Back Numbers : 映画ログ No.31&32



今月の一言 : キアヌ君も決して嫌いではない。けど、ローレンス・フィッシュバーン様のことももう少しは取り上げてくれよぉっ~~ !! 過去には一応アカデミー賞候補なぞにもなったことのある名優なんざますよぉ~~っ !!

【アイズ ワイド シャット】三星半
何で奥さんに(実際に浮気された、というのではなく)浮気願望を告白されたくらいのことで、そこまでうろたえるもんかなー。でももしかすると、自分の奥さんが浮気する可能性なんて頭から考えられもしないのが一般的なアメリカ男のメンタリティで、だからこそスコセッシやらスピルバーグやらが「これは魂の傑作だ !! 」と叫んだりしたんだろうか ? いずれにしろ、これはどうやら夫婦のふかぁい機微の物語みたいだから、誰かと夫婦になった経験のある人じゃなければ、観てもあんまり意味がないのかもしれない。キューブリックの作品は、観て何年も経ってから初めてその意味に気付いた、といったことが過去に何回もあったことだし、今回のこのお星様はとりあえずの暫定的なものだということにしておきたい。でも、今後どれだけ経っても、この程度の描写が(宣伝のため敢えて、という以外に)18禁になる理由はやっぱり分からないような気もするけれど。
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【あの、夏の日 とんでろじいちゃん】三つ星
大林宣彦監督作品は、個人的には、好きなものと嫌いなものの落差が非常に激しかったりする(美少女を主役にしているものはウソ臭く感じられるので嫌いな場合が多い)のだが、この作品はどちらかというと好きな方である。今までの監督の作品の中でも今回ほど、生活する街並みの目線まで降りてきた尾道を感じたことはなったのだが、これが監督が消えつつあると危惧している“尾道の尾道らしさ”に対するノスタルジアにこそ触発されたものなのだとしたら、皮肉なものかもしれないと思った。
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【アルナーチャラム 踊るスーパースター】三星半
今回見ていて思ったのだが、インドの人の価値観って日本人の根っこにある価値観と共通している部分が多いんじゃないのかなぁ(お金よりも真正直に生きることの方が大事、とかね)。どんなに面白くてもハリウッド映画に今一つ浸りきれない(場合が圧倒的に多い)のは、微妙に違う価値観を修正するという負担が意識下の目に見えない部分で掛かっているせいもあるのじゃないかと思うのだが、そうなるとインド映画はますます強いよなぁ……本っ当に頭をカラッポにして見れるんだもの。【ムトゥ】を初めて見てしまった時の衝撃にはさすがに及ばないのかもしれないが、暑気払いには最高のこのお気楽さ、やはり一度は中毒になってみて戴きたいものである。
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【アンダー・ザ・スキン】三つ星
ココロのスキマを埋められなくてメチャクチャな異性関係に走ってしまう、というのはよく聞く話ではあるけれど、その主人公を女の子にした上で、こんなふうに真正面から捉えた映画はあまり見たことがないような気がする。伝統的には、こういう女の子は得てして罰を受ける役回りだったりするのだが、本作はあくまでも主人公に寄り添うやさしい目線であるところが、ありそうで実はなかなかないのではないか。丁寧な描写にとても好感が持てる一本である。
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【エリザベス】三星半
エリザベスI世の人生といえば、語るべき面白そうな切り口がいくらでもありそうなものなのに、この映画はそういった世界史的な興味を満足させてくれることは全くない。その代わり、ただひたすらに女王の婿取り譚が延々と繰り広げられていくだけ(そして最後は国家と結婚するというオチ)なのである。う~ん、史上まれに見る大女傑を素材にしながら、彼女の思想や哲学がどこにも見えてこないとは、なんてつまんない脚本なんだ。それでもこの映画を見ていて退屈しないので済むのは、豪華な美術や衣装、【女盗賊プーラン】のシェカール・カプール監督のドラマティックかつ堅実な演出、そして何より、あまりにも見事な俳優陣の演技のおかげであろう。特に、女王の威厳と意志の力を演技力だけで体現しきったケイト・ブランシェットは凄すぎる ! グウィネス・パルトロウも愛らしい女優さんではあるが、演技力だけで言ったらケイト・ブランシェットの方が30倍はあると思うぞ。威風堂々の彼女を観に行くだけでも、この映画には十二分な価値があるに違いない。
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【EM エンバーミング】二つ星
うーん、この映画の世界観って、単なる死体処理の技術ってものに、猟奇的な興味を手前勝手に加味しておかないことには成立しないんじゃないの ? 個人的には、ただの人間の抜け殻の土くれにここまでロマンティックな感慨は抱けないんだけど。同じテーマを扱うのなら、好みとしては、もっと干からびるくらいにクールかつドライに処理して欲しかったかなぁ。あと、高島礼子さんの演技にもどうも妙なクセがついてしまっているみたいなのも気になって……全体的に、そこそこなレベルのテレビドラマみたいだと思ってしまったのだが。
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【オースティン・パワーズ・デラックス】三星半
最近、「オースティン・パワーズはおバカでオシャレだ」などと判で押したような紹介のされ方をしている、が、この“オシャレ”という言葉にはもっと注意が必要だ。もともとは60年代風俗の“何でそんなキテレツなものが流行ったのか今となってはよく分からない”得体の知れなさを、小太りで出っ歯で黒縁メガネで言動も何だか怪しいおっさんを主人公にして茶化したのがそもそものはずだが、そのままではあんまりにもキモチワルいだけだから、今見てもかっこいいと思われる要素を適度にブレンドした、そのアレンジの絶妙さ加減こそが、実はセンスが良くておしゃれだったのだ。が、今回はそういう基本設定はある程度出来上がっていた上に作ったので、キャラクターとして確立されたオースティン君は少し小綺麗に垢抜け、あの独特なエグ味も少しマイルドになっているような気がする。その分、無理遣りにでも観客を笑わせようと、個々のギャグのアクやテンションは更に強められているので、ギャグの炸裂度自体はもしかしたら前作より上かもしれない(あの“ミニ・ミー”なんて存在そのものが凄まじすぎる ! )、のだが、前作と矛盾している部分や無理無理な部分も少しずつだが出て来つつあるのが、やはり続編の通る道なのか ? とも思わされたりもして。ヴァネッサが××だった、というのはまぁギャグとして許せるのかもしれないが、××が××のお母さんだったっていうのはちょーっとキツくないかぃ ? 笑えりゃ何でもいいじゃん、カタいこと言ってんじゃねーよ、というのもごもっともなのだが、単なる悪ノリだけが過ぎてしまうと寿命が来るのも早いんじゃないだろうか。このラストだと来年には3が出来てることは確定だろうが、次あたりはどんな作風になっているんでしょうかねぇ。
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【オープン・ユア・アイズ】三星半
自分の幸運を幸運とも思っておらず、人の心も平気で踏み躙るこんなヤツが不幸になったところで、何の同情もできましぇん。おまけに話も入り組んでいるし、一回見ただけではちと分かりにくいときたものだ。それでもこの作品には、最後まで何だか目を離せない力強さがあり、アレハンドロ・アメナーバル監督(去年かおととし、【テシス】をベタ褒めさせてもらいました)はやはり地力はある人なんだなぁと思わせるのである。とりあえず次回作にもまた期待してみたいものだ。
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【お受験】三星半
最初聞いた時には何かいかにもキカクモノという感じがして、正直言ってあまり見る気もしなかったのだが……。“お受験”なんてやっぱりバカバカしいと思いはしたけれど、その周辺の、自分の生きる道を今まさに模索している最中である人々の姿を丹念に描き込んであるのがいいと思った。しかも、重くもなく厭ったらしさも感じさせず、全編さらりと見せているのが素晴らしい。でもってヤザワさん ! 平生あれだけスーパースターのオーラをバリバリに発しまくっている人に、一介の中年のおじさんが逡巡する姿をどうしてここまで体現させることができるんだろう ? う~ん、一色信幸氏の脚本と滝田洋二郎監督の演出は、まさに名人芸以外の何者でもありませんがな。
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【踊れトスカーナ ! 】三星半
吉本の藤井隆君の例を挙げるまでもなく、こまめでよく気が付き礼儀正しい事務系の男性こそ今のトレンドだぜ ! 見るとホンワカと幸せな気分になれる、この映画の適度な甘々さ加減は、実はよく計算されたものなのではないだろうか。私は好きである。
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【オフィスキラー】四つ星
どうやっても社会の波にうまく乗れそうにもないヒロインのリベンジは、かなり病んではいるけれど、どこかファニーな香りがする。コレクションした死体(しかもきっちり腐っていく最中 ! )でお人形アソビをするなんてセンスは卓越しすぎてる ! (アーティストの人がわざわざ敢えて映画を創ろうというのなら、やはりこのくらいの視点の冴えは見せるべきなのだわ ! )本作でシンディ・シャーマン監督に協力したプロデューサーのクリスティーン・バション、【SAFE】【ベルベット・ゴールドマイン】のトッド・ヘインズ、【恍惚】のトム・ケイリンといった人々は、ハリウッドの本流とは一線を画したインテリジェントな作風の一派を形成しつつあるように思う。バションさんが以前にプロデュースした【I SHOT ANDY WARHOL】のメアリー・ハロン監督の新作【アメリカン・サイコ】など、今後の作品群に大いに期待してみたいものだ。
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【輝きの海】二星半
あんなちっちゃい村で、2人も3人も理解者がいればもう充分じゃんかとイナカモノの私なんかは思うのだが……あと、特に最後の辺りの不幸な展開とか突然の和解とか何とかも、どうにもこじつけ臭いというか。キャスティングなどはかなりいいと思うのだが、説得力のある脚本というのは、とりあえずもっと重要なんではないでしょーかねぇ。
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【学校の怪談4】三星半
一度は見に行かなくては、と思っていた【学校の怪談】シリーズである。とにかく評価のばか高かった【愛を乞うひと】の次回作がこの作品になった平山秀幸監督は、今回、この素材をどのように扱うのだろうと思っていたら、対象に寄り添うような視点を以て静かに語り掛けるタッチは意外なほど前作に相通じるものがあって、これは前評判通り、大人の観賞に耐え得るような奥行き感のある一本になっていたと思う。しかしそうなると逆に、子供が夏のイベントとして見に行って直截にキャーキャーと恐がって楽しむのには不向きだったりしないのかな ? 大きなお世話かもしれないが、ちと心配してしまったのだが。
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【孔雀/KUJAKU】四つ星
もっとビジュアル系のはったりだけで全編押し切っているような、昔懐かしいどアート系のタイプの映画かと期待( ? )していたらあにはからんや、どこにもない行き場所を探し求めながら漂い続ける感覚が、個人的には結構ど真ん中にストライクしてしまった。しかし、これは見る人によっては死ぬほど退屈な映画に違いないということは、予め強くお断わりしておきたい。
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【黒猫・白猫】四つ星
某雑誌のインタビューで、クストリッツァ監督は「楽天的な映画になったのは多分に太陽のおかげだ」、というようなことをおっしゃっていた。あまりに救いのない悲劇を描いたブラックコメディ【アンダーグラウンド】(言わずと知れた超傑作 ! )の後だから、今度は監督はきっと、溢れんばかりの生命エネルギーをいっぱいにみなぎらせて、幸も不幸も凌駕した人生そのものを貪欲なまでに謳歌しつくす人々を描いてみたくなったのではないだろうか。とにかく笑えて、思い切り幸せな気持ちになれるところに、監督の人間なるものに対する限りない愛を感じる。監督は引退宣言も撤回し、すっかり完全復活したみたいで本当によかった。宮崎駿監督の時も思ったが、こういうクリエイターとしての宿命を背負ってるタイプの人に、引退なんてまねが簡単に出来る訳ないのよねー。自分の業を甘く見たらいかんですよ、ひっひっひっ。
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【クンドゥン】二星半
アメリカで資金を集める都合、とかいろいろな事情はあるのだろうけれども、東洋人の顔のした人々が、東洋と思われる場所で英語を自分の言葉として喋っている映像にどうしても違和感を感じてしまうのも、持って生まれた文化のなせる技だろう。だから、この点に関しては、私は今後も一切妥協するつもりはない。しかし、言葉のハンデの問題を除いて見たとしても、なんだかこりゃいかにも、仏教を東洋哲学の一種という範疇でしか捉えていない西洋の人が書いてしまったゴリゴリの講釈本といった感じ。音楽・美術その他にもリキは入っているから、画面自体に力はあるとは思うのだけれども、とにかくダイアローグがやたらコムズカシイのにはげんなりしてしまったのだが。他のメディアなどでお目にかかることのある実在の人間ダライ・ラマにはもっと血肉が通っていて、全くかけ離れた印象なんだけどなー。
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【交渉人】三星半
はっきり言えば、人物の設定もストーリーの展開もどうにも破綻しているんじゃないかなと思われるところがあったりして、とても完璧とは言い難い出来なのではないかと思う。が、サミュエル・L・ジャクソンがこれほどサミュエル・L・ジャクソンらしく、ケビン・スペイシーがこれほどケビン・スペイシーらしくのびのびと演技しているのを見たのは、久々のような気がする。役者をこれだけ生かし切れるF・ゲイリー・グレイ監督の手腕を堪能させてもらえただけでも、この映画は充分なのではないだろうか。
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【ゴールデンボーイ】三星半
演技派への健やかな成長が今一番期待されるブラッド・レンフロ君と、掛け値なしの名優イアン・マッケラン氏の戦いに、内面の息詰まる緊張感はいやがおうにも高まる。完成前から裁判沙汰になり、完成後にまでいちゃもんをつけられて内容が一部修正されたという受難続きの本作なのだが、それでもブライアン・シンガー監督の演出の切れ味は充分に伝わってくるのではないだろうか。
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【こねこ】四つ星
偉大なるソ連映画の伝統と、ボリショイサーカス秘伝の猫使いの技と、監督の愛と確信で、こんな宝石のような映画が出来上がってしまった ! チグラーシャを始めとする猫たちが文句無く可愛いのは言うまでもないが、とかく世知辛い暗い話題ばかりを耳にするロシアに暮らす市井の人々の、決して楽ではないはずの生活の営みがやさしい視線でさり気なく写し込まれているのもいい。まさに上質の絵本を見ているような一本である。
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【サイモン・バーチ】四つ星
日本には古来、異様に大きいものや小さいものには神様が宿っているのだとする考え方があったのだそうだが(お相撲さんがしめ縄のようなものをつけたりお年寄りの人に拝まれたりするのもその名残なのだそうで)、このイアン・マイケル・スミス君演じるサイモン君(希代の名演 ! )には正に“神の宿りし小さき者”といった風情があり、神々しいという言葉すらふさわしいくらいだ。テッテ的な無神論者の私ではあるが、この年になるまで“おめおめと生きながらえて”(萩原朔太郎風)いたりすると、彼の言う“神様の計画”=存在するものごとやそのつながりにはすべからく必然性があるのだ、という概念には、うむむと考え込まされてしまったりして。ジョゼフ・マゼッロ君他のそれぞれはまりまくった好演も手伝い、何から何まで素晴らしく良く出来た映画であった。
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【シェイディー・グローブ】三つ星
ビデオ映像の深度の浅さを逆に生かしたこのざらざら感は、映画のテーマカラーであろう緑色の感触を際立たせていて素晴らしかったと思う(あーそんな使い方もあるのか、と目からウロコが落ちた ! )。が……「私をストーカーだと思う ? 」とのたまうヒロインは、画面から伝わってくるエピソードと彼女の演技を見る限りでは実際そうとしか思えなくて、そのことにほとんど何の説明もないままでは、ストーリーの他の部分にもどうにもついていけなくなってしまったのだが……。
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【スウィーニー・トッド】三つ星
世紀末ヨーロッパ(特にロンドン)を舞台にした猟奇物、というと結構数もあるような気がするが、この映画はどこらへんに特徴があるのかというと……う~ん……映画の世界では人肉食も特に珍しくはないしなぁ。手堅く良く出来ているとは思うのだけれども。
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【スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス】三星半
本作は新三部作の導入部というか、新しいサーガのいわば基礎工事の部分なのだから、これ一本で出来を云々言っても仕方がないのではないだろうか。私が新三部作の感想を書くのは、3本全てを観終わった後にしようと思う。他の映画だったらそういう創り方が許されるのかどうかは分からないが、ジョージ・ルーカスは新三部作を全て自分で作った資金で創るのだし、ましてや彼は決して誰にも真似できない金字塔を既に今までに映画界に打ち立ててきた人なのだから、どんなに掟破りの方法論でも心ゆくまで試してみる権利くらい、十三分にあるに決まっておる。
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【セレブリティ】三星半
有名人がいっぱい出ますよぉ、みたいな宣伝は、この映画の本質について肝心なことを何一つ伝えていないので大失敗だと思う。これは、自分の人生の転機を求めて四苦八苦する人間を描いたおかしくも残酷なコメディで、“セレブリティ(有名人)”という言葉は、人生の成功を指し示すアメリカ的なアレゴリーに他なるまい。ケネス・ブラナーの演じた彼の自己中ぶりはあんまりだとは思うが、追い掛けても追い掛けても手を擦り抜けていく幸運を追い求めるその悲しくもおマヌケな姿は、とても他人事とは思えませんねぇ……。
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【セレブレーション】三星半
これが噂の、デンマークの「ドグマ95」映画の初お目見得 ! ラース・フォン・トリアー監督の作品なんかを見ていてもその片鱗はあるけれど、トマス・ヴィンターベア監督の本作も、対象の細やかな感情の動きやその息遣いまで写し込んでしまいそうなくらいに肉薄する、特異なタッチが非常に面白い。しかし敢えて個人的に難を言うならば、腐れた実家にオサラバするというテーマは15年以上前に終わっちゃっているので、それ以上お話に入っていけないんだよねー。うーん、出来れば今度は是非、何か違ったテーマで創って下さると嬉しいんだけども。
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【天使に見捨てられた夜】三星半
画面暗すぎーっ !! セリフもぼそぼそしていて聞き取りづらいーっ !! それでも、まるで深い夜の海の底を泳ぐ魚たちを映し出したかのような、この独特の手触りを美しいと思ってしまった。かつてないほどのカッコよさを見せるかたせ梨乃さんも、大好きな永澤俊矢さんもよろしかった(でも永澤さんはこの役を宛てるのには少し若すぎない ? )のだが、しかし今回は何たって大杉漣さんの役どころがナイスでしたねぇ。ああいうきれいな男の人、私はすごーく好きだ。あ、そういえば、パンタさんの歌ってる「雨の化石」というテーマ曲、むちゃくちゃカッコよかったですね~。
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【トランスミッション】一星半
ストーリーはどこかで聞いたことのあるようなお話の断片の寄せ集めみたいで、しかも作る側のひとりよがりで進んでいってしまうし、画像のイフェクトとかもどっかでみたことがあるようなもんばっかりだしなー。場内の9割方を埋めていたと思われるイエモンファンの皆様は、果たしてこれで満足なさったのでしょうか…… ?
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【π<パイ>】四つ星
確かに私も若ーい頃には、それ一つで世の中の動きの全てが解きあかせるような絶対的な法則がどこかにあるような気がしていたものよ(はっはっはっ)。数学フェチ的な感性を正面きってフィーチャーするという、今までありそうで無かった切り口に何故か魅かれてしまうのは、きっと誰もが一度が通ったに違いない( ? )全能を志向するあの感覚の記憶が、無条件に呼び覚まされてしまうからに違いない。そんな若気の至りな感性を、あくまでもシャープかつアーティスティックにまとめ上げた新鋭、ダーレン・アロフスキー監督の手腕は必見である。
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【バッファロー'66】四つ星
一見狂暴、その実、あまりにも不器用すぎる情けない男と、そんな彼をたちどころのうちに理解してしまった天使のような女の子のファンタジィ。最近ではとーんと見掛けなくなってしまった感のある正調・アート系映画の継承者がこんなところにいらっしゃったとは ! エライぞヴィンセント・ギャロ !! これからもいろんな分野で独自の活動を展開しつつ、ハリウッド的な作風とは程遠い映画を創り続けていって欲しいな。予告編ではちょっとぽっちゃりしすぎてるかも ? と思えたクリスティーナ・リッチも、本編ではそのスマート過ぎない体型に逆に“その辺にいそうな女の子”的な説得力があり、何よりあんまりにも可愛らしすぎるのがスゴいと思った。いやぁ、彼女はいい女優さんになりますよぉ、絶対に。
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【パラサイト】三星半
なんでロバート・ロドリゲス監督がホラー ? と思ったりもしたのだが、仕掛けをいっぱい用意して効果的に配置し、見る人をびっくりさせるのが身上であるこのジャンルは、もしかすると監督にすごく向いているのかもしれない。あんまりにもコワすぎたりしないのが逆に私なんかにはちょうどいいくらいだったし、登場人物一人一人のキャラクター設定もどこか可愛らしくて好きだったし、全てに於いてバランスが良くて、想像していたよりもずっと楽しめる作品であった。
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【ピーターラビットと仲間たち ザ・バレエ】三星半
何 ? ピーターラビットのバレエだと ? なんちゅうゲテなものを作るんだと思ったのだが、見てるとそのうち違和感がなくなってくるのがコワいよな~。動物たちのハリボテや背景のセットがあまりにもうまく作られているせいもあるのだろうが、抽象的なテーマを抽出してボティ・ランゲージで表現するバレエの方法論が案外絵本の世界に合っている、のだろうか……いや、日本人ならこういう場合アニメを作るだろうから(ベアトリクス・ポターは、きっと日本なら長谷川町子に匹敵するくらいの国民的作家に違いない ! )、そこでバレエに行っちゃうというのは、やっぱり深遠なる文化の違いなんじゃないかな~。とにかく、ヨーロッパの奥深さというか底知れなさというか、何かすんごい隠し球を見せつけられてしまったような気がした。
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併映 : 【ヌレエフ I AM A DANCER】三つ星
運動の類いはとにかく苦手な私だが、体の一部をゆっくりと動かすのがどれだけ大変だかくらいはわかるぞ。地道な鍛練を積み重ね、完璧にコントロールされるようになった肉体は凄いの一言に尽きる。バレエやダンスが好きな皆様なら、これはとりあえず必見の一本であろう。
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【豚の報い】二星半
豚の憑物落としの道中を経て、祈る者も祈られる者も、皆が神に近付く瞬間。その猥雑なエネルギーの力強さはさすが崔洋一監督の真骨頂、とは思ったのだけれども、ちょっとお話がごちゃごちゃしていて、これといったポイントが分かりづらかったかなぁ。
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【ホーホケキョ となりの山田くん】四つ星
今回、発行が遅れに遅れてしまった原因の一つはこの映画にあるのではなかろうか(人のせいにすんなよー)。とにかく言いたいことがありすぎて、この欄には書ききれないような気がしてきたので別項を設けてみました。よろしれけば読んでみて戴けると嬉しいです。
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【マイ・ネーム・イズ・ジョー】四つ星
中年のアル中男が破滅する話というのはいくつか見掛けるが、更生していく話というのはめったに見掛けない。ささやかな信条のもたらす、ささやかな救いに支えられた、ささやかな生活。そこに、人生なるものの全てがあるのではないだろうか……すいません。私ゃ重症のケン・ローチ病患者なもんでさぁ。
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【夢幻琉球 つるヘンリー】二星半
既成の映画の文法に必ずしも囚われない、独特の話法を以て形づくられた空間が妙に心地よい。しかしあんまりにも心地よすぎて…………眠たくなってしまってごめんなさぃぃ……。
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【ラン・ローラ・ラン】三つ星
ローラよ、愛のために走って走って、20分で一体どんな斬新な秘策を見せてくれるのかと思いきや、パパにお金を借りにいくだけだなんて、なーんか発想が保守的というか、情けなくないかぁ ? (って思ったのは私だけ ? )まぁお話の組み立てやいろんな小技なんかは、(そんなにもの凄く新しいものがあるという訳ではないとは思うのだが、)それなりには面白かったとは思うんだけどさー。
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【ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ】四星半
ストーリー、ダイアローグ、キャスティング、音楽からちょっとした映像の使い方に至るまで、総てにおいてセンスよし !! イギリスのタランティーノ云々は下馬評でも言われているみたいだが、確かに、初めて【レザボア・ドッグス】を観た時くらいの衝撃と興奮はあったと言っても言い過ぎではあるまい !
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