Back Numbers : 映画ログ No.11



【イベント・ホライゾン】四つ星
パンフによると、"evil(邪悪)"という言葉はギリシャ語の"物理を超越したもの"から来ているのだそうで、確かにこの映画に於けるこの言葉はそのように解釈して観た方がより妥当なのではないかと思う。人間の心の一番深い傷をえぐり出す生きた宇宙船というコンセプトには、哲学的な香りすらあり、最後もまたすっきり終わらないところが余計、宇宙の謎と神秘、未知なる恐怖を深めていて凄い。こんな傑作が時々ころんと出来たりするから、ハリウッドって侮れない。がアメリカで一番好きな俳優さんであるローレンス・フィッシュバーン様様もかっこいい主役でたっぷり見れたし、もう言うことなし。
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【英国万歳 ! 】二星半
う~む、演技のしっかりしたコスチューム・プレイなのは面白かったとしても、どうもテーマが今一つよく分からなかったのだが……王室は所詮、尊敬に値しないエゴイスティックな人間の集まりだってことが言いたかったのかな ? (違っていたらごめんなさい。)
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【黒い十人の女】三星半
「あんな男いなくなってしまえばいいのよ」と言いながら、チャンスがあれば独り占めしてやろうとてぐすねひいている女達の、虚々実々の駆け引きの描写が実に面白い。昭和30年代のレトロな風俗と混ざり合って、何とも言えぬ絶妙の味わい。ところで、こんなTVプロデューサーって何か今でもいそうだよねぇ、よく知らないけど。
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【CLOSING TIME】二つ星
申し訳ないのだが私は、能書きを垂れるおっさんほど嫌いなものはない。希望を持つ努力をしないのは個人の勝手だと思うが、それを他人に見せつけて歩く権利はこの世の誰にも無いんじゃないの ? この主人公に女が寄ってくるというナルシスティックな設定が、そもそも私には理解し難かったのだが。
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【コン・エアー】三つ星
ストーリーなんか面白い筈もないこの映画を何故見に行ったのか ? 愛するぢょん・マルコ(ヴィッチ)様とスティーブ・ブシェーミ氏が出ているからに決まっておる ! 通常、ハリウッドの勧善懲悪の世界観の中では悪漢の描写はどうしたって薄っぺらになりがちなのだが、さすがはマルコ様、最高にい~い味を出してくれてました ! ブシェーミ氏も、ただ座っているだけで全身から変態のオーラを発している姿(そういう役柄だから)にゾクゾクした……のだが、ストーリーの本筋には全然絡んでいなかったし、はっきり言って何のために出てきたのかあんまりよく分からない役どころではあった。しかし、他にも特徴のある悪者がたくさん出ていたことからすると、実はこの映画を作った人は、そういうピカレスクの部分を本当は主に描きたかったんじゃなかろうか、と私には思えたのだが。もしその見通しが当たっているなら、これは勧善懲悪を偽装した、案外面白い目論見のある映画なのだと言えるのかも知れない。
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【新・欲望の街II/'97古惑仔最終章】一星半
前回はベタ褒めした古惑仔シリーズでしたが……うーん、4本も作ってさすがに息切れしちゃったのか。前回まではストーリー展開に少しくらい無理があっても勢いで押し切っていたのだけど、今回は途中のキャラクターの行動が突飛すぎることが多かった上(特にミシェル・リーの役は笑えるくらいひどい ! )、最後はあんまりな辻褄合わせの展開に盛り上がらないまま終わってしまったのでした。残念。
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【タオの月】三星半
雨宮慶太監督の作品は、アニメやRPG、特撮ものが好きな層とそうでない層では評価がはっきり分かれるのであろう。私は無論、この創り込んだ世界、大好きである。ごく個人的な好みを言えば、酔狂さんの武器の大筆とかを生かして、もっともっと呪文合戦とかガンガンして欲しかったなー。まぁ立ち回りの連続もかっこよくて好きだけど(森山祐子さん相変わらず最高 ! )。
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【時をかける少女<'97年版>】二つ星
主人公の女の子はいい。男の子もいい。雰囲気を出すためにモノクロにするという狙いもよかっただろう。でもそれだけ。どうしてこのお話を作り直さなければならなかったのかという必然性は、この映画を見る限り、私には最後まで分からなかった。どこかで角川春樹氏のインタビューを読んだらとてもよく分かったけど……要するに、昔日の角川映画の栄光を再び ! ってだけなんですね。しかして今の日本の映画界は、いかに話題づくりをしてみたところで、何も新しいものが見られない小手先のリニューアルだけでは到底通用しないような状況に、既になっていると思うのだけれど……。
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【ナージャの村】三星半
まるでお伽話に出てくるような、静かで美しい村。あほな感想で申し訳ないが、私にはどうも「ナウシカ」(コミック版の方)が思い出されてしまってしようがなかった。私たちは最早、自ら作り出した毒によって汚染されてしまった大地に、幾度も血を吐きつつも住み続けるしかないのだ。遥か彼方の清浄の地を夢に見ながら。
人類はもはや、毒を食らいながら生きて行くより他にないのである。ということでこちらのコラムもどうぞ。
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【につつまれて/かたつもり】二星半
【萌の朱雀】の河瀬直美監督の旧作。この2本自体はやはり仕上がりの丁寧な個人映画といった趣き(これらを観て後日の【…朱雀】を予見できた人は誠に凄い)なのだが、河瀬監督の創作のプロセスや作品の成り立ちなどに興味がある人には、観て面白さがあるのではないかと思う。
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【ビースト・獣の日】三星半
夜の場面を多用した重厚な画面づくりとヘヴィメタのサウンドで、ヨーロッパの暗黒をしゃれのめす。こんなもん創って教会に怒られないのか……悪魔を滅ぼす話だから別にいいのか。話のハチャメチャさ(以前の【ハイル・ミュタンテ…】と較べればストーリーはしっかりしてるか)の割に、観た後に残っているこのどっしりとした余韻は一体何なんだ~ !? 夏頃に上映してた【テシス】といい、すごい骨太だぞスペイン映画 !! アルモドバル監督とかに限らず、探せば他にも面白いものがあるのではないだろうか。
余談ですが : 本作のアレックス・デ・ラ・イグレシア監督は、【エイリアン4】の監督依頼を蹴って、現在【ワイルド・アット・ハート】の続編(何だそりゃ !? )の監督をしているのだそうな。ちなみに【エイリアン4】の方は、確か【ロスト・チルドレン】のフランス人コンビ・ジュネ&キャロが監督をしているはず……う~ん、昨今の香港のアクション監督の大量スカウトといい、世界中の才能の横っ面を札束ではたきまくっておるのね、ハリウッドは。(昔から変わってないだけか……。)
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【ポネット】三つ星
私はどうも、子供が大人の思惑で不必要に過剰な演技をさせられているのは好きではないのですが……ポネットちゃんはまぁよかったとして、他の子供達は、おしゃまというよりはどうしても大人を矮小化したツクリモノに見えて仕方なく、映画が終わる頃にはすっかり気持ち悪くなっていたのでした。おえっぷ。
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【マザー、サン】三つ星
ソクーロフの映画は、昔観に行った時ものの5分で沈没してしまって以来、避けて通っていたのだが……今回もやっぱり、始まって30分で死んでしまっていた。絵とかは超人的にきれいなので、自分の体内のテンポを限りなくゼロ近くまで落としてゆっくりと鑑賞することが出来る人ならば、きっとこの作品の詩的な味わいを十二分に堪能することが出来るのだろう……私には当分無理そうではある。
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【萌の朱雀】四星半
今回、レイトショーでやっている旧作(【につつまれて/かたつもり】)なども併せて観て思った。この人は、現実の世界の中に映画的瞬間が立ち現れてくるのをじっと待ち、それをフィルムに捉まえて再構築する、その方法論を本能の部分で知っているのだ。そういうものを、作家としての天賦の才能 = 天才と呼ぶのではないのだろうか。
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【モハメド・アリ かけがえのない日々】三星半
モハメド・アリというと、日本で某プロレスラーとやったおマヌケな試合しか思い出せないのが、そもそも認識として間違っているのだな。アリもジョージ・フォアマンも、何てまぁかっこいいこと ! 単なる大言壮語ではなく、本当の自信と熟慮に裏打ちされている重みが、今の時代の人にありがちな傾向とは違っているような気がする。彼らがアメリカ文化の中で、単なるボクサーという枠を超えたヒーローであり続けているのは当然ということか。
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【ラヂオの時間】三星半
日本に於けるコメディの地位はどうして低いのか(私自身とて、どうしてコメディを過小評価する傾向があるのか)とか、テレビと映画の関係はこれからどうなっていくのかとか、考えなければならないことはいろいろあるような気がするが、この作品に関してはとりあえず、掛け値無しに笑える仕上がりのよさを評価するのが先決だろうか。“いつかはいいものを作りたい…”という決め打ちがマスメディアの人達の垂れ流し仕事のエクスキューズに使われたら嫌だな、とだけ、ちと思ったが。
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