Back Numbers : 映画ログ No.23



今月の一言 : 何でもいいからでっかいハコを建てれば無知な大衆はとにかく喜ぶ、といった時代ではとっくにないことを頭から無視して建てられた“鎌倉シネマワールド”は潰れるべくして潰れたのだ。断じて不景気のせいなどではない。

【アウト・オブ・サイト】二星半
エルモア・レナードさんのご本というものを読んだことがないのでよく分からないのだが、【ジャッキー・ブラウン】や【ゲット・ショーティ】を見た限りでは、レナードさんの真骨頂って“意図してないのについつい愚かしい行為に走ってしまう人間のおバカさ加減を愛をもって笑いのめす”といったところにあるのではなかろうか。しかるにこの映画は、ラブサスペンスとしてあくまでも生真面目に作られてしまっており(スティーブン・ソダーバーグ監督の性格を反映しているのだろう、きっと)、勢い、“おバカ”を通り越して“そんな馬鹿な”のレベルになって、お話の嘘っぽさだけが一人歩きを始めてしまったような感じがする。決して駄作という訳ではないとは思うのだが、お話に今一つ入りきれず楽しめなかった印象が残ってしまうのは、その辺りに原因があるのではないだろうか。
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【アンツ】二つ星
何年か前にフランスのベルナール・ウェルベルという人の『蟻』という小説がありましたっけね。多分この企画やこれからアメリカで公開になる【バグズ・ライフ】は、その辺りからインスパイアされてできたものなのではないかと思うのだが(そうじゃなきゃ蟻なんて目にも映らないような生き物に誰も注目する訳がない ! とは、小さい時から蟻が嫌いなの弁)。しかし、大体が下手に擬人化された動物が言葉を話しているような映画は好きじゃないのに、鼻や歯や唇や、指まであるような奇っ怪な生き物に、あんまりにも見え透いた作りの人間社会のパロディらしきものを演じさせるなんて……本物の蟻ってもっと蟻らしいところが崇高な生き物なんだから(とは小さい時から蟻好きのの弁)、下手に人間なんかに似せるなんて蟻に対して凄く失礼なんじゃなかろうか。技術的には本当にものすごくよく出来ているとは思うし、ウッディ・アレンの声の演技などは確かにハマッていたのだが、そのシュールでごちゃごちゃした映像とプロットに、個人的にはかなり気持ち悪くなってしまったのだが……。
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【踊る大捜査線 THE MOVIE】三星半
テレビ・シリーズの延長線上でイベントとしての映画を作る、という企画は、大抵は映画というメディアや観客を舐めてかかっており、いかにも間に合わせでつくりましたというような練り方の足りないツマラナイ代物になってしまうことが多い。でもこの【踊る大捜査線】の場合は、スタッフの人々がテレビと同等、またはそれ以上のリキを込めたからこそ、必然的にテレビ以上の盛り上がりを楽しめる一本に仕上がったのだと思う。ヒットするのは当然と言えば当然、だって見ていて飽きないサービスたっぷりの展開なんだもん。やっぱり企画に愛があるかどうかは、観る側は存外シャープに感じ取るのではなかろうか(でも愛があればいいっていうものでもないから確かに難しいんだけどね)。ただ個人的には、テレビのギャグを映画でそのままやったらちょっと間延びしちゃうかなー、なんて辺りで、メディアの違いは意識しなかったなんて言い放たずに更に工夫してもらえるともっと嬉しかったのと、これはやはり基本的にはテレビ・シリーズのファンに捧げるべきものではないかということで(テレビの方はスペシャルくらいしか見ていないから)、独立した1本の映画としての評価自体はこのくらいにしてみました。
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【かさぶた/7本のキャンドル】四つ星
人間は、何のために映画というものを創ろうとするのだろう。商業主義の手垢というものとは全く無縁の、あくまでも純粋な映画〔一体、そんなものが可能なのであろうか ! 〕というものを久方ぶりに観てしまったような気がする。
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【キュリー夫妻 その愛と情熱】三つ星
原作の舞台劇というのは多分、明るく軽快でとても楽しい作品なのだろう。キュリー夫妻の伝記の中で、特に夫婦の愛情と研究への情熱にスポットを当てたこの作品(副題のそのまんまやね)は、決して悪い出来ではないのだが、それだけではちょっと毒気が無さ過ぎるような気もしないではないかなぁ。
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【恋の秋】三星半
エリック・ロメールはもう何を創ったとしても名調子のロメール節になることは分かりきっているのだから、それ以上特に何も付け加えることはない。この映画もそうした期待に違わぬ一本である。ただ今回、個人的には、主人公の行動が分かり過ぎてしまうというか、その受け身なくせに依怙地なところがあんまりにも自分と似ているような気がして、まるで鏡でも見せられているみたいなやーな気持ちにもなってしまったのだけれども……あと終盤がちょっと御都合主義なのも、普段なら“よかったね”で済ましているところなんだけど、今回は “んなにうまく行く訳ゃねーだろ”とちょっとシビアにツッコミを入れてみたくなってしまったりして。
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【始皇帝暗殺】四つ星
どうしてなんだか、エピソードのひとつひとつはあんまり親切じゃないというか、こちらで意図しがちなようには話の前後がつながらなかったりして、流れがぶつぶつ途切れてしまった印象を受けた箇所も幾つかあった(集中力が足りなかっただけ ? そうかもしれないけど……)。それでも観終わった後には、ずっしりとした感触が手元に残った。まるで、細かいところまで描き込まれた絵巻物を一巻丸ごとインプットでもされたみたいに。私は今になって、シーンのいくつかを断片的に巻き戻して思い浮かべてみては、例えばあそこは一体どういうことだったのかな、などどぼんやり考えてみたりしている。絶大な権力を手にするほどに孤立し、絶望を深めていく皇帝・政の姿が、特に印象に残った。
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【宋家の三姉妹】四つ星
中国の近代史というとどうも、しっとりとしたものなど一切入り込む余地のない、非常に厳しくかつかつとしたイメージばかりがどうもつきまとうのが常なのだが、この映画は、そんな激しい時代の歩みを、ある名家に生まれた三姉妹をめぐる壮麗な物語という、目にも綾な大河ドラマに託することに完全に成功している。さすがは、硬派な社会派ドラマから心温まるラブ・ストーリーまで等しく手掛けてきたメイベル・チャン監督だけのことはあって、その手腕は実に見事なものだと思うのだけれども、しかしこれだと、歴史を動かすのは結局、所詮金持ちなんだっていうふうに裏読みされてしまったりはしないのかなぁ……何て、すみません、そりゃきっとびんぼー人のひがみってやつですな。
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【地球は女で回ってる】四星半
欠点だらけであるが故に作家でありつづけることが出来るハリー・ブロック氏の精神構造の解体図は、ウッディ・アレン監督御本人の似姿なのであろうか ? あまりにも多過ぎる人間のネガティブな側面すら明るく前向きなユーモアをもって捉えることのできる現在の監督は、余程のびのびとした心持ちで新婚生活を楽しんでいるのだろう ! ハリー氏の世界では現実と妄想がごちゃごちゃに入り混じっているので、うっかりしていると登場人物の相関関係が分かりづらくなってしまうきらいはあるのだが、細部まで練りに練られて中身のぎっしり詰まったこの作品は、監督の後期の傑作の1本として数えられることは間違いあるまい。
しかし : せっかく【Deconstructing Harry】なんていうスマートな原題がついているのに、この邦題はあまりにも古くさくて、手垢のついたイメージじゃないか ? まるで、世界を回すのが男か女かのどちらかでなければならないと考えていた時代の人がつけたみたいな。(確かに、この原題をひねるのはかなり難しいとは思うけど。)
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【血を吸うカメラ】四星半
その昔、鈴木さえ子さんの同名の曲が映画からインスパイアされたものだと聞き、どんな映画なんだろうとずっと思っていたんだが(古い話でごめんね)。猟奇映像に取り付かれたある悲しい人物の姿を、映画中映画という仕掛けを通して描く、なんて今でも最先端を行ってしまいかねない意匠を1960年に既にやってしまっていたなんて……時代を先取りするのにも程がある ! またこんな偏執的世界が、かっちりとしたクラシカルな映像の中に展開されるのにも、余計に興をそそられる。誤解も偏見も恐れずに、自分の見識を信じてこの作品を当時の世に問い、結果的に時代性なんてものを軽々と飛び越えてしまったマイケル・パウエル監督はいかに偉大であったのか。畢竟、これは掛け値なしの価値を持ったカルト中のカルト映画となったのである。いろんな意味で絶対に観ておくべき !
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【トゥルーマン・ショー】四つ星
【ガタカ】(本作の脚本を書いたアンドリュー・ニコル氏の監督作品)で示されていたのが“生まれついて持っている遺伝子で一生を選別されてしまう悪夢”なら、【トゥルーマン・ショー】で示されているのは何かというと……。個人的には、自分の全てがメディア上でさらしものになってしまう側面よりも、自分の周りの全てが自分を騙す演技をしているという側面の方がずっとキてしまった。通りの全ての人間の動きが止まった画(え)こそ、私も昔どこかで見たことのある悪夢、そのものの情景だ。また、あのトゥルーマン氏が最後に登場するシーンは、私にとってはまるで、人間が自分の意識の境界線から出ていく光景のように見えて、どんなシュールレアリズムの絵よりも更にシュールな絵に映った。そうか、昔見ていた幾つかの妄想も、結構人類が潜在的に共通して持っている悪夢だったんだ。そんな悪夢を白日の下に、普遍的な位置にまで引きずりだしてみせるアンドリュー氏は、これから先、どんな世界を描き出してくれるのだろう。大いに期待出来るんでないかい ? また、これらの難役を、他の人には決して真似できない存在感で演じ切ったジム・キャリーとエド・ハリスの2人にも、もちろん心から拍手を送りたい。
ありがちな余談ですが : この映画を観て帰った日に、例の「朋友」がゴールしたシーンをテレビで見たのだが、効果音だのあらかじめ用意されていたイベントだのが入るたびにいちいち映画のシーン(特にエド・ハリスが演出をつけているところ)が思い出されて、バツの悪いような醒めた気分になってしまうことこの上なかった。しかし、視聴者の方も最早、この手の番組には“テレビ的仕掛け”(“やらせ”ともいうね)がつきものなのは分かっているのではないかと思うのだが、それでもなおこのような番組が面白く見えてしまうのは、その“仕掛け”の中で四苦八苦している本人達の姿だけはとりあえず本物であるように留めておくような数々の工夫が施されているからに違いない。というカラクリまで、この映画は言い当ててしまっている。う~ん、例の番組って、やっぱりある意味、最先端を行ってしまっているのね。というか、ウケるものをと訴求し続けたテレビ屋さんの本能の行き着く先は万国共通だったということなのか ?
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【ナン・ゴールディン/I'LL BE YOUR MIRROR】三つ星
かつて私が日本という腐れた国を死ぬほど嫌いだったように、ナン・ゴールディンという人はきっとアメリカという腐れた国が死ぬほど嫌いだったのだろう……その自分の国の現風景といかにして折り合いを付けるかという方法論はだいぶ違っていたような気はするが。このBBC製作の1時間のドキュメンタリーは、そんなナン・ゴールディンの歩みを検証することで、現代アメリカでアートをすることの一つの動機の在り方も示して見せているような気がする。またそこには、彼女が生きてきた70年代から90年代のアメリカのアート・シーンが辿ってきた姿の一部分(特に、エイズという問題といかに向き合ってきたか)も、必然的に映し出されているようである。
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【ニキ・ド・サンファル/美しい獣<ひと>】四星半
「男性は産業に奉仕するありとあらゆる機械を発明した。でも世界をよくする方法は知らない。」……映画の中のニキ・ド・サンファルの、多分30年くらい前の台詞である。世の中を男性原理と女性原理に分けて見るやり方が90年代になってもそのまま通用するのかどうかは別として、たっぷりとしておおらかな、キュートさを伴ったユーモアでもって人類の苦悩を乗り越えようとした彼女の知性(もしくは野性の勘とか、天才でもよし)は、混乱を極めつつある世紀末の現在にこそ正に求められているものなのではなかろうか。そんな彼女の歩みを時系列に添ってほぼ一望できてしまうこのドキュメンタリー映画は、いろいろな意味で非常に貴重な一本だと思う。個人的なシュミでこの映画にこのような評価をつけたのはお許し戴きたいが、しかし、この映画に展開されている彼女のイメージの豊かさ、奔放さは凡百の映画なんか全く足元にも及ばないし、この映画には誰しも必ず、どこかしらスゴイと思う部分はある筈だ。騙されたと思って一度試しに観に行っても絶対に損はしない !
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【ニルヴァーナ】三つ星
ごたいそーなSFXなんか使わなくてもSFは成立する。語るべき物語も無い視覚的なコケオドシだけでは映画の厚みは決して創れないのだ、とこの映画を見て再確認することができた。ただ個人的にこのお話に乗り切れなかったのは、例えばこの世の中が誰かに巧妙に仕組まれたプログラムなのだとしてもそれがどうして悪いの ? と思ってしまったから。与えられた限界というものが常に存在しているのも、その条件を踏まえた上で精一杯何かをやっていくしかないのも、そのこと自体はそれほど不幸なことであろうか ? “存在すること自体の不幸”について考えるのは若い頃さんざんやってすっかり飽きてしまったから、モーティベイションとしてはちと弱く映ったのだけれども ?
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【ネネットとボニ】四つ星
映画を途中まで観ていてはたと思った……そうか、ボニ君は“やわらかくてあったかいものフェチ”なんだわ ! (あるいは“生命のぬくもり”なんて言葉と置き換えてもいいかもしれない。)それに対してネネットの方は、自分が生き抜いていくのに必要なバランスを保つため、そうした温もりを自ら一切拒絶しているように見えた。どっちも凄くよく分かる。それは本来、どちらも一人の人間の中に存在している相反する2つの傾向で、クレール・ドゥニ監督はそれを意識的に2人の人間に分けてみせたのではないか。まるで触感そのものを捉えたような映像は、ピンとこない人にはまったく退屈なシロモノと映ってしまう可能性はあるのだが、こんなあまりにも微妙な領域を美しく幻想的に実体化してみせたのはとにかくものすごい力量だと、私は断言したい。
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【ハーフ・ア・チャンス】二星半
アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドとヴァネッサ・パラディの出る“アイドル映画”を、職人パトリス・ルコント監督が手堅くまとめた、といった感じ ? それ以上にどういった評価のしようがあるというんだ。
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【ビッグ・リボウスキ】四星半
大体がボーリングなんていう、今のアメリカでは多分どうしたって主流派ではないようなダウンで“アウトな感じ”(キネ旬12月上旬号より、本人達のお言葉)のスポーツをモチーフに持ってきたこと自体、コーエン兄弟は完璧な確信犯である。彼らは、例えば経済的な成功、アートと呼ばれるもの、ベトナム戦争、宗教など、現在のアメリカに存在するありとあらゆる価値観をパロディ化する。そして、それらのどれにも自ら与することが出来ず、何をすることもなくただ無為に過ごしている主人公(この映画のキャスティングの的確さ、そのハマりぶりは改めて言うまでもないが、二枚目の看板をかなぐり捨ててぼてぼてに太ったジェフ・ブリッジズの根性は特にスゴいと思う ! )を“90年代のヒーロー”と呼びつつ、彼らはそんな主人公自身をもまたパロディ化してしまうのである。この映画は、一見全てがもっともらしく語られるが、実は何にもそれほどの意味なんてない90年代という時代の、あまりにも早すぎた総括であるように、私は思われる。いわゆる“評論家筋にも絶賛された”【ファーゴ】の後にこの作品をぬけぬけと持ってくるコーエン兄弟は、自らの見識に忠実である姿勢があまりにも“正しく”、またあまりにもひねくれた、暴走する天才である。この作品が一般的にどのくらいまで受け入れられるかは分からないのだが、ともかく私は一生彼らについていこうと、固く心に決めたのだ。
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おまけ : ボーリングの裏街道ぶりをフィーチャーしているといえば……
【キングピン・ストライクへの道】を推薦 !! 三星半
主演のウッディ・ハレルソン様はお腹の突き出たスダレ頭の、昔プロボーラーを目指していた落ちぶれた詐欺師で、そのライバルのビル・マーレーはセコい手ばかりを使うチャンピオン(実は隠れザビエル)。それに幸せになれない売春婦やアーミッシュの青年(アーミッシュの人が見たら怒るんじゃないの ? という描き方だけはちと疑問だが)という、これまた世間の表舞台とは程遠い人々が絡み、揃ってリノの全米大会を目指すところ(決してニューヨークやロスではないのがミソ ! )がまた極めつけである。全編に漂ううらぶれた感じの演出が何ともいえないのだが、決して華々しい世界を生きることのない人々の、それでも何とか希望を持って道を切り開こうとする姿には、結構感動してしまったりする。いいなぁ、こういう映画もちゃんと出てきたりする辺りが、アメリカって懐ろの深い国だよなぁと思う。
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【Beautiful Sunday】三つ星
「日曜日って、もっと楽しいもののはずだよね ? 」……確かに、何か期待をさせといて、その実たいした中身もなくあっという間に過ぎ去ってしまう日曜日の寂寥感たらありゃしない。その“ムナしい日曜日”の実に的確なスケッチに、今の日本の寂寞感や行き詰まり感を重ね合わせて映し出した中島哲也監督の技量は、本当にたいしたものだと思う。ただ、これはそのまんまで直視するにはあんまり楽しいテーマじゃないというか、その心象風景の描写が真に迫っていればいるほど、しみじみと悲しい、どこにも逃げ場のない気持ちになってしまって、見終わった後にほとんどあまりいい気分になれないというのはどうしたもんかなぁ、と感じてしまった訳なのだけれども……。
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【ぼくのバラ色の人生】四つ星
子供の頃、赤色のものを可愛いと言って着させられるのがとっても嫌いだった。その赤色こそ、この映画のテーマカラーである。いーじゃないの似合うんだから(仮に似合わなくても)、男の子でも女の子でも、みんな着たいものを着てやりたいことをすりゃぁいいのよ。判ってくれない大人なんてみんな偽善者だわ、と、予期していなかった部分で何だか目頭が熱くなってしまった。
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【迷い猫】二星半
全体をつなぐインタビューのシーンに、何だか古めかしい雰囲気がつきまとっている感じがした。それよりも、出てくる女の人にあまり実体を感じられなかったのが、淡々とした話の流れと相俟って全体の印象を薄くしていた気がするのだが。いやひょっとすると、あの実体感の無さにこそ、あるいは“猫”みたいなものがイメージされていたのかもしれないけどね ?
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【落下する夕方】三星半
私は諦める時にはばっさりきっぱり諦めるタチだし、言いたいことをお腹にためて言わずにおくといった芸当もあまり出来ないものだから、別れた男性とのつきあいをいつまでもずるずると続け、その原因となった女の子との同居をなりゆきで受け入れてしまうヒロインの心持ちといったものは全く分からなかったし、そういった意味で、あまり深くお話に入っていくことも出来なかった。でもこれが、微妙な感情を紡ぎ出すため丁寧に創り込まれた映画だということはよく分かる。題名にもある夕方の情景が、非常に印象的で美しい。原田知世さんは(実は昔から結構好きなのだが)ようやくこういうじっくり、しっとりと取り組めるような役柄が回ってくるようになったのかな、と思うと、とても嬉しかった。
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【リプレイスメント・キラー】二つ星
チョウ・ユンファがただひたすらに銃を撃ちまくる ! まるでそれだけを見せたいがために作られたような映画だ。チョウさんもミラさんもまぁかっこよかったんだけれども、全般的にアクション映画に対する感度の鈍いと致しましては……リズミカルに響く銃の音って、どうも子守歌みたくいい具合に眠気に誘ってくれちゃうんだよなぁ、平日の仕事帰りに行ったのもいけなかったんだろうけど。それにしても、私はチョウ・ユンファさんといえばどちらかというと【誰かがあなたを愛してる】のような映画の方が断然好きなので(ありがちですまんのう)、香港スターのハリウッド進出と言えば単なるアクション要員としてしか期待されていないような現在の傾向を今後少しでも打破してもらえないものだろうか ? (と、心密かに期待しているのは、決して私だけではあるまい。)
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