Back Numbers : 映画ログ No.33



【あの娘と自転車に乗って】三つ星
小賢しいテクニックともやたらとくどいBGMとも無縁な映画は、映画が出来たばかりの時代の、表現することの純粋な喜びを思い起させてくれるような気がする。(いかにも佐藤忠男あたりが好きそうだな。)しかし、もうすっかり文明に汚染されきっているワタシの体には、その清浄な空気が既にちとキツかったりして。ダラクしてるって訳ですなぁ、スイマセンねぇ。
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【ウェイクアップ ! ネッド】四つ星
50人ちょっとしか人間がいない島の、ゆったりとして心豊かな満ち足りた暮し。(彼らは大金持ちになりたい訳ではなくて、生活をちょっとだけ楽にするよすがが欲しいだけじゃないかな ? )この映画がかくも美しくも懐かしい感じがするのは、今の世界ではほとんど失われてしまったかに見える古き良き共同体に対する幻想が、たくさん詰め込まれているからなのだろう。まぁそんなことは意識せずとも充分ほのぼのと楽しい、万人に等しくお薦めできそうな映画ではあるのだが。
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【家族シネマ】一つ星
この映画の原作が描かれた日本社会のリアリティと、この映画を製作・監督した韓国の人が属している社会のリアリティって、当然同じじゃないはずだ。なのに、そういったことに対しての詳細な考察もないままに作られたかに見えるこの映画は、必然、どちらの社会の時代性を反映することもない、奇妙な鬼っ子に成り果てている。また、強制的にカメラを向けることで否応無く成立してしまう劇場的空間、に対する解釈も無いに等しく、こんなものでは、既にその手のエゲツないテレビ番組をたくさん見て知っている日本社会の観客は、到底納得できないだろう。演技の素人である梁石日さんは、いくら独特な存在感があるとはいえ、そんな微妙なテーマを演じさせるのには少し厳しすぎるのでは。結局この映画は、日韓の親善という目的以外には何物にも貢献できていないように思われてならないのである。
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【金融腐食列島・呪縛】四星半
日本ではどうして、政治や法律や経済などを真正面から扱った、いわゆる社会派の見応えのあるエンターテイメント作品が出来にくいのだろう ? 理由は単純だ。現実社会の厚みをリアルに再現するには綿密なリサーチが欠かせないのに、あいにく日本では、その場ですぐお金に変えられないものに手間や暇を掛けようとする所作は罪悪にも等しいとする考え方が、戦後の経済復興期からずっとこの方喧伝されてきたからだ。ましてや、良質のエンターテイメントを創り出すのには、生まれ持ったセンス以上に技術や経験の蓄積なり研鑽なりがどうしても不可欠なはずなのに、戦後の日本はずっとそういったものへの時間やお金の投資をまるっきり怠ってきたのだ。しかるに、ここへ来てやっとエンターテイメント性にも優れたまともな社会派の作品がちらほら表れて始めているのは、前述のような傾向を否定する流れが、社会の中である程度コンセンサスを得られるようになってきたことを差し示しているのではないだろうか。そして、旧態依然のやり方によらない方法論に今の沈滞した状況を解体する鍵があるはずだとする発想自体が、この映画が描こうとしているテーマと正に密接にリンクしているように思われるのである。このタイプの映画では既にかなり評価も受けてきた原田眞人監督が、明確なビジョンを持ち、的確な計算を駆使して膨大なディテールを完璧に制御し、大勢の優れた役者が迫真の演技を披露する巨大な群像劇をシャープに語りこなしている様は正に圧巻で、この映画が成立しえたという事実自体が、何か新しい時代の到来をはっきりと告げているのは間違いなさそうに見える。しかしだね。社会を実質的に現場で支えている中堅クラスのアクションによってこそ何かを変えられる希望があるのかもしれない、というこの映画で描かれたような道筋は、現実の社会の中では理想論に近いような希望的観測、あるいは想いの込められた祈りに過ぎないという事実の側面は、やはり消しがたい部分があるのではないか。自分達がこれまでたまたま成功してきた手段や権力への妄執から逃れられない、この映画にも出ていたような妖怪ジジイども(仲代達矢がいみじくも演じ切ったように、彼らの一人一人もまた人間に過ぎないのだというところが難しいのだが)は、まだまだたくさん跋扈して日本の中枢を操っているはずである。コイツラは揃いも揃って引退なんて考えもしないみたいだから、そのうちみんな寿命が来てきれいさっぱりお亡くなりになって下さらない限りは、この国は何ら変わることが出来ないのではないのか、と、ある時ふと思ったことがある。私の目算だと多分あと30年くらいは掛かるんじゃないかな。それまでこの国がもつかどうかは、怪しいものだと思うけど。
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【コリン・マッケンジー もうひとりのグリフィス】二つ星
そういえば昔『鼻行類』なんて本があったのをなんとなく思い出してしまいましたなぁ。でも私、最近、ミラマックスのハーヴェイ・ワインスタインさんってどうも嫌いになってきてまして。まぁまぁの映画を世紀の傑作みたいに思わせる世界一の天才の彼がゴリ押しすれば、どんなに実体の無いことでも本当みたいに聞こえてくるって ? う~んそれって、私的には完全に逆効果だったんだけど。
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【サイコ】一つ星
1998年の設定だというテロップが映画の冒頭にあってますます分からなくなってしまった。この映画の一体どこがそのように見えるというのだ。ガス・ヴァン・サント監督は古典をそっくりそのまま再現してみるのが実験として面白そうで仕事としてまぁ手頃だったという以上に、映画会社の人はただ安易に金儲けをしたかったという以上に、こんなコピー映画を恥知らずにも作ろうとする動機が何かあったというのなら聞かせてもらいたいものだ。例えばヴィンス・ヴォーン君の“アメリカ人が悪を演じる時の典型的パターン"的な演技が、「【サイコ】に取り憑かれてしまった俳優」アンソニー・パーキンスの存在そのもののあやうさにどうしたって適うはずがないということが、どうして分からないのかなぁ。これがどんな映画なのかということを確かめたいというのなら、それこそTVのオンエアでも待っていれば充分で、こんな映画をわざわざ見に行って映画会社を少しでも儲けさせてしまったことを、私は心底後悔している
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【知ったこっちゃない】二星半
ファミリー・ムービーもこんなふうに撮れば、その人間が属していた時代や文化のせめぎ合いを映し込んで、面白く観ることが出来るのね、という見本のような映画。彼みたいな古きよきアメリカ人こそが、アメリカを今みたいにでっかく堅牢な国にしたんだろうね。
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【シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦】三つ星
ヨーロッパの風景を背に芽生える自由な恋、そして、自分達の運命は自分達で選び取りつつも、伝統を背負って立つ目上の人達のことも決してないがしろになぞしない若者……この映画がどうしてインドで大ヒットしたのか、その背景に横たわるインドの観客のメンタリティを推し測ると、非常に興味深いような気がする。一連のラジニカーントものみたいな圧倒的なダンス・シーンとかギャグの洪水とかを期待しているとちょっと拍子抜けしてしまうのかもしれないが、この映画はめくるめく青春ものだっつーのがキモなんだから、そこんところはハズさないでね。それにしても、こんなふうに東京のどこか(とりあえずは)で必ずインド映画が上映されている情況がコンスタントに続いていくとステキだなぁ。インドセンターを始めとする関係者の皆様、今後も期待しております !
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【シンプル・プラン】四つ星
ちょっとしたゴマカシをフォローするためについたウソがすぐに膨れ上がって収拾がつかなくなるなんて、古今東西を問わない世の理(ことわり)だ。だからこの映画を見ながらずっと「どぉしてそんなことをするのぉ~」と、神経がイガイガチリチリしていた。ほんの少しずつ狂っていく運命の歯車をあくまでも淡々と捉えた、あまりにも見事なこの静かな筆致は、B級ホラーの名人という私の中のサム・ライミ監督に対するイメージを完全に覆すのに充分だった……あぁ、やっぱりどんな人の映画も好き嫌いせずにしっかり見ておかなくっちゃ駄目だなぁ。あとやはり特筆しておきたいのはビリー・ボブ・ソーントン。メインストリームから外れてしまったアメリカ市民を演じさせたら、彼の右に出る人はそうそういないのではないか。彼は本当にアメリカ映画界のかけがえのない宝に違いない。
余談 : B・B・ソーントン扮するお兄さんの飼い犬のメアリベスちゃんがむちゃくちゃ可愛かった ! 彼女には、お兄さんのあまりにも孤独な人生を象徴するという、非常に重要な意味がある。動物のこんなうまい使い方もあるものなんですねぇ~。
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【双生児】四星半
邦画の中でも一つのジャンルを設定できそうなくらいたくさん作られている「江戸川乱歩もの」だが、塚本晋也監督の世界がこれほどはまるとは思っていなかった。こんな伝統的なジャンルで創っても、塚本監督が昔から持っているテイストがやはり変わらずに元気に息づいているのは感激である。しかもこれは、いつもは他人の手を借りずパラノイックなまでに独力で自分の世界を構築しようとする監督が、外部のプロフェッショナルを要所に迎えて創ったほとんど初めてのコラボレーション作品なのだ ! この一作が素晴らしい作品に仕上がった意味は非常に大きい。監督は、誰と組んでどんなジャンルの映画に挑戦しても、そういったきっかけを発展的な創造の糧にすることが出来る可能性があるということを、今後に向けて証明してみせたのだから。若手若手と言われながら、不惑の年がそろそろ目の前に見えてきた監督は、ますます賢く図太くしたたかに柔軟になって、これから私達にどんな映画を見せようとしてくれているのだろう。何だかものすごくワクワクしてきた !
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【ディープ・ブルー】二つ星
いやぁ、こんなにまったりした気分で見てられるパニック・ムービーってある意味スゴいよなぁ。お話がどぉーだっていいようなもんだから、誰が何人死のうが、どれだけ火薬が爆発しようがほんとにどぉーだっていいんだから。おまけにSFXが御自慢のサメだって、どうにもツクリモノに見えちゃってしかたない。速けりゃいいってもんじゃないんだよねー、ゴジラとおんなじでさ。
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【ナンニ・モレッティのエイプリル】四つ星
私は若い男の人がうだー、うだーと手前勝手に悩んでいるタイプの映画ってあんまりよく理解できないので、正直言って、ナンニ・モレッティ監督の青春映画ってあんまり面白いと感じたことが無かったのだ。でも、年食ってついに子供が出来る段になってもやっぱり何かに迷い続けている彼(その姿がとてもキュートかつユーモラスに描かれている)を、今回初めていとおしいと思ってしまった ! うーん、人間、悩むだけ悩んでみるのがいいのかもしれないね。そうやっていろいろやっているうちに、ある日突然、邂逅は訪れるのかもしれないから。
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【ノッティング・ヒルの恋人】三星半
この映画の主人公は誰がなんと言ったってヒュー・グラントの方だ。だって、彼の役柄のチャーミングさがなければこの映画は全く成立しないんだから。対するジュリア・ロバーツの方は、確かに彼女がやってこそ華があり説得力が出る役柄にせよ、何だかスター女優でありさえすれば誰でもいいといった感じなんだもん。それとも、存在そのものがただ女神のようにありがたいヒロインという説明だけで、この映画のメインの客層である女性達は彼女に感情移入するといった計算にでもなっているのかしら……でもそれだけじゃ納得できない人もたくさんいると思うんだけどなー。まぁヒュー・グラントと、彼の周りの友人達の面白さで、それなりに楽しく見ることは出来るからいいんだけどね。
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【パッション・フィッシュ】四つ星
【ブラザー・フロム・アナザー・プラネット】や【希望の街】の例を挙げるまでもなく、ジョン・セイルズ監督は私の大好きな監督さんの一人なのだが、90年代になってからの彼の作品は入ってきたりこなかったりなのが非常に腹立たしくも、悲しい。思うに彼は、質の高い洗練されたタッチの作品をあまりにもあっさりと創ってしまうから、逆に何を創っても驚かれないというか、特にスゴいとも思われにくいんだろうなぁ……(完全なインディーズ系だから、売り込みとかも派手じゃなさそうだし)。彼の地力の高さは、この映画を観て戴いても充分分かって戴けるのではないかと思うのだが、特に今回は、自然なやりとりの中から少しずつ変化してくる登場人物二人の関係性や、その設定のきめの細かさを堪能して戴けると嬉しいな。
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【発熱天使】三つ星
【ロートレック】の感想のところでも書いたのだが、実在のアーティストというのはその存在感自体が非常に強烈なものだから、生半可な虚構を並置してみたところで負けてしまうんだよね。この映画でも一番面白かったのはやはり、現在の中国社会に正に生きているアーティスト達の姿そのものであって、その前で演技をしちゃってる桔平ちゃんはどうにも、皮一枚かぶっているように見えてしまって仕方ないのだ。現地のメシをわしわしと喰い、タバコをぶかぶか吸っている“実在の日本人俳優”の桔平ちゃんのリアリティは決して見劣りしていないのだから、つくりごとの部分の縛りはいっそもっとユルくして、完全なドキュメンタリーすれすれのタッチで全体をまとめた方が面白かったんじゃないのかな ?
閑話休題 : この映画に出てくる“アーティスト達”は、とは掛け値なしの同世代なんである。感無量。(年がバレるな。)
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【秘密】一星半
まるっきり行き当たりばったりで書かれている脚本、という印象。場面場面でのそれなりの盛り上がり、といったようなものはあるのかもしれないが、お話全体を通して見た場合、そこにはヒロインであるはずの40女のリアリティなんてまるで皆無である。何 ? この映画で想定している観客層にはそんなことどうだっていいんだって ? それにしたってこの一貫性や説得力の無さ、お話のいい加減さやウソ臭さは拭えないんじゃないのかな。白くてつるつるの広末ちゃんはまるで陶器のようにきれいだから、この旬の時期を一分一秒逃さずにガンガン仕事をさせて一円でも多く稼いでもらいたいと思うプロダクションの人達の気持ちも確かに分からないじゃない。でも広末ちゃんは、折角入った大学にはやっぱり行っといた方がいいと思うぞ。時流に乗るだけ乗ってすぐに枯れてしまうことなく、末長く咲いていたいと思うなら、何が自分のキャリアにとって本当にプラスか自分で考える頭と、こんな駄作に出演させようとする人達の言いなりにならないようにする知恵は、自分でつけなくっちゃしょうがないじゃん。
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【葡萄酒色の人生 ロートレック】二つ星
奇想天外なエピソードがてんこもりであるせいか、画家の人生って結構しょっちゅう映画化されているような気がするのだが、その割に今一つぱっとしない作品が多いのはきっと、作り物になってしまったフィルム上のシーンよりも、本物を想像する方がずっとインパクトが強いからだろう。が、レジス・ロワイエさんの扮するこの映画のロートレックは、もしかして本物もこんなだったかも ? と彷彿とさせるものがあって、そんなに悪くなかったように思われる。しかしそれ以外の中身となると、陳腐なセリフやエピソードの羅列であまりにも平坦。結果、退屈な印象になってしまったのはどうしようもないのだが、立体化したムーラン・ルージュを見に行くくらいの楽しみ方なら、もしかしたら出来るかもしれない。
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【ポーラX】四星半
♪道に倒ーれて誰かーのー名をー、呼びー続ーけたーことがありますーか、じゃなくてェ、自分の内側に沸き起こる混沌とした感情に引き摺られて、人生の一つや二つ、駄目にしたことはありますか ? わけのわからないノイズでいっぱいになった頭を、根元から引きちぎって捨ててしまいたいという衝動に駆られたことは ? そういった感覚がどんなもんだか皆目見当もつかないという人は、この映画を観たって仕方がないんじゃないかと思うよ。出来たそばからいきなり古典に列してしまいたくなるような、この映画のあまりにも端正で完璧な出来栄えは一体何 ? レオス・カラックス監督をいつまでも青春映画の巨匠みたいな扱いで括るのは、いい加減にやめた方がいい。彼は、映画を芸術と呼んで憚らなかった時代、天才は天才でありさえすれば(ビジネスマンなんかにならなくても)全て許された“巨匠の時代”に属する最後の末裔の一人なのだと、この映画を観れば分かるだろうから。時流なんていうものに乗りそうにもないこの映画を、批判したい人はすればいいのだ。私は、この映画を人類に捧げてくれた彼に感謝しつつ、この映画を胸に、いつか安心して無に還ることができるだろう。
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【Hole】三つ星
蔡明亮監督の映画のタッチはどうも苦手だなぁと思っていたのだが、今回その理由がはっきりした。彼の映画には、私自身が生きていくための過程のどこかで覚悟してきっぱりと捨てざるを得なかったあんまりな生真面目さが、手付かずのまま残っているのだ。つまりはある種の近親憎悪なのだろうが、十代の頃の自分のことを思い出すと息が詰まりそうになるからあまり触れずにおきたいのと同じ道理で、彼の映画も出来ればあまり正視したくはないのだ。今回の映画は、彼の作品としては画期的なくらいの明るさがあるとの触れ込みだったのだが、確かにあの(唐突な)ミュージカルシーンを含めたテーマの捉え方は今までに無いくらい前向きなものだったのかも知れなくても、基本のトーンはやはりあんまり変わっていなくて、私が拒否反応を感じてしまったのは同じことだった。それはいい悪いの問題ではなくて、合わないということなのだから仕方ないのだろう。
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【ホーンティング】二星半
わーい、超ゴーカなお化け屋敷ぃ、まるでディズニーランドのホーンテッド・マンションみたーい !! しかし既に【リング】を通過しちゃってる日本の人には、この程度じゃぜーんぜんコワく見えないんだよな、困ったことに。うーん、金と手間暇掛けまくったセットが勿体なさすぎ ! こんなことならいっそ真っ正直にハリウッドの王道を極めまくって、物量作戦でガンガン責めまくった方がよかったんじゃないかなぁ、少なくとも日本市場向けにはね。
ところで : 貫禄たっぷりの魅力的なねーちゃんを演じたキャサリン・ゼタ=ジョーンズは確かにカッコよかった。リーアム・ニーソンも、彼にしては精彩を欠いた役だったけど、まぁ悪くはなかった。けどね。この映画の主役は誰がどう見たってリリ・テイラーだろう ? いくら日本で有名じゃないからって、彼女の名前がカケラも出てこなかったTVCMって、ちょっと許しがたいほどひどすぎやしませんか ?
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【ポリー・マグーお前は誰だ ? 】二星半
前々から薄々とは感じていたんだけど……フレンチ・オシャレ系の映画って私には完璧に鬼門なんだわ……。このお星様の数はあんまり気にしないで下さいね。きっと見る人が見るとすごく楽しい映画なのだと思います。
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【マトリックス】五つ星
SFの有名どころならたいてい読んでいるという私の友人は、「ギブスンから遅れることン十年、何で今更……なステレオタイプ」と言っていた。もっともっと進化したストーリーや設定を擁した最先端の傾向にも精通する目の肥えたSF好きの人には、確かにこの映画が描き出そうとしている世界なんてまだまだヌルいと映るのかも知れない。がしかし映像の世界では、そのン十年前に示されたサイバーパンクの最も基本的な概念すら、視覚的に充分な説得力を伴って決定的な形で組み上げられたことは未だかつてなかったのだ。だから、この作品が全く新しい時代の到来を告げるエポックメイキングな作品だといくら喧伝したところで、やはり言い過ぎなどではないと思う。この映画がどのくらい画期的かというと、例えばジョージ・ルーカスが【スター・ウォーズ】を初めて世に問うた時くらいのインパクトは充分にあるのではないか。技術的に言っても、ここ数年の視覚効果のめざましい発達がなくてはこの映画は決して成立し得なかったと思われるが、しかしルーカスやスピルバーグが同じだけの技術を持っていたとしても、多分この映画は創れなかったに違いない。この映画を発想するのには、ギブスンが開拓した畑で生を受けて育った子供達がやっと大人になった中から、これまでの映画の文法を打ち破り、似て非なる次元にパラダイム・シフトさせることを可能にする天才が出現してくるまで待たなくてはならなかったのだ。【マトリックス】は、これから後に映画の世界でサイバーパンクの概念を取り入れた世界を描く際の古典的な存在となるだろうし、今後少なくとも2~30年は、この映画を基礎とした上に技術的・テーマ的に更に発展させた映画群、またそれらのエピゴーネン達がざくざく作られることだろう。何度でも言おう。これは二十一世紀を目の前にしてやっと出るべくして出てきた映画だ。新しい世紀はこの映画の存在を抜きにして語ることは出来ないのだ。批判や反論をするにしろ、とにかくそれは一度観て、この世界を通過してからでなければ不可能に違いない。
キアヌ君もいいですが、ローレンス・フィッシュバーンの存在を抜きにしてこの映画は語れないと思うので、こちらの特集も読んで下さいね。
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【Mr.Pのダンシングスシバー】三星半
どうして今更ベトナム戦争なのか分からん、しかも日本人が作る必然性がどこに ? てな評をどこかで読んだのだが、日本人でもある年代のある層の人達にとっては、それは自分の信念を掛けて戦った時代だったのだということは、知っておいた方がいいんじゃないだろうか ? ましてやこの映画が、心の中で戦われ続けている終わらない戦争や、どうしたって回復できない深い心の痛手と向き合う方法を描いているのであれば、本当の戦争を戦ったことがない世代でも分かる人はいるような、普遍的な部分を実は扱っているのではないかと思うのだがどうだろう。テーマはずばり、『戦争と平和』である。あー、トルストイ、今度読んどかなくちゃなー。あと、一見おちゃらけたようなこの題名は実は裏テーマの「文化交錯」を示唆していて、文化というのは個人的に受けた影響を個人的にアレンジして使用する人々がいて始めて、その上に総体的に存在し得るものなのだ、ということを意図しているのではないかと思うのだが、どんなもんですかねー。
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【リアル・ブロンド】三星半
欧米人の間にさえ未だに“パツキン幻想"なんてものがあるのだろうか……この題名は正直言ってよく分からんというか、内容に対する想像を著しく偏らせてしまうので、何か損しているような気がしないでもない。映画の中身の方は、もはや中年に差し掛かってしまった同棲カップル(しかも彼の方はさっぱり売れない役者)の将来へのあせりや逡巡やすれ違いを、実際に身近にありそうなエピソードの積み重ねでごくきめ細かくデリケートに描写した優れモノ。この登場人物達って、歳の頃が丁度私と同じくらいなんだよねぇ……地球の裏側でもやってることは同じというか、こりゃ身につまされすぎますなぁ。傍目には愚かな雑作ばかりを繰り返しつつも、惚れられる理由はちゃんと残しているマシュー・モディン君の人物造形が特にイイと思った。
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【リトル・ヴォイス】三つ星
私がこの映画で得に印象に残っているのは、ブレンダ・ブレッシン演ずるLVちゃんの母親と近所の仲良しの女の人が、いかにも市場かどこかの下働きといった仕事を明るく逞しくこなしている様が読み取れる、ほんの1カットだけの短いシーンだ。あんまりにも自己中心的で口が悪くてガサツな母親だけど、それでもカイショ無しの旦那と対人恐怖症のLVちゃんを抱えて苦労してきたという経緯はあるんじゃないのかな ? だから、いかにも胡散臭げなプロモーターなんかを相手に一瞬安物の夢を見てしまったとしても、それはそこまで責められるようなことでもないんではなかろうか……しかるに、彼女が罰みたいなものを受けっぱなしになったまま、LVちゃんさえ自己解放されれば後はどうなっても知ったこっちゃないっていうこのラストってアリな訳 ? マイク・ハーマン監督の“庶民に寄せる共感"ってそんな底の浅いもんだったの ? また、母親に対する言及を省くとするのなら、自業自得で破滅するプロモーターの嘆き節なんて、それこそ蛇足なんじゃない ? 監督だかプロデューサーだか、誰の意図でこうなったのかは知らないけれど、私なんかはちょっと何だかなーと思ってしまったのだが。あ~あ、LVちゃんが舞台に上がる辺りまではなかなかいい感じで来てたのに。ユアン君も7 : 3分けまでしてまた見たこともないような役を熱演していたというのになぁ~。
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【ワイルド・ゼロ】三星半
最初っから高尚な映像表現など一切目指さず、自分の好きな要素だけを思い切り詰め込んで(多分【ゾンビ】とか【マーズ・アタック ! 】(or【火星人襲来】 ? )とか斬鉄剣とか)、超C級の線を目掛けて全力投球で作ってあるのが、いっそすがすがしくて心地よいじゃないかぁ。愛は国境も男も女も越えるのだ。ロケンロールだぜ、ベイベェ !
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