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特選詩集
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浮標を埋める
反抗期が終わらなくて 意地っ張りになっていった 体温か 振動で 初めから当然とされていること が 時折 全く納得できないもののように 感じられた 「何となく群れて安心する」ことが いつも 出来なくて 自分の方から 周りには 合わないもの をこしらえては それを ひとつひとつ拾い上げ 運びながら歩いてきた 三十八年 折り返しに 来たのか ボートレース場へ行った時 賭をする人々の熱気と 意外なくらい 底の明るい気迫に押されて 何も出来なかった私が見た オレンジと白の まだらの浮標 私は今 そこにいるのか あまり自分が 先頭を切っているとも思えないが この際は時間を気にすることもあるまい 夏になれば 少しは快適になるはずの 向こう風を受けて 同じ姿勢のままで走ろう 浮標に波を被せて 松本 賀久子2000年 夏 同人誌「火皿」95号に掲載