Suspension
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フロントストラット
BXのフロントサスペンションは、ハイドロニューマチック系シトロエンでは初めて採用されたマクファーソンストラット形式です.低コストが最大のメリットですが、タイヤ方向からの外力によりストラットケース最上部のトップベアリングに応力が生じ、伸縮のスムーズさを妨げるフリクションが生じます.
コイルスプリングを使用する車種ではストラット軸 (=ダンパーの軸)に対してスプリング軸をオフセットする事に より、応力を低減する工夫がされています.
A: 左ストラットの後→前軸像
B: 同じく底面から
C: 上から
ハイドロニューマチックのストラットでは、その構造上スプリングと ダンパーが同軸となり、応力はそのままトップベアリング部分 (とケース内のスライド部分)に掛かります.
これがBXのストラット構造の最大の欠点であると私は考えています.
フリクション低減のためにトップベアリングの摺動面にテフロン? コーティングがされていますが、LHMなどで積極的に潤滑する機構を 持ちません.
使用と共にコーティングは摩滅し、フロントサスペンションの動きが 渋くなります.
シリコングリスをシリンダー外側に塗る事で摺動抵抗は一時的に 減りますが、「塗りたくなったら、そろそろ寿命・・」というのが 目安ではないでしょうか.
大体の寿命は4-5万キロといったところです. 早期にベアリング部分を交換してOHするか、使えるだけ使って新品の シリンダーに交換するという選択肢があります.
フロントストラット劣化による症状
ストラットが劣化すると、スフェア交換を行っても
乗り心地が改善されず愕然とする事があります。
ストラット劣化による症状にはある程度共通点があります。
細かい突き上げを拾う時ゴトゴトいう
駐車していると尻だけ下がる
このときフロントバンパーを上から押すとガクッと下がる
この後、何度か押していると次第に柔らかくなる
車高の上下で「ぐぐぐぐ」と鳴く
前後の切り返しの際などに、前足あたりから「ガコン」と振動が出る
ハンドルが重くなり、低速転舵時にジリジリとした振動が出る
これらの症状が出てきたら、ストラットを疑います。
LHMの動きとフロントストラット
ストラット構造の何処にLHMが関わっているかを示す図です. 赤で書いた部分(スフェア〜シリンダー)はナットで固定されて一体です.
外筒とピストンは固定されていませんが、油圧がかかるとピストンが 下に押し付けられ一体となって動きます。
これらの摺動部分は黄色で示したスライドベアリング/シリンダー部と シリンダー/ピストン部のオイルシール部分およびシリンダー下端にある テフロン樹脂製スライドブロックです。
シリンダー/ピストン間は常に高圧のLHMで潤滑されており、ここから 漏れたオイルは外筒に開いた穴からリークバックホースを通ってリザーバー へ戻ります。
スライドベアリング部分にLHMは届かず、積極的な潤滑はされていません。 少量の跳ね掛け程度が期待されるのみです.
ストラットを分解したところ。
左から
外筒
リンクロッド(ピストン内に入っている棒で、これを介して外筒とピストンが連結される)
ピストン
シリンダー
スライドベアリング
ロックナット
金属部分の回りについているのは、バンプラバーの関連部品です
4.のシリンダー下端にある白い部分が樹脂製スライドブロック
各部品の詳細
スライドベアリングの新品。
(
→
)がコーティング部分。
色は黒く、テフロンのようなツルツルした感触です。
(
→
)はコーティングの上下にあるフエルトのリング。
約6万キロ使用後。
コーティングははがれ、地肌の真鍮色が出ています。
さわるとザラザラした感触です。フエルトは汚れて真っ黒。
シリンダー内の摺動部分、シリンダー/ピストン間のオイルシール。
シリンダー内の切り欠きにゴムのo-ring、その内側に樹脂のo-ringを重ねていれてあります。
厚さは5mmほどで指で押しても動き、これ自体が摺動抵抗になるとは思えません。
手前の白い部分が樹脂製スライドブロック.
新しいシールはこんなもの。
シールの破損は内部リークによるフロント下がりの原因にもなります.
安い部品ですので、OHの際には交換したほうが良いでしょう.
作業の実際は
こちら
(C) Y. Narabayashi