」と言ったことを公言してはばからな
      い事実をもってしても、放映中止が重大犯罪の引き金になったと言わざるを得ません。
       また、TBSは「オウムの圧力により放映中止を決めたのではない」と強く言い張っ
      ているが、一体誰がこの言葉を信じられるのでしょうか、「聴視者を愚弄するにも程が
      ある」と言いたくもなります。
    TBSはこのような重大過失を隠蔽しようとしたばかりでなく、社会的責任もあいま
      いのうちに葬り去ろうとする態度は我慢がなりません。残念ながらTBSは報道の責務
      ・倫理をどのように解釈しているのか、マスメデ イアを預かる企業としての自覚を持ち
      合わせているのだろうかと疑わざるを得ません。