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Engine Fuel Injection System
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各モデルとFuel Injection Systemの仕様

BXのインジェクション・モデルが日本に導入されたのは1987年。
LE3-Jetronicシステムを採用し、D6Aエンジンと5MTを持つBX19GTIでした。このモデルは16/19TRSと並行して正規販売されています。

1988年からはTRS系がLU2-Jetronicを採用したDFZ系エンジンのTRIに移行し、GTIの名称はMotronicシステムとDKZエンジン、4ATを持つモデルに継承されます。
マツダがシトロエンの販売に参入したのは1989年からで、ラインナップは西武自動車と共通のTRI saloon、TRI Estate、GTI、16Vでした。

ちなみに、Haynesに載っているL-JetroはD6Aエンジン用のLE3のものです。
その後、Magnetti Marelli G6.10のシステムを持つ16TZIが加わります。このシステムはシングルポイントインジェクションと電子制御の点火系を持ちますが、現在のところ詳細は不明です。
情報をお待ちしています。(ZXと共通?)

BOSCHLE3-JetronicGTI-D6A
LU2-Jetronic19TRI/TZI Saloon
Motronic M1-3GTI-DKZ
19TRI/TZI Estate
Motronic M1-316V
Magnetti MarelliG6.1016TZI

16TZI以外は全てボッシュのシステムで、L-Jetronicを基礎に進化したシステムです。
このため、構成部品にはある程度の共通点が有ります。

  LU2-Jetronic

点火制御には機械進角のフルトランジスタシステムを用い、ECUは関与していません。
LE3とLU2の構成部品に大きな違いはありませんが、LE3ではECUがエアフローメーター直上に配置される、リレ−類がバッテリー横に配置されるなどの違いがあります。もちろんマッピングは異なるでしょう。
ECUに自己診断機能はありません。


エンジンルーム内、主要部品の配置

  1. メインリレー
  2. インジェクタ、プレッシャレギュレータ
  3. スロットルスイッチ
  4. ディストリビュータ、ピックアップセンサ
  5. 水温センサ、補助エアバルブ
  6. イグナイタ、点火コイル
  7. エアフローメーター、吸気温センサ
ECUはフロントシ−ト下、ラムダセンサ(O2センサ)は排気管の触媒前に配置されています。

Fig. 1


  1. 電源

    1. メインリレー

      L-Jetronicを構成する全ての部品に電源を供給します。
      右フロントスフェア前に配置され、リレーへ入る前にメイン電源のヒューズがあります。
      中身は管ヒューズですが、情けない(^^; ケースに納まっていますね。

    2. メインリレーへの電源供給

      メインリレーへ行く電源は(+)ターミナルからバッテリ−前へ分枝する細いケーブルです。

      ヒュージブルリンクに刺さる太い水色の配線の一本は、前述のメインリレーのヒューズへと繋がっています(写真下段)。
      リンクには防水機構がないため、大抵は内部に錆が発生して接触不良の好発部位となっています。


    3. メインリレーの配線 ( 線色/マーク色:接続先 )

      1. 緑/赤:スターター
      2. 青:バッテリー(管ヒューズを経て)
      3. 茶:アース
      4. 緑/白:点火コイル
        緑:ECU
      5. 黄:フューエルポンプ
        緑:O2センサ
      6. 緑:イグニション・キー
      7. -
      8. 青:インジェクタ、スロットルスイッチ、
          エアフローメータ、エアバルブ
      9. -


      メインリレーは以下の条件でフュエルポンプ・ECU・インジェクショシステムに通電します。

      1. イグニションスイッチを入れて2-3秒
      2. スターターモーター作動中
      3. エンジン回転中(225rpm以上)


  2. ECU
    25ピンのECUは右側フロントシ−ト下に配置されます。
    各パラメータをもとに、インジェクタの燃料噴射時間を決定します。

    主変数
     ( エンジン負荷状態 )

    • 吸入空気量 ← エアフローメータ
    • エンジンスピード ← ピックアップコイル(ディストリビュータ)

    補正変数
     ( 始動・暖気・負荷範囲-アイドル・部分負荷・全負荷-などの補正 )

    • エンジン温度 ← 水温センサ
    • 吸入空気温 ← 吸気温度センサ
    • 負荷状態 ← スロットルスイッチ

    精密補正変数
    • 急加速 ← エアフローメータ
    • 始動 ← スターター
    • インジェクタ電圧 ← バッテリ電圧
    • 空燃比 ← O2センサ




  3. センサー

    1. エアフローメーター

      エアクリーナーケースの蓋に組み込まれています。
      エンジンの吸入空気量を検出します。
      フラップの動きをポテンシオメーターが電圧に変換し、ECUに伝えます。
      流路には吸気温センサが内蔵されています。

      )で示したコネクタ部の接触不良により、エンジン不調が生じる頻度は高いです。


      エアフローメータのBottom view

      1. 補正フラップ
      2. ダンピング・チャンバ
      3. バイパス
      4. センサフラップ
      5. アイドル混合気調整スクリュー(バイパス)


      3. のバイパスはアイドリング時の少量の空気を通す回路です。
      アイドル空燃比調整の為のスクリュー(5)が付いており、CO濃度の調整をする事ができます。


    2. スピードセンサー

      ECUへのエンジンスピード入力は、ディストリビューター内部ピックアップコイルのパルスを利用しています。

       →(関連項目:点火系へ)

    3. スロットルスイッチ

      スロットルボディ部にあり、バタフライと同軸で動きます。
      角度によりアイドル・部分負荷・全負荷の状態をECUに伝えます。


      スロットルスイッチ。

      電極の番号は部品に記載されているものです。



      点検は2-18間および3-18間の抵抗値を、各スロットルポジションで計測します。
      アイドルコンタクト

      2-18間。規定値は1オーム以下。
      このスイッチはアイドリング時、アームに押されて通電します。
      明瞭なクリック感があります。
      中間ポジション

      どの接点も開いており、抵抗値は2-18、3-18間とも無限大。
      フルスロットル・ポジション

      スロットルバタフライの開度60度以上で通電。
      ここでも、ごく軽いクリック感があります。
      3-18間の規定抵抗値は1オーム以下です。


    4. 水温センサー

      水温センサはディストリビュータの下、やや後方に位置します。
      直下には補助エアバルブが配置されます。

      撮影のため、ディストリビュータおよびバッテリーは外してあります。


      水温センサはNTC抵抗(Negative Temperature Co-efficient)を内部に持ちます。
      この素子は温度の上昇とともに電気抵抗が減少します。

      ECUは低温時に燃料を濃くなるよう調整します。

      規定値は20℃:2-3KΩ、80℃:290-370Ω

      1. コネクタ電極
      2. ハウジング
      3. NTC抵抗



    5. 吸気温センサー

      吸気温センサーはエアフローメーターの吸入口内に内蔵されています。

      水温センサーと同様のNTC抵抗が用いられ、各温度による規定値も全く同じです。


    6. ラムダセンサー(O2センサー)

      ラムダセンサーは空燃比を最適化するための情報をECUに送ります。
      エキゾーストパイプの触媒前に位置しています。




      それでは「ラムダ」とはなんでしょう?

      「ラムダ(λ)」

      理論空燃比は御存知のように14.7:1です。
      実際の空燃比が理論値からどれだけ駆け離れているかを示すために、空気割合として「ラムダ」を使用します。

      ラムダ(λ)=(供給される空気量)/(理論的に必要な空気量)

      λ=1:理想値
      λ<1:供給空気量不足→濃厚な混合気
      λ>1:供給空気量過剰→希薄な混合気
      という事になります。

      ラムダセンサーは「O2センサー」とも呼ばれていますね。
      センサーにはジルコニアセラミックが入っていますが、その両端に酸素濃度差を生じると、酸素イオンの発生により起電力が生じます。
      この電力は理論空燃比相当の酸素濃度付近を境に大きく変化するため、実際の空燃比を知る指標となります。
      ECUはこの電位を読み取って最適の空燃比となるよう、インジェクタの燃料噴射時間を決定しています。

      グラフからわかるように、ラムダセンサが発生する電位が低ければ燃料を濃くするようにECUがコントロールする事になります。

      ラムダセンサのトラブルでは、リッチとなってカブる事が多いですね。


    7. その他の入力要素

      スターターモーター
      スターターモーター作動中はECUとインジェクションリレーに通電します。
      エンジン冷間始動時、燃料噴射量を2倍にします。
      最低20秒間およびエンジンが70℃以下で最長4分間の増量を行います。

  1. 燃料供給系統

    LU2-Jetronicの燃料供給系統は極めてシンプルです。

    ポンプは一定の効率で燃料を圧送し、プレッシャーレギュレータは余剰な燃料をタンクに戻して燃圧を一定に保ちます。

    系に一定の圧力が掛かっている事を前提に、ECUはインジェクターに指令を出し燃料を噴射します。噴射される燃料の量は、ノズルを開く「噴射時間」で調節されます。


  1. 燃料タンク
    樹脂製タンクの容量は66Lとなっています。

  2. 燃料ポンプ

    ポンプはローラーセルタイプを採用しています。
    1. 吸入側
    2. プレッシャー・リミッタ
    3. ローラー・セル・ポンプ
    4. モーター・アーマチュア
    5. チェックバルブ
    6. 吐出側

    2. のプレッシャーリミッタは、燃圧が何かの原因で3.5~5.0kg/cm^2以上になると開き、規定値以上になる事を防ぎます。

    5. のチェックバルブはポンプ停止後も残圧保持してベーパーロック防止と再始動を容易にする働きがあります。

    ポンプの作動条件は、
    1. スターターモーター作動中
    2. エンジン回転中(225rpm以上)
      (メインリレ−参照)


  3. フィルター

    10マイクロm程度のフィルターが用いられ、装着方向があるので交換時は要注意。
    一般的な交換時期は5万キロ前後です。
    1. プレッシャー・レギュレータ

      供給装置内の圧力(燃圧)をコントロールします。
      ダイアフラムを用いたオーバーフロータイプです。

      1. デリバリ−パイプからの流入
      2. 燃料タンクへの流出
      3. バルブ
      4. バルブホルダー
      5. ダイアフラム
      6. コントロールスプリング
      7. バキューム(インテーク・マニホールドへ)

      L-Jetronic規定燃圧は2.5-3.0kg/cm^2とされています。

      1. からの流入燃料圧が規定値を超えると、ダイアフラムが押されて3. のバルブが開き、燃料をタンクに戻します。

      さらに、燃料圧力とインテークマニホールド負圧の差を一定にする為、7. はバキュームホースでマニホールドに接続されています。
      (例えば負圧が-1なら燃圧は1.5にコントロールされる訳です)


      エンジンルーム内の配置

      写真中央の四角いパイプがデリバリーパイプです。
      4本のインジェクターが取り付けられ、内部は燃料が流れています。端に取り付けられたプレッシャーレギュレーターが燃圧をコントロールします。


    2. インジェクター

      1. 流入側:フィルター
      2. 配線コネクタ
      3. ソレノイド・コイル
      4. ソレノイド・アーマチュア
      5. ニードルバルブ
      6. ピントル


      燃料噴射の仕組みはいたって単純です。
      3. のソレノイド・コイルに通電すると、磁場により4. のニードルバルブ付きアーマチュアが引き上げられ、ニードルバルブが開きます。燃料は加圧されて「噴射準備状態」にありますので、開いたニードルバルブから噴出します。ニ−ドル先端には燃料を霧にする形状のピントルが付いています。
      ECUはニードルバルブを開く時間を制御して噴射量をコントロールしています。
      バルブのリフト量は約0.1mm。開閉時間は1.5-10msecの範囲で行われます。

    1. アイドルアップ
    1. 補助エアバルブ

      補助エアバルブは冷間時のアイドルアップ機能として働きます。

      1. ブロッキングプレート
      2. オリフィス
      3. スピンドル
      4. バイメタル

      図はオリフィスが閉じた状態の透視図になります。

      ブロッキングプレートはロータリーシャッター型が採用されています。
      低温ではオリフィスが開いています。エア流路はスロットルバルブをバイパスするため、スロットルが閉じていてもエアの吸入量が多くなり、アイドリングの回転数が上がります。
      (少しアクセルを開けているのと同じ状態)

      温度が上がって来ると内部のバイメタルの変型によりプレートが回り、オリフィスが閉じるため通常の回転数に戻ります。 また、バイメタルはヒーターでも加熱されるため、一定の時間を経るとオリフィスは閉じます。
      このように、動作は純粋に機械的なものです。



      補助エアバルブの配置

      イグニション・ディストリビューターの下後方、水温センサーの下にあります。

      ECUは積極的には関与していません。
      アイドルアップ不良の際に疑うべき部品です。


    センサ−機能測定の関連情報がこちらにも掲載されています。


    (C) N.Mayumi, E.Takahashi, H.Suyama, H.Miura, J.Hara, Y. Narabayashi

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