Keisuke Hara - [Diary]
1999/12版 その3

[前日へ続く]

1999/12/21 (Tues.) モンテクリスト

午後から大学へ。 論文の形式を整えたりしている内に教授会。 今日は今年最後の会議なので早く終わるかと思ったら、 その逆で人事問題等議題が山積み。 今日中に最終原稿を渡さなくてはいけないので、 結局会議を早退。 個研で論文の清書を書きあげてメイルで送る。 教授会に問題はなかったのだろうか。

夜は高槻の T 部長と二人で呑む。 先斗町のおでん屋で食事して、 さらに河原町と木屋町の間にあるリバースで呑む。 アイリッシュウィスキーを一杯と葉巻(モンテクリストNo.4)を一本。 終電が終わっていたので、タクシーで帰宅。 T 部長も河原町からタクシーで京都駅に向かったが、 終電に間にあったのだろうか。

酒の肴の話題は、 反スノッブとレジスタンス活動についてなど。


1999/12/22 (Wed.) うるさい日本の私

午後から大学へ。 卒研のゼミと修論のゼミ。その後、数学の学系会議にちょっと参加。 大学の用事については、今日で今年も終わった。

今日の一冊。 人呼んで「戦う哲学者」、中島義道の「うるさい日本の私」(新潮文庫)。
まさに怪著。どこでもいつでもけたたましくテープ録音で スピーカーががなりたてる騒音王国日本。 我慢できない哲学者の空しくも激しいドンキホーテ的苦闘を描く。

「エスカレーターをご利用のお客さまは、手すりをしっかりと握って
足元の黄色い線の内側にお乗り下さい。
小さなお子さまをお連れのお客さまは、かならず手をひいて
真中にお乗せください。ゴム靴をお履きのお子さまは特に滑りやすいので…」
「お待たせいたしました。毎度○○バスをご利用いただき、 まことにありがとうございます。 お降りの方はお知らせ願います。ご乗車いただき、まことにありがとうございます。 お乗り間違えのないようにお気をつけ下さい。 車は急停車することがございますので、お手近の手すりか吊り皮を しっかりとお持ちになって…」
「まもなく終点です。お足元にお気をつけ下さい。 まもなく終点です。お足元にお気をつけ下さい。 まもなく終点です。お足元にお気をつけ下さい。 まもなく終点です。お足元にお気をつけ下さい。 まもなく終点です。お足元にお気をつけ下さい。 まもなく終点です。お足元にお気をつけ下さい…」

その騒音の出所におもむき、徹底的に議論し、投書し、 あらゆる闘争をくり広げる。 ある時はののしられ、ある時はキ○ガイ扱いされ、 ある時は丁重に無視され、ある時は生命の危機を感じながらも、 スピーカ音という「優しさの押し売り」との闘いは続く。 必読の怪著です。


1999/12/23 (Thurs.) 楽器をはさんだ美女

今日から冬休み。今年もこれで一段落。 年末までぼんやりと年の暮れを過すことにするか。 多分、午前中はチェロを弾く。家で昼御飯を作って、 午後は家で、または三条あたりをぶらぶらしながら、 ポリヤ=セゲーの解析の問題集を少し解き、 プレプリントや論文を読む。 夜、自宅でまた自炊して夕食。読書。寝る。 という感じの平凡な生活だと思うので、 日記更新はそれ以外の事件が何かあったら、ということで。

今日の CD。「バッハで聞くヴィオラ・ダ・ガンバの世界」(Hill Perl)。
ガンバを弾く美女か、、、いいですねえ。 また足の間に狭んだところが色っぽいんですよね(不純)。 パールは今度また来日したら是非、見に行きたい、いや聴きに行きたい。

ヴィオラ・ダ・ガンバは足の間に置いて弓で弾く、チェロに似た古楽器だが、 チェロとは系統が違う。 チェロの祖先と紹介されることも多いが、 進化の系統樹からするとそれは間違いだそうな。 ガンバは14世紀頃スペインからヨーロッパ各国に広がり、 大バッハの頃までは広く演奏され重要な役割を果したが、 18世紀後半から次第に使われなくなった古楽器である。 形はチェロに似ているが、肩の線がなだらかで、 f 字孔ではなく c 字型の孔がある。 エンドピンは歴史的にはチェロにおいても最近発明されたものなので、 もちろんガンバにはない。足の間に挟むというか、 両足のふくらはぎにのせるような感じで支える。 弦は普通六本だが低弦を一本増やした七本のものもあり、 チューニングは四度間隔で真中だけ三度間隔 (チェロなどヴァイオリン属は四本弦で五度間隔)。 またネックにヴァイオリン属にはないフレットがある。 弓の持ち方も違う。箸を持つような感じで支え、 チェロとは逆に毛の部分を上に向けて下側から弾く。

ちなみに僕のチェロの先生はヴィオラ・ダ・ガンバの演奏家でもあるが、 傍で見ても弦が多くてわけがわからなくなる。 やわらかい独特の音色で、一度やってみたいような気もするのだが。


1999/12/24 (Fri.) リトルウッドの休日

午前中は久しぶりにチェロのレッスン。 やっぱり定期的に注意されていないと悪い癖が戻ってしまうみたいで、 ロングトーンとスケールで色々とチェックを受けて、 充実したレッスンであった。 やっぱり器楽はいい。

休日に入って、これから二週間ほど一日一日が丸ごとが自分のために使える。 なんと贅沢なことであろうか。 まいあがってしまって、家の中で無駄にうろうろしてしまうほどである。 と言っても、新たなことをするわけではなく、 昨日の日記にあるような平凡な毎日である。

ところで、偉大なリトルウッド先生の意見によれば、 数学者の休日はぴったり21日の三週間、それより一日短くても長くても駄目で、 その間は全く研究をしてはいけない、と言う。 多分、リトルウッドの言うこの休日は、 普段の旺盛な研究に疲れた数学者が新たな研究への復活のために 「さあ休んでやるぞ」という心つもりで休暇を取るような、 高貴な休暇のことなのであろうから、 したがって僕のこの冬休みにはあてはまらない。 ちょっと数学を考えたり、本を読んだり、チェロを弾いたり、 また論文を読んだり、 というようなだらだらした卑しい僕の休日とは別物なのである。


1999/12/25 (Sat.)


1999/12/26 (Sun.) エスピオナージ

ほぼ半年に及んだ JPCA の第一回 Email Open の僕の最後のゲームを今日で終えた。 とっくに優勝者は決まっているので、消化試合ではある。 十二人の総当たりで僕の戦績は 5.5 ポイント、 五勝五敗一分でぴったり半分。 目標は勝ち越しだったのだが、イプシロン及ばず。 最後のゲームは、黒番(後手)で知らない定跡(Bogo-Indian)に引きずりこまれたが、 なんとか有利なエンドゲームに持ちこんで勝つことができた。 十二人の中でビリから二番目のレイティングだった割に健闘したなあ。

最近、個人的にエスピオナージがブームなので、 「スクールボーイ閣下」(ル・カレ、ハヤカワ文庫)を再読してみたり。 ル・カレはミステリの枠組だけで語ることのできない偉大な作家だが、 ちなみに、「寒い国から来たスパイ」に続き、 二度目の英国推理作家協会賞受賞作。 うーむ、やっぱりル・カレは良い。 かっこいいぞ、ジョージ・スマイリー。 ちびでも、禿げてても、丸眼鏡でも、老人でも、美人妻に浮気されてても、 大英帝国の運命はスマイリー、貴方の双肩にかかっている。

今日の一曲。ベートーヴェン、弦楽四重奏曲 Op.59, No.1「ラズモフスキー」。 アルバンベルク SQ。 この曲はチェロの優雅なメロディから始まるので特に好きだ。 第三楽章のアダージョも泣かせる。 アルバンベルグはちょっと溌剌とし過ぎかとも思うが。


1999/12/27 (Mon.)


1999/12/28 (Tues.)


1999/12/29 (Wed.) ガット弦

昨夜は、KS大のMさんとその友人のK大のTさんとともに、 河原町界隈で飲んでいたので(?)、今朝は爽やかに目覚めた。 話題は色々だったが、ソフトウェア基礎論の話とか、 東北大学におけるフーリエ解析の伝統の話とか、 イルクーツクで飲めるバイカル湖ゆかりのウォッカの話とか。

あいかわらず、朝はチェロを弾く。ロングトーン、スケール、 エチュードと進んで、曲を何か弾く。 大抵は「イエスタデイ」か、「ロンドンデリー」。たまにジムノペディ一番。 エチュードでは、二指と四指で全半音をとる所とその前後が難しい。

午後はポリヤとセゲーの解析の問題集から今日も二、三問解くか、 と思ったら数列についてのある不等式を示す最初の問題が解けず。 分からないままに、 三条に出かけ十字屋に注文していたチェロ弦を受けとりに行く。 今までは低い方の二本 G, C までガットだったのを D もガットに、 A はスチールからナイロンにしてみた。これでスチール弦はなくなった。 ナイロン弦は化学繊維を金属巻線でコーティングしたもので、 音色はガットに似ているが比較的音程が安定していて調弦が易しい。

今年も色々あったような、なかったような。 しかし、月日のたつのは早いものです。 2000年なんて遥かに先のことかと思っていましたが。 皆さんも良いお年を。


1999/12/30 (Thurs.)


1999/12/31 (Fri.)


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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp, kshara@mars.dti.ne.jp

この日記は、GNSを使用して作成されています。