Back Numbers : 映画ログ No.73



【赤い月】三星半

第二次大戦後の大陸からの引き揚げには筆舌に尽くしがたい苦労があったという。そんな時代をフィーチャーしたお話のスケールはとにかく壮大。だからこの作劇を成立させるには、往年の大女優のようなスケール感のある女優さんがヒロインを勤めることが絶対条件だったのでは。残念ながら今回の主演女優は、ところどころ悪くないシーンもあったとはいえ、全体的には小粒でそれだけの器はなかったのではないだろうか。彼女を巡る男達や、当時を再現したセットは悪くなったかもしれないと思うのだが。あ~あ勿体ない……。

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【アタック・ナンバーハーフ2 全員集合】三つ星

明るく個性的なキャラクター達は前作同様楽しめるけど、ちょっと分かりにくい理由で仲違いしたりまた仲直りしたり、よく分からないライバルチームが出てきたりと、いかにも無理矢理続編を作らんがための展開。これを必ずしも作る必要があったのかと言われると……。

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【アップルシード】四つ星

今回プロデューサーだった曽利文彦氏(【ピンポン】を監督なさった方です)によると、精緻な3Dの背景にセルアニメのような2次元的なCGキャラをかぶせた新手法を試してみたかったとのこと。これが思ったより違和感の無い出来で、とにかく綺麗なのでいいんじゃないかと思った。人間と人間以外の存在(本作ではクローン)との共存というお話も面白かったし、期待以上の質はあった感じで、とりあえず満足。

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【アフガン零年】三星半

最近、映画の身体能力がめきめき落ちているので、淡々としたペースに慣れるのに、私は少し時間がかかったけど。保守的なシステムにおいてはなべて得をするのはスケベジジィと相場が決まってるってか。古今東西、少女のこんな運命を見せつけられるのは生理的に受け付けられないー !! (←やり場のない怒り。)

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【アンテナ】三星半

失踪した妹がどうだ、妹のシグナルに感応する弟がどうだ、だからお兄ちゃんはSMに走ってどうだ、といったメインのお話の流れはちょっと理屈っぽすぎて、ついて行きづらい部分があったんじゃないかと思う。でも、息が詰まりそうなほどに緻密でかっちりしていて重苦しいのに、何故か突き抜けたソリッドな透明感も同時に湛えている、この熊切和嘉監督ならではの独特の空気感はかなり好きだ。それにしても、加瀬亮さんて本当に真面目に演技に取り組んでいる俳優さんなんだなぁ。さもなければ、ここまで凄まじい演技は到底出来やしないはず。(機会があれば是非御覧になってびっくりしてみて欲しい。)

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【犬と歩けば チロリとタムラ】三星半

これって全編、セラピー・ドッグの協会を主宰しているという大木トオルさんなる謎の人物のプロモーション・ビデオみたいなもんじゃないの ? という批判は、確かに当たっている部分もなきにしもあらずかもしれないが……(何と主題歌まで歌っているのだ、この方)。確かに、セラピー・ドッグについて云々、というふうに見たらポイントがよく分からない映画になってしまうきらいはあるかもしれないので、それよりは、切羽詰った状況にある恋人の支えにもなってあげられないようなちょっと頼りない青年の、もどかしくもいじらしい姿と、その傍らにさりげなく存在するだけでギスギスした人間関係を潤す触媒となっていく犬のタムラ君を中心にして見た方が、断然面白いのではないかと思う。この青年を演じる田中直樹さんの佇まいがとにかく素晴らしく、私的にはそれだけでも充分モトは取れた気がするのだが。

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【イノセンス】四星半

全編、気違いじみた手の込みよう。押井守ワールド全開。画面だけ眺めていたって充分素晴らしいし。真性オタッキーな小難しさを敷居の高さと感じる人がいるかもしれないが、サイボーグや人形達を物語の主役にすることで浮かび上がってくる、生きているというのはどういうことなのか、というテーマは、案外普遍性があるものだと思う。エンディング・テーマの『フォロー・ミー』の歌詞がずっ嵌まり、ハードボイルドな愛の世界に再び泣いた。

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【イン・ザ・カット】三つ星

メグ・ライアンがセックス・シーンを演じている。はっきり言って見せ場はそれだけ。サスペンスというには中途半端だし、女性の本当の欲望が何とやらと主張するには食い足りなすぎる。ジェーン・カンピオン監督も、時折アレレ ? ってな映画作ることがあるんだよな~。

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【ヴァンダの部屋】三星半

そのまま見るにはあまりにエグい人間の生のままの反応や感覚をそのまま、既存のドラマツルギーに押し込めることなく、元の形に近いまま掬い取る……そんな映画も、たまにむしょうに見たくなる。ヤク中の女と、彼女が棲息する澱んだ界隈を描くという内容は、ただひたすら心寒いですけれども……。

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【永遠のモータウン】三星半

ファンク・ブラザーズ。かのモータウンの数々の名曲(個人的に一番好きなのはやっぱり『What's Going On』ですね♪♪)が録音される時に、バックの演奏がこのたった一つのバンドで総てまかなわれていたなんて、本当に驚き。彼等こそがモータウンの偉大さの礎だったのだと言っても全く過言ではない。
当時の演奏シーンの映像がないのが今一つ、という感想をどこかで読んだ。確かに証言と解説と写真だけで当時を追想するというのは見ていてちょっと苦しいし、現在のトリビュートコンサートのシーンをインサートしているのも苦肉の作なんだろうけれど、当時は誰も彼等に注目してなかったんだから、そんなもの残っていなくても仕方ないですよねぇ。
若い人もたくさん来ていたけれど、客席の半分以上は40代以上と思しきオジサン達だったのが印象的だった。F1層信仰なんてもう古い。これからの時代は、真のヒットを呼び込むにはずばり、いかにしてオジサン達の知的好奇心に訴えかけて大量動員することが出来るかどうかがカギになるはずだと、私は踏んでいるのだが。

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【エレファント】四つ星

コロンバイン高校の銃乱射事件(のような事件)は"サバービア(刺激も変化も無いアメリカ郊外の住宅地)の憂鬱"によるものだという、今まであったようでなかった解釈。今日も明日も何も変わらない、ぬるま湯のような平和さが次第に狂気を孕み、一転して恐怖が支配する空間へと転化する様の切り取り方は実に見事。でもそもそも、高校生が通販で銃を買えてしまえるという環境自体に、やはりもっと根本的な問題があるような気も……。

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【オアシス】四星半

していいことと悪いことの区別を今ひとつちゃんとつけられず、社会のシステムにどうしてもうまく順応できない、根っからの嫌われ者体質の主人公。心には純粋なところもあるけれど、誰の理解も及ばなくて常に孤独を抱えている……。まるでこういう人に生まれついたようにしか見えない、ソル・ギョングさんの演技がとにかく凄すぎる !! 【ペパーミント・キャンディー】と見比べてもらえれば判ると思うのだが、その人の根っこにある人格というか、性質そのものから全く変えてしまっているようにすら見える。今現在、世界中から上手い役者を5人選ぶとすると、もしかしてこの人は入ってしまうのではなかろうか。
この主人公と脳性マヒの女性の恋愛というのは仕掛けとしてあざとすぎるのでは、といった感想もいくつか見かけ、その意見も分からないではないような気もした。また、脳性マヒの女性を演じたムン・ソリさんの演技は、特に前半のうちは少し力が入りすぎていて、いかにも演技といった感じが否めないような気もした。でも私は、とにかく主人公の心情に打ちのめされ、号泣してしまった。クセが強いので、万人に手放しで勧められるタイプの映画ではないのかもしれないが、私にはこれ以下の評価をつけることは出来なかった。

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【オーシャン・オブ・ファイア】三つ星

砂漠 ! 馬 ! 銃 ! う~んマズい、これは私が入眠モードに入る時の必殺パターン……ヴィゴ・モーテンセンが主役というのに引き摺られてうっかりしくじっちまったぜ。(砂漠と馬なら大丈夫でも、銃が入るといけない。)馬のヒダルコ君は可愛かったけど、所詮は追いかけっこでしょう ? と思うと、それ以上、どうしても興味が湧かなくて……。

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【気まぐれな唇】三星半

思わぬ人に思われて、思った人には思われず……因果は巡っていく訳ね。商業主義的なサービス精神もエンターテイメント的な色気も毛頭無く、BGMもほとんどなく、あくまでもマジメに、とつとつと撮っている雰囲気だけど、全編に渡って乾ききったユーモアが感じられるのが嫌いじゃない。ホン・サンス監督の映画は初めてだけど、本作を最初に見ることが出来てよかったような気がする。

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【CASSHERN】二星半

ビジュアルは確かに前評判に違わぬ凄さだけれど、見ていても気持ちが一向に乗っていけず、置いてけぼりにされてしまうのは一体何故だろう。設定がいちいち古くさくて幼稚な感じがするから ? 画作りがストーリーを語るためのものとして発想されてないから ? 一瞬の驚きを与えればよいプロモーションビデオや静止した絵画の鑑賞と違って、映画は、見る人の感情のうねりを画面の時間軸の流れに強引に引き摺り込み、シンクロさせてナンボのもの。ストーリーもビジュアルもその目的のために奉仕するべきものであるに過ぎない。紀里谷和明監督には、その辺り、もう一度研究し直して再挑戦して欲しいかな。

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【ギャンブル・プレイ】三つ星

旧作のリメイクなのだそうだけど、お話のポイントがよく分からないというか、何に主眼を置いて見ればいいのか、最後までよく分からずじまいだった……ニール・ジョーダン監督独特の艶のある雰囲気はキライじゃないんだけど。

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【きょうのできごと a day on the planet】四つ星

ある集まりに集った20歳くらいの若い皆様の、だらだら、まったりした一日の情景。筋書きとしてはなんてことのないものだけど、気負いがなく、変な力が入ってなくていい。今まで見た行定勲監督の映画では一番好きかもしれないな。皆に気を使う役回りの柏原収史君がとてもよかった。伊藤歩さんも、普通の女の子という役柄が逆に珍しい感じで新鮮(すぐに誰と解らなくてすいません……)。それにしても、妻夫木君って何だか、車の運転シーンをやたらよく見かけるような。

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【キル・ビルVol.2】四星半

タラちゃんのことだから、前後編の2部作という構想になった時点で、内容の色合いを変えメリハリを持たせることを考えたのだろう。アクション中心でスカっと飛ばしまくる前作とは違って、本作では、ユマ・サーマン演じるヒロインとビルとの間のドロドロの愛憎劇が明かされる(……結局のところ、世界一血なまぐさい痴話喧嘩だった訳ね)。前作の方がいいという人と好みが分かれることになるんだろうが、私にとっては、ここまで描いてこそのタランティーノ !! よ、よかったぁ、やっぱりタラちゃんの創るものに間違いはなかった。
唯一不満があるとすれば、ダリル・ハンナ演じるエル・ドライバーを、もっと出演シーンを増やして描き込んで欲しかったことくらい。黒いスーツをピシっと着こなす立ち姿、アクションのキレのよさ、総てにおいてシビレまくり !!

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【クイール】四つ星

クイールが実際に盲導犬として活動していた期間はすごく短かったらしく、クイールの大活躍!を期待して見てしまうと少し拍子抜けするかも。(でも事実そうだったんなら仕方ないじゃないの。)それよりは、クイールが出会った人々と、それぞれの時期での成長ということに主眼を置いて見るべきなのではあるまいか。淡々とした中にも全てを見据えているような視点は、まるで仙人のものみたい。崔(洋一)監督はいつの間にここまで凄い作風を身につけてしまわれたのかと思う。盲導犬の訓練や仕事内容についていろいろ分かるというおまけもあって、更に得した気分。

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【グッド・ガール】四つ星

結婚7年目で思いっきり倦怠期、何の面白味もない郊外の街の、これまたくたびれた感じのするスーパーストアで働いている、そろそろ中年に差しかかろうかという年頃の奥さん。作家志望を名乗る青年にときめいちゃって浮気をしてみたものの、彼は自分の人生と向き合えず成長できないタイプの単なる困ったちゃんなお子様で、そのうち浮気も発覚したりして……。彼女が劇中、一度だけ“good girl”と呼ばれるシーン(字幕では分かりにくいかもしれないが)は、驚くほどに冷徹でシニカルだなぁと思った。だってこれは多分、大人の女性に語り掛ける言い方じゃないもんね。
このどこを切っても永遠に停滞している感じをこれでもかと正視させられるのは、かなりイタくて相当ツラい。【チャック&バック】の時もそうだったけど、ミゲール・アテタ監督&脚本のマイク・ホワイトのコンビは、いわゆる正統派のドラマの裏側に入っちゃっているようなこのようなシチュエーションを掬い取って形にするのが抜群に上手くて凄い。そして、ハリウッド大作ではありえないようなこんな作品が生み出される土壌もアメリカ映画界にはちゃんとあるのだなと思うと、何かホッとするような気がする。ジェニファー・アニストンやらジェイク・ギレンホールやらといった注目株の俳優が、キャリアを積み重ねる大事な時期に、リスクを顧みずこのような作品を選んで出るというのも凄いが、ジョン・C・ライリーやティム・ブレイク・ネルソンなどの癖のある共演陣もまた見もの。総じて言えば、ちとシンドいかもしれなくても、これは是非とも注目しておくべき作品かも。

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【グッバイ、レーニン ! 】四つ星

いくら病み上がりのお母さんを刺激したらマズイからって、東ドイツがなくなったことを隠そうとし続けるなんて無理がありすぎない ? いくら家族愛を謳っていたってこの手の嘘はあまり好きじゃないなぁ、とか思っていたら、その嘘はますますとんでもない方向へ……。時代の変化から身を置こうとする嘘を一番必要としていたのは嘘をついた本人だったというオチ。空飛ぶレーニン像がとても切ない。

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【コールドマウンテン】四つ星

本作は、珍しいことにずっと以前に原作を読んだことがあったのだが、ジュード・ロウ演じる脱走兵の辿る道筋はもっともっと長く危険で孤独なものだったし、ニコール・キッドマン演じる令嬢がレニー・ゼルヴィガー演じる生活感溢れるたくましい女性と共に暮らしぶりを立て直していく過程は、もっと描写が細に入っていて興味深いものだった。でも原作を読んだだけでは、この美しく雄大な風景の拡がりまでは全然想像できなかった(実際はルーマニアで撮ったらしいのは置いといて)。だから、原作と本編を足して2で割ると丁度いいんじゃないだろうか ? 映画となるととにかく時間が限られているからストーリー的に原作のダイジェスト版になるのは仕方ないし、主人公達を演じているのは現在のハリウッドでNo1の美男美女だし(多分)、意匠にせよロケハンにせよ、この原作を映画化するということにおいて、これ以上の形のものは望めなかったのではなかろうかと思う。

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【ゴッド・ディーバ】三つ星

日進月歩で技術が進めば、カリスマ的なコミック作家であるというエンキ・ビラル監督が表現したいような世界観はますます表現しやすくなるはずであると願いを込めて幾星霜。今回もやっぱり……途中でだるくなってしまったのね。今まで見た同監督の映画と比べればまだしも好きな部分もあったけど、本来2Dであった世界に3D世界の厚みを持たせて説得力をつけるには、バックグラウンドのディテールの部分で今ひとつの描き込みが必要だったりはしまいか ? 何よりも、子作りにばかり励みたがる神サマとやらにあまりに有難みがなく、安っぽさを増幅させていたような気がするのがどうも。

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【この世の外へ/クラブ進駐軍】四つ星

戦後のドサクサの時代に渦巻いていた復興のエネルギーの勢いに乗り、アメリカから流入してきた新しい文化の波に身を任せて浮かび上がろうとする若者達……。一般的な評が今ひとつだったというのは、例えば実際のかの時代を知っているような年配の評論家には、【仁義なき戦い】みたいなアツさが感じられないのが物足りなかったのではないのかな。冷静沈着な阪本順治監督には、自ずから体温上げることを求められてしまうような創り方は出来そうにないもんね。私はその冷静さが嫌いじゃなかったんだけど、でもま、オダギリジョーさん、萩原聖人さん、村上淳さん、松岡俊介さんといった俳優さん達がみんな好きだったから(俳優さんじゃないけどMITCHさんもよかった)、ちょっと贔屓しているきらいはあるかもしれませんが。特に今回の松岡俊介さんはよかったね~。こういう端正なタイプの役柄は新境地なんじゃない ?

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【殺人の追憶】四つ星

何となく、【シュリ】以前の一昔前の韓国映画の懐かしい雰囲気を彷彿とさせた(悪い意味でじゃなく)。勿論、ソン・ガンホさんの存在感は相変わらず素晴らしいし、実際の女性連続暴行殺人事件をモチーフにしたというストーリー自体も興味深い。だけど、この映画が韓国でNo1を飾るような大ヒットになったというのには、近年の経済成長に伴った性急過ぎる社会の変化の反動で、ここらでちょっと少し前の時代を振り返ってみて、これから行くべき道にじっくり思いを馳せてみようという規制がどこかで働いたのではなかろうか、なんてことを思ったりした。(……韓国に行ったこともないくせに、何を偉そうに……。)

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【しあわせな孤独】四つ星

ある交通事故を境に、まるで水が流れ落ちていくみたいに自然に、気まずくなったり、不安で寂しくなったり、くっついたり、また離れていったりする、二組の男女。どれもがありきたりな出来事ばかりなのに、まるでカメラの前で本当に起こっていることであるかのように生々しい。カメラは、突き放すでなく、甘やかすでなく、あるがままに情景に寄り添って繊細に映し取っていき、人物達の心情を丁寧に綴り込む。ドクマのドキュメンタリー的なタッチがこんなふうに効を奏しているのは素晴らしい。結局、みんな独りで生きていくしかないのね、という結末に、私は何故だかほっとした。(人間って、そんなもの、って辺りかな ? )本作のスザンネ・ビエール監督といい【…イタリア語講座】のロネ・シェルフィグ監督といい、デンマークの女性監督の波、確実に来ているのでは。

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【幸せになるためのイタリア語講座】四つ星

これもドグマのドキュメンタリータッチの、手持ちのビデオカメラでそのまんま取りっぱなしにしたような雰囲気があるような映画で(無論、違うのですが)、大した導入部もなくいきなりぶっきらぼうに話が進んでいくので、このタッチに慣れて登場人物とその背景がはっきりしてくるまでにちょっと時間が掛かるかも。(なんか似てる女優さんが2人いて、区別をつけづらいなーと思っていたら、それも計算のうちだった。)
とにかくすべてがあるがままに進んでいくのをそのまま映し取ったみたいな、この感じがとても独特。よくよく考えると結構大変なはずの出来事が起こっても、みんな自然に対処して、じぶじぶ、しみじみと等身大に幸せになっていく……北欧(デンマーク)の人って大人。というより、北欧(デンマーク)の女性(ロネ・シェルフィグ監督もそうである)が大人なのかしら。

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【しあわせの法則】三星半

奔放に生きてきた母親と、それに振り回され続けてうんざりしている息子。細かい筋立ては印象に残っていない……というか忘れちまったよー !! (それくらい大したことなかったのは確か。)でもフランシス・マクドーマンドの演じるハチャメチャな母親のキャラクターの印象だけは強烈で、映画全体のレベルを、総じて言えば悪くないくらいにまで引き上げていたような気がする。一応、【ハイ・アート】のリサ・チョロデンコ監督の作品。

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【シービスケット】四つ星

私の競馬の知識なんて、ゆうきまさみ先生の『じゃじゃ馬グルーミンUP ! 』どまりですが、騎手(トビー・マグワイヤ)、馬主(ジェフ・ブリッジズ)、調教師(クリス・クーパー)それぞれの人生やその奮闘の軌跡が馬の走る姿に投影されるのが、競馬なるもののドラマ性なのかなと。それぞれのエピソードにもっと寄り添って掘り下げて欲しかったような気がしないでもないけれど、騎手の目線で捉えた競馬のシーンがとにかくかつてなかったような凄い迫力 ! で、この映画はそれで全てを購えてしまえるような気もする。ゴールに向かって突っ走るシービスケットにコブシを振り上げて歓声を上げてしまっている(心の中で)辺りで、もう完全に作り手側の思うツボ。今の競馬の常識では考えられないのでは ? と思えるようなことも、実話と聞くとただ凄い。

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【死に花】四つ星

高齢化社会に向けて、シルバーの方寄りの映画を研究せねばならないとは言われて久しいが、実際にシルバー映画と言っても、新しい発想のものを創り出すのはなかなか難しいみたい。そんな中、ついにその波が来始めたのか ? ということを予感させるのがこの映画。山崎努さん、谷啓さん、青島幸男さん、宇津井健さんという素晴らしい出演陣の芸達者ぶり(皆様わざわざ老けメイクまでなさって)は、100%安心して堪能できる安定ぶり。競演陣も見て驚け ! の豪華さ。そしてこんな皆さんが、お金に困っている訳でもないのに(何せ高級老人ホームのお仲間だから)、何故か地下からトンネルを掘っての銀行強盗を企ててしまうというびっくりの展開 !! でも全く荒唐無稽な話かと言えばそんなこともなく(××が倒れるところ以外…)、重くなりすぎない優雅なテンポで一つ一つのエピソードを細やかに描いて、結構しっかり地に足の着いた表現になっているのは、さすがは犬童一心監督といったところ。ちゃんとした子供映画がそうであるように、結局、シルバー映画と言ったって、他の年代の人が見ても面白いものであってしかるべきなのよね。

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【ジャンプ】三星半

何故かサラリーマン役のオファーが多い原田泰造さん。確かに、こういうサラリーマンっていそうかも?と思わせるたたずまいがあるのかもしれない。その存在感って貴重。
恋人が突然失踪して右往左往する彼を中心にした話の運びは悪くなかったけど、最後に総てが明らかになった時の"そんなのアリ?"感はどうしてくれる。これって立派な詐欺じゃん。いくら真剣だからってやっていいことと悪いことがあるよ。大体、肝心な人に何も言わず一人でそこまで思い詰めてるのって、相当恐いしキモチワルイんだけど。私には結果オーライのこのラスト、違和感が感じられて仕方なかったし、原作者&監督が、女性なるものをそういうものだとして捉えているのだとすれば何だかなー。世の中の何%かは、きっと同様の感想を抱く人がいるのではないかと思うのだが。

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【真珠の耳飾りの少女】三星半

この映画を作ろうと最初に思い立った人達は、まずなりよりも、あのフェルメールの絵の独特の静謐な空気感をフィルム上で再現してみたかったのではないか ? と想像する。確かに画作りは頑張っていてすこぶる綺麗、17世紀のアムステルダムとあのフェルメールの絵の世界と、そのまんま地続きになっているような気すらした。でもストーリーは、文字通り取ってつけたような感じがどうしてもしてしまって、う~ん所詮は(制作者の)君達の想像の世界の話でしょ ? と妙に冷静になってしまわざるを得なかった。スカーレット・ヨハンソンのアンバランスな色気は確かに見どころだけど、それもそれだけのものだしなぁ。それなら私は同じ時間だけ、フェルメールの画集そのものを眺めていた方が楽しかったような気がするし。

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【スイミング・プール】四つ星

最後に大どんでん返しがあるというのでアレコレ予想して見に行って、見終わった時に判明したラストは確か予想したパターンの中の1つにあったはずのものだったのに……見ている間にすっかりそんなこと忘れてしまっていた。ヤラレター !! 後は、あれは一体何だったのかと、いろいろと「解釈」してみることを楽しむがよろし。やっぱりシネフィルなオゾン監督。それにしても、(本編とは全然関係ないですが、)あんなスバラシイ別荘、持ってみたいものですなぁ~。

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【スクール・オブ・ロック】四つ星

【グッド・ガール】の項でも紹介したマイク・ホワイトさんは、ジャック・ブラックさんの御近所にお住まいなのだそうで、そんな御縁からホワイトさんが脚本を書いてブラックさん主演で誕生したのが本作なんだそうな。(ブラック&ホワイトなんて出来すぎの符牒だ……。)主人公があまりにも我が道を行く自己中人間のため、どうなることかとちょっとハラハラしながら見ていたけれど、優良進学校の出来がいい子供達に逆に助けられ、ちょっぴり夢を叶えつつちょっとは真人間になり、子供達も勉強だけに縛られない意義深い体験をする、という寸法。私の中ではアングラなイメージが強かったマイク・ホワイトさんがこんなにも王道のハッピーエンド・ストーリーを書けるなんて結構びっくり。監督がリチャード・“トリップ系”・リンクレイターだというのにも二度びっくり。

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【スパニッシュ・アパートメント】四つ星

大昔にバルセロナを旅行した時、街には独特のエキゾチックさが勿論あるんだけど(とりあえず、バルセロナを舞台にすると当然それだけで絵になるし)、中身は案外コスモポリタンな大都会だったのでかなり驚いた。この映画のようにいろんな国からの留学生が集まるのにはぴったりなのかも。留学自体はしたことがないのでよく分からないけれど、学生時代ってこんな寄り合い所帯みたいな楽しさがあったんだよなー、ということを何となくおぼろげに思い出した。
ところで、彼とアパートをシェアしている留学生はどうしてヨーロッパの人ばかりなのだろ ? とふと思ったのだが、映画の中でたびたび耳にする『エラスムス計画』というのは、EU諸国における人材養成・交流計画なのだそうだ。(現在は『ソクラテス計画』というものの一部になっているのだとか。ちなみにエラスムスというのは16世紀頃のエラい思想家。)う~む、何か知らないけれど立派だな。アジアでも人材育成のために、孔子計画とかなんとかやっといた方が。

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【世界の中心で、愛をさけぶ】四つ星

世界の中心とはオーストラリアのウルル(エアーズロック)のことらしい。現在と昔を対比させるというアイディアは悪くなかったと思うけど、回想する本人である大沢たかおさんの方はまだしも、柴崎コウさんの出演シーンとなると、やはり多少取ってつけた感じが否めない。それでも破綻なくきっちりと作り上げているところは評価したいと思うけれど、そもそものお話自体が、あまりにも定番というか使い尽くされた筋書きというか。(もう21世紀なんだから、いい加減、白血病 = 悲劇の不治の病い、というワンパターンからは脱却してくれないかね。近年では、初発時ならば寛解率もかなり上がってきている筈なんだけど……あと、白のノースリーブのスケスケワンピというワンパタも何とかしてくれ。)基本的に、意外なことは何ひとつ出てこない展開なので、こういうのを初めて見る若い人なら感動できるのかもしれなくても、散々見尽くしてきた中年以降の人にはどうなんだろう。大体、これで2時間半近くもあるって何。後半以降、時間が経てば経つほど、ババァのあたくしにはまるで拷問のようだったのですが。

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【ゼブラーマン】四つ星

哀川翔さんは本当にとっても器用な人で、コワモテな人からナサケナイ人から、非情な人から純真な人から、悩み深き人からあっかるーい人まで、求められるがままにどんなキャラクターでも纏ってみせることが出来るだなんて、そんなこと前から知ってたもーん。その哀川さんをコワすのが日本で一番上手いのが、実は三池崇史監督なのでないかと思う。ありえねー !! ような展開で、気合いだけで特殊な能力を身につけヒーローと化していくような主人公はアリなのだろうか……勿論アリに決まってる ! 個人的にはテンポが気になるところもちょっとあったけど、哀川さんの新たな魅力全開で、主演100本目にふさわしい作品に仕上がっていたのではないでしょうか。【ゼブラーマン2】もクドカンさんに脚本をお願いし、今度は是非ともゼブラナースにも活躍して戴きたい !!

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【ソニー】三星半

女性の娼婦の物語は世の中に腐るほどあれど、男娼のお話というと滅多に耳にすることはないし、とにかくサンプルが少ないから演じるといっても相当難しいに違いない。これを見事にクリアして、男娼なるものはこういう時にこういう表情をするものなのだと観客に完璧に信じ込ませることの出来たジェームス・フランコ君(【スパイダー・マン】でウィレム・デフォーの息子を演じていた)がとにかく素晴らしかった。このお星様のほとんどは彼に捧げたいと思う。そんな彼の心情にもっともっと寄り添うことの出来る筋書きなら、評価も更に高かったのではあるまいか、お話の焦点が多少ばらけてしまった気がするのが惜しい。でも、一時はどうなることかと危ぶんでいたニコラス・ケイジさん、ここのところはなかなか頑張ってるじゃありませんか。

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【タカダワタル的】三星半

お名前は存じ上げていても、こんなにじっくり曲を聴いたのは初めてだったなぁ。とにかく高田渡的としか言いようのない声と風貌と、独特なスタンスの歌詞による歌の世界。映画の発起人の柄本明氏が言うように、確かにこの人の仙人みたいな存在そのものが貴重かも。こんな人がひっそりと生息している吉祥寺という街(うーぴーさんも住んでいます)は、やっぱりいいところなのかもしれないとしみじみ。

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【着信アリ】三星半

三池監督がホラーが苦手だと言っているのが、何となく分かるような気がする。だって、これがこうなるから、こう来て、こう来る、みたいに、きっちり理詰めですごく論理的なんだもの。怖さを感覚で捉えるのではなく、頭で考えて撮っている感じで、これじゃあ、理屈もなくただダダ漏りにコワいものを求めてやまない、世間の多くのホラー好きの人には、評判がよくないに違いない。堤真一さんと柴崎コウさんというコンビは思った以上にいい組み合わせだったし、ホラーが嫌いな私としては、逆にじっくり楽しめてよかったんだけどね。

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【ディボース・ショウ】三つ星

コーエン兄弟がもともと他の人に監督をしてもらうために書いた脚本だという話だが、本当に、誰が監督しても大して差し支えないくらい没個性的で、コーエン兄弟独特のクセの強さや味がまるで感じられない。これに加えて、慰謝料目当てで結婚と離婚を繰り返すヒロインとやり手の離婚弁護士のゲームのような恋愛ゴッコ、っていう発想に全くついて行けなかったのが致命的だった。俳優がジョージ・クルーニーとキャサリン・ゼタ・ジョーンズじゃなければ、星はもっと下がっていたことでしょうが……。

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【《テディベアのルドヴィック》】三星半

短編アニメ界の世界的巨匠の一人、コ・ホードマン監督による人形アニメ。子供の視点の再現という離れ業を、クマのぬいぐるみに仮託してさりげなくやってのける。一生のうちに必ず一度見ておきたい、出来れば子供には見せておきたいクラシックといった感じ。

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【東京原発】三星半

東京のド真ん中に原発を作るとこんなにお得なんだって……。全編これブラックジョークのこの発想は凄いけど、展開がちょっとモタついたきらいがあるのがちょっと惜しい。それにしてもつくづく、今の段階の人類には原発を御する能力は無いんですよね。少なくとも、核廃棄物を埋めるなんていう後世にツケをつけまくりのアホな処理しか出来ない間は、原発を使うのは本気でやめて欲しいんですが。

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【ドッグヴィル】四つ星

普通の人間は、ここまで愚かになるのもかえって難しい訳で。これはリアルなお話とはおおよそかけ離れていて、閉ざされたコミュニティという設定を(言い訳として)用いつつ、人間の愚かさを、分かりやすくコンパクトに戯画化したものと考えるべきではないかと思う(というか、ほとんどマンガみたいよね)。それぞれの家は記号のように床に書き割りされているだけで、壁は全く透明、村中の総ての人のすることが同時進行で目に入ってくるのが、いわば神の視点みたいなものなのだろう。この着想を元に、名だたる名優達を(ぶーぶー文句を言われながらも)完璧にコントロールして、完全な世界を創りあげてしまっているのは、正に天才の業(わざ)としかいいようがない。ただ、あんまりにぶっ飛びすぎていて、大多数の人にはついていくのが難しいだろうということが最大の難点だ……。ニコール・キッドマンの存在は、神の代弁者という言うべきか、神と悪魔は紙一重(または同一のもの ? )だと示唆しているのであろうか。

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【扉の向こう】四つ星

ミュージシャン(「表現者」と言い換えても可)なる人々は、ミュージシャンであり続けることでますますミュージシャンとして純化されていく。昔、エレファントカシマシを凄いなと思った理由も、でも個人的にはのめり込むほどには好きにはなれなかった理由も、同時に思い出した。宮本浩次さんは、良くも悪くも「男道」を行って「男節」を歌っていらっしゃる人だから、男性文化と女性文化の概念の解体と再構築が14の時から人生のテーマだった私とは、水が合うはずがないじゃないの。それでも、宮本さんも私も、人間として生きてきた歴史も多少長くなってくると、一人の人間として理解できるように思える部分も多くなってきているんじゃないかと感じた。“使い尽くしたい”という感覚は判るような気がする。私も「走って灰になる」んだもんね。(歌詞の出典が違ってすまん。ムーンライダーズです。)でも、いくつになってもやっぱり『舞姫』が嫌いだから、宮本さんと違って森鴎外には心酔は出来ないもんなー。
念のため。かの柳楽優弥君が出演して賞を取った【誰も知らない】の是枝裕和監督によるドキュメンタリーです。

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【ドラッグストア・ガール】三星半

田中麗奈さんは思った以上にコメディセンスがあってとっても可愛かったし、柄本明さん、三宅祐司さん、伊武雅刀さん、六平直政さん、徳井優さんといった一癖も二癖もあるオジサン達の芸達者ぶりは、何せ安心して見ていられた。でもお話自体は、ちょっととっちらかってまとまらなかった印象が。
クドカンさんこと宮藤官九郎さんのオリジナル脚本って、お話を理詰めに進めて起承転結をつけていくというよりは、ハジけた雰囲気と勢いで見る人を呆然とさせるタイプのものなのかもしれない。本作に限って言えば、演出をする側が脚本の特性を掴み切れず、今ひとつ噛み合わなかったのではなかろうか。

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【25時】四つ星

刑務所に収監される直前の男(これまた上手いエドワード・ノートン)が魂の行き場を求めてさ迷う一夜の彷徨を、まるで水墨画みたい !? に何ひとつ無駄なものがない完璧なタッチで描き出す。スパイク・リーという人はもともとすごく上手い人だったけど、より以上に腕が上がっているのではあるまいか。今度、監督が心から撮りたい素材に出会った時には、きっと恐ろしいようなものが出来上がる予感が。

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【ニューオーリンズ・トライアル】三つ星

最後まで見て「えー ! そんな話だったっけ ? 」みたいな。仕掛けに満ちているというよりは、ところどころで整合性が取れてなくてちょっとばらけたような印象の出来。脚本の詰めが甘いのか、演出が下手なのか。ダスティン・ホフマンにジーン・ハックマンにジョン・キューザックなんていう、これだけの大物俳優ばかりを揃えておいて、演技の化学反応も期待できないなんて勿体なさすぎ。

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【パーティ☆モンスター】三つ星

久々復活 !! のマコーレー・カルキン君の演技が悪かったわけじゃないと思うんだ。本作の監督をしているのは、80~90年代に実在していたNYのパーティ狂の人々を対象にドキュメンタリーを撮っていた人達なのだそうで、フィクションの作劇の作法は必ずしもブラッシュ・アップしてこなかったんじゃないかな ? 友達を作るのすら苦手な気弱な田舎者の主人公、マイケル・アリグは、だからこそ極端なまでの虚勢を張って注目を集めようとしたのだ、という下りはとてもよく分かったんだけど、後は概して、表面の狂騒を通り一遍で追いかけているだけで、登場人物達の心情まではなかなか掘り下げられなかったような。かのパーティ文化の特殊性とか、素材としては非常に興味深いと思われるだけに、ちょっと残念。

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【バーバー吉野】四つ星

“吉野刈り”というのは吉野ヶ里遺跡の名前から取ったダジャレじゃないんすか……違うの ? ま、とにかく、床屋のおばちゃんの暗躍により小学生の男の子全員が同じ髪型にさせられている村、なんて発想、一体どこから考え付いたんだろう ? 案外、ここしばらくは、全体的に女性監督の方が、柔軟な新しい発想の映画を作ることが出来たりして !?
本人達は嫌がっているけど、天使の輪がツヤツヤと光るおそろいのマッシュルームカットの少年達はとにかく可愛い。こんな少年達のささやかな反抗とちょっとした成長を、あくまでも明るくユーモラスで慈愛に満ちた視点で描いているのがとても愛おしい。かつて当の少年だった人達にとってみれば、もしかしてこういう視点って、単にうざったいだけなのかもしれないけどさ……。
個人的には、もたいまさこさんがこんなにも出ずっぱりの役でたっぷり鑑賞できたので、充分お釣りが来たけどね。

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【パッション】三星半

英語ではなく、当時実際に使われていたアラル語とラテン語のみを使い、真正面からがっぷり四つに取り組み超正攻法でキリストの受難の物語を撮り上げようとした、メル・ギブソン監督の姿勢は大いに評価したい。しかしながら、お話自体は、総てどこかで耳にしたことのあるようなキリストの有名なエピソードばかりなので、意外な展開というものは皆無であり(キリストが徹底的に鞭打たれて文字通り血まみれになる凄惨な描写くらい)、ストーリーを追うことしか出来ない非キリスト教徒の私みたいな人間は、どうしたって退屈してきてしまう。同じストーリーを幾重にも深読みできるキリスト教徒の人にはきっと深く訴えかけるところがあるのだろうけれど、それ以外で、メル・ギブソンの熱烈なファンという人以外には、基本的に敢えてお勧めできる理由は無い。

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【花とアリス】四つ星

女の子二人の三角関係にバレエ……って【花と虫】と一緒じゃん。あそこまでの香り高さはさすがに感じないし、男の子が記憶喪失になった(今時、そんなのありか ? )というのを利用して彼女と名乗るなんて設定はどうかと思うけど、友情とライバル関係、思いやりとズルい出し抜き合いの混ざり合った微妙な空気感がよく表れていたのは秀逸だと思う。雰囲気なんていう曖昧なものを描いて一本の作品として成立させてしまうところが、正に岩井俊二監督の真骨頂。ただ、敢えてこんなものを見たくない現役の女の子には受けが悪いという指摘もあるけれど。

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【半落ち】四つ星

今時、腰エプロンを着用している女性がこんなに高確率でいる訳ないだろうと思いつつ。そういう描写のちょっとした古めかしさと、隅から隅まで行き届いた丁寧さが奇妙に同居している感じ。妻殺しの元刑事がどうして完全自供しなかったのかという流れは結局今ひとつ伝わりにくかったようにも思うけど、寺尾聡さん、原田美枝子さん、樹木希林さんを始めとするそれぞれの役者さんの熱演によって、それぞれのキャラクターの心情がしっかりと伝わってくるのには好感が持てた。
記憶がなくなってしまえば人は人として体をなさなくなるみたいな描写が許せない、といった感想を読んだ。その視点にも一理あるかもしれないけれど、このお話に関しては、自分がそうなってしまった時の苦しみと、あまりにも身近な人がそのことに苦しんでいるのを目の当たりにする苦しみを中心に描いているので、その批判は微妙に当てはまらないのではないかとも思った。自分が自分でなくなってしまう、自分の歴史すら失ってしまう……それは確かに、この世のどんなものより恐ろしくて悲しいことかもしれない。

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【ピカ☆☆ンチ LIFE IS HARDだからHAPPY】四つ星

頑張って行きましたよ、大久保グローブ座。周りの95%は、すごく外れの時間帯でもほとんど満席にしてしまうような熱心な嵐ファンばかりでも……。本編は、元HIGHLEG JESUSの河原雅彦さん脚本×堤幸彦監督によるご近所物語の続編。(前作はビデオで見ました。)設定の紹介が要らない分、お話は多少マンガチックながらも前作以上にテンポよく進み、それぞれのキャラクターの見せ場もしっかり挟みつつ、前作からの成長を描いて好印象。嵐のメンバーそれぞれの存在感と魅力をたっぷりと引き出していていい感じ。ヤバい、これを見ているうちに、かなり嵐のファンになってしまったかも。

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【ビッグ・フィッシュ】四つ星

ティム・バートン監督がこの映画を創ろうとしたきっかけは、あまり仲のよくなかった父親を亡くしたことだったと言うが……映画を観る限りでは、かつてのウチんとこの父娘仲の方がきっともっと壊滅していたんじゃないかと思う。これは人生をより味わい深いものにするための方法について描いた、すごくよく出来たいい映画だと思ったけれど、どうもいやに冷静になってしまって、涙のなの時も出てこなかった。ごめんなさい。あんまり参考になりませんね。

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【ふくろう】三つ星

日本政府は、戦前は貧しい農民達を海外の不毛の土地に移民させたり、戦後は海外からの引揚者をこれまた不毛の土地に押し込んだりと、農民たちに対してまぁひどい仕打ちをしていたという話は何度か耳にしたことがある。しかし、ある程度以上年齢が行った人ならともかく、若い人にいきなりそんな話をしたところで、戸惑ってしまうに違いない。
でもって、そんな政策の犠牲になったヒロイン達の復讐が、家に訪ねて来た男達の一人一人と寝ては殺して金をせしめることって……その論理展開がよく分からんのだが。“男性社会一般”への復讐、という意味なのか ? 殺される一人一人には(直接には)何ら罪があるわけでなし……。しかも、何でいちいち寝にゃならん。それが女性の生命力の表現だとか言われたって……。
いやいや、これは寓話に過ぎないんだからと言うのなら、どうして映画の冒頭で下手に年代をインサートしたりなんかするのかな ? いっそ、いつのどこかも分からない完全な異空間にしてしまえば、これはこういう表現なのだとまだしも割り切ることができたかもしれないのに。結局のところ、新藤兼人監督の感覚を通して見ている世界が、私なんかが考える現実とは懸け離れているみたいだから、どうしようもないよね。

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【ヘブン・アンド・アース 天地英雄】三つ星

かの国際的俳優のチャン・ウェンさんと並んでもちっとも見劣りしない中井貴一さんという人は、本当に素晴らしい俳優さんなのだなとつくづく思った。ただ今回の映画は、舞台のスケールは大きいけれどお話としてはメリハリに欠けた一本調子で、ここぞ!という盛り上がりには欠けていたかも。誰か中井さんに、もっとふさわしいような超大作を用意してあげて下さーい !!

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【ぼくは怖くない】三星半

一面の黄金色の小麦畑の風景が、正に寓話の中の世界みたい。話の展開はかなりの驚き。全編、主人公の男の子の目線で綴られているのはいいけれど、ならばもっと、子供の精神世界の圧倒的な不安定さや、この世をかいま見る時の恐怖や畏怖が前面に出るような創りになっていてもよかったかな。

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【ホストタウン エイブル2】四つ星

今回の【エイブル】は、2003年にダブリンで開かれたスペシャル・オリンピック(知的障がい者のための全世界規模のスポーツ競技大会)の日本人選手団のホストタウンとなった町に暮らす、障がいをもつ女の子が二人いる大家族を中心に撮影されている。どうしようもないほどの苦しさを山ほど乗り越えてきたはずの家族の表情は、今は明るく穏やかだ。前向きな姿勢とか善意とかいった"良い意図"を持つことは、持って生まれた性質ではなく、意志の力のなせる業なのだと思う。日本人選手団を迎え入れる街の人達の、暖かく心のこもった手作りの細やかな歓迎ぶりには、彼等が人生で最も価値を置いているものが根本的に違うのではないかということがまざまざと見せつけられて、人生の豊かさって何 ? って柄にもないことを、一瞬真剣に考えざるを得なくなってしまった。

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【マスター・アンド・コマンダー】四つ星

大昔の少女マンガには何故か海洋冒険もの(かっこいい海賊さんとかが出てくるようなやつ)がジャンルとして存在していて、その僅かな記憶のなせる業なのかもしれないが、私はこういうジャンルのものって、基本的に嫌いじゃないみたい。(海辺の育ちということも関係しているかもしれないが。)帆船って風の力と人力だけでこうやって動いていたのね(けっこう特殊な技術とか責任の比重の重い作業分担制が必要)、とか、たったこれだけの仕掛けで全世界の海を駆け巡っていただなんて結構驚きだわ、とか、船長のカリスマ性に船員がどれだけ従属的かが船の命運を握っているのね、とか、大英帝国はこうやって世界の海を制覇していったのね、とか、その地球儀サイズの広大な世界と一つの船の中だけで完結している狭い世界の対比が面白いなぁ、とか、地図上の境界線を広げようとする船長(こういう役があまりにもハマるラッセル・クロウ)と学問上の境界線を広げようとする船医(今回とってもかっこいいポール・ベタニー)の友情と対立が象徴的だなぁ、とか、いろいろな興味が尽きないんだけど……。日本での一般的な評判がそれほど良くなかったということは、皆様はそういうことにはあまり興味が湧かなかったということなのだろうか。
好むと好まざるとに関わらず、このような形で作られてきた歴史というのはかつて確かに存在していたのであって、このような暴力的なマッチョイズムが現在の世界にもどこかに生き残っていて、どこかの国の国威高揚に繋がっていたりする部分もあるのだろうかなぁと思うと、複雑な気分もしたりする。でもこの映画はこの映画として、純然たる娯楽ものとして楽しんでしまいましたが。

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【ミスティック・リバー】四星半

ええと、テーマは「人生に救いは無い」かな ? それとも「か弱い奴ほど踏みにじられる」かな ? 人間の運命って、時にこんなにも捻じくれていて容赦がない。デイヴ君の魂が安らかであれと祈るばかりだ。
ティム・ロビンスといい、ケヴィン・ベーコンといい、ローレンス・フィッシュバーンといい(!!)、もともとめちゃめちゃ水準の高い俳優さんばかりが揃っている凄い映画である、ということを前提にして敢えて言うならば、今回のショーン・ペンの演技はむしろ型に嵌まっていて、私はあんまり感心しなかったな。この名優中の名優達の間で、今回一番上手かったのは、実はデイヴの奥さん役のマーシャ・ゲイ・ハーデンだったと私は思う。中盤で不穏な雰囲気がぐぐっと盛り上がっていくのは、実は彼女の不安感に裏打ちされている部分が大きくて、彼女の演技いかんでは映画が死んでしまっていたはずだもの。
新年そうそう凄いものを観てしまった。こいつは春から縁起がいい !! でも、後味は全くよろしくないので、そういうものが見たくない人には全くお勧め出来ませんけれど。

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【ミッシング】四つ星

トミー・リー・ジョーンズがどうなることかと思っていたけれど、インディアンに憧れて家族を捨てて放浪しているという役柄に案外はまっていて一安心。でも何より、その娘役の独立独歩の女性ケイト・ブランシェットが、もう溜息が出るほど素晴らしい。彼女の娘が人さらいにさらわれ、メキシコ国境を越えて売り飛ばされる前に連れ戻すため、長年憎んでいた父親に助けを求め、もう一人の幼い娘(この子がまた上手い ! )と三人で追跡劇を繰り広げるという展開もサスペンスたっぷり。ネイティヴ・アメリカンを悪者に描いてpolitically incorrectにならないのかと危惧したが、白人の黒幕も同様に悪い奴だったという寸法。あれれ ? 砂漠と馬と銃なのにちっとも眠くならないぞ ?
ちょっとだけエグめの描写が多かったのと完璧なハッピーエンドとは言えない展開で、アメリカでの評価はそんなに高くなかったのでしょうか ? でもこれ、少なくとも私にとっては、同じロン・ハワード監督の【ビューティフル・マインド】よりよっぽど面白かったのですが。

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【みなさん、さようなら】四星半

この話の前作とも言われる、同じドゥニ・アルカン監督の【アメリカ帝国の滅亡】を随分大昔に見た。内容はさっぱり記憶にないけれど、皮肉の効いた展開が小気味良かったことだけは覚えている。でもまぁ本作とはかなり違ったものであったことは確かなので、見ていなくても全然大丈夫だけど。
人生の愉しみを分かち合って来た気の置けない友人達に囲まれて、語り合い、ジョークを飛ばし合いながらこんな風に末期を迎えられたら、人間、かなり幸福かもしれない。(それには是が非でも、出来がよくリッチな息子を作っておかなくては !! )ついでに、価値観の違いから疎遠だったかの息子とも和解し、離婚した妻にも側にいてもらい……。これは、死ぬことを描いているように見せかけて、実は人生で必要なものって何 ? と問いかけている映画だったりするではなかろうか。

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【めざめ】三つ星

三組のばらばらのエピソードが闘牛というモチーフに繋がって絡み合っていくところが抜群に上手い、らしいのだが、そのそれぞれのエピソードの方にあまり興味が持てなかったので、そもそもこの映画の世界そのものに入って行けなかったような。うーむ、もっと気持ちや体力に余裕がある時に鑑賞した方がよさそうな作品だったのかな。

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【油断大敵】四つ星

敢えて言葉にするなら、ちょっとヒネくれた「しみじみ人情路線」か。刑事と泥棒の一風変わったいたちごっこ(これも友情 ? )を演じるのは、任せて安心の役所広司さんと柄本明さん。この二人から滲み出る滋味だけでも充分な見応えが。これまで脚本家として腕を上げて来られた成島出さん、監督デビュー作なのに渋いものをお創りになる。この調子で、他の人に真似の出来ない独自の世界観をどんどん磨き上げていって戴きたいものです。

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【ラブ・アクチュアリー】四つ星

何せエピソードが多いものだから、誰でも一つくらいは好きな話があるだろうというのは、凄い戦略だなって思うけど、どのお話も埋もれないようにきちんとまとめている構成と演出は、とりあえずお見事。個人的には、私が一番幸せになって欲しかった彼女が可哀想なことになってしまったのが、ちと残念だけど。あと、ヒュー・グラントが英国首相っていうのは無理がありすぎー !! (相手役の女性にもイマイチ魅力が感じられなかったし。)リーアム(・ニーソン)・パパが、近年まれにみるカッコよさだったのは収穫。しかし、これはやっぱりどうしたってクリスマス・シーズンに合わせて公開するべきではなかったか。

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【リアリズムの宿】三星半

あまりよく知らない人と会話をせざるをえない時の独特な間とか、どこかのくたびれた時空間に迷い込んでしまった時の何ともいえないトホホな感じとか、誰もが少しは身に覚えがあるような脱力感を、画面の上できっちりと再現しているところが凄い。そんなもの描いてどーすんだよとは言いながら、その観察力と構成力には感心してしまう。山下淳弘監督は、この特性をもっともっと生かせるような題材に何か出会えるといいよねぇ。

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【レジェンド・オブ・メキシコ デスペラード】二星半

前作の【デスペラード】より、ひたすら火薬が増量されているらしいことしか印象に残らなかった。アクション好きな人にはそれでもいいのかもしれなくても、私にはどうも。それにしてもバンちゃん、そろそろ頑張ってもうひと山当てとかないとマズいのでは……。

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【恋愛適齢期】三星半

キアヌ君の年代の非の打ち所の無い青年が、ダイアン・キートンの年代のヒロインに本気で入れ揚げるなんてありえるのか ? という点はまぁファンタジーなので置いとくとしても、ヒロインがキアヌ君をほっぽってジャック・ニコルソンに行くって辺りは、私的にはもっとありえないんだけどー !!! だってこの映画のジャック・ニコルソンには、全然魅力が感じられないというか、魅力を感じさせるような描写に乏しいというか。(そのちょっとだらしないところが気が置けなくていいのだ、という意見も読みましたけどね。)後半が結構だらだらと長いのも何だしなー。まぁコメディとしてはそこそこ笑えるシーンも多いし、多分及第点ではあるんだけれど。

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【ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還】五つ星

この世には、創ったその途端にクラシックになってしまうような映画なんてあるんだなぁ。何もかもが完璧で素晴らしすぎて、何から褒めていいのやらさっぱり分からん。このジャンルの映画としては別格の金字塔であり、かつての【スター・ウォーズ】3部作が不滅の神話と化したように、映画史の中で燦然と光を放ち続ける伝説に、既になってしまったと言っても過言ではないだろう。

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【ロスト・イン・トランスレーション】三星半

この人の2/12付けの日記を先に読んでしまったもので……これ以上の感想はもう書けませんてば !!
いつも英語学習の森で迷子になっている身(Lost in English-Educationだな)としては、言葉が分からなければ勉強しろー !! とシンプルな反発も感じてしまうし、(あのあんまりにもデキの悪い通訳の描写は許せない。東京で英語でメシ食ってる日本人の大部分はもっと質のいい仕事をしていると思う。)大体、君達、ビジネス絡みで来てるんでしょーが。その孤独とやらもギャラのうちだし、精魂込めて仕事してアホみたいな金額の金をせしめて(もしくはその帰りをおとなしく待つなりして(たかが1ヶ月やそこら足らずの時間を一人で潰す能力もないんかい))、嫌ならとっととお帰りになればよろしがな。
パーク・ハイアット・ホテルの部屋を、まるでガラス張りの無菌室みたいだと評している人がいて(その人はそう言って褒めていたのだが)、正にそこが、私がこの映画に違和感を感じる点に他ならないのではないかと思った。そもそも私の中では、真性の“孤独”なるものはそんな優雅な感傷なんかではありえないし、私にとっての東京は、エトランゼ気分で黄昏(たそがれ)るための場所ではなく、あくまでもサバイバルのための場所だから。同じ風景が目に映っていても、見ているものが違うのは如何ともしがたいでしょ ? (要するに、ビンボー人のヒガミ根性って訳やね。とほほー。)

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【ワイルド・フラワーズ】四つ星

一部のドキュメンタリーを除けば、ここまでプロレスなるものを熱く真摯に語っている映画なんて始めて観た。しかもお題は女子プロレスときたもんだ。ストーリー自体は(特に前半)ちょっともたつくところもあるけれど、後半になればなるほどどんどんプロレス度が純化していき、観る者は問答無用で熱狂の嵐に巻き込まれざるを得ない。特に終盤のファイトシーンは、ほとんどドキュメンタリーの域の迫力で、これは百聞は一見に敷かずとしか言いようがない。今回、成り行きで女子プロレス団体の社長になるという役どころの岡田義徳さん(今でもうっちーと呼んでしまいそうになる……)も、これまでとはまた違った面を見せていて素敵だし !! これはどうしたって応援したくなってしまうような映画。

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【わが故郷の歌】四星半

クルド人が置かれている苦しい状況とかは画面にどうしても映り込んでこざるを得ないが、バフマン・ゴバディ監督がまず描こうとしたのはそうした政治的なお題目ではなく、あくまでもその地に根を張って生きるあまりに人間くさい人々の姿だ。彼等は泣きもすれば、笑いもするし、謳い踊って人生を楽しもうとすれば、時には過ちを犯したりもする。私達とあまりにも同じだ。

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【嗤う伊右衛門<わらういえもん>】三つ星

唐沢寿明さんや小雪さんを始めとする役者陣の演技には力があって、それぞれのシーンにはなかなかのインパクトがあるんだけど、シーン間の繋がりはあまり考慮されていないというか、何も考えずにただ好きに並べているという感じ。論理に飛躍がありすぎてついていくのが無理っぽい。まぁ、全体的に【青の炎】よりは良かったかなとも思いますが。

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【悪い男】三つ星

主人公を演じたチョ・ジェヒョンの存在感のおかげで、確かにある種の強度は感じるんだけど、女に手も出さんとただひたすら堕落させて、その様を眺めているだけで満足している男の気持ちなんてさっぱり分からないし、大体、この程度の罠 ? にやすやすと引っ掛かって身を持ち崩してしまう女というのが、あんまりにもお脳が足りないようにしか映らないというか、全くリアリティが感じられない。どれだけお話が進んでもそんなアホなと思うばかり。従ってあまり感情も湧いてこない訳で……。まずはこのシチュエーションに説得力を持たせる細部の詰めが必要ないんじゃないの ?

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