いさま かずなり
伊佐間 一成
(いさま屋)
『魍魎の匣』より
町田で釣り堀いさま屋を営む。
「なかなか味のある鯣のような男」
『狂骨の夢』より
「いたって人は良く、三十路の成り立てという実年齢に似わぬ、好々爺の如き印象を人に与える。
瓢箪鯰のような男なのだ。
風体もまともではない。
今も、土耳古人でも被るような鍔のない奇妙な帽子を被り、露西亜人の着るような毛皮襟の防寒服を纏っている。鬢も襟足も短く刈り込み、そのうえ口髭を蓄えているから、一見国籍不明である。しかし顔相自体は古の本邦上流階級を彷彿とさせる、俗に言う公家顔である。切れ長の一重に細長く通った鼻筋。前歯二本がやや大きい。土耳古帽子の代わりに烏帽子でも被せてやれば、そのまま蹴鞠でも始めそうなご面相なのだ。背は高いが猫背気味だから実際の身長よりは小柄に見える。動きもぽきぽきして、枯れ枝のようだ」
エンジニアになりたかったが、「仕事というものの本質が解らなかった」ため、商売に向かなかった。
戦時中は海軍で榎木津の部下。初対面でいきなり「なんと年寄り臭い男だ!」と言われてしまった。
終戦直後、復員船の中でマラリアに罹り「臨死体験」をする。その経験からますます瓢箪鯰に磨きがかかり、多宗教になった。
多趣味で嵌まる性格。あらゆる笛をこなし、廃材からオブジェをつくり、釣り堀を始めるからにはと始めた釣りでは一本釣りから投網まで経験する。