パワーステアリング・コントロールバルブ
BXのパワーステアリング(以下、PS)はハイドロニューマチックの油圧を受けて作動します。フローディストリビューター(以下、FD)は、メイン系が規定の圧力を発生している時に、PS系への油圧供給を許します。もし何かの原因でメイン系の圧力が低下すると、FDによりPSへの供給はカットされ操舵力が重くなります。
これは、ブレーキとサスペンション系への油圧を優先する働きです。
メイン系とFDが正常に機能している場合、FDからの油圧はステアリングピニオンギヤと一体のコントロールバルブ(= ピニオンバルブ)から、パワーシリンダーの2つのチャンバーに振り分けられます。
操舵の時に油圧でパワーシリンダーを左右に伸縮させ、操舵力を補助します。
ピニオンバルブは5つのオイルシールで(主に)3つの部屋に分けられ、各々の部屋は油圧の振り分け時の通り道になります。
内部の3本のシールが劣化して部屋の仕切りが甘くなった場合、全体にステアリングが重くなったり、片側だけ重くなったり、時には転舵の途中で突然固まったようにステアリングが重くなる事があります。これは同じ側(左側の報告が多い?)で起こります。最後の症状はピニオンバルブが原因となる特徴的な症状です。
全体にステアリングが重い場合、原因の同定は容易ではありません。FD・パワーシリンダー・ステアリングギヤ自体など様々な原因があります。
また、ピニオンバルブ上下のオイルシールが劣化した場合、外部へのLHMリークが起こります。上のシールからの漏れは目視できますが、下側(ラック側)ではラック内部への漏れが起こり、端に有るラックブーツからLHMが漏れる事があります。
ピニオンバルブのリコンディション
以下ではピニオンバルブの分解とオイルシ−ル交換について述べます。
金属部分の交換や組み直しは、ベアリングを除いて不可能と思われます。
ピニオンバルブ・リペアキット
純正番号:95 669 033
MAZDA:ZZVH-32-180
工具類
シリコングリス、スナップリングプライヤー
ビニールテープ、ポリプロピレンの板(70 x 100 x 1mm)
ホースクランプ(35mm対応)、プラスチックハンマー
バイス etc...
シャフト側の外径45mm弱、差し込み角3/4インチソケットがあれば、オイルシールの押し込みやバルブの組み立てに便利です。
(写真はKTCのインパクトレンチ用36mmソケット)
- ピニオンバルブをハウジングから取り出します。
図のようにバイスに乗せ、シャフトをプラスチックハンマーで叩くとバルブ全体が抜けてきます。
- バルブが抜けたら、ハウジングの上側にあるスナップリングとオイルシールを外します。
- ラック側にもオイルシールが有るので外します。
こちら側にスナップリングは有りません。
平らな側が外側です。再組み込み時は向きに注意してください。
- バルブの3本のオイルシールを外します。
バルブには同じような溝が4本切ってありますが、左ハンドル車ではシールを入れるのは矢印で示した3箇所です。再組み込みで間違えないよう注意して下さい。
シ−ル類を取り外した部品はパーツクリーナー等で清掃します。
- 新しいシールとバルブ部分にシリコングリスを塗り付け、ピックアップツールなどを使って組み込みます。
このシールは一般的なo-ringと異なり、極めて復元性に乏しく脆い性質です(おそらくカーボンゴム?)。乱暴に扱うと傷ついて使用できなくなりますので慎重な作業が必要です。
右の写真は、組み込む時に伸びてしまったシールです。多かれ少かれ必ず伸びます。待てど暮らせど戻りませんので、このままではハウジングに入りません。
そこで、以下の方法で縮めてやりました。
- まず、ビニールテープで3周程キツめに巻きます。
写真は透明のテープを使ったので見にくいですが、中が観察できるのがメリットです。
次に柔軟な樹脂素材(今回はポリプロピレン:ホームセンターで購入)で外から巻きます。
その上からホースバンドで押さえます。
あまり強く巻くと、バンドの重なる部分でシールが変型しますのでほどほどの強さで締めます。
バンドの重なる部分の隙間でどうしても膨らんでしまうので、半日くらいでバンドを半周回してやります。
翌日には使用可能な程度に縮んでいました。
- シールが縮んだら、再びシリコングリスを塗り付けてハウジングに仮組みします。うまく入ったら1時間くらい放置します。これでシールが内壁に馴染む程度まで縮みます。差し込む深さはベアリングが入り口に当たる程度です。
- 再びバルブをハウジングから取り外します。
- オイルシールをラック側に押し込みます。大体は指の力で入りますが、最後に適当なカラー(今回はソケット使用)で奥に当たるまで押し込みます。
- 上側のオイルシールとスナップリングをハウジングに組み込みます。
いずれのシールもシリコングリスを塗っておくとスムーズに入ります。
- バルブを組み込む前に、ベアリングのハウジング側からモリブデングリスを入れ、ベアリングを回して馴染ませます。
- バルブをハウジングに組み込みます。
ベアリング部はプラスチックハンマーで叩きけば入ります。
組み終わったら、ラック側からもベアリング部にモリブデングリスを入れておきます。
- シャフト側にプラスチックのダストカバーを着けて終了です。
ピニオンバルブの脱着はこちらを御覧ください.
(C) Y. Narabayashi