神奈川県水産総合研究所 内水面試験場
施設の案内 |
神奈川県相模原市大島3657 僕らの感覚からは「かろうじて清流」といえ る相模川中流部の ほとり、のどかな環境の中に設置されている。 敷地面積は、17,840平方メートル。本館の他に5棟の研究棟と1,932平方 メートルの屋外池 を持つ。正直に言うと、最初に概観したときは「思ったより小さいな」と感 じた。 しかしこれは、私がイメージを勝手に膨らませていたせいかもしれない。 私は何となく、良くできた管理釣り場のような川と、それに付属する庁舎を 想像していた。 同行した水産大学出の奴が「大学の施設の方がずっと大きいよ」と言って いた所をみると、 やはりどちらかといえば、コンパクトな施設なのかもしれない。 しかし、最新の機器を備えた「小粒だがピリッと辛い」そんな施設なのだ と思う。 見学コースがしっかり整備されていて(一部案内付きでなければ見れない が)、こういう所は とてもしっかり出来ているな、と感じた。(下の写真はパンフレットより) |
研究内容と スタッフ |
主な研究内容は次のとおり ・先端技術研究 バイオテクノロジー等の先端技術を導入した鮎などの養殖魚 の品種改良 ・病理、生理研究 養殖魚や飼育水槽における病気治療と対策等 ・増殖、養殖研究 放流、養殖用新漁種種苗の量産技術開発とアユ種苗生産 民営化技術支援等 ・資源管理研究 効率的な資源管理、増殖技術の開発研究 ・環境保全研究 魚の住みやすい環境づくりのため、河川構造物が魚類に与える影響把握と 被害軽減など漁場環境の保全、改善研究 ・生態系復元研究 魚類や環境の実体を把握し、ミヤコタナゴなど保護の必 要な魚類の増殖 技術を確立するとともに、多様な生物相を維持する生態系 研究 スタッフのうち研究員は10名弱とのこと、ちょっと少なすぎるな、と感じた 。 かなりの組織改編を経てきたとのことで、現在は「総合水産試験場」という 大きな組織の一翼 を担っている。今後の発展を期待! 写真は、生物工学試験棟(パンフレットより 不覚にもカメラを忘れた! ) |
ちょっと トピックス |
ちょっと耳よりな話。 この研究所では、治山治水工事に関わるセクションから生態系に関する相 談を受ける事例が 急増しているとのこと。いずれも、工事に伴う生態系への影響を最小限にす るの工夫のためや、 生態系を回復させるための具体的な手法に関するものだという。 釣り人の多くが「そもそも工事の必要があるのか?」あるいは「今さらな にを」と思うかも しれない。しかし、風向きが確実に変わってきていることは、間違いないの ではなかろうか。 こうした動きは、基本的に歓迎すべきものだと思う。僕は「**沢の3面 護岸改修に関する 仕事をしている」と聞いて、素直に嬉しくなった。余りにもひどい状況だっ たから。 なぜもっと早く気がつかなかったのか、という疑問もあるだろうが、ここ は未来志向でいい のではないだろうか?(今のスタッフでは限界があるだろう。一層の充実を 期待します。) |
発眼卵放流 |
僕らの主たる目的は、ある藪沢への発眼卵放流の是非に関する考え方の確認 であった。 そこは、以前ボランティア放流がなされたという噂は耳にするものの、現在は ほとんど渓魚の の棲息が見られず(ひょっとしたら僅かに残っているかも?)漁協の管理外 にあり、かつ年間 を通じて棲息可能と思われる水量が確保され、水質も良好で、周辺森林の様 子から十分な飼料 も確保されると考えられる沢である。また、極めて入渓路が分かりにくく、 脱渓点がないので 自ずと入渓者の総数も限られてくるだろうと考えていた。(入渓者の全てが C&Rなら、余計 な心配なのだが) 関係すると思われる研究員のコメントは次のとおり(バラバラな発言をま とめている。) 「過去、多くの人々による(学問的に)体系的でない放流が繰り返され、そ の経過を辿ること は極めて困難な状況にある。」 「わずかに、これはひょっとして? と考えられる事例もあり、我々は原種 の渓魚がどこかで 棲息しているのではないかという希望は捨ててはいない。例えば**に残る 日光岩魚」(僕ら は神奈川県の岩魚は絶滅したと思っていたのでちょっと驚き。) 「希少な遺伝子の重要性はいうまでもない。」 僕らが、具体的な渓を示しその可否を問うと 「ホホ〜! しかしひょっとしたら?」 つまり原種がいるかもしれず、そ こに放流したら、 また無茶苦茶になるかもしれない、という意味である。 ところで、ヤマメやイワナは非常にユニークな生物なのだそうだ。陸封でも 生きられるし、 淡水と海水の往復も平気、おそらく海水のみでもOK。こうした生物は珍し く、進化の過程の 分岐点に位置するのではないかとのこと。今後、重要な研究対象になる可能 性があるのかも? 結論的には、僕らはその渓での発眼卵放流は見合わせることにした。(続く ) |
しかし このままでは |
しかし、このまま引き下がるわけにはいかない。 僕らの道場ともいえる藪沢がある。20年ほど前から会員の一人が通い詰め た沢で、会員も、 この沢でつながっているといっても過言でないくらいの沢なのだ。その沢が ややピンチである。 この沢は、おそらく水源域にあり、すぐ下流での利水が盛んなためと思う が、本当に珍しく、 一切の人工物がない(上流域)。これは20年前から変わっていない。変わ ったのは釣り人で ある。(いや、源流部の森も変わったという。これもデカイ要因だ) 私が始めて知ったのは4年前、去年までほとんど人と会うことがなかった 。まれに出会う釣り 人も、魚籠を持つ人はいなかった。漁協の管理外にある、ぎりぎりで生き続 ける渓魚である。 魚籠を持たないことは非常に大切なことだった。今年になって、特に解禁直 後、藪のガードが 甘い頃、魚籠を持った釣り人を見かけるようになった。正直言って悲しい。 何か言いたいが、 言う立場にない。言う根拠がない。 自分たちがどんな努力をしたというのだろう? 所詮は同じ釣り人である 。 なにか具体的な行動を起こして、それを根拠に、僕らの気持ちを表現した らどうだろうか、 という気持ちがわいてきた。 放流は、発眼卵がもっとも手軽である、と思っていた。(放流そのものはその 通りなのだが) ところが、産卵期にあるヤマメを釣ってきても、すぐには卵は採れないとの こと。 触っただけで、ぽろぽろ卵が落ちるくらいに成熟させる必要があるのだそ うだ。 問題は、そのための期間をどう過ごさせるかである。 ああ、誰か池貸してくれないかなあ。うまくいけば、もともとそこに棲む ヤマメから採った 発眼卵を、周りの超藪沢を含めて放流し,「ここの魚は*****、釣った 魚は必ずやさしく リリースしてください」とでも書いた看板を出すのだが。(池、物色中!) |
その他 もろもろ |
研究所では,発眼卵に一種の彩色処理をしたヤマメの稚魚をある沢に放流した 。沢は巨大な 堰堤でぶつ切れにされていて、放流はその源頭部。 捕った成魚ヤマメを顕 微鏡的に確認すると、 放流したものであるか否かが明瞭に判別できるという。詳しいデータは聞か なかったが、ヤマメ は源頭から徐々に拡散し、堰堤の間でも堰堤の下流でも棲息が確認できると いう。また、その 生息数から、大きな堰堤から落下しても死ぬものはごく少ないと考えられる こと、さらに、堰堤 間の僅かな空間(距離)でも、繁殖がほぼ確認できること(源頭部に残った ヤマメの種が落ちて きた可能性も否定できないが)等を聞かせてもらった。 ヤマメは、想像以上にしぶとく強い生き物のようである。 もう一つ、「傷ついた魚が原因で、その川に感染症が広まるようなことは あるのでしょうか?」 と聞いてみた。C&Rの有効性に関する議論で時々見かけるものだから。 答えは明快。「自然河川で、そんなことはあり得ません!」 魚道の実験装置はおもしろかった。鋼板で作った全長5メートルくらいの 魚道が大きなプール の中に設けられていて、自由に角度が調節できるようになっている。このプ ールに川の水を引い て、魚を実際に放して観察するのだそうである。ヤマメやイワナなどはほと んど問題を解決して いるそうだが、底棲魚が今一つだそうだ。こんな魚道がどんどん普及すると いい。(次善の策 かもしれないが。ないよりはずっといい。) このほか、昔、何処にでもいたように記憶しているドジョウやメダカが今 や希少魚であると 聞いて寂しさを感じたり、「アユカケ」という(不思議な)魚を発見したい きさつなどを聞く こともできた。 ちょっと不便なところだが、訪れてみる価値はあると思う。一般公開以外 の部分の見学や、 意見交換などを希望する人は、事前に電話連絡しておく方がいいと思う。 TEL 0427-63-2007 FAX 0427-63-6254 |
ここまでお読みいただきました方々に、心より感謝申し上げます。 蜉蝣の会 メニューへ ホームページへ |