Keisuke Hara - [Diary]
2002/09版 その3

[前日へ続く]

2002/09/21 (Sat.)

20日の夜に名古屋出張より帰宅。 当地では昼は連続講義、夜は名大の方と飲みに行つたりで、 結構疲れた。出張期間中に誕生日を迎えたので、 ちよつと年を感じてみたり。 某先生の主張によると40歳でがつくりと体力が変化し、 人生の見方が変はるさうだ。 まわりをみると、 40歳どころか遥かに上の世代に異常に元気な方が多いので、 本当かなあ、と思つてもみるのだが。 21 日の今日は少々、事務用もあつて土曜日ではあるが大学へ。 帰りに京都駅で途中下車して SBUX で珈琲豆を買つて帰宅。 本日の読書、「料理人の仕事 (いまヘスティアのかまどは…)」(木沢武男)。 名著だ。 仕事と人生への自分の不真面目な態度を深く、深く、反省する。

執事から誕生日記念としてワインの栓をもらう。 ラムネのやうに中に玉が入つて、それが状況にあはせて、 栓の下部の方を閉じたり上部を閉じたりするやうに、 ボールが通る栓の内部の曲線が設計されてゐるらしい。 なかなか便利だし、形も綺麗だ。 それとは無関係に今年初の連続休暇中の執事は、 色々と買物をしてきたりして御機嫌である。 その中でも特にブロック系玩具 LaQ に、 「これぞ男の子の夢」とか訳の分からないことを言いつつ、 夢中であるやうだつた。 ちよつと羨しくなくもなかつたが、私はブロックと言へばレゴ派なのである。

以前、 確率論の簡単な、しかし良く現実に現れて、しかも良く間違はれてゐる、 問題について日記に書いたのだが、 某大学で初等確率論の講義をうけもつた方から、 その問題を実際に定期試験で出してみた、 と言ふメイルをいただいた。 採点の結果、三択問題で20から23パーセントの正答率だつたとのこと。 選択した理由はでたらめでも正解にしたさうだから、 実際はもつと低い正答率である。 初等的な確率論の問題はあらゆる現場で頻繁に現れるが、 非常に間違ひやすい性質を持つており、 それだからひどい間違ひや、 詐欺やごまかしが横行してゐるのである。

かんたんな問題。
「あるルーレットでは 0 から 36 の 37 箇所の数字の一つが出る。 このルーレットを 6 回行なつたとき、その間に同じ数字が出る確率は? (a) 3 分の 1 より大きい。 (b) 30 分の 1 くらい。 (c) 300 分の 1 より小さい」


2002/09/22 (Sun.)

午前、午後とプロシーディングの執筆。 とりあげて新しい話が入つてゐるわけではないので、 主にプレゼンテーションの問題、 特にイントロがどれだけうまく書けるかと言ふ問題である。 仕事で忙しくてチェロを修理に持つて行く時間がない。 學会から帰つてきてからになりさうだ。

昨日の問題の答え。(a) の 3 分の 1 以上。 6 回全部が異なつた数字が出る確率を100パーセントから引けばよいから、
1 - (36/37)*(35/37)*(34/37)*(33/37)*(32/37) = 1 - 0.652... = 0.347...
となつて、約 35 パーセント。 これは初等確率論では「誕生日のパラドックス」、 暗号の数学では「誕生日攻撃」と呼ばれる問題の一例。 誕生日と言ふ名前は、 「ある人数が集まつた時に、その中に誕生日が同じ二人がゐる確率は どれくらいか?」と言ふ問ひで提出されることが多いからで、 その答はたいていの人の直感より遥かに大きい。 暗号の理論でこの問題を扱ふのは、 でたらめに選んでゐる数が偶然一致してゐるペアがあると (具体的にその数が分からなくても、その存在だけから)、 セキュリティが脅かされることがあるからで、 例へば、メッセージ要約関数(ハッシュ関数)の有効性評価や、 公開鍵系に使ふ困難な問題への確率的攻撃などに現れる。


2002/09/23 (Mon.)

朝はプロシーディング書きの仕事、 午後は少し午睡してまた仕事の続き。

明日は朝から大学で仕事をしてから、 午後島根に移動、日本数学会の年会に参加しますので、 次の日記更新は土曜日の夜以降になります。


2002/09/24 (Tues.)


2002/09/25 (Wed.)


2002/09/26 (Thurs.)


2002/09/27 (Fri.)


2002/09/28 (Sat.)

数学会の年会が行なわれたせゐで、 普段は閑静な地方都市も怪しげな人だらけになつてゐた。 やはり不思議なもので、 関係者は雰囲気でそれと分かるものである。 数学者は、外見に漂ふ雰囲気でそれと分る職業の最たるものではないかな。 ちなみに学会では、また自分の怠惰を反省。 友がみな我より偉く見ゆる日よ、か…

帰宅すると両親から手紙が来ていた。 この前、入院してゐた母を見舞ひに、 両膝とも穴が開いたジーンズにこれまた穴の開いた T シャツで 行つたのが余程ショックだつたらしく、中身はお説教であつた。 まさかそんな格好で職場に行つたりはしてゐないと思ふが、 ある程度きちんとした格好をするのが誰に対してもの礼儀である、 誕生日のお祝ひの意味も込めて少し包んでおくから、 お願ひだからもう少しまともな服を着てくれ、とのことであつた。 いくつになつても親とは有難いものである。 さつそくそのお金を持つて近所のワイン屋に行き、 普段には少し高いので遠慮してゐるワインを三本と、 オークションのカタログを購入。

実際、服を持つてゐないわけではないのだが、 普段あまり人に会はないし、講義する時にも要は中身だし、 聴講する学生の方も子供じゃないんだから、 講師がT シャツだから話を聞かないと言ふこともないだらうし、 と段々気楽な格好に流れて行くのである。 それに偏見かも知れないが、 ネクタイなんかしてゐるとまともに頭が働かないやうにさへ思ふ。 しかし、親に涙ながらに訴へられると弱いので、 これも老いた両親への孝行と思ひ、 来期からは少なくとも大学では、 もう少しまつとうな格好をしやうかな、と思ひます。


2002/09/29 (Sun.)

book 午後近くまで寝て、昼まではメイルで連絡等、 昼御飯は茄子とピーマンの焼きそばを作り、 午後はプロシーディングの執筆。 夕飯は茹で鷄、オクラの大根おろし和へ、大根の味噌汁、納豆など。 夜は辞書やらスタイルやらを片手に校正作業。

明日から新學期か…憂鬱。 明日は朝からプログラミング演習なので、 お弁当のサンドウィッチ用に卵を茹で、 煮た鶏肉をスライスして仕込んでおく。

今日の画像はようやく製本があがつてきた 「暗号理論とセキュリティ」。 市場に出る前から、
「あんたらの悪巧みはこれでまるっとお見通しだ!」 (東京都、職業:天才マジシャン)、
「私の本は二冊、図書館に入ってるけどね」(那古野市、職業:助教授)、
「チープな昭和回帰野郎どもは全員この本と地獄に堕ちろ」 (高槻市、職業:哲学者)、
などなど、各界で絶賛の嵐(嘘)。


2002/09/30 (Mon.)

朝早く起きて、スーツに着替え、 台所に立ちお弁当用のサンドウィッチを作り、出勤。 午前は「プログラミング演習」。 鷄肉と卵のサンドウィッチの昼食を取り、 午後は卒研ゼミ、院生ゼミの打ちあはせ、 その他の事務仕事を片付けてから、 本日締切のプロシーディングの原稿チェック。 しばらく眺めてからメイルでリスボンに提出。 新しいことは何もつけ加へられなかつたのが無念だ。 夕方になつて帰路につく。

夕食は、自宅から歩いて、六角新町のバーで。 この一年で一番忙しかつた九月が終わつたので、 誕生日も疎かになつてゐたことであるし、 少し良いものを飲み食ひして、 一人しんみりとこの一年の反省会でもしやう、と言ふ企画である。

そろそろ帰らうかなと思つてゐると、 メニューにはないのに、いい色の肋肉を下処理してゐるので、 それはどうするのかと聞いてみたら、 明日からメニューを大きく変更するのでその準備であるとのことであつた。 グリルのセクションを加へ、うずらやホロホロ鳥、 羊の肋肉などを出すとのこと。フォアグラなんかも出るやうだ。 明日にすれば良かつた…と思ひつつ帰宅。 バーの表側にある料亭には、「名月や花も○○○この座敷」 と言ふ句がかかつてゐたが、途中が何と書いてあるのか草書で読めない。 書道を学び草書なども読み書きできるやうになる、 と言ふのも私の人生目標の一つではあるのだが、 今の所、優先順位が後の方で実現に至つてゐない。残念だ。 家に向かつてさらに歩いて行くと、 近所の小学校の脇を通るところで、誰かがピアノを弾く音がする。 小学校のピアノで練習してゐるのであらう、 ショパンのノクターンの一曲であつた。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

この日記は、GNSを使用して作成されています。