Keisuke Hara - [Diary]
2002/10版 その2

[前日へ続く]

2002/10/11 (Fri.)

大学へ。事務仕事をしてから、図書館で論文をコピー。 しかし、論文をコピーすると何だかそれで一仕事終わつたやうな気持になつて、 勉強しない(時には目を通しもしない)傾向があることは、 この業界の人なら誰しも気付いている経験則だと思ふ。

ノーベル平和賞はカーター元大統領か… この人ほど引退してから大活躍した大統領も珍しいだらうな。

技術文書を翻訳してゐて、その査読で、 英語の片仮名表記における「ヴ」の使ひ方を指摘された。 考へてみるとこれはなかなか悩ましい。 サーヴィスかサービスか、 バージョンかヴァージョンか、ヴェンダかベンダか。 (最後の例については「ベンダー」と伸ばすかどうかの問題もある。) もとの音が v なら全部「ヴ」だ、としてしまへばすつきりするが、 昔から日本語に入つてゐるやうな単語だと、 「ヴ」にするとなんとなく読み難い。 では、どのあたりが分かれ目なのか、と言ふ判断が難しい。 日本語での技術文書の書き方として、 この問題はどこかで標準化されてゐるんでしょうか? もし御存知の方がゐたら教へて下さい。


2002/10/12 (Sat.)

昨日は久しぶりに執事とチェス。 20分プラス一手10秒、黒番、 レティ・オープニングからシシリアンに変化。 相手にほとんど時間がなくなつてゐるのと、 ポーンの形はこちらが良いことから、 強引に大駒を交換して楽勝のエンディングにしやうとしたら、 指したとたんに駒数の勘定を間違へてゐることに気付き、 即、リザイン。

午後から膳所へチェロのレッスンに行く。 最近、あまりに多忙で全然練習できていないので、 めろめろであつた。 帰りに膳所の SBUX で珈琲豆を購入したついでに、 一服して行く。一時間ほど読書。 夕方帰宅して、夕食の準備をしながら、洗濯など家事。


2002/10/13 (Sun.)

午前中は修理に出してゐたチェロを引き取りに行く。 自宅でちりめんじゃこの炒飯の昼食を取つて、 午後は市役所前のホテルオークラへ。 ワインのオークションに出席。 バーチャルオークション以前に実地の競りに参加することによつて、 実験経済学の自主学習をするためである、いや本当。 参加者全員が自腹を切つて大流血してこそ、真の経済学実験になり得るのだ。

ちなみに戦果は、 カタログで目をつけてゐた私の生まれ年、 つまり有名な大ハズレ年である 1968 年のラフィット・ロートシルト。 商品についての解説が熱心だつたせゐか、 私以外にも何人かビットしてゐたが、少し競つたあと私が落札した。 予定より少し高い出費になつたが、 68 年は滅多に見つからなさそうだしまあ良しとしやう…

会場ではサーヴィスにシャンパンがふるまはれてゐた (ビッターが理性を早く失なふやうにだらう)。 それはノーベル賞授賞式のパーティで使はれる 唯一のシャンパンの造り手「フローリー」のものだとか。 残念ながらラべルは授賞式で出してゐるものと違ふやうだつたが、 優しい味がしてなかなか美味しかつた。


2002/10/14 (Mon.)

ああ、世間は休日だつたらうさ。 しかし朝から出勤。午前は「プログラミング演習」。 休日に出席していただいた学生さんたちにお礼を申しあげ、 unix コマンドとシェルの使い方のワイポイントレッスンをして、 今日の演習をしてもらふ。

昼食はメイルの対応をしながら、焼きそばパンと珈琲。 午後は色々と事務的な用事を続ける。夕方帰宅。夕食はおでん。

K 大の S 君が私の本のタイポを教えてくれたので、早速、 正誤情報 に反映。 現在、間違いは5箇所で、170 ページで割ると、 間違いページ率は 3 パーセント弱。どこまで増えることやら。


2002/10/15 (Tues.)

午前は積分論の講義の準備。 昼食は地茄子のパスタ。秋茄子もまたよし。 昼からテレビは報道一色になつてゐた。 ここ数年、ビッグニュースが多過ぎて、 その持つ意味の大きさに対して、 自分が麻痺して来てゐるやうに思ふ。

夜は JF の翻訳のドラフトに丁寧な査読を してくれた人がゐたので、少し反映作業。 技術文書とは言へ、数学の翻訳とは違つて、 かなりこなれた日本語まで持つて行かなくてはいけないので、 なかなか難しい。 そもそも数学のロジックは英語の語順とフィットしてゐるので、 日本語でも直訳調のもの云ひが通つてしまつてゐる。 例へば、「任意のなになにに対して、あるなになにが存在して、 なになにを満たす」とか。 For every X, there exists Y such that Z の直訳である。 A + B = C でさへ、これは英語的な語順であつて、 日本語なら「A と B を足すと C になる」だから、 A, B, +, = みたいな順序のはずだ。 確かこのやうな記法もあつて逆ポーランド式とか言ふのではなかつたかな。

さういや、昔は逆ポーランド式の電卓なんかがあつたものだが、 今でもあるのだらうか。 年寄りの昔話で申しわけないが、 昔は大学に入ると理系の人はみんなプログラマブルな電卓を買つたもので、 ポケコン(ポケットコンピュータ)なんて呼ばれてゐた。 もちろん表示部は電卓に毛が生えた程度である(3、4行とか)。 それを使つて、実験実習のデータ処理なんかをするのだ。 BASIC がのつてゐるのなんかは高級機で、 普通は逆ポーランド記法の特殊な簡易言語を備へてゐるだけだつた。 その性能は「何ステップのプログラムが組めるか」で計られてゐて、 それが何十ステップとかせいぜい何百ステップくらいで、 ああ、あと3ステップあればこれが出来るのに、なんて思つたものだ。 ところが、状況が制限されてゐると、 創造力が却つて刺激されることもあるらしく、 恐るべきマニアックな世界がひろがつてゐたものだ。


2002/10/16 (Wed.)

午前中は自分の勉強。 最近は朝に勉強するやうにしてゐて、なかなか調子がよろしい。 ただ問題は早起きできないので、 自動的に勉強時間が短かくなるところである。

アーリオオーリオの昼食をとつて出勤。午後は教室会議。 続いて卒研説明会。 予定通り、Dym-McKean のフーリエ解析の入門書を読み直したい、 と言ふ自分の希望を述べる。 その後、K 川先生が個研にやつてきて色々教へてくれた。 帰宅するともう8時を過ぎてゐたので、夕食はおでんのみ。

その時に聞いたことには、誰かが注文してくれたらしく、 拙著 が生協書籍部の注文取り寄せ棚に届いてゐるのを目撃したさうだ。 これで、少なくとも一部は売れてゐることが確認された。 他にも各界から、
「一人称から始まっているのでアクロイド殺しネタかとも思ったが、 それは作者のひっかけで、犯人はこのガウスに間違いない。 R.S.A. とかいう三人組もあやしかったが動機が弱い」 (R 大学経済学部、陰の軍団首領)
「人間が書けていない」 (京都在住、製薬会社勤務)
など、絶賛の嵐。 なお、現在発見されてゐる間違いは、 K 大の S 君の報告により 7 つに増加。


2002/10/17 (Thurs.)

昼食は自宅で取り、午後は「積分論 II」。 ヒルベルト空間について。 講義の後で、聴講してゐる学生さんの一人が、 Dym-McKean がメディアセンターに入つてゐないと教へてくれた。 事実だとすれば、けしからんことだ。早速、リクエストを出しておこう。 夕食はおでんとちりめん山椒。やつと、おでんを食べ終わつた。 メニューによつては大量に作らざるを得ないものがあるので、 その場合、毎日同じものを食べなくてはならないのが問題だ。

夢見る H 先生、などと呼ばれたりもする私だが、 自分では極めて現実的かつプラクティカルな人間だと思つてゐる。 今日、上に挙げたフランクリンの名言などは、 我が意を得たり、と言ふか、まつたく同感である。


2002/10/18 (Fri.)

早起きして午前中は自分の勉強。 その傍ら、トマトソースを作り、昼食は早めの時間にトマトのパスタ。 午後の予定に間に合ふやうに、あわてて運転免許の更新に行く。 私はゴールドカードの優良運転手なので (と言ふのも私は免許取得以来一度も運転していないからだが)、 一時間ほどで終了。

また K 大の S 君からバグ報告。 丁寧に拙著を読んでくれてゐる模様でありがたい。 ちなみに S 君には「分かりやすい」と好評。 同門なので基本的に頭の構造が似てゐるせゐでもあらうが、 嬉しいことである。


2002/10/19 (Sat.)

昨日の午後はあちこち走りまわつて大変だつたので、 今日は正午まで寝てしまつた。 今日の京都は雨。来週からはぐつと冷え込みさうだ。 昼食はまたトマトのパスタとワイン。 午後から始動。論文の改稿作業をし、 来週の積分論の講義の準備をする。 新米を購入して来たので、 夕食は素朴に漬物、梅干し、若布の味噌汁で米の味を味わふ。 伊丹流ねこまんま(ちりめん山椒入り卵かけ御飯)もまたよし。 食後は Terre Male のデザートワインを舐めながら、 JF の翻訳に査読コメントを参考に少し手を入れる。


2002/10/20 (Sun.)

午前中は JF の翻訳の手直しをし、 自宅で昼食を取つて、 午後は京都駅近くのホテルでの披露宴に行く。 中高の同級生の披露宴だつたのだが、 新郎の同級生様たちテーブルは、 私の他、遺伝生物学の助手、戦闘機乗り、 アニメーター、坊主兼公務員と言ふ、 でたらめな職業に就いている面々であつた。 ほとんどはこの前の同窓会で会つたので、 特に懐しいということもなかつたが、 たまに昔の同級生に会ふと言ふのはよろしいものである。 私以外は遠方から来てゐるので、 披露宴の後、ホテルでお茶を飲んですぐに解散。

ちなみに新郎自身は、某 IH 社でネットワークインフラ屋 をしてゐるらしい。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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